RAISAより通達
こちらがSCP-2010-JPエントリの本当の最新版(2008/06/09版)です。2002/03/14版のリビジョンとの差異は青色で示されています
アーカイブ済み手順書: 当リビジョン(2008/06/09版)の存在は秘匿され、表向きには2002/03/14版のリビジョンが最新版として扱われます。
特別収容プロトコル: SCP-2010-JPはエリア-8188にて半径20mの半球型の地下室に格納されます。SCP-2010-JPが使用されていない間、部屋内は真空状態に保たれます。SCP-2010-JP収容室の周囲には機動部隊か-20("ハヤブサ")の隊員が5名配置されます。SCP-2010-JPを使用する場合は半径12m以内に入らないように注意し、マニピュレーターを用いて遠隔で曝露対象を設置してください。当部屋は2週間1週間に1度メンテナンスされます。メンテナンス中はエリア-8188の一部空間が封鎖されますので、立ち入らないようにしてください。1週間に1度この土壌は交換され、使用済みの土壌は熱および化学的処理の後に再利用されます。土壌内に敵対的生物が存在していた場合は機動部隊か-20によって処分されます。
SCP-2010-JP-A群の内、SCP-2010-JP-A-1、-9、-20、-57は研究のためにエリア-8188に個別に収容されます。それ以外の個体、及び蓼科湖で新たに発見されたSCP-2010-JP-A個体は処分されます。
全てのSCP-2010-JP-B実例は解体され 、部品は安全のために1度融解されます。
説明: SCP-2010-JPは各幅が0.71m×2.84m×6.39m、重量が7160kgの石柱です。破壊耐性を有しているため、成分調査の試みは失敗しています。表面に幾何学的な模様が全体に渡って刻印されていることから人工物であるとの推測がされています。
SCP-2010-JPは半径約11m以内の空間のアキヴァ放射値を高め、1ヒューム場に影響を与えない現実改変を及ぼします。SCP-2010-JPの影響範囲内に存在する物質は生物か人工物である場合、それら以外である場合で異なる影響を受けます。
影響対象が生物や人工物の場合、対象には自己の生存、またはその用途を補助するよう、既存の能力の拡張や新たな形態的・機能的特徴の発現が起こります。影響対象がそれら以外の場合、対象内に有機物が生成されるようになり、段階が進むと微生物が確認されるようになります。
SCP-2010-JP-Aは長野県蓼科湖に生息していた、SCP-2010-JPの影響を回収以前に受けたと推測される異常な生物群であり、2001/06/26現在の時点で118個体が発見、収容されています。各SCP-2010-JP-A個体は独自の異常性を持っています。
以下はSCP-2010-JP-A個体の代表例です。番号 | 説明 |
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SCP-2010-JP-A-1 | エラビレの形が爬虫類の手に酷似したギンブナ(Carassius langsdorfii)。変化したエラビレを用いて獲物を攻撃することが判明しています。 |
SCP-2010-JP-A-9 | 全身に葉緑素を持ったオオクチバス(Micropterus salmoides)。いくつかのヒレがブラシ状に変化しており、水分を吸収することが判明しています。 |
SCP-2010-JP-A-20 | 種子を200km/hで射出するシラカバ(Betula platyphylla Sukaczev)。種子をより遠くに飛ばす効果があると考えられています。 |
SCP-2010-JP-A-57 | 脳が通常の3倍の大きさであるワカサギ(Hypomesus nipponensis)。その影響で頭部が肥大化しています。 |
SCP-2010-JP-A-98 | 環境への対抗を目的とした自己刷新機能を保持したコイ(Cyprinus carpio)。可視光に対するステルス機能や誘導弾の発射機構を保持しています。補遺2を参照 |
SCP-2010-JPは2001/06/13に蓼科湖にて釣りをしていた一般人から「明らかに生き物としておかしい魚がいる」と通報を受けたことで存在が発覚しました。その後、2001/07/04に機動部隊は-9("トレジャーダイバーズ")によって確保・収容されました。その際、SCP-2010-JPの運搬のためにSCP-2010-JP付近に長時間滞在していた機動部隊は-9メンバーの風炉隊員の下顎角にエラ構造が生成されていたことから異常性が判明しました。現時点では風炉隊員に形成されたエラ構造に生存に支障をきたす要素は確認されていません。
以下はSCP-2010-JPの実験記録です。
実験記録2010-JP-1
日付: 2001/07/11
対象: 実験用マウス(Mus musculus)
実験手順: SCP-2010-JPから5m離れた場所に実験用マウスを入れたケージを設置し、影響範囲外からカメラで記録する。
結果: 下記の表を参照。
経過時間 | 変化の詳細 |
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5分38秒 | マウスがしばしば二足歩行を行うようになる。後ろ足の発達が始まっているのも確認できる。 |
10分24秒 | マウスが常時的な二足歩行を行うようになる。後ろ足は二足歩行が出来るように変化している。 |
13分55秒 | 後ろ足の発達が終わる。筋肉量の増加が外見からも確認できる。 |
17分21秒 | 前足・胸部・腹部の発達が確認される。 |
23分15秒 | 前足・胸部・腹部の発達の終了が確認される。しばしば周囲を見渡している。 |
30分51秒 | マウスがケースを破壊する。現場監督によって捕獲命令が下される。 |
37分04秒 | 機動部隊員によって麻酔弾が数発撃たれる。一時的に活動が沈静化されるも、数分で再度活発化。SCP-2010-JPの影響で薬物への耐性を獲得したと推測。 |
40分06秒 | マウスの筋肉が急激な発達を開始、体が膨張し始める。 |
43分47秒 | マウスが体長凡そ1.1mまで膨張、SCP-2010-JPの運搬を試みているように受け取られる。 |
48分26秒 | 隊員を1人殴打した直後にマウスが倒れる。その後死亡が確認された。SCP-2010-JPに損傷は確認されず。 |
当マウスの解剖を行ったところ、死因は心臓への極端な負担であると推測されています。尚、マウスの心臓は一般的なものと差異はありませんでした。
実験記録2010-JP-2
日付: 2001/07/11
対象: スクラントン現実錨
実験手順: SCP-2010-JPから5m離れた場所に出力2.0Hmのスクラントン現実錨を設置し、一定時間ごとに取り出す。機能に変化があれば記録する。
結果: 下記の表を参照。
経過時間 | 変化の詳細 |
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10分00秒 | 出力が1.0Hmに変化。調査の結果、内部プログラムにのみ変化が確認された。 |
15分00秒 | 2.0Hmのサンプル資料を近づけたところ、サンプルの数値が1.0Hmに変化。遠ざけると数値が回復した。 |
25分00秒 | 2.0Hmのサンプル資料を近づけたところ、同じようにサンプルの数値が1.0Hmに変化。しかし、遠ざけても数値は回復しなかった。また、内部プログラムが半径2.0m内の空間、及び物体のヒューム値を1.0Hmに維持するように変化していた。サイト-81NN基盤科学部門によってSCP-2010-JP-Bの複製が行われたが、現在までに成功した例はない。更なる実験、及び現実改変者への対抗要素としての検証の優先度が高いと判断され、実験は1度中断された。尚、当スクラントン現実錨はSCP-2010-JP-B-1と指定。 |
実験記録2010-JP-3
日付: 2001/09/19
対象: スクラントン現実錨
実験手順: SCP-2010-JPから5m離れた場所に出力2.0Hmのスクラントン現実錨を25分間暴露させ、その効果を分析する。これを5回繰り返す。
結果: SCP-2010-JP-Bと同様の異常性を獲得。SCP-2010-JP-B-2~-6と指定。
実験記録2010-JP-4
日付: 2001/09/23
対象: スクラントン現実錨
実験手順: 実験記録2010-JP-2に同じ。
結果: 下記の表を参照。
経過時間 | 変化の詳細 |
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10分00秒 | 出力が1.0Hmに変化。調査の結果、内部プログラムにのみ変化が確認された。 |
15分00秒 | 2.0Hmのサンプル資料を近づけたところ、サンプルの数値が1.0Hmに変化。遠ざけると数値が回復した。 |
25分00秒 | 2.0Hmのサンプル資料を近づけたところ、同じようにサンプルの数値が1.0Hmに変化。しかし、遠ざけても数値は回復しなかった。また、内部プログラムが半径2.0m内の空間、及び物体のヒューム値を1.0Hmに維持するように変化していた。 |
38分55秒 | スクラントン現実錨が発光し、周囲の空間を歪める。カント計測器がヒューム値の急激な低下を記録。 |
39分42秒 | スクラントン現実錨が白色の異常空間に変化。後に当空間はSCP-1280-JPに酷似していることが指摘されている。カント計測器は1.0×10^-12Hmを記録。 |
42分26秒 | 周囲の職員が当日に生産していたSCP-2010-JP-B実体を異常空間に投入したところ、異常空間は消失。SCP-2010-JPに損傷は確認されず。 |
補遺1: SCP-2010-JP-B-1~-6は機動部隊か-3("カンピオーネ")にて使用されました。結果として、2001/08/01~2002/02/28までの試験運用の間に15例の敵対的現実改変者の無力化、確保に成功しました。
レポート2010-JP-2002/03/01
報告: 芽出博士
SCP-2010-JP-B群によって今まで長期間の戦闘を強いられた現実改変者の無力化、確保は容易になりました。加えて、既に収容している、現実改変を行ういくつかのオブジェクトにも有効であると考えられます。今回の功績、及び多数のKeterクラスオブジェクトの収容効率の向上の可能性を考えてオブジェクトクラスのThaumiel指定を申請します。
以上の申請は日本支部理事「若山」によって許可されました。
スクラントン現実錨の他にも、いくつかのパラテック技術に対するSCP-2010-JPの使用が計画されています。 補遺3参照
補遺2: 2003/01/04、清掃員からSCP-2010-JP-A-98の水槽に該当オブジェクトが収容されていないとの報告を受けたことで、SCP-2010-JP-A-98の収容違反が確認されました。その後、当日内に「エリア-8188のごみ捨て場に謎の怪物の死体がある」との報告があり、回収・調査した結果、遺伝子検査からSCP-2010-JP-A-98であると特定されました。SCP-2010-JP-A-98は発見当時、ヒトの手に似た前ビレ、歩行に若干適した後ろビレ、肥大化した目、鋭利でガラスの切断に適している歯、肺を持っていました。SCP-2010-JP-A-98は自己の重量によって陸で適切な呼吸を行えなかったがために死亡したと推測されています。
補遺3: 2007/10/20、機動部隊か-3が敵対的現実改変者との交戦していた最中、SCP-2010-JP-B-4が突然の発光、周囲の時空の歪曲を始め、SCP-1280-JPに似た異常空間へと変化しました。その際、ターゲットの現実改変者と機動部隊員1名が現実性の希釈によって消失、異常空間はSCP-2010-JP-Bを1機吸収して消失しました。以下のデータはその後、全てのSCP-2010-JP-Bに対する緊急メンテナンスを行った際の報告書です。
レポート2010-JP-2007/11/03
現在所在している全てのSCP-2010-JP-B実体を調べたところ、全実体が不備を抱えていたことが判明致しました。このエラーは従来のスクラントン現実錨に使われているアルゴリズムがSCP-2010-JP-Bの機能に適応しようと変化した際にできたもののようですが、このエラーを取り除くことはSCP-2010-JP-Bの機能停止に繋がることも今回の調査でわかりました。すなわち、以後、この改造品を使う場合は、暴走のリスクが必ず付随するということを留意してください。
以上の事案、及び過去の事例を鑑みて、SCP-2010-JP-Bの重要な欠陥、及び曝露による致命的な副作用を考慮し、SCP-2010-JPを用いた収容の効率化は不可能であると判断されてThaumiel指定は外され、その効果の影響速度や被害からオブジェクトクラスはKeterへと変更されました。
以上の結果を受け、SCP-2010-JPの効果によって発展したパラテック技術13種は見直しを受ける予定になっています。また、計140のオブジェクトの収容方法に対しても速やかな変更がされる予定です。
補遺4: 2007/11/30、蓼科湖にて機動部隊は-9がSCP-2010-JPに関する追加調査を行った所、蓼科湖の湖底から複数の人工物が発見されました。これらの人工物群には破壊耐性はなく、凡そ48万年前に製造されたことが判明しています。また、いくつかの人工物群には未確認の文字が刻印されていましたが、そのサンプルの多さから2008/02/17に解読に成功しました。その結果、SCP-2010-JPについて言及していると思しき文章が1つ発見されました。以下は該当文章になります。
私の書いたこの文章を発見したならば、あの石柱も共に見つけたのではなかろうか。もしも何か手段があるのであれば、あの石柱を壊せ。できないならば誰も影響を受けないように閉じ込めろ。さもなくば私達のような運命を辿ることになる。(横にSCP-2010-JPをデフォルメしたようなイラストが書かれている)
私達の文明はあの石柱によって繁栄したと言って良いだろう。私達がこの石柱を発見したのは祖先達が私達の大陸に辿り着いた時だった。一面見渡す限り何もない大陸の中で1ヶ所だけ草木が生えた場所があった。その中心に石柱はあった。祖先達はそこにあった木の実を食べた。
1時間もしないうちに彼らの体に異変が起こった。身体能力の上昇、飢えへの耐性が彼らに恵まれたのだ。調べてみると、石柱がこの恵みをもたらしていたのだと知った。彼らはその石柱を便利なものだと思い、力を合わせて様々な所へ運んだ。荒れ地だった大陸は次第に緑と水に覆われるようになった。
食べ物に恵まれるようになった後、先人達は道具として簡単な斧を作った。石柱に何かを期待したのか、ある1人がこの斧を石柱の前に置いた。すると斧はたちまち石の部分がナイフの形へと変化したではないか。また別の人が斧を置くと、今度は石を射つ銃になり、道具を置く度に様々な物が生まれた。人々は大いに驚いた。石柱を運び回したことで動物も大量に現れるようになった。祖先達は石柱から得た道具を使い、食べた。
50年たった頃には大陸中が大都市と化した。人々には不足と恐怖の概念はなかった。何時からだったか、石柱は人々によって神と崇められ、神殿の中心におかれた。皆は石柱を心から崇拝していた。石柱の周りで踊りが捧げられていた。
それからさらに50年くらい経った時、大きな地震が起きた。その影響で石柱のある神殿が倒壊してしまった。人々は神殿を建て直そうと壊れた石を取り除こうとしたが、小さな礫ですら10人でやっと運べた。どうやら、神殿の柱や床が石柱の周りに長い間あったことで次第に硬さが増し、その影響で重くなったようだった。この時から兆候はあったのに、我々は何も考えず建て直した。地震を恐れた我々は、石柱から得た技術を大量に使い、大陸を固定した。この時点で我々は引き返すべきであった。
地震から数年、大陸の固定装置が壊れた。石柱の恵みで進化したデンキウナギのせいのようだが、そんなことは最早誰も気にしていなかった。固定装置の故障が未だかつてない地震を引き起こした。全ての建物が倒壊した。大陸の人々はかつてあった脅威を恐れなくなった代償として非常に鈍足になってしまっていた。建物は彼らに覆い被さった。
悲劇は止まるところを知らず、地震のせいで山が噴火した。溶岩は大陸中を飲み込んだ。人々は動けないまま飲まれた。地震と噴火の重なりに耐えられなかったのだろう、大陸が急激な沈下を始めた。海に脱出することができた人々は突如荒れ狂う大陸や波に飲み込まれ、泳ぐこともできず力尽きた。
私は死に物狂いで泳いで北西にあるこの島に辿り着いたものの、私は孤独で、最早生きる意味などなかった。死のうかと思っていた時、海に見覚えのあるものを見つけた。あの石柱だった。こんな重いものが海流を乗ってやって来たことには不自然さを感じたがその事はどうでも良かった。この時に私は確信したのだ。進化や発展というのは種や文明の成長のみでなく、死すらももたらすということを。生命にとって年をとることと全く同じだということを。すなわち、石柱は私達に恵みをもたらしていたのではなく、死を早めさせていたのだった。私は人生最後の仕事としてこれを埋めることにした。
だから、もしも石柱を発見したのなら、絶対に関わらないでくれ。絶対に使おうとしないでくれ。あれは神の恵みなどではない。神は神でも死神なのだから。
私達の滅亡を無駄にしないでくれ。