アイテム番号: SCP-1921-JP
オブジェクトクラス: Euclid

SCP-1921-JP
特別収容プロトコル
SCP-1921-JPはSCP-1921-JP-Aの生家の金庫に保管します。金庫への収納はSCP-1921-JP-A自身によって行われなければなりません。SCP-1921-JPの所有権は常にSCP-1921-JP-Aに属さなければならず、SCP-1921-JPの所有権を移すいかなる試みも、許可された実験を除き禁止されています。SCP-1921-JP-Aの生家には財団の警備員2名が常駐します。SCP-1921-JPとその所有権の保護のため、必要に応じた職能を有する職員がSCP-1921-JP-Aの生家に適時派遣されます。
SCP-1921-JP-Aはサイト-81██の標準ヒト型実体収容室に収容します。SCP-1921-JP-Aの健康状態を維持するために必要な食事、運動、カウンセリングを継続して提供してください。SCP-1921-JP-Aが求める物資や情報は、サイト管理者の事前承認のもとに提供することが認められています。

SCP-1921-JPとともに保存されていた手紙
説明
SCP-1921-JPは18世紀ごろに作られた木製の器とみられる工芸品です。正確な由来は不明であり、不明な複数の人物の血液が付着した痕跡があります。SCP-1921-JPの組成に異常な点はなく、通常の経年劣化を起こすことが確認されました。SCP-1921-JPは1通の手紙とともに保管されていましたが、この手紙にも異常性は見られませんでした。手紙の内容はSCP-1921-JPが1889年にはドイツ帝国にあったことと、当時からSCP-1921-JPの特異性が変化していないことを示唆しています。また手紙には一般にサンジェルマン伯爵として知られる人物への言及があり、インタビューの結果と合わせて調査が進められています。
SCP-1921-JPの特異性は、SCP-1921-JPの所有権を移そうとした場合に発生します。SCP-1921-JPの所有権を現在の所有者である人物(SCP-1921-JP-A)から他の人物または組織(SCP-1921-JP-B)に移動しようとした場合、SCP-1921-JP-Bは段階的な傷病または損失を発生させます。この被害は時間経過とともに深刻化し、最終的にはSCP-1921-JP-Bの死亡あるいは組織解体という結果をもたらします。この被害はSCP-1921-JPをSCP-1921-JP-Aに返却することでただちに停止します。この性質のため、SCP-1921-JP-Aは常にSCP-1921-JPの所有権を維持している必要があります。留意点として、SCP-1921-JPの収容はSCP-1921-JP-AがSCP-1921-JPを占有していると認められる状況と知識が構成しており、SCP-1921-JPとSCP-1921-JP-Aの距離や地理的要素は重要ではありません。
現在のSCP-1921-JP-Aは19██年生まれのフランス国籍女性、イヴェット・ジェルマン氏です。SCP-1921-JP-AはSCP-1921-JPを所有していても前述の損失を発生しません。SCP-1921-JP-Aとしての素養は実子に遺伝し、SCP-1921-JPの所有権はSCP-1921-JP-AとSCP-1921-JP-Aの子の間でのみ安全に移動が可能です。ただしSCP-1921-JP-AからSCP-1921-JP-Aではない親に所有権を移動することは安全ではありません。現在、SCP-1921-JP-Aは妊娠中です。SCP-1921-JP-Aの出産後、子は財団の保護下に置かれます。
補遺1921.1 インタビューログ:
インタビュアー: 天宮麗花博士(サイト-81██勤務、SCレベル4)
対象者: イヴェット・ジェルマン氏(SCP-1921-JP-A)
<記録開始>
天宮博士: どういう経緯であの器を手に入れたか説明していただけますか?
イヴェット氏: 母の遺品です。母も、祖母から受け継いだものだと言っていました。
天宮博士: お母さまの存命中に、器についてなにか説明を受けましたか?
イヴェット氏: けして手放してはならない、手放せば不幸になると、繰り返し教えられました。
天宮博士: 由来とか、逸話とかは伺っていませんか?
イヴェット氏: 古い先祖が、貴族の方から頂いたものだと伺っています。
天宮博士: 詳しくお願いいたします。
イヴェット氏: 昔、私の祖先は貴族に仕える職業だったそうです。たしか料理人?メイド?だったと思いますが、よく覚えていません。先祖はその貴族の方に非常によくされていて、長年の奉仕の感謝の印にと、名前とあの器をいただいたと伺っています。
天宮博士: 名前?
イヴェット氏: 姓です。ジェルマンという姓は、その貴族の方から頂いたものだそうです。
天宮博士: なるほど。ほかにはありますか?
イヴェット氏: いえ…私としては、それほどあのコップに歴史以外の価値があるとは思えないのですが、とにかく譲渡することができなくて…。母や祖母たちは、何度か他の方に譲ろうとしたそうですが、お渡しするたびに先方に酷い不幸があったそうで…結局、母たちの手元に戻ってきたそうです。私はその話を聞いて、なにやら怖くて、子供のころからずっと触れずにおりました。
天宮博士: あなたは正しかったと思いますよ。
イヴェット氏: 先生…あのコップは、いったい何なんでしょうか。
天宮博士: 我々も、それを調べているのです。何かわかったらお教えしますよ。
イヴェット氏: お願いします。…私もいつか、この子にあれを渡す日が来るのでしょうか。(対象は腹部に手を当てる)
天宮博士: そうかもしれません。
イヴェット氏: 先生、もうひとつ、お聞きしてもいいですか。私の記憶はいつ戻るのでしょうか。私、この子の父親が誰なのか、どうしても知りたいんです。昔のことはよく覚えているのに、この数年の記憶がないなんて、気持ち悪いんです。この子のためにも、どうしても思い出しておきたいんです。
天宮博士: そちらも、努力しています。
イヴェット氏: そうですよね…すみません。
天宮博士: いえ。構いませんよ。
イヴェット氏: あの…先生は…この子の父親が、私たちを愛していたと思いますか?この子の人生は祝福されるべきものでしょうか?
天宮博士: 私個人は、そう信じたいと思っています。
イヴェット氏: そうですよね。きっとそうです。だって私、この子がとっても愛しいんですから。
<記録終了>
注記: この文書には旧版が存在します。より古いリビジョンを閲覧する際はこちらをクリックしてください。