SCP-1985-JP
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アイテム番号: SCP-1985-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-1985-JPは現在、サイト-8185の標準的人型チャンバーに収容されています。SCP-1985-JPに対してサイト外部の時事情報を与えることは認められず、収容施設内へのあらゆる情報機器の持ち込みを禁止します。 事件SCP-1985-JP-01の発生によりオブジェクトの死亡が確認され、遺体は冷凍保存されています。詳細は事件記録SCP-1985-JP-1を参照して下さい。

SCP-1985-JPを発見したきっかけとなった殺人事件についてはカバーストーリー「誤認逮捕」を適用して被害者の事故死と、SCP-1985-JPに対する冤罪を装い、過剰なメディア報道とインターネット上の情報拡散を防いで下さい。それ以外にSCP-1985-JPが引き起こしたと思われる複数の殺人事件については、適切なカバーストーリーを用意しそれぞれのケースに応じて対応して下さい。

説明: SCP-1985-JPは過去に犯行を起こした複数の殺人犯の記憶を持つ二十代前半の日本人男性です。その異常性は20██年6月██日に東京都██区において発生した殺人事件の容疑者として、SCP-1985-JPが警察に取調べを受けたことで判明しました。

警察の取調べに対しSCP-1985-JPは容疑を認めました。さらに███件の殺害についても供述を始め、うち当該所轄内の█件の未解決事件において真犯人しか知り得ない殺害方法や死体の遺棄などを詳細に説明できたため再逮捕に至りました。

しかし、SCP-1985-JPが供述した内容には対象が生まれる以前や渡航歴のない外国の事案など、犯行が不可能と思われる供述が少なからず含まれていました。これらはどれも作り話と思えないほど明確に供述しており、その異常性と広範囲・長期間に渡る捜査の必要性のため、警視庁公安部特事課から財団に対し協力要請が打診され、SCP-1985-JPは異常性の調査のため███拘置所からサイト-8185へ移送されました。

警視庁公安部特事課との合同捜査の結果、SCP-1985-JPによる供述のうち93%が事実と一致しました。このことから対象の供述は現地警察による真犯人の捜索に役立つと考えられ、警視庁よりSCP-1985-JPの積極的な活用が提案されました。返答については保留中です。 SCP-1985-JPの死亡により見送られました。

インタビュー記録SCP-1985-JP-01 - 日付 20██/7/██

対象: SCP-1985-JP

インタビュアー: エージェント阿久津

<録音開始>

エージェント阿久津: これよりインタビューを実施します。SCP-1985-JP、まずはあなたが逮捕されたきっかけになった、██氏の殺害動機についてお話いただけますか?

SCP-1985-JP: あんたもしつこいなぁ……警察で何度も言ったろ。テレビでたまたま見かけて、知りもしないくせに偉そうにくっちゃべってるのがムカついたからだって。

エージェント阿久津: 確かに██氏の発言は過激で毒舌として知られていましたが、それはタレントとしてのキャラ付けのためでしょう。それ以外に何か理由があるのではないですか?

SCP-1985-JP: (ため息をついて3秒間沈黙)……あんたも考えたことあるだろ? 殺してやりたいほどムカついて、そいつがいなけりゃ世の中平和になるってさ。

エージェント阿久津: ……まぁ、そこまではいきませんけど、殴りたいと思ったことくらいなら。

SCP-1985-JP: だろ? だけどさ、警察は犯罪者じゃなけりゃ捕まえられない。悪どいブラック企業の社長も、レイシストの政治屋も、民間人を[編集済]した軍人も、そういった悪人がのさばってやがる。だから俺が正義の鉄槌を下したんだよ。

エージェント阿久津: その3名はあなたが殺害したと自供した人物でしたね。その件でもお聞きしたいことがあります。自供の中には、あなたが生まれる以前の事件など、明らかに不可能なものが含まれていました。それらの殺人をどの様に可能にしたのですか?

SCP-1985-JP: はぁ? そんなの知らねーよ。警察に話した通り、俺は俺がやったことをそのまま話しただけだからさ。それが過去とか外国のことだって言うなら、前世とか平行世界とかそういうのじゃね?

エージェント阿久津: ……ありがとうございます。質問は以上です。

<録音終了>

終了報告書: この後も数度インタビューが実施されましたが、SCP-1985-JPが自身の持つ異常性について認識している様子はありませんでした。現在、担当の美作博士により異常性の適用条件を判明させるため実験が計画されています。

SCP-1985-JPは稚拙な正義感の下に殺人を繰り返しており、殺害の事実をまるで武勇伝のように語っています。また対象が確実に犯したと言える殺人だけでも██件を数え、日本の司法に当て嵌めれば死刑は免れないことは言うまでないでしょう。対象をDクラス職員として雇用することを提案します。― エージェント阿久津

提案を却下します。財団は未だSCP-1985-JPの異常性を完全に解明したわけではありません。また対象の反社会的態度を鑑みて、財団の任務に就かせるには不適格と断言します。それが例えDクラス職員だとしてもです。― 美作博士

 
事件記録SCP-1985-JP-01
SCP-1985-JPに対する█度目のインタビューの最中、インタビュアーであったエージェント阿久津がSCP-1985-JPを襲撃し、隠し持っていた凶器で██回に渡って刺し続けました。

すぐに保安要員が駆けつけエージェント阿久津を捕縛し、SCP-1985-JPは医務室に送られましたが、搬送されて間もなく失血性ショックで死亡が確認されました。以下は事件直後、責任担当者であった美作博士による事情聴取の抜粋です。
 
事情聴取SCP-1985-JP-01 - 日付 20██/8/██

美作博士: 一体何から聞けばいいのか。私も混乱している。まずは何があったのか、ゆっくりでいいから聞かせてくれ。

エージェント阿久津: はい……。先日、私はSCP-1985-JPに関するネット上の書き込みの情報規制を行っておりました。被害者が著名人だったこともあり、その数は膨大で大半は見るに堪えないものでした。SCP-1985-JPに対する誹謗中傷に始まり、顔写真や居住地などの個人情報、それから対象が過去に行った数々の悪事……本当に見るに堪えない、理解し得ないものでした。

美作博士: しかし、ネット上の書き込みならAIが自動的に検閲と削除ができるのではないか?

エージェント阿久津: えぇ、仰る通り全てを確認する必要はありません。ですが、書き込んだ者の記憶処理が必要かどうかを判断するには、それらの不愉快な文章とも呼べない[編集済]を隅から隅まで読み込まねばなりません。インタビューの必要があるなら猶更です。それらを読み込む内に私の中にある感情が浮かんできました。

美作博士: それはどのようなものかね?

エージェント阿久津: 疑問と殺意でした。何故あの[編集済]野郎を保護しなければならないのか。あいつが死ぬことがこの世界のためじゃないのかと。

美作博士: あぁ、君の言い分は理解できる。SCP-1985-JPは身勝手な快楽殺人者だ。SCP-019-JPと同類とさえ言っていい。だがしかし、だ。終了処分は実験が終わってからでも遅くはない。君は財団の理念を……

エージェント阿久津: それじゃ駄目なんだよ! あいつは根っからの悪人だ。誰もがあいつなんて死ねばいいと思っていた。でもここは[編集済]なセキュリティを誇る財団のサイト内だ。誰もあいつを殺せない。あれだけの罪を犯しておきながら、この世界で最も安全な牢獄で暮らしている。研究が終わってからだって? それは明日か、明後日か、1週間後か、1年後か、10年後か、100年後か? それまであいつは生かされる。そんなこと誰も…

美作博士: 彼に鎮静剤を。後の事は私の処分も含め、O5の判断を仰ぐとしよう。

[直後、控えていた保安要員が注射した鎮静剤によりエージェント阿久津は沈黙し、事情聴取は終了しました。]

事件の後、重大な規約違反を犯したエージェント阿久津はDクラス職員に降格。美作博士も監督義務を問われ6ヶ月の謹慎処分が下されました。

また、SCP-1985-JPの死亡により異常性を確認することは不可能となり、オブジェクトクラスはNeutralizedに再分類されました。


付属資料:

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