SCP-1984-JP
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本当は沖縄だけど許して.jpg

SCP-1984-JP

アイテム番号: SCP-1984-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1984-JPの周囲50mをカバーストーリー「波浪の侵食による崩落の危険性」に基づき一般人の立ち入りを禁止してください。一般人が立ち入った際には直ちに確保、Cクラス記憶処理を施した上で解放してください。SCP-1984-JP-1個体に接触した人員は全て喪失したものと見なし、回収は行われません。

説明: SCP-1984-JPは北海道██町海岸に存在する崖です。SCP-1984-JP周辺での観光客及び現地住民の不自然な消失及び自殺の多発が財団の注意を引いたことにより調査の後、収容に至りました。

SCP-1984-JPの上に人間が立つとその人間の背後に退路を絶つようにして最多で2体のSCP-1984-JP-1個体が出現します。SCP-1984-JP-1は人型実体であり、外見は一般的な日本人と同一に見えます。SCP-1984-JP-1は自身のことを『刑事』『探偵』等と名乗ります。

崖の上の暴露者(以降はSCP-1984-JP-2とする)以外の第三者に対してSCP-1984-JP-1は一切の関心を示す素振りを見せません。第三者がSCP-1984-JP-1に物理的な接触及び妨害をする試み、及びSCP-1984-JP-1出現後にSCP-1984-JP-2をSCP-1984-JP外に連れ出す試みは全て失敗しています。

SCP-1984-JP-1はSCP-1984-JP-2に重犯罪歴があった場合はその犯罪を、ない場合にはSCP-1984-JP-2が犯したとされる架空の重犯罪についてその動機、方法等を詳しく解説し、犯人として弾劾します。この場合、SCP-1984-JP-2は途中欺偽や反論を行うものの、最終的に犯罪歴の有無に関わらず自身が犯したとされる犯罪を受け入れます。

SCP-1984-JP-1はその後SCP-1984-JP-2を最寄りの警察署もしくは交番に連行する旨を伝え、SCP-1984-JP-1、2はその場から共に消失します。消失した人間が再発見された事例は現在のところ確認されていません。 実験記録及び補遺2を参照してください。

実験記録 001

対象: D-17629 (対象は殺人、放火の罪に問われていた。)
方法: D-17629にSCP-1984-JPに立つよう命じる。SCP-1984-JPから30m離れたところに機動部隊ろ-3 (命綱)を配置。10秒後、1体の男性型SCP-1984-JP-1が出現。


<SCP-1984-JP-1が出現、記録を開始>

D-17629: アンタはあの時のバーテンダーか。こんなところで会うなんて奇遇だな。

SCP-1984-JP-1: (笑いながら)どうも███さん1、お久し振りです。██2です。実は私、しがない探偵業もやっておりまして、ええ、いわゆる兼業探偵って奴です。それで……あの事件3の犯人の手がかりが得られたのでお伝えしようと。

D-17629: 犯人?ついに気が狂いましたか?妻と息子は事故死だ。そして私が出ていった後に火災は起きた。時限発火装置だの意図的なガス漏れだのもない。アンタがやってるのは二人に対する冒涜だ。だいたい一体どうやって犯人が火災を起こせたというんです?

SCP-1984-JP-1: まさしく貴方が今おっしゃった通りですよ。いや、でも貴方には敬意を表しますよ。私もかなり騙された。まさかアレをああして使うとは……いやはや勉強になった。

D-17629: アンタが何を言っているのか全く理解できない。

SCP-1984-JP-1: (溜め息をついて)はぁ、貴方も面白味の無い人だ… まあいい、それじゃあ解説するとしましょう。現場付近には焦げた練炭と新聞紙が落ちてました。あの日は暑くて快晴、おまけに空気が乾燥していた。『バーベキュー』にはもってこいだ。

D-17629: 私が出ていってから人は家に入り込んでいないことは監視カメラでわかっている。それに練炭なら一酸化炭素中毒とかでしょう?警察の調査では一酸化炭素は殆ど無かったし、焼死にはならないはずだ。不毛な「探偵ごっこ」はもう止めて帰ってくれませんかね?

SCP-1984-JP-1:貴方が聡明で助かります。じゃあもう可能性は一つに絞られたじゃないですか。犯人は貴方ですよ。

D-17629: とするとアンタは相当バカか、記憶力がないか、あるいはその両方に違いない。アンタ、俺が警官相手に何度も繰り返したアリバイを覚えてないの?

SCP-1984-JP-1: ところで、貴方が警察に主張していたアリバイは、「火災の起きた午後6時34分、貴方がコンビニでジュースを買っていた」というものですよね?

D-17629: (語気を荒げながら)ええ、それがどうかしました?こっちは警察にはレシートだって見せましたし、レジにいた店員も私を見たって証言してましたよね?それに何か間違いでも有ったっていうんです?

SCP-1984-JP-1: いやいや、私は何も貴方の行動にケチをつける気は毛頭ありませんよ。問題は、さっきの練炭と貴方のその『アリバイ』を組み合わせるとアリバイとして成り立たなくなるっていう点ですかねぇ。

SCP-1984-JP-1: 知っているとは思いますけど、一酸化炭素って燃えるんですよ。それもなまじっかなガスなんかより余程。爆発すると言ってもいい。犯人は練炭をキッチンに放置した後、窓際にレンズを組み合わせた簡易発火装置を置き、レンズの焦点を練炭に合わせてコンビニに行った。練炭に火がついて周囲の一酸化炭素濃度が一定まで高まれば後は自動で燃え広がり、後は2階で寝てる奥さんと息子さんはローストなり、ベイクドなりになるっていう筋書きだ。火が万が一消えても太陽光が自動的に再び着火してくれるから失敗の恐れも少ない。レンズは爆発で窓のガラスと紛れるだろうし、一酸化炭素は完全燃焼して二酸化炭素になる。警察はガス爆発による不幸な事故として片付けるっていう寸法ですよ。4

D-17629: でも証拠がないじゃないですか。警察だって言ってました。「これは不幸な事故です」って。

SCP-1984-JP-1: ハッハッハッ、彼等は騙せても私は騙せませんよ。証拠に関しては窓ガラスの破片が決定的な証拠になりましたねぇ。普通の都市ガス等ではどうしてもあの家の大きさだと不完全燃焼になり窓の破片に煤や水滴がつく。最初は水素も考えましたがそれではあの二酸化炭素濃度が説明できない。
次何か爆発させたいときは覚えておくんですな、まあ貴方に次があるとは思えないが。後は窓ガラスの破片の中からレンズの破片を見つければ……Quod Erat Demonstrandum!証明終了……というわけです。

D-17629: 臭いセリフ吐きやがって、こっちに殺す理由はない。俺は妻と息子を愛していたんだ。殺せるはずがない。

SCP-1984-JP-1: やれやれ、もうチェックメイトだっていうのに貴方も意地汚い真似をするものだ……動機なんてそんな重要じゃありませんよ。犯行が可能だったのは貴方だけなんですから。強いていうならば奥さんには浪費癖とかなりの借金があって、息子さんと奥さんには多額の保険金が懸けられていた。金への欲望が2人への愛情を上回った、それだけです。資本主義社会に住む者として至極全うな判断です。軽蔑するほど僕は人間が出来ていませんよ。

(D-17629はうなだれ、沈黙を続ける)

SCP-1984-JP-1: どうやら反論はないようだ。最寄りの警察署までご一緒しますよ。


D-17629はゆっくりと俯きながらSCP-1984-JP-1に歩みより、SCP-1984-JP-1と共に消失。D-17629に装着していたGPSの信号は途絶したことが確認された。

実験記録 002

対象: D-18860 (対象は自殺未遂者であり、犯罪歴は無し。)
方法: D-18860にSCP-1984-JPに立つよう命じ、D-18860から30m離れたところに機動部隊ろ-3 (命綱)を配置。10秒後、女性型と男性型SCP-1984-JP-1がそれぞれ1体づつ出現。女性型をSCP-1984-JP-1-α、男性型をSCP-1984-JP-1-βとして分類。SCP-1984-JP-1-βはD-17629と顔及び身体的特徴が合致していることが確認された。


SCP-1984-JP-1-α: こんにちは、██5さん、北海道警察刑事部捜査第一課の██6と申します。

SCP-1984-JP-1-β: 同じく、刑事部捜査第一課の███7です。今日は██さんにお話があって参りました。少しお時間頂けますか?

D-18860: (少し怯えた声で)はい、それで話しとは一体?

SCP-1984-JP-1-α: この前の殺人についてですよ8。あれ、犯人がわかったのでご報告にと。

D-18860: (困惑した声で)はあ、それでそれが私になんの関係があるんです?

SCP-1984-JP-1-β: 関係大有りですよ。なんてったって犯人、貴女なんですから。

D-18860: (驚いた声で) へ?いったい何を仰るかと思えば、私が犯人ですって?

SCP-1984-JP-1-α: お互い芝居は無しにしましょう。貴女は被害者の██9さんに長年の間多額の金銭を渡していたことは裏付けが取れています。

D-18860: ただお金を少し貸してただけよ、返してもらえる約束もしてたし…

SCP-1984-JP-1-β: で、実際に██さんにはそのお金、返して貰ったんですか?見ると5年もの間毎月数万円単位で『お貸し』していたようですが?10██さんにはギャンブル癖もあったし、借金もあった。そんな中で彼が貴女にお金を返せるとは思えないんですけどねぇ?

SCP-1984-JP-1-α: そんな中貴女にお金を返してもらえるチャンスが巡ってきた。██さんは海外のカジノでジャックポットを当ててたんです。こちらでは全く報道されはしませんでしたが、向こうでは18年ぶりの高額当選だとか。税金やなんやらで幾らか差っ引かれるとはいえ、██さんは一夜にして大富豪になったわけです。

SCP-1984-JP-1-β: 貴女はそれを共通の友人██11さんから何気無い日常会話を装って聞き出し、██さんに借金を返してくれるよう頼みに彼のアパートに向かった。

D-18860: 部屋には確かに行きました。それがどうしたって言うんです?

SCP-1984-JP-1-β: 家を訪ねたのが10時半、貴女が彼の家を出たのが12時半、██さんが頭部への衝撃で死亡したのが13時以降ですね。お金の催促に1時間もかかったとは思えない。何があそこであったんでしょうねぇ?

D-18860: それは、その…いろいろあったのよ‼貴方達には関係無いでしょう⁉

SCP-1984-JP-1-α: 貴女は██さんと決裂し、恐らくは衝動的に彼の頭を手近な物、恐らくは持っていた鞄か何かで強く殴ったのでしょう。運悪く金具が変なところに当たったのかはわかりませんが、██さんは昏倒し、それを見た貴女はパニックに陥った。

D-18860: ちょっと!推測で物を言わないで頂戴!証拠を伴わない推理は妄言と同じよ‼

SCP-1984-JP-1-β: そこで貴女は咄嗟に██がまだ生きているかどうかを恐らくは確かめた後、殺すことを決意した。いや~女性って本当に怖いですね~?██警部殿もそう思いません?

SCP-1984-JP-1-α: 貴方は少し黙っていて下さい。後、その発言は男女差別的です。帰ったら覚悟してくださいね。それで貴女は鞄の傷口と本棚の角が一致するよう調整してから一回彼の家を出て裏手に回り、ある程度の時間が経ってから本棚につけた紐かロープを使って本棚を彼の頭の上に倒した…というわけです。

D-18860: そんなこと出来るわけ無いじゃない。私の腕力であの本棚を落とすばかりか位置を調整する?バカなこと言わないでよ。そんなの無理って誰にだってわかるじゃない。

SCP-1984-JP-1-β: この人凄いんですよ、そこもちゃんと考えて、何回も実験してみたんですよ。ここまで行動力ある人ってなかなか居ませんよねぇ…どう思います?

SCP-1984-JP-1-α: だから貴方は黙っていなさいと言ったでしょう‼(咳払いをしながら) あの本棚の重さの大半は本です。貴女は一度すべての本を出してから、本棚にロープを結び付け、落ちる位置を調整しました。それから本をもとに戻し、落ちないようにテープで固定した後、倒れたままの██さんに再び本棚を倒し殺害、中に戻ってテープとロープを回収し、裏から人目につかないようにその場を去った…というわけです。

D-18860: (狼狽えながら)そ、そんなの全部アンタ達の推測じゃない。しょ…証拠を出しなさいよ。

SCP-1984-JP-1-β: ありますよ、証拠。

D-18860: (呆気にとられた声で) へ?

SCP-1984-JP-1-α: 貴女が本棚を微調整する際に床についた擦り傷、本の背表紙についたテープの糊の跡、本棚に結び付けられたロープの繊維が本棚と窓から、それぞれ発見されています。後は貴女の持ってるその鞄から血液の反応が出ればまあ間違いなく貴女は犯人だと分かりますね。ただ、1つ分からないことがあります。何故金を回収しようとはしなかったんですか?やろうと思えば物盗りの犯行に偽装も出来たでしょうに。

D-18860: (その場に泣き崩れる) あの人を愛していたのよ…結婚まで考えてた…お腹には彼の子も居たし12…話せば分かってくれると思ってた…お金なんて要らなかったのよ…。
なのに彼は私のことを『借金取りの娼婦』扱いして…全部遊びで…あまつさえ「中絶費用位は出してやる」なんて言って…その瞬間、頭が真っ白になって…気がついたら…。

SCP-1984-JP-1-α: (激昂しながら)それは言い訳です。貴女は自分のことを大事にしていない。自分のことを大事にするどころか自分の子どものことをすら大事に思っていない。貴女はあの瞬間、鞄を降り下ろした瞬間ではなく彼を殺そうと考えたその瞬間、自ら自分の進む道を閉ざしてしまったのです‼。貴女は自身の罪を隠そうとして殺人という永久に取り返しのつかないことを犯してしまった。ですが、まだ僅かですが、罪を償うチャンスはあります。我々に同行していただけますね?

D-18860: (涙ぐみながら)はい。


D-18860はSCP-1984-JP-1-αに歩みよった後、手錠をかけられ、SCP-1984-JP-1-α個体及びβ個体と共に消失。D-18860に装着していたGPSの信号は途絶したことが確認された。

補遺1: 以下は篠崎研究員によるメモの一部です。

この2つの映像記録にはおかしな点が多々見られる。
まず、第一に実際の犯行に基づいていたD-17629の場合はともかく、D-18860の実験時点で彼女は一切の犯罪を起こしては居なかった。にもかかわらず彼女は架空の犯行の実行を否定することはあっても犯罪そのものを否定することはなく、最終的にはまるで自分が行ったがごとく自白していた。

第二にこの2つのデータファイルは機動部隊隊員の保持していた記録用ビデオカメラから回収したものだが、撮影されていたはずの角度では写り得ないものが写っている。SCP-1984-JP-1個体はどちらの実験でも機動部隊とD-クラス職員の間に出現したため、本来であれば後頭部ないし横顔しか映像には写らないはずだが、実際の記録映像ではSCP-1984-JP-1の顔のズーム映像はおろかSCP-1984-JP上からの俯瞰的映像など様々な『有り得ない』カットが紛れ込んでいる。

第三に、Dクラス職員はどちらもSCP-1984-JP-1個体と共に消失し、現在までも行方不明だが、実際の実験では、機動部隊はSCP-1984-JP-1個体に対し、Dクラスの連行を阻止する目的で実弾での直接銃撃を行った。しかし、実験記録では先程書いたように本来では有り得ない機動部隊を視野角に入れたカットもあったにも関わらず、銃撃の記録及び機動部隊の存在は確認されていない。

SCP-1984-JPでは一体何が起こっているのだろうか?

補遺2: D-18860を用いた実験の3週間後の20██/██/██に██系列のサスペンス番組の内容が急遽変更される事態が起こりました。変更後の番組の主人公はD-17629及びD-18860に酷似しており13、およそ2時間の放送の後のエンドロールにて、該当Dクラス職員2名の本名と『撮影特別協力: SCP財団日本支部』の文字が財団のロゴマークと共に出現しました。
財団日本支部はこの事態の発生を受けて急遽放映地域の住民全員にクラスB記憶処理を施すと共に、放送局を調査しましたが、具体的な放送変更の事実確認はできませんでした。
事態終息後の20██/██/██にSCP-1984-JPのオブジェクトクラスはEuclidに引き上げられました。

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