アイテム番号: SCP-1908-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1908-JPはサイト-81██の標準小型アイテム収容ロッカーに保管されます。SCP-1908-JPを用いた実験はセキュリティクリアランスレベル3以上の担当研究員の許可を得て行ってください。
説明: SCP-1908-JPは高さ90mm、奥行35mm、幅90mmのブリキ製の缶とその内容物であるキャンディです。缶のラベルには「████村名産 パワーチャージドロップス」と印字されています。SCP-1908-JPは内容物を取り出した場合も未知の手段により内容物が補給されており、重量は常に約115gを維持します。
SCP-1908-JPの異常性は内容物のキャンディを摂食した際に生じます。キャンディが摂食者の口内に存在する間、摂食者は身体能力が大幅に強化される、または特殊な能力が付与されます。強化/付与される能力については、キャンディの味の種類に応じて異なります。詳細は以下の通りです。
味 | 色 | 強化/付与される能力 | 補足 |
---|---|---|---|
イチゴ | 赤 | 筋力の強化 | 摂食者は平均して1.45tの重量挙げに成功した。 |
パイン | 黄 | 走力の強化 | 摂食者の100m走平均タイムは3.84秒であった。 |
レモン | 透明白 | なし | 特に効果はないようである。 |
オレンジ | オレンジ | 耐久力の強化 | ハンマーや刃物を用いて致命的なレベルの攻撃を行ったが、痣やかすり傷程度の軽傷であった。 |
リンゴ | ピンク | なし | 特に効果はないようである。 |
メロン | 緑 | なし | 特に効果はないようである。 |
スモモ | 薄青 | 飛行能力 | 限界高度は約3mで、最大速度は時速25km程度であった。 |
ハッカ | ピンク | なし | 特に効果はないようである。 |
SCP-1908-JPは過疎により廃村となった████村の観光村おこし協会の建物跡にて、大量の健康食品やトレーニング機器、自己啓発本とともに発見されました。同時に発見された健康食品やトレーニング機器、自己啓発本については、いずれも異常性は見られませんでした。
現在SCP-1908-JPは効果の有用性から、危険度の高い作戦に従事する機動部隊隊員やエージェントに摂食させることが計画されています。事案記録1908-JP-1を受けて計画は無期限に凍結されました。
事案記録1908-JP-1: SCP-1908-JPを摂食したエージェント・██が、[削除済]作戦への従事後に行方不明になる事案が発生しました。エージェント・██はSCP-1908-JPの試験的な運用の対象者として、当該作戦を含めてこれまでにSCP-1908-JPを3回摂食していました。
行方不明となった2日後にエージェント・██は、██県██市██1にて、12名の一般人に囲まれて記念撮影を行っているところを確保されました。エージェント・██に対して、確保直後にインタビューが行われました。
インタビュー記録
対象: エージェント・██
インタビュアー: ███博士
<記録開始>
███博士: 只今より聞き取り調査を開始します。まず、なぜあなたは財団に無断で██に行ったのですか?
エージェント・██: それについては悪かったと思っています。ただ、なるべく早めに行かなければならなかったのですが、休暇がどうにも取れそうにありませんでしたので、仕方なく行きました。
███博士: エージェントとしての任務以上に、あなたが優先すべきことがあったのですか?
エージェント・██: 確かに██のことなんて、財団の仕事に比べたら小さいことかもしれません。ですが、私にとっては大切な、第二の故郷とも言える場所です。エージェントとしての任務と比べてどちらかを選ぶなんてできません。███博士、あなたにとっても、故郷は特別なものではないですか?
███博士: ええ、私にとっても故郷は大切です。
エージェント・██: おお、博士は話が分かるじゃないですか。やっぱり故郷は大事にしないとダメですよね。最近は故郷に思い入れがないなんてこと言う人も多いじゃないですか。この間、エージェント・███が”自分の故郷は何もないつまらないところだから、来ないほうが良い”なんてことを言っていて、そういう故郷を大切にしない人に限って大体…
███博士: はい、そうですね。故郷を大切にすることは素晴らしいことだと思います。ところで先ほど、██を"第二の故郷"と言いましたが、エージェント・██は██に在住した経験はないですよね?
エージェント・██: そうですね。博士の言う通り、私は██に住んだことはありません。ですが、住んだことがなくても分かります。██は素晴らしい場所なんです。それこそ、第二の故郷と呼んでいいほどに。
███博士: そうですか。分かりました。では次に、あなたが現地で行っていたことについて聞かせてください。あなたがあの場で行っていたのは単なる人との記念撮影で、重要なことのようには思えないのですが?
エージェント・██: そりゃ確かに私がやってることなんて、ちょっと人と触れあって一緒に記念撮影してるぐらいですけれど。それでも、地元に少しでも貢献できるんじゃないかって思うんですよ。
███博士: …記念撮影が地元への貢献になると?
エージェント・██: はい。せっかくわざわざ遠くから来てくれたんです。満足して帰ってもらいたいじゃないですか。そしてリピートでまた██に来てもらったり、ほかの人に██を紹介してくれればって思うんです。そうして人がたくさん来てくれれば、██もきっと地域活性っていうんですかね。もっと栄えていく思うんですよ。
███博士: ふむ。あなたは一体どんな役割で地域活性に貢献しているのですか?
エージェント・██: 今さらそれを聞くんですか。██でもなかなか人に気づいてもらえませんでしたし、██神社や██山みたいな大御所に比べたら、まだまだ知名度が足りませんね。やっぱり、すぐに人に気づいてもらえるようになるためには、もっと精進が必要ですね。
███博士: えーと、つまり?
エージェント・██: はい、私の役目はパワースポットです。
███博士: [7秒間の沈黙]ああ、そうでしたね。すっかり失念していましたが、エージェント・██はパワースポットでしたね。ところで…私も握手と、あと一緒に記念撮影してもらっても良いですか?<記録終了>
終了報告書: 調査によりエージェント・██は自身がパワースポットであり、観光による地域活性に貢献する責務があると認識していることが判明しました。また確保時に周囲にいた一般人はいずれも観光客であり、エージェント・██をパワースポットと認識していました。一般人については記憶処理を施し、解放しました。同様の認識汚染がインタビュアーである███博士にも生じていたため、即時治療が行われました。エージェント・██に対しても治療が行われましたが、自身をパワースポットとする認識を除去することはできず、サイト-81██の標準人型収容セルに収容されました。
その後の実験により、SCP-1908-JPを繰り返し摂食する2ことで、自身をパワースポットとする認識汚染が発生することが明確になりました。この認識汚染が生じた摂食者をSCP-1908-JP-Aと表記します。SCP-1908-JP-Aは、SCP-1908-JPの発見地域である██に対して強い愛着を持つようになり、同地域の観光資源として振る舞うようになります。また、対話や音声、映像などを通じてSCP-1908-JP-Aとの接触を一定時間続けた場合、SCP-1908-JP-Aに接触した人間もSCP-1908-JP-Aをパワースポットであると認識し、それに準じた行動を取るようになります。SCP-1908-JP-Aによる認識汚染の伝播にかかる時間には差があり、SCP-1908-JP-Aの心身が良好な状態であるほど、認識汚染の伝播にかかる時間が短くなることが判明しています。認識汚染が伝播した人間については治療により認識を除去することが可能ですが、SCP-1908-JP-Aの治療は現在まで成功していません。
実験記録1908-JP-13 - 日付20██/██/██
対象: エージェント・██、D-2022
実施内容: エージェント・██とD-2022を会話させる。
結果: 会話開始から42分33秒経過時点で、D-2022にエージェント・██をパワースポットとする認識汚染が生じた。
コメント: SCP-1908-JP-Aと会話を継続することで、周囲の人間にも認識汚染が伝播することが確認されました。エージェント・██確保時の一般人と███博士には、本事象が生じていたと考えられます。
実験記録1908-JP-14 - 日付20██/██/██
対象: エージェント・██、D-2023、D-2024
実施内容: エージェント・██とD-2023を会話させる。その後、続けてエージェント・██とD-2024を会話させる。
結果: 会話開始から39分27秒経過時点でD-2023に、会話開始から39分55秒経過時点でD-2024に、エージェント・██をパワースポットとする認識汚染が生じた。
コメント: D-2023、D-2024の2名とも同程度の時間経過で認識汚染が生じました。認識汚染の伝播には、決まった時間が必要となると考えられます。
実験記録1908-JP-19 - 日付20██/██/██
対象: エージェント・██、D-2027
実施内容: エージェント・██とD-2027を会話させる。なお実験時エージェント・██は普通感冒により、体調を崩していました。
結果: 会話開始から72分15秒経過時点で、D-2027にエージェント・██をパワースポットとする認識汚染が生じた。
コメント: 体調不良時には、認識汚染の伝播により長い時間がかかるようです。本実験の3日前の同一実験(実験記録1908-JP-18)において34分51秒で認識汚染が伝播したことを踏まえると、"パワースポット"の名の通り、SCP-1908-JP-Aの活力がある、心身の状態が良好なほど、認識汚染の伝播にかかる時間が短くなると推測されます。