アイテム番号: SCP-1921
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1921は保管サイト49の6D棟にある保護管理室において管理されることになっています。SCP-1921-B2のコピーは同施設の4B棟にある温湿度を管理された保管ロッカー内に入れ、鍵を掛けた状態で管理されなければなりません。現在の研究主任による許可書なしでは、SCP-1921近辺にSCP-1921-B2を置くことは許可されていません。
説明: SCP-1921は綿菓子の製造と販売のために設計された移動式の売店です。外装は、複雑に彫刻された色鮮やかな木製のパネルで装飾されています。またパネルには「わたあめ ― 入場券をお持ちなら無料」という文字のあるアーチ上の看板も含まれています。売店の外装には火と煙による損傷の跡が視認できます。SCP-1921には5つの主要構成要素を持ち、それらは併用されることにより異常な性質を示します。
- SCP-1921-A1は売店の前部に設置されている、特に異常の見られない綿菓子機です。売店の底部にあるタンクへ接続されている小型ポンプを除けば、市販の同種の機械と全く同じです。機械の底部に位置するラベルには製造業者名として「シュガーコム製菓(Sugarcomb Confections)」という存在しない会社名が書かれています。
- SCP-1921-A3が機械のタンク内に存在する場合、SCP-1921-A1で製造した全ての綿飴がSCP-1921-A2となります。砂糖に食用色素を添加した場合でさえも、SCP-1921-A2は常に黒色を呈します。SCP-1921-A2がヒトの唾液に接触すると、摂取した人が感知できなくなるまで大きさが収縮・縮小します。被験者の消化器官内部に入ると即座にSCP-1921-A2は元の大きさの3倍に膨張し、被験者の消化管の大部分を占めるようになります。その後、被験者の中枢神経系に自身を溶け込ませ始め、主として被験者の脳内及びその周りに蓄積します。この過程は通常、影響を受けた被験者に知覚されないまま進行しますが、微かにむず痒い感覚を覚えると明言する人々もいます。
- SCP-1921-A3は未知の組成物からなる、黒い、高粘度の液体です。SCP-1921-A3は当初、SCP-1921-A1の底部にある「道化師のミルク(Clown Milk)」というラベルが付けられた小型タンク内から発見されました。被験者がSCP-1921-A3原液のみを摂取すると、セロトニン1濃度が心停止を起こす度合いまで速やかに増加し、結果として決まって死に至ります。
- SCP-1921-B1はSCP-1921背面に取り付けられている、空気式の、自動演奏を行う32鍵のカリオペです。この楽器から生み出される音楽は並外れて大きな音というわけではありませんが、証言者たちは最大1.2kmまで遠く離れていてもSCP-1921-B1の音楽を聞くことができたと報告しています。内部にSCP-1921-B2のいずれかが取り付けられた状態で稼動されない限りは、この物体は他には異常な効果を示しません。
- SCP-1921-B2は11巻の穴の開いた巻紙です。そのうちの1巻がSCP-1921-B1に挿入された場合、紙に空いた穴の配列によってその楽器が曲を演奏できるようになります。SCP-1921-B2の各巻はそれぞれ異なる曲に対応しており、曲の名前が紙の最上部に印刷されています。SCP-1921-B2の多くには、曲の題名の真下に手書きの注釈が書かれています。
おおよそ1.2km以内にSCP-1921-A2を摂取した被験者がいる場合に、SCP-1921-B2がSCP-1921-B1を用いて演奏されるとどんなときでも、被験者の認識能力は特異なものに変化します。この効果の正確な性質は演奏される曲により変化します(補遺SCP-1921-B2参照)。
SCP-1921はペンシルバニア州██████にある使われていない催事会場において見つけられました。また類似の火による損傷を有する、多数の異常性の見られない工芸品も同時に見つけられました。他に回収された物品の中には、ペンキで描かれた「ハーマン・フラーの不気味サーカス」の広告看板がいくつかありました。財団の法医学チームは、大勢の人々が急いでこの場所を去り、また残さなければならなかったもの全ての焼却を試みた、と理屈付けました。また、同チームは財団職員が到着する前の4時間未満に火は燃え始めたということも断定しました。部分的に破壊されたサーカステントの中では、火により激しく損傷した6つの遺体が折り重なった状態で発見されました。調査は現在継続中です。
補遺SCP-1921-B2: 以下の表はSCP-1921-B2に関する既知の情報です。演奏される曲の題名、SCP-1921-A2を摂取した被験者に対する曲の効果、SCP-1921-B2に書かれている注釈がまとめられています。
番号 | 演奏される曲 | 効果 | 注釈 |
---|---|---|---|
B2-01 | The Skaters Waltz | 被験者は異常な現象を通常のことではないと考えられない。 | 「メイン」 |
B2-02 | When You're Smiling | 被験者はセロトニン及びドーパミンの濃度の増加を感じ取る。影響を受けた被験者はインタビュー時には、不愉快だと感じる話題に集中出来ないという症状を見せた。 | (注記:文章の代わりに雑なニコニコ顔の絵がある。) |
B2-03 | Officer of the Year | 被験者は他人の行動が違法であることを見抜くことが出来ない。 | 「マッポ用」 |
B2-04 | Doodle Dee Doo | 被験者の個人的な危機的状況を感じ取る能力が抑制される。 | 「万が一、誰かが察しちゃう場合に」 |
B2-05 | Walkin' Happy | 曲が演奏されている間、極度の陶酔状態が誘発される。しばしば影響を受けた被験者を行動不能にする。 | 「個人的な使用不可」 |
B2-06 | Hail! Hail! The Gang's All Here | SCP-1921-B1の効果範囲内にいる、影響を受けた全ての被験者が集合する。そのような被験者は最も明るい可視光源に集まることを好むことが実験から示されている。質問を受けたとき、被験者は自らの自由意思で集まったのだということを断固として主張するが、しばしばこの行動に理由を与えることが出来ない。 | 「ショータイムの前に」 |
B2-07 | American Patrol | 被験者はSCP-1921-A2を摂取していない人々を探し出し、説得して食べさせようとする。もし繰り返し断られれば、被験者は暴力行為に訴え、摂取を強要する。 | 「非常事態のみ」 |
B2-08 | For All and Forever | 被験者は急性セロトニン症候群に苦しめられる。発作、幻覚、重度の吐き気、下痢、嘔吐、平均42度の発熱等が起こる。症状の発現後における心停止までの3分間の間に、状態が悪化するにつれ、被験者は次第に快活な振る舞いを見せるようになる。 | 「最後の手段」 |
B2-09 | Comrades of the Legion | 不明:紙は無理矢理引き裂かれている。 | (なし) |
B2-10 | What D'Ya Mean You Lost Your Dog? | 注目すべき効果はなし。 | 「道化師たちをミルク搾りに備えさせる。」 |
B2-11 | Upside-Down Cake | 不明:紙は無理矢理引き裂かれ、重要な部分が紛失している。 | 「機が熟せばご演奏いたします。ご協力に感謝いたします。」 |
補遺: SCP-1921-B2-09(Comrades of the Legion)を機能する状態にまで復元するというリンドキスト博士(Dr. Lindquist)からの要望がO5司令部により承認されました。最初の復元を行って以来、実験SCP-1921-B2-09-14を除けば、Dクラス職員を用いた実験ではいかなる異常な性質も見出されませんでした。
<ビデオ記録開始>
[0:05] : リンドキスト博士はD-5271に対し実験手順について簡単な説明を行い始める。
[2:23] : D-5271がSCP-1921-A2を摂取する。
[5:30] : リンドキスト博士はSCP-1921-B1を稼動させる。次いでSCP-1921-B2-09が演奏され始める。
[6:12] : D-5271の行動には目立った変化は観察されない。
[7:03] : 突然SCP-1921-B1の全ての鍵盤が一斉に押下される。これにより、SCP-1921-B1はComrades of the LegionからEntrance of the Gladiatorsのダウンテンポアレンジに演奏を切り替える。SCP-1921-B2-09に関わる過去の実験では終始一貫してComrades of the Legionのみが演奏されていたため、リンドキスト博士は驚きの悲鳴を上げる。新しい曲が演奏されている間、SCP-1921-B1の穴の開いた巻紙を回転させる機構は動作していなかったことに注意しなければならない。
[7:24] : D-5271は曲のせいで頭が痛いと述べる。
[8:31] : D-5271の発言が記録される。「何てこった、俺は道化たちが大好きだ。」
[8:40] : D-5271は明らかに発作に苦しんでおり床に崩れ落ちる。
[10:36] : Entrance of the Gladiatorsが終了する。D-5271の発作が止み、曲の終了時に気絶する。SCP-1921-B1の巻紙がもう一度回り始め、Comrades of the Legionの演奏が中断されたところから再開される。
[11:32] : Comrades of the Legionが終了する。これ以上の異常な活動は観察されなかった。
<ビデオ記録終了>
注: D-5271は実験の後、18時間昏睡状態に陥っていた。目覚めた際、D-5721は自分が誰なのか覚えていないと主張し、胸部及び腹部に強い不快感を覚えると訴えた。追加実験並びに経過観察が30日の期間の間行われたのち、彼が過去に述べていたものを別とすれば、D-5721は特殊な性質や行動様式を示さなかったことが断定された。D-5721の解雇後に行われた解剖検査により、D-5721の腸管と筋組織の大部分にSCP-1921-A2が溶け込んでいたことが明らかになり、また胸腔内からは中身がキラキラと光り輝く紙で満たされる小さな風船が発見された。半分に4回折りたたまれた紙切れが光り輝く紙に包み込まれていた(文章記録参照)。以降の実験では、研究者達は実験SCP-1921-B2-09-14の結果を再現することができなかった。
文書記録: 以下はD-5721の内部から見つかった葉書に書かれていた手書きのメッセージの写しである。
表面 |
---|
分かった、確かに何かがおかしくなった。条件はなんだい?オレらはこんなの使わなきゃよかったのにな!!!あの珍妙な装置はまたぶっ壊れたのか?!
裏面 |
---|
追伸 オレらはこの場で腹空かせつつあるぜ、チャーリー(Charley)。