SCP-2003-JP
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SCP-2003-JP


アイテム番号: SCP-2003-JP

オブジェクトクラス: Unknown Uncontained

脅威レベル:

特別収容プロトコル: 財団はSCP-2003-JPの世界的な隠蔽を行います。SCP-2003-JPに関する一切の情報はクリアランスレベル3/2003-JP以上を保有する人物にのみ開示されます。必要なクリアランスを保有しない人物がSCP-2003-JPおよび"バークレーのパラドクス"の存在を認知した場合は、当該の人物に対しCクラス記憶処理の実行もしくは後述する研究任務部隊への雇用・配属を行ってください。

説明: SCP-2003-JPはヒトゲノムの██番染色体が突然変異することによって発生した遺伝子LRBF1です。SCP-2003-JPは一般的な構造遺伝子と同様の物理的性質を持ち、遺伝子配列や組成物質自体に特異性は存在しません。
ゲノム中のLRBF遺伝子に該当する範囲はゲノム領域Lrbfと呼称し、LRBF遺伝子を保有しない人物のゲノム領域Lrbfを便宜的にSCP-2003-JP-0と呼称します。一般社会にはゲノム領域LrbfはジャンクDNA重要な意味を持たない領域であるとして隠蔽されています。

SCP-2003-JP-AはSCP-2003-JPを保有する人物です。科学的分析ではSCP-2003-JPの遺伝子構造等に一切の特異性が見られないにも関わらず、SCP-2003-JP-Aは無意識的かつ限定的な現実改変能力を有します。SCP-2003-JP-Aが自身への肯定感もしくは自身の責任を強く意識した場合、SCP-2003-JP-A自身の能力がごくわずかに上昇する現実改変が発生します。この時向上し得る能力は身体能力や思考力など多岐にわたります。またこれと同時に、SCP-2003-JP-A自身がその能力を発揮する機会もわずかに上昇するような現実改変が発生しているものと推測されています。SCP-2003-JPによる能力・機会上昇の発生頻度や向上幅は個体差が大きいものの、いずれの変化も才能や幸運と表現可能な範疇に留まります。

この現実改変は、SCP-2003-JP-Aが自身もしくはその強く帰属する集団2の生存・維持に関する問題に直面した場合に発現しやすい傾向があります。SCP-2003-JP-Aが帰属集団を統率する地位に近いほどより発現しやすいことが明らかになってます。

SCP-2003-JP-Aに直接もしくは間接的に接した人間は、SCP-2003-JP-Aがカリスマ的存在であると感じ、SCP-2003-JP-A自身およびその帰属する集団に対し肯定的評価を持ちやすい傾向にあります。この傾向もSCP-2003-JP-Aによる無意識的な現実改変によるものである可能性が指摘されており、現在研究が行われています。

ヒトゲノムの研究調査によって、ゲノムSCP-2003-JPを最初に獲得した人物が複数存在することが明らかになっています。このことからSCP-2003-JPのゲノム領域Lrbfは突然変異を起こしやすい特異性を持つと推測されています。現在までに█つの系統が確認されていますが、今後新たな系統が発見されるもしくは発生することが予測されています。いずれの系統についても過去3000年内に発生し、ヒトの交雑に伴いユーラシア大陸の上流階級を中心に広範に広がったものと考えられています。現在████万人のSCP-2003-JP-Aが存在すると推定されます。

その特異性および歴史的経緯から、より社会的地位の高い人物ほどSCP-2003-JPを保有している割合が高い傾向にあります。これは財団においても同一であり、SCP-2003-JPが発見された2003年時点でレベル4以上のクリアランス保持者のうち4割以上がSCP-2003-JP-Aでした。SCP-2003-JPがSCP-2003-JP-0に比べ適応的であることからSCP-2003-JP-Aの数は増加傾向にあり、将来的に全人類がSCP-2003-JP-Aとなることが予想されています。現在判明しているSCP-2003-JP-Aおよびその系統については文書SCP-2003-JP-86を参照してください。

SCP-2003-JPは2002年、当時のSCP-2003-JP(現在のSCP-2003-JP')に関する研究の中で発見されました。SCP-2003-JP'はバークレーのパラドクスの要因として存在が予想された未知の要素です。バークレーのパラドクスとは基礎現実論における矛盾であり、一般的な人物の平均ヒューム値の理論値が1.00±0.05/1.00±0.05であるのに対し、実測値が1.00±0.05/1.04±0.05となるというものです[1][2]。1968年に財団のバークレー博士によって提唱され、同時にSCP-2003-JP'の存在が予想されました。その後研究任務部隊RTF-B-30("論理的解消")による研究が行われ、2002年のLRBF遺伝子発見をもたらしました。LRBF遺伝子の発見に伴う再定義によって2003年4月14日SCP-2003-JPの指定対象が変更されました。これ以降旧来のSCP-2003-JPはSCP-2003-JP'と呼称され、LRBF遺伝子が新たなSCP-2003-JPに指定されました。

研究結果: 2020年2月1日

2014年から過去のヒト(Homo sapiens sapiens)におけるゲノム領域Lrbfの遺伝的調査が実施されました。これによりSCP-2003-JPに相当するゲノム領域がSCP-2003-JPの発生以前にもヒトの誕生以来少なくとも3回にわたって大きく変化していることが明らかになりました[3]。それぞれ約250,000年前、約75,000~70,000年前、約15,000~10,000年前に変異が発生し、その後人類内で急速に拡散していったとみられています3。過去のゲノム領域Lrbfを有するヒトの復元が行われましたが、どの個体もSCP-2003-JP-Aのような異常性は保有せず、現在の一般的なヒトと同等の現実性を示しました。
2017年10月にSCP-████から14体のヒューマノイドが出現しました。これらはSCP-████-57-1~-14に指定され、サイト██の標準人型実体収容チャンバーへと収容されました。その後のゲノム調査によってSCP-████⁻57群が約50,000年前のヒト(Homo sapiens sapiens)であると判明しました。また精密検査の過程で、SCP-████-57群の平均ヒューム値が1/0.893であることが明らかになりました[4]。またこの個体群の遺伝子を調査したところ、ゲノム領域Lrbfの遺伝情報はSCP-2003-JP-0βもしくはSCP-2003-JP-0γと一致しました。うち6体はSCP-2003-JP-0βを、8体はSCP-2003-JP-0γを保有しており、各集団ごとの平均ヒューム値は1/0.882、1/0.902でした。
解析したゲノム情報をもとに個体の複製を行ったところ、クローン個体の平均ヒューム値は予想に反しておよそ1/1程度でした。SCP-████-57群とクローン個体群に現実性の差がみられる要因については明らかになっていません。SCP-████-57群自体およびそれを構成する物質には一切の異常性が存在しませんでした。

SCP-████-57群におけるSCP-2003-JP-0βとSCP-2003-JP-0γとの関係は、現在のSCP-2003-JPとSCP-2003-JP-0の関係にあたるのではないだろうか。約50,000年前においてSCP-2003-JP-0γを保有する個体は現在のSCP-2003-JP-Aのような特異性を有しており、それが現代においては喪失されているものと推測される。各個体の現実性を鑑みて、ヒトの現実性は非常にゆるやかな増加傾向にあるとみられる。これらから、今日SCP-2003-JPすなわちLRBF遺伝子がSCP-2003-JP-Aに与えるのと同様の異常性が、過去のSCP-2003-JP-0Xによってその保有者へ与えられていたのではないかと予想する。
- ラインホルト研究員

研究結果2: 2029年1月29日

2027年、生存しているSCP-████-57群への精密検査が再度実行されました。現実性の計測には新たに開発された計数機が用いられました。収集されたデータを前回データとの比較したところ、すべての個体で個体ヒューム値がごくわずかに上昇していることが明らかになりました。
2023年5月、SCP-████-JPの探索中にエージェント・神舎利が突如消失し、3日後に再出現する事故が発生しました。エージェントが回収した資料及び時空系のひずみから、約120,000年前へ転移したものと考えられます。このときエージェントが操縦していた車両内のPA19小型カント計数機4には、転移先の平均環境ヒューム値が0.85Hmと記録されていました。エージェントは転移中に非異常な木片・岩石等を計17品回収しましたが、これらについても現実性が0.85Hm程度であるとの分析結果が出されました。
エージェント・神舎利の転移先が現実性の低い地点であったとの推測もされていましたが、研究チームは詳細な研究の末、同地点が約120,000年前においてごく一般的な環境であったとし、何らかの理由により約120,000年前は現在よりも現実性が低かったものと結論付けました。
回収された物品はその後2028年5月に再度計測が行われ、SCP-████-57群同様に現実性のごくわずかな上昇が観測されています。
これらの研究結果に基づき、ルーシー・ラング研究員らが世界的に現実性が緩やかな上昇傾向にあり、この現実性上昇とSCP-2003-JPを始めとしたゲノム領域LrbfによるHomo sapiens sapiensの現実性変化には正の相関関係があるとする仮説を提唱しました[5]。

1995年、故バークレー・スクラントン両博士によって非常に高い現実性を有する物質と非常に低い現実性を有する物質を相互作用させる実験が行われた。L. ラング博士の主張はこの実験で明らかになった現実性の緩やかな収束性を論拠としている。私も彼女の仮説を支持する。世界は次第に変わり難いものへ変化しつつあるのだろう。
現実性を数値化する際に用いられるヒューム値は、非異常な環境の現実性を1Hmとし、現実錨によって実現された近似値から推定される基準値をもとに計測される。つまり世界の現実性が変化してしまえば何も変化していない物質のヒューム現実値も変化しえる。すでに指摘されていたことではあるが、より精密な計測のためより絶対的な現実性基準の整定が必要だろう。
- ラインホルト研究主任

研究結果3: 2045年5月1日

2032年よりゲノム領域Lrbfの獲得をめぐる研究が開始されました。その結果、地球上に存在する/存在した殆どすべての生物がゲノム領域Lrbfに類似したゲノム情報を保有していることが明らかになりました。加えて、より「高等な」生物ほどこのゲノム情報がより複雑であり、遺伝子が発現した際の個体現実性がより高い傾向にあることが明らかになりました。ゲノム領域Lrbfによってもたらされうる、LRBF遺伝子(SCP-2003-JP)以外の遺伝子についてはlrbf遺伝子と呼称します。
現実論生物学的見地から、保有するlrbf遺伝子がその個体の個体現実性を規定するものと考えられます。現在発見されているlrbf遺伝子で保有者に対しSCP-2003-JP以上の現実性を与えるものは存在しません。理論上与えられる現実性が1以下のlrbf遺伝子の保有個体であっても、現在存在する個体はおよそ1の現実性を有していることが明らかになっています。この矛盾については、過去にルーシー・ラング研究主任が唱えた現実性変化に関する仮説から説明が可能です。
これらの研究をもとに提唱された仮説では、以下のように考えられています。lrbf遺伝子が発現した生物種がその特異性によって同時代の平均環境現実性よりも高い現実性を獲得した場合、その時代において支配的な生物種となる傾向にあります。その生物種によってごく小規模の現実改変が無数に反復されることによって、環境の現実性も緩やかに上昇していきます。最終的に支配的な生物種の現実性が環境の現実性と殆ど同一になるか、異なる生物種が突然変異等によってより高い現実性を与えるlrbf遺伝子を獲得することにより緩やかにSKクラスシナリオが発生することによって、先のlrbf遺伝子による特異性は喪失されます。

Homo sapiens sapiens以外の生物種がSCP-2003-JPより高い現実性を発生させるlrbf遺伝子を持つ可能性に対処する必要性がある。収容プロトコルを改訂しなくてはならない。

- エマニュエル・ラインホルト現実論部門長

補遺: O5評議会及び現実論部門長の協議の結果、収容プロトコルが改訂されました。新たに組織された調査任務部隊RTF-D-34("遺伝子分類学者")が高等生物を中心とした諸生物の遺伝情報を調査し、SCP-2003-JPよりも高い現実性を生じるlrbf遺伝子を有する生物の発見にあたります。

人類どころか今日の生物そのものさえもが、SCP-2003-JP的な現実改変の結果として存在するのかもしれない。その時その時で最も現実を都合よく改変できた種が、その時代の支配種となったということだろう。これは人間も同じはずだ。故にSCP-2003-JPよりも強いlrbf遺伝子が現れた時、人類の時代は終焉を迎えるだろう。

ただし、我々が必ず滅びゆく定めにあろうとも、財団は人類およびその盟友たる知的生命体を脅威から守るために尽力しなくてはならない。先人の犠牲を無為に帰すことはできない。それが我々の存在理由であり義務である。
- エマニュエル・ラインホルト現実論部門長




参考文献
1. "セクストス計数機を用いた現実性基準数値表の改訂", J. Berkeley et al.: Foundation, Vol. 86.11, pp.53-61, 1968
2. "現実性基準数量表改訂に伴う一般人物平均ヒューム値の理論値と実測値間における矛盾の発見", J. Berkeley et al.: Foundation, Vol. 86.11, pp.62-71, 1968
3. "LRBF遺伝子獲得の人類史", D. Lang et al.: Foundation Reality Theory Department, Vol. 34.6, pp.55-65, 2018
4. "SCP-████-57群の計測", E. Reinhold et al.: Foundation Reality Theory Department, Vol. 34.11, pp.24-28, 2018
5. "SCP-2003-JPおよび現実性に関する仮説", L. Lang et al.: Foundation Reality Theory Department, Vol. 44.11, pp.31-34, 2028
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