アイテム番号: SCP-1928
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 異常特性の偶発的な発現と損傷を防ぐため、SCP-1928は緩衝材を詰めた気密ケース内に収容してください。
このアーティファクトは研究セクター-09において、ボニフェイ一家に関する収集物の1つとして保管されます。SCP-1890、SCP-1896とのクロステストは、事件タイムズ・ユニオン(補遺2を参照)のさらなる調査が行われるまで中断されます。
説明: SCP-1928はバンジョーユーク (banjo uke) または"バンジョレレ" (banjolele) と称される楽器で、現存しない製造元により1920年代に大量生産されたモデルと同一です。
片手だけで弦を弾くかかき鳴らした際には、SCP-1928は異常性のない楽器と同等の音を発します。しかし、ヒト被験者が楽器のいずれかの部分に両手を触れると、被験者は演奏を強制されます。手に障害や欠損のある場合を除き、SCP-1928に影響された被験者は一貫して、様々なストラミングやフィンガーピッキングなどの演奏技法のスタイルに関して優れた技量と演奏速度を示します。
この強制的な演奏において可聴音は生成されません。被験者自身による観察と音声の録音では、被験者の息遣いと衣擦れの音のみが報告されました。
被験者はこの動きは不随意的なものであると述べますが、影響下にある被験者の表情と身振りからは、強く集中して物思いに耽っていることが示唆されます。SCP-1928の影響下にある被験者は視聴覚刺激に反応せず、他の個人がSCP-1928と物理的に接触した場合のみ完全な意識を取り戻します。
SCP-1890内から、特徴的な引っ掻き傷とヘッド部分の裏側に刻まれた「BON」の文字からSCP-1928と識別された6枚の写真が発見されています。この楽器は様々な人種と年齢の個人に保持されているか、価値のある他の所有物と共に陳列された状態で撮影されています。
補遺1:
██年10月12日、ヒト被験者を用いたSCP-1928の最初の実験が行われた時からちょうど7日後に第二の作用が観察されました。
ハート研究員の実験ノートからの抜粋:
██年10月12日
他の物品を封じ込め下に戻している時、SCP-1928が保護ケースの中で振動していることに研究助手の一人が気付いた。助手はこの異常を直ちに報告し、オブジェクトと接触しようとはしなかった。私は呼び出されてから5分以内に到着したが、もう振動は収まっていた。数秒後、SCP-1928の近くからバンジョーの演奏音が聞こえてきた。音はケースの中から篭った状態で聞こえてきたわけではなく、同等の楽器を演奏したのと同様の音量だった。
およそ60秒後、旋律に歌声が混じり始めた。歌声は、多くのアメリカ民謡に特徴的なシュプレヒシュティンメを思わせるスタイルだった。この「歌」は4分半ほど続いたが、助手も私も録音することはできなかった。興味深いことに、我々はどちらも歌の言語をアメリカ英語だと特定したが、歌詞の一部はおろか「歌」に含まれる単語1つでさえも思い出すことができなかった。SCP-1928は精査のために封じ込め下から取り出された。
██年10月14日
15:07、私と複数の助手、Dクラス被験者の観察下でこの現象は再び発生した。6名もの観察者がいたにもかかわらず、曲が突然終了した後には誰も歌詞を思い出すことができなかった。また、観察者の聞いた声は相互に著しく異なるものだった。数名は歌い手を成人男性と識別したが、年老いた男性、成人女性、子供と識別した者もいた。歌の旋律とスタイルに関する記憶は残っており、被験者は一致して「嘆き」やそれに類似した感覚を思い出した。
アナログ、デジタル、また[編集済]装置さえも用いて録音を試みたが、5分16秒間の静寂以外には何も記録されていなかった。
██年10月19日
この現象の3度目の発生(SCP-1928の3度目の実験の開始からちょうど7日後)の後、異常な音楽の発生時刻が実験の開始時に対応していることが明確になった。元の実験記録に記された時間に合わせ、4度目の実験の録画が異常な音楽の最初の音符と同時に再生されるように設定した。
弦楽器の演奏に熟練したレベル2研究員の観察により、録画内の被験者の動きと異常な音楽は完全に一致していることが確認された。
██年11月02日
この現象は月を跨いで10回観察され続けており、常に以前に行われた実験の日時、時間に対応している。
補遺2:
SCP-1928の第二の効果が観察されてからしばらくして、「ボニフェイ一家」に関するアーティファクトであるSCP-1928、SCP-1890、SCP-1896のクロステストが承認されました。これは、これらの物品から推測される歴史的関連性と異常特性に関してより多くの知見を得るために行われたものです。これらの実験の結果として、事件タイムズ・ユニオンにおいて述べられる文章と写真の改変が発生しました。
手順: SCP-1928は既に他の異常物品の作用を受けた被験者に手渡された。SCP-1890の異常作用を受けた被験者(急性相貌失認から脱しておらず、ボニフェイ一家の写真を詳細に思い出せる状態)はA群、SCP-1896の異常作用を受けた被験者(40分以上の接触に伴う知覚歪曲と幻覚を最近経験した状態)はB群、双方の異常作用を受けた被験者はC群と指定された。
結果: 3群の被験者は全てSCP-1928の強制力に影響されなかった。その代わりに、アーティファクトに両手を置いた被験者はオブジェクトに対して郷愁的な愛着を抱き、既視感を示した。
- A群の被験者は、SCP-1928を直ちに、疑問の余地なくSCP-1890内のアーティファクトとして認識し、それを一目見れたことに喜びを示した。7名の被験者のうち5名はこのアーティファクトを「一家のかわいいバンジョー」というフレーズで表現した。以前の知識にかかわらず、被験者はこのバンジョーユークに関する歴史と技術的特性に関する質問にある程度特異的な答えを返すことができた。各被験者は楽器の元の所有者を知っていると主張したが、どの被験者の答えも一致しなかった。アーティファクト自体に関しては、結婚祝い、多才な農家の手作り品、魔女との物々交換で得られた品、などの詳細な逸話が代わる代わる述べられた。
- B群の被験者は全てSCP-1928に既視感を抱いたが、なぜ、どこでそれを知ったのかについて答えることはできなかった。しかしA群の被験者と異なり、楽器の演奏経験のない被験者のみが集められていたにもかかわらず、演奏を試みるように促された(数例においては促さずとも)被験者はこの楽器を中から高レベルの技術で演奏した。以前にSCP-1928によって生成された音楽と異なり、この旋律はその場で聞くことができ、記録できるものだった。曲はアメリカの民謡と認識できるもので、「Idumea」、「O Death」、「Pretty Polly」、詩篇137篇の伝統的なアレンジなど全て1930年代以前のものだった。確認は不可能だが、歌の歌詞に見られる類似したテーマ、特に最も高頻度で演奏された詩篇137篇もしくは「Babylon」はアーティファクトの歴史といくらか関連している可能性がある。
- C群の被験者の反応は単にA、B群の反応を組み合わせたものではなく、被験者はSCP-1928に精通しているというより強い妄想を抱いた。被験者は自身をボニフェイ一家の子孫だと考えているようで、アーティファクトの歴史を説明する際に無意識の内に一人称を用いていた。以前の事例と同様に、これらの物語に同一のものはなかった。しかし言及された場所や人物の多くはSCP-1890内のメモに対応していた。C群の被験者に楽器を演奏するよう促すと、彼らは演奏だけでなく歌も歌い、さらには促されなくとも「ある古い一家の歌」を演奏することを頻繁に申し出た。しかし以前の実験と同様に、これらの歌は手作業または機械での記録が不可能だと判明した。どの研究者も被験者も歌の歌詞を思い出すことはできなかった。
改変された写真の複製。以前は何もない野原を写したものだった。
C群の被験者の実験中と実験終了後、複数の紙文書に異常な改変が観察されました。全ての文書は、被験者がSCP-1928の影響下で話すか演奏している間に実験室内または近くに存在したものです。これらの改変のほとんどは文中に「一家」や短いフレーズ("by the waters"、"please consider my age")が挿入されるもので、手書き文書と印刷された文書の双方に出現しました。
合計で18枚の改変された文書が回収され(詳細な一覧は添付ファイルを参照)、実験の終了によって異常な改変の拡散は収束したようです。
これらの回収された物品の内で最も注目すべきものは、██年1月10日付の地元のサン・センチネル紙です。C群の被験者の実験中、研究助手エヴァンスは新聞の文章と写真が、フロリダ最古の新聞の1つであるタイムズ・ユニオン紙の1920年代の版を反映したものに改変されるところを観測しました。
これらの改変は不完全で、紙面の個々のコラムや数枚のページにのみ及んでいました。スポーツコラムが数十年前の試合結果を報道するものとなる、政治記事が1928年当時のフロリダの地域的な関心を反映したものとなる、などです。しかし、写真と死亡欄には最も大きな改変が及んでいました。写真は1920年代の技術を反映するように改変されただけでなく、写真内のかつて空白だった空間には不明瞭な人の姿が出現していました。これらの人物の身元は特定されていません。死亡欄は拡張されて千名近くの名が載せられており、数名の名は互いに重なり合って印刷されていました。全ての個人の姓は「ボニフェイ」でした。
ページリビジョン: 7, 最終更新: 10 Jan 2021 16:26