クレジット
タイトル: SCP-1961-JP - 古戦場
著者: ©︎Ikkeby-V
作成年: 2017
アイテム番号: SCP-1961-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1961-JP-2からSCP-1961-JP-8は、それぞれのSCP-1961-JP-Aを取り除いた上で同一の低危険物収容ロッカー内に保管されます。SCP-1961-JP-1は宮田博士のオフィスに大型のガラスケースに入った状態で展示されており、セキュリティクリアランス1以上を持つ職員であれば、SCP-1961-JPの研究主任に許可を取った上で実験に使用することが可能です。すべてのSCP-1961-JP-Aは高レベル隔離書類保管室で保管されており、閲覧はサイト管理官が承認した職員にのみ許可されます。それ以外の職員がSCP-1961-JPの実験に従事する場合は、SCP-1961-JP-Aを基に財団が作成した説明書が必要に応じて提供されます。
説明: SCP-1961-JPは、「ウォーターライン」と呼ばれる形式の艦艇のプラスチックモデルキット(プラモデル)です。パッケージには「1/700 財団駆逐艦 SCPSコルグエフ」という商品名と██████社のロゴマークが描かれていますが、そのような艦船が財団に在籍したことはなく、また██████社がSCP-1961-JPを製造した事実も存在しません。
SCP-1961-JPの構成物品は基本的に通常のプラモデルと同様ですが、うち組立説明書(SCP-1961-JP-A)と組み立て時にSCP-1961-JP内に組み込む電池ボックスと一体化された装置(SCP-1961-JP-B)に異常性が存在します。SCP-1961-JPに使用されているプラスチックはSCP-1961-JPの収容当時には存在しない組成のもので、性質はおおむねPS樹脂に準じていますが、より耐衝撃性や弾力性に優れ、ABS樹脂に近い性質も併せ持っています。
組み立てられたSCP-1961-JPは、LR44型ボタン電池2個を電池ボックスに挿入した状態で水平面に置かれることによって、実際の艦艇のものを模倣した自律行動を行います。SCP-1961-JPの行動によって生じる各種現象は立体映像やプロジェクションマッピングに近い手段によって再現されたものであり、実体は存在せず、他の物体に影響を及ぼすこともありません。これらの異常性はSCP-1961-JP-Bの働きによって生じていると考えられていますが、その作動機構は不明です。SCP-1961-JP以外のプラモデルに組み込まれた場合、SCP-1961-JP-Bの異常性は発現しません。
条件 |
SCP-1961-JPの行動 |
干渉しない |
ランダムに針路や速度を変更しつつ水平面上を「航行」。針路上に水平面の縁や障害物が存在する場合、それらを自動的に回避する。十分な面積が存在しない場合は「航行」は行われない。 |
半径1 m以内に攻撃対象となる物体を配置 |
攻撃対象と判定した物体に対し艦載兵装を使用。攻撃は対象の表面に赤熱や爆発を生じさせる。現在までに攻撃対象とされたのは、兵器やKeter級オブジェクトの模型、要注意団体のマークをつけた物品など。 |
軽い衝撃を直接与える |
衝撃を与えられた箇所を「損傷」し、そこから黒煙を放出。数カ所に衝撃を受けた場合は「航行」を停止する。 |
水平面を傾斜させる |
傾斜させた方向へ滑降するが、滑降速度はSCP-1961-JPの質量などから予測されるものよりも遅く、実物の艦艇が同様の傾斜に遭遇しているかのように見える。 |
半径1 m以内に港湾施設の模型を配置 |
模型に隣接した位置で「航行」を停止。それ以前に衝撃を受けていた場合は「損傷箇所」の修復が行われる。 |
音声により行動を指示 |
指示された通りの行動を実行。艦橋の探照灯を用いてモールス信号による簡単な返信を行うこともある。ただし、「飛行せよ」といった艦艇には不可能な行動が指示された場合、「不可能」といった旨の返信のみを行う。 |
SCP-1961-JP-Aは閲覧した人物に対して精神影響を及ぼします。これはSCP-1961-JPとの一種の自己同一化を生じさせるもので、被曝露者は強固に「自分はSCP-1961-JPの乗員であり、SCP-1961-JPに乗艦している」と認識するとともに、現実の自分の感覚を失い、代わりにSCP-1961-JP乗員としての自分を疑似体感するようになります。疑似体感の内容はSCP-1961-JPの行動と連動しています。この精神影響の効果はSCP-1961-JP-A被曝露者が自発的に「SCP-1961-JPから退艦したい」と意識した時点で消滅するほか、クラス-B記憶処理によって除去することも可能です。異常性が拡散するリスクを考慮して、SCP-1961-JP-Aの閲覧には制限がかけられています。
SCP-1961-JPがモデルとしている艦艇(SCP-1961-JP-C)の艦容は最新鋭のステルス艦に類似していますが、既知のいかなる艦艇のものとも一致していません。SCP-1961-JP-Cの兵装には、高エネルギーレーザー兵器やレールガンといったSCP-1961-JPが収容された時点では実用化されていないものが含まれています。パッケージに描かれているSCP-1961-JP-Cには、標準財団マークと機動部隊タウ-11("缶切り")の識別マークが確認できます。
SCP-1961-JPは199█年に神奈川県██市█区の個人経営の模型店で8個が発見され、未開封の状態で財団に収容されました。収容当時は機密漏洩を除き異常性が確認できなかったため、AO-1961-JP-AHMIOASとしてAnomalousアイテムに分類されていました。その後、AO-1961-JP-AHMIOAS-1の組立実験中に、研究主任である宮田博士によって上述の異常性が確認されたため、200█年11月にSCP-1961-JP-1〜8へと再分類されました。
SCP-1961-JPの流通経路は判明していません。現在、新たなSCP-1961-JPの出現に備えて、全国の模型問屋ほかの監視が継続実施されています。
補遺1961-JP-01: サイト-81██管理官からの通達
AO-1961-JP-AHMIOAS-1組立実験における宮田博士からの実験経費の追加申請は受理されません。
組み立て後の異常性を確認するにはただ組み立てるだけで済むのに、なぜ普通の塗装のみに止まらず汚し塗装だのなんだのを施し、エッチングパーツとやらを用いてディティールアップする必要があるのですか?
こだわりたいなら自腹を切るように。
補遺1961-JP-02: 宮田博士からの通達
諸君から提案のあったSCP-1961-JPと他のオブジェクトとのクロステストの実施は許可されない。いくらSCP-1961-JPがSafeクラスオブジェクトの中でも安全な部類に入るとはいえ、これはオブジェクトである時点で玩具では――プラモデルではあるが――ないのだ。
まあ、私自身、SCP-1961-JPとSCP-389-JPの艦隊戦を見てみたくないわけではないんだがね。
補遺1961-JP-03: 宮田博士の意見書
AO-1961-JP-AHMIOASには、その出自を除いて異常性は存在しません。しかし、それが内包している情報は今後の財団の安全保障にとって重要なものであり、Anomalousアイテムに適用される保管体制では情報保全が不十分なものにならざるを得ないと考えます。よって、以下の措置の実行を提案するものであります。
・危険性を伴わず、収容が容易な人工異常性の付与によるSCPオブジェクトへの再分類。SCP-137、SCP-387、SCP-389-JPなどの研究成果が活用できるものと考えます。
・クリアランス3以下の職員に開示される情報においての、AO-1961-JP-AHMIOASの出自の編集。
・および、AO-1961-JP-AHMIOASの異常性の起源、AO-1961-JP-AHMIOAS-Aの異常性の存在などに関するカバーストーリーの付与。
・補遺などを用いた、AO-1961-JP-AHMIOASの非危険性の強調。
・上記4項の措置による、クリアランス3以下の職員の関心のAO-1961-JP-AHMIOAS本体への誘導。
・これまでにAO-1961-JP-AHMIOAS-Aを閲覧した、および今後閲覧する職員の一部へのクラス-B記憶処理の実施。
承認する。AO-1961-JP-AHMIOASは200█年11月をもってSCP-1961-JPへと再分類される。 - 日本支部理事"千鳥"
SCP-1961-JP-Aの異常性はSCP-1961-JP-Aを隔離するためのカバーストーリーであり、実際には存在しません。現在、SCP-1961-JP-Aの閲覧許可はセキュリティクリアランスレベル4の職員、および機動部隊ろ-12("魔窟住まい")のSCP-1961-JP再出現監視要員にのみ与えられています。
SCP-1961-JP-AにはSCP-1961-JPの組み立て方法などとともに、SCP-1961-JP-Cの「実艦解説」が書かれています。それによると、SCP-1961-JP-Cは20██年から21██年にかけて財団海上部隊で運用される「コルグエフ級駆逐艦」の一番艦であり、コルグエフ級の各艦は財団が経験した大規模戦闘の戦場の名を艦名としているとされています。SCP-1961-JP-Aには、SCP-1961-JP-Cが参加した複数の戦闘に関する簡潔な記述も存在しており、うち█つの戦闘はSCP-████、████-JP、█████の収容違反に関連するとされるものです。
SCP-1961-JP-Aには「©███████ 21██ MADE IN JAPAN」との表記があり、SCP-1961-JPの出自を示す有力な情報であると見なされています。SCP-1961-JP群が199█年に出現した原因は不明です。
また、SCP-1961-JP-Aには、コルグエフ級に属する艦の総覧が記載されています。
艦名 |
由来となった地名(財団による推定) |
SCPSコルグエフ |
ロシア連邦に属するバレンツ海のコルグエフ島です。1920年代に勃発した「財団内戦」において、財団体制派が勝利した「コルグエフ島の戦い」が行われました。 |
SCPSザッケンブルグ |
デンマーク王国のグリーンランド東部に位置するザッケンブルグ山です。SCP-1968が存在します。 |
SCPSグーチャン |
中華人民共和国の湖南省湘西州に属する古丈県です。SCP-2748が存在します。 |
SCPSオノゴロ・ジマ |
[データ削除]。194█年にSCP-████-JP-█と財団の間で戦闘が発生しました。 |
SCPSプロヴィデンス |
アメリカ合衆国のロードアイランド州に存在するプロヴィデンス市です。現時点では財団が関与する戦闘は発生しておらず、異常存在も確認されていません。 |
SCPSルブアルハリ |
アラビア半島南部に位置するルブアルハリ砂漠です。オマーン領内にSCP-557が存在します。 |
SCPSアークティック |
北極または北極圏です。SCP-902やSCP-2675などの複数のオブジェクトが存在しています。 |
SCPSホイア |
ルーマニアのトランシルヴァニア地方に位置するホイア森林です。SCP-2191が存在します。 |
SCPSナルト |
日本の兵庫県・徳島県間に存在する鳴門海峡です。海底にSCP-477-JPが存在します。 |
SCPSエイヤフィヤトラヨークトル |
アイスランド共和国南部に存在するエイヤフィヤトラヨークトル氷冠です。SCP-1262が存在していました。 |
SCPSノイシュタット |
ドイツ連邦共和国に同名の街が複数存在します。そのいずれにおいても、現時点では財団が関与する戦闘は発生しておらず、異常存在も確認されていません。 |
SCPSバイカル |
ロシア連邦のシベリア連邦管区に位置するバイカル湖です。湖畔にSCP-610の感染区域が存在します。 |
SCPSケーン |
北大西洋の海底に存在するケーン断裂帯です。近傍にSCP-2846-Cが存在します。 |
SCPSイエローストーン |
[データ削除] |
2010年4月に財団が行ったSCP-1262に対する攻撃作戦と、2019年1月に発生した財団および要注意団体「壊れた神の教会」とSCP-610の間での大規模戦闘を受けて、SCP-1961-JP-Aが今後発生する大規模戦闘の予言として機能しうることが確実視されるようになりました。これは、オブジェクトの深刻な収容違反を初めとする財団にとって憂慮すべき事態が、21██年までに複数回発生することを示唆しています。現在、それらのインシデントへの対策が準備されていますが、SCP-1961-JP-Aの内容からそれらの詳細を伺い知ることはできないため、作業は難航しています。
補遺1961-JP-04: 宮田博士のメモ
SCP-1961-JPから垣間見える断片的な未来は、単に財団が多くの危機に直面することのみを示しているわけではない。SCP-1961-JPを販売することになるのは、未知の企業でも要注意団体でもない。今も存在するいたって普通のプラモデルメーカーなのだ。これが発売された21██年では、財団はいったいどうなっているんだ?
まあ、21██年の人類にもプラモデルを組み立てられるだけの暇はあるようだ。今の私のようにね。