アイテム番号: SCP-2011-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2011-JPはサイト-8110内に敷設された全長500mの周回道路に収容します。周回道路には財団フロント企業が運行する路線バスを設定し、週1本のダイヤでバスを運行してください。この際、乗客は必要ありません。
1日に1回、Dクラス職員が運転する乗用車10台で周回道路を走行し、SCP-2011-JPの出現を確認してください。運転するDクラス職員は、事前の感情傾向検査によってSCP-2011-JPの影響を受ける確率が0.5%以下であると認定された者を用いてください。1時間以内にSCP-2011-JPの出現が確認できなかった場合は収容違反の疑いがあります。SCP-2011-JPがサイト外で発見された場合はプロトコル“大渋滞”を実行して再収容してください。
説明: SCP-2011-JPは自転車に乗った人型実体です。その風貌は典型的な20~30代の日本人男性のように見え、発見当初から老化等の変化は観察されていません。服装は出現ごとに変化し、自転車やその他の付属物品も定期的に変化します。SCP-2011-JPと意思疎通をする試みは全て無視され、現在まで成功していません。
SCP-2011-JPは不定期に一定の範囲の道路上のランダムな位置に出現します。出現の頻度は道路が混雑しているほど高くなります。出現時SCP-2011-JPは車道の左端を自転車で走行しており、時速15~20km程度でそのまま走行し続けます。ある程度の距離1を走行した後、SCP-2011-JPは消滅します。
ほとんどの場合SCP-2011-JPの走行中の挙動は通常の人間と同様であり、駐車車両などの障害物を自然な動きで回避したり信号に従ったりすることが確認されています。出現及び消滅時は通行人の目に留まりにくい場所・タイミングを選択する傾向にあり、後述の異常性が発現しない限りは民間人からSCP-2011-JPが異常存在と気付かれることは稀です。実際、SCP-2011-JPが国道45号に出現していた時期の財団の記録によれば、SCP-2011-JPの出現の99.4%以上は財団による対処が不要でした。
地面以外の何らかの物体がSCP-2011-JPに接触した場合、その物体は短距離を瞬間的に移動し、SCP-2011-JPは接触による影響を一切受けません。財団の記録には、歩道から飛び出してSCP-2011-JPに接触した歩行者が歩道に戻された例や、SCP-2011-JPに後方から接触した乗用車が2.5m後方に移動させられた例などが記録されています。この異常性により、SCP-2011-JPを損傷させたり、発信機をSCP-2011-JPに装着したりする試みは失敗に終わっています。また、ガードレールなどの移動が困難な物体に接触した例はこれまでに無いため、そのような場合の挙動は未確認です。
SCP-2011-JPの主要な異常性は、SCP-2011-JPに対して怒りを覚えた者の怒りを増幅させる精神影響特性です。ほとんどの場合、この特性の影響を受けた者はSCP-2011-JPに対して強い憤りを感じ、それ以外の思考が困難になります。この状態は平均して15分間続き、その後怒りが収まることで異常性が終了します。SCP-2011-JPに対して特に強い怒りを覚えた者は、SCP-2011-JPを攻撃したり進行を妨害したりしようとします。前述の特性によりその試みは失敗しますが、この段階に達すると騒ぎが発生するため財団による対処が必要です。
この状態からさらに怒りが高じた者は性格が攻撃的になり、周囲の人間に対して暴力的な行動をとります。自転車に乗っている人は特に激しい攻撃の対象となります。現在のところこの段階に達した者が自然に落ち着いた例はありませんが、拘束・無力化ののちにAクラス記憶処理を行うことで異常性の影響を解除できます。
追記: インシデント2011-JP-076の発生により、SCP-2011-JPが転移能力を持つことが明らかになりました。長時間にわたって現在の出現範囲を車が走行しない場合、SCP-2011-JPは別の道路に転移する可能性があります。転移の発生確率は、約35時間車が走行しない場合に50%を超えると見積もられています。道路が転移先として選ばれる確率は、現在の位置から近いほど、また交通量が多いほど大きくなると推定されています。
収容経緯: 20██年3月以降、国道45号の███~███間において自転車と自動車の接触事故の報告件数が有意に上昇しているとのデータがデータ解析部門から報告され、特に自転車側の当事者が不明という事案が多いことが注目されました。エージェントによる該当地域の監視の結果、当該区間においてSCP-2011-JPが突然出現・消滅する現象が確認されました。
実験により、触れた物体を移動させる異常性は早期に判明しました。また、インシデント2011-JP-004の発生により精神影響特性の存在が明らかになりました。
インシデント2011-JP-004
発生日時: 20██/09/05 13:04
概要: 民間人である倉田正男氏が運転する乗用車がSCP-2011-JPに対して後方から6回接触し、その後ガードレールに衝突して停止した。駆けつけた財団エージェントが目撃者に対して記憶処理を行い、“単独事故”のカバーストーリーを適用した。倉田氏に対しては意識回復を待ってインタビューを行ったのち記憶処理を施した。
以下は監視カメラの記録と倉田氏の証言をもとに作成した時系列記録です。
13:02:49 SCP-2011-JPが出現し、車道の左端を走行。
13:04:29 SCP-2011-JPが駐車車両を避けて右の車線へ移動し、倉田氏の乗用車の前に出る。倉田氏は急ブレーキを踏みSCP-2011-JPとの接触を免れる。
13:04:33 倉田氏がクラクションを3回鳴らす。ほぼ同時にSCP-2011-JPは車道の左端に戻る。
13:04:36 倉田氏が左の車線に移動、加速し始める。このとき倉田氏はSCP-2011-JPに対する強い怒りを感じていた(倉田氏の証言によれば「ぶつけそうになった癖にこっちを見もしねえでのうのうと走ってやがるから、すげえ腹が立ってきて轢き殺してやろうと思った」)。
13:04:40 倉田氏の乗用車がSCP-2011-JPに後方から接触。同時に乗用車は約4m後方に瞬間移動する。
13:04:42 乗用車は加速し続け、SCP-2011-JPとの接触と後方への瞬間移動を繰り返す。
13:04:47 SCP-2011-JPが消滅。
13:04:52 倉田氏の乗用車が車道左のガードレールに衝突・停止。倉田氏は意識を失う。
13:09:11 警察及びそれに紛れた財団エージェントが現場に到着。
事後調査報告(要約): 倉田氏の性格及び過去の素行に対する調査・分析の結果、激しやすい性格ではあるものの、同様の状況において自転車を轢こうと試みる可能性は無視できるレベルに小さい。したがって、本件における倉田氏の行動はSCP-2011-JPの影響によるものであると認めるのが妥当である。 ――ウッズ博士
続く実験により、SCP-2011-JPの精神影響特性が怒りを増幅させるものであることが明らかになりました。SCP-2011-JPへの干渉が不可能である点や、ただ出現しただけでは民間人への影響が僅かであることなどから、監視とインシデントの事後処理を中心とする特別収容プロトコル(第1版)が策定されました。
現在までにSCP-2011-JPが発生させた中で最大規模のインシデントであるインシデント2011-JP-048の発生後、収容体制はさらに強化されました。
インシデント2011-JP-048
発生日時: 20██/01/29 16:25
概要: 工事により道幅の狭い片側1車線となっていた道路上でSCP-2011-JPが路線バスの走行を87秒間妨害した結果、運転手及び乗客計14名が暴徒化し通行人や近隣の住民に危害を加えた。財団機動部隊によって鎮圧されるまでの間に民間人64人が被害に遭い、そのうち19人は全治3週間以上の重症を負った。
以下は道路に設置されていた監視カメラ及び路線バス車両に搭載されていた監視カメラからの情報を総合して作成された時系列記録です。
時系列記録:
16:23:49 SCP-2011-JPが出現し、車道の左端を走行。
16:23:59 SCP-2011-JPが片道1車線区間に進入。
16:24:13 バスがSCP-2011-JPに追いつき、およそ時速15kmまで減速してSCP-2011-JPの後方を走行する。
16:24:45 車内の一部の乗客がSCP-2011-JPの影響を受け、SCP-2011-JPに対して罵倒の声を上げ始める。バスの監視カメラには「どけよ[罵倒]自転車」「ふざけるな」「急いでんだよ」等の発言が記録されている。
16:25:18 全ての乗客がSCP-2011-JPの影響を受け、立ち上がって叫んだり窓を叩いたりしている。運転手の様子に異常は見られず、バスはSCP-2011-JPの後方を走行し続けている。
16:25:40 バスが片道1車線区間を抜ける。
16:25:44 運転手がバスの行先表示を「回送」に切り替えてバスを路肩に停車させる。同時に車内向けのマイクで一言話す(内容は乗客の叫び声にかき消されて記録されていない)。
16:25:46 運転手がバスの扉を開放する。乗客らが車外に飛び出し通行者を襲撃し始める。
16:25:58 運転手がバスを降り、乗客らの活動に加わる。
16:26:01 道路を走行し続けていたSCP-2011-JPが消滅。
16:34:30 機動部隊が現場に到着して鎮圧を開始する。
16:37:07 機動部隊による鎮圧が完了する。
国道45号における収容体制の確立後、インシデント2011-JP-076の発生により上述の転移特性が明らかになりました。
インシデント2011-JP-076
概要: [編集済]の影響で国道45号のSCP-2011-JP出現区間が通行不可能となって以降、SCP-2011-JPの出現が確認されなくなっていた。SCP-2011-JP収容チームは収容違反を考慮して捜索を行い、約90km離れた国道48号の███~███間でSCP-2011-JPを発見した。
時系列記録:
20██/03/11 [編集済]が発生。国道45号の███~███間は通行不可能となる。これ以降、国道45号でのSCP-2011-JPの出現は確認されていない。
20██/03/15 SCP-2011-JPが国道48号で発見される。SCP-2011-JPが増殖した可能性を考慮して捜索は継続される。
20██/03/19 国道45号███~███間の通行が部分的に可能となる。
20██/03/26 国道45号におけるSCP-2011-JPの出現は確認されず、新たなSCP-2011-JPの発生も確認されていないことから、SCP-2011-JPは国道48号に転移したと結論付けられる。
転移特性が明らかになったことを受けて、SCP-2011-JPを財団サイト内に転移させて収容する計画が検討されました。
実験2011-JP-079
実施日: 20██/03/29
内容: 最初の転移実験。国道48号のSCP-2011-JP出現区間を48時間にわたって通行止めとする。その期間中、地点から約20km離れたサイト-8104に敷設された道路(全長1350m)に国道48号の約5倍の交通量を維持する。
結果: 実験開始から32時間後、約10km離れた国道457号にSCP-2011-JPが出現した。
分析: 国道457号は国道48号よりも交通量がずっと少ない道路だ。交通量が多い道路に転移すると予想していたが、全くランダムなのか、あるいは他の要因があるのかもしれない。 ――佐々木博士
追加実験により転移元からの距離及び交通量が転移先として選ばれる確率に影響することが確実視されましたが、財団サイト内の施設にSCP-2011-JPを転移させる試みは成功しませんでした。
実験2011-JP-103
実施日: 20██/06/01
内容: 当時のSCP-2011-JPの出現範囲である国道351号及び国道352号を48時間にわたって通行止めとする。その期間中、地点から約12km離れたサイト-8115に敷設された道路(全長400m)で道路面積の80%以上を車両が占める状態を維持する。
結果: 実験開始から36時間後、SCP-2011-JPは約110km離れた国道19号に転移した。
分析: なぜうまくいかない? この距離と交通量ならばSCP-2011-JPがサイト-8115に転移する確率は99.9%を超えていたはずだ。 ――佐々木博士
SCP-2011-JPのサイト内への収容は、福田研究員が提案した実験によって初めて成功しました。
実験2011-JP-110
実施日: 20██/06/29
内容: 当時のSCP-2011-JPの出現範囲である群馬県道62号を48時間にわたって通行止めとする。その間、サイト-8110内の道路(全長500m)に予め財団フロント企業が運行する路線バスを設定し、転移確率99%の交通量を維持する。
結果: 実験開始から39時間後、SCP-2011-JPはサイト-8110内の道路に転移した。
付記: SCP-2011-JPの出現時、乗用車を運転していたD-49275がSCP-2011-JPの影響を受けて車を暴走させ、8台を巻き込む事故を発生させた。
分析: SCP-2011-JPの転移先となる条件にバスが含まれていることが明らかになった。バスに関する条件を詰めれば新しい特別収容プロトコルが固められるだろう。 ――佐々木博士
あの[罵倒]自転車野郎█ねよ! ――D-49275
転移条件に関する追加実験の終了後、新しい特別収容プロトコル(第3版)と収容違反に備えたプロトコル“大渋滞”が策定されました。
補遺1: サイト-8110における経費削減活動の一環として、自動運転車をSCP-2011-JPの特別収容プロトコルに導入する案が承認されました。30日間の試験運用において問題が確認されなかったため、特別収容プロトコルが改定されました。
補遺2: 20██/01/04にサイト-8110で発生したインシデント-████2の原因が究明されるまで、特別収容プロトコルにおける自動運転車の利用は一時的に中止されています。なお、当該インシデント発生時、収容に用いられていた自動運転車が複数台で連携しながらSCP-2011-JPを攻撃しているのを見たという報告が複数の職員から行われています。