SCP-2014-UA-EX
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ウクライナ支部アーカイブ課より通達

以下の文書はSCP財団ロシア支部より受領され、参考のため翻訳してあります。

現状、SCP-2014-RU (現在はSCP-2014-UA-EXに指定) に対して収容プロトコルは適用されていません。


翻訳責任者: A.D.
SCP-2014-UA-EX.jpg

強襲開始直前のウクライナの義勇軍。兵士らほぼ全員にSCP-2014-RUが付着しているのが確認できる。

アイテム番号: SCP-2014-RU

オブジェクトクラス: Euclid (暫定)

特別収容プロトコル: ロシア連邦軍、ロシア連邦軍参謀本部情報総局およびロシア連邦保安庁に配備された財団エージェントは、死体、戦争捕虜、市民および回収済の資産からSCP-2014-RUを捜索、探知および押収することを任ぜられています。当オブジェクトの運用状況に鑑み、SCP-2014-RU流通源がはっきり特定できるまで関連文書へのアクセスは当支部職員に限定してください。

まだ生きている使用者、もしくは未使用の実例が回収された際には追加調査のため、当支部の最寄りかつ適切な機器を備えた施設に転送します。

説明: 当オブジェクトは黄色の接着テープであり、同色の包装用テープと外見上は同一です。使用済のサンプルに対する解析では、非異常の製品にみられるような物質・組成と比べても化学的・物理的構造上の差異は検出されていません。しかし当オブジェクトの異常性からは、アクティブサンプルにはそういった特異性が存在することが示唆されています。したがってこれらの確保および追加調査が優先度の高いタスクとなっています。

SCP-2014-RUはウクライナ東部の紛争に従事するウクライナ軍およびウクライナ義勇大隊により広く用いられており、ふつう最前線の重要なポジションおよび戦闘活動中の高度な部隊にてその運用が確認されます。当オブジェクトの起源は特定されていないものの、その形態や供給が安定していることから、一極集中型の生産施設群、もしくは共通の技術規格や生産技術を採用・連携する複数の生産拠点など、単一の流通源が存在するものと思われます。ロシア支部がアクセス可能な情報によればウクライナには、異常物品を生産可能かつ前述の紛争への参加に関心があるような独立団体は存在しないようです。

当オブジェクトの異常性が発現するのは生きた人間の衣服あるいは身体に付着している時であり、その人物が死ぬか、あるいはその死からある程度の時間が経つと停止します。この異常性は、付着したテープの長さや何枚重ねて貼られたか、どこに貼られたかによって変わりうるほか、使用者自身にも依存するようです。当報告書執筆時点ではSCP-2014-RUの性質につき以下の発現が記録されています。

  • 火器の精度向上。ドネツィク州スロヴャンシク1をめぐる戦闘で得られた映像を解析する中で、ウクライナ義勇兵や新規に動員された部隊の一部メンバーが、標準偏差を考慮しても、非軍事職従事者を想定しシミュレートした値を40%上回る射撃精度を記録したことが判明した。これにより当時ドネツィク人民共和国民兵第1師団1 АК НО МО ДНР第1独立自動車化狙撃旅団1 ОМСБрに技術中隊副司令として配属されていたエージェント・ヴォロビヨフが、790m離れた場所からの射撃により殺害された。射手はのちに、キーウ州イルピニ2出身のプログラマーである███████████であることがわかったが、当人物にこれまで軍歴はない。同様のケースが教員、ミュージシャン、図書館司書等、火器の専門知識と関わりなど持たない非軍事職従事者においても繰り返し報告されている。この効果はふつう対象の腕に付着されたSCP-2014-RUに相関し、また攻撃中に確認される。
  • 痛覚受容体の感度減退および標準的神経系・内分泌系の心的外傷に対する反応阻害。これにより対象は、アクティブなオペレーションがふつうならば困難になる程の怪我にも耐えられるようになる。具体例としてはドネツィク州イロヴァイシク3付近でロシア連邦軍第31独立親衛空挺旅団31 гв. ОДШБрが攻撃を行なっている際、同団所属軍人らによって記録された例がある。彼らが包囲作戦の一環としてウクライナ側の防衛拠点のひとつに突入した際、VOG-25M4簡易トーチカДЗОТの銃眼に直接撃ち込まれその内部で炸裂した。にも関わらず、隊に向けて機関銃の射撃がそれから4分間にわたり続いた。射撃が止んで強襲分隊が内部に進入した際、兵士の遺体1体が発見された。それは両脚が膝上で裂け右腕も擲弾の破片で切傷を負いながら、なおも機関銃を握り続けており、そして防弾チョッキとヘルメットにSCP-2014-RUが着いていた。当効果を呈するのは、こうした部位に付着した場合であるものと見られる。
  • 持久力の増強。空撮により歩兵部隊の強行軍が繰り返し記録されているが、行軍距離についても速度についても、当該テレインおよび隊員の体格を想定しシミュレートした値を上回っている。SCP-2014-RUは行軍兵の、主に防弾チョッキとヘルメットに付着していた。この点は前掲の発現事例と同様であり、興味深い。

当オブジェクトが持ちうる特性について専門家によるアセスメント:

SCP-2014-RUの現状できうる限りの観察や既知の性質を勘案すれば、あるひとつの結論の証左が得られる。すなわち我々が今追っているのは、奇跡術の産物だということだ。こういった類の物品は、この世界にある戦闘狂諸国の多くで確認されている。そうした国々にはサルマティア5…すなわちかつて、今日のウクライナ領土に生きた人々も含まれている。シチリアのディオドール6も、あるローマとの重要な交戦に向けて、サルマティアの支隊が準備する様子をこう描写している。

最も若い者が牧草地から雌牛を連れてきた。仔牛を身籠っていて、幾夜もしないうちに出産しそうな雌牛を。戦士らが機敏にそれを取り囲み、両角と脚とを掴んだ。続いて、行軍に付いて行っていた女がこの獣と目を合わせ、彼女以外には意味不明な言葉で何かを囁いた。雌牛が落ち着いた時、焚火からアナカラ (АнакараAnakara) という男が立ち上がった。男の銀色の顎髭は彼が経てきた劫臈をしのばせ、頭髪は鷹の羽で飾られている。彼は両手に槌を持って雌牛の腹部を叩いた。角ある獣は咆哮し己が仔を産み落としたが、押さえつけられていて何もできなかった。そしてアナカラは右鞘からダガーを掴み取り、仔牛の大網膜7を剥いで慎重にその腹部に刃を刺し入れ、か弱く震える体を上から下へと切り裂いた。内臓を取り出したのちアナカラは、折り畳まれた腸をまっすぐに伸ばして短い切れ端へと分けた。そして彼は切れ端を、切り出せた本数と同人数の男らの腕に巻いてやり、彼らを最前列に配置した。仔牛はその後焼かれ、母牛は目を潰されたのち作業に協力してくれた女性に渡された。

その後1674年、チヒリン遠征8中にロシアのクニャージであるグレゴリー・ロモダノフスキーがアレクセイ・ミハイロヴィチツァーリに宛てた手紙には次のようにある。

昨日前の話です。コサック達が、トルコ側の輸送隊に攻撃すべく準備しているところに立ち会う機会がありました。この時コサック達の火薬が湿っておりました。我が国のポソーシニク9達が渡河中に落荷してしまったためです。そこでシルコ10はコサック兵の中から、彼曰く"ハラクテルニク11"なる者を12名選定してこう命じたのです。夜明けまでに軍に荷車2台を用意せよ、是が非でもこれを成し遂げよ、と。コサック達は束の間相談しあったのち大きな火を点け、我が国のジリツィ12たるアレクセーエフが跨っていた馬を掴んで奪い、これを刺傷し血を抜き取ってから火炎に投げ込みました。彼らは然る後、布切れを取り出して血に浸し、腰紐の代わりに巻いてから火が燃え尽きるのを待ち、馬の遺灰を拾って額と目の周りに塗り込みました。そしてその夜のことでございます、彼らが荷車5台分の火薬を引いて帰ってきたのは。

大方、当オブジェクトのコンセプトおよび作用原理は上述したような、サルマティア文化そのものかその後継文化から借用したものであろう。この類のアイテムにしては残留ヒュームレベルが低めであるが、それもこの作用が使用者の死と奇跡術的にリンクされているという事実から容易に説明可能である。以上を踏まえ当方より、生きた実例を早急にお送りいただくよう懇願申し上げる。そうしていただければ当オブジェクトに関しより一層の研究ができる…。この"現代化"を遂げた儀式は、我々にとっても甚だ有用であろう。

サイト-7 人為性異常部門 考古学班 上級研究員
ボリス・リシツィン博士 (Dr.д-р)

これが文字通りの意味で"アノマリー"と呼べるような代物ならば、我々が今追っているのは間違いなく化学的機序を持つアノマリーです。適切に準備してやることでこの接着剤が、作用後に吸収/分解あるいは人体から排泄されるような向精神物質や阻害物質を媒介するわけです。この説は使用者の複数の遺体の調査の結果からも支持されています。調査ではそういった物質が様々な量検出されています。関係イベントにおけるこうした物質の直近の使用歴も、媒介物こそ接着剤ではあらねど、この説をさらに裏付けています。分離主義者危機前夜に展開されたいわゆる"ユーロマイダン13"の最中、ドラッグ入りのオレンジが流通していたのは周知の事実でしょう。当イベントが、今日ウクライナ軍により大量使用されていることが確認されているあの道具の、試験パイロット運用の場であったと考えない理由はどこにもありません。

当オブジェクトはSCP-3033インプラントの神経学・生化学的な主たる効果を、リムーバブルかつ非常に動かしやすい媒介物を用いて薬学的にエミュレートするという、幾分プログレッシブなコンセプトに基づいています。またこのおかげでコストが削減され使用も容易になり、対象がこういった干渉を受けていることを検出しづらくしています。とはいえこうした形態を取っているせいで以下のように、明らかな制約を受けてもいます。

  • 効果時間が短いという性質。接着剤に含まれる有効成分量により制限される。
  • 比較的効果が弱いこと。上述の、添付可能な有効成分量の制限に起因する。
  • 使用者の行動を遠隔操作制御できないこと。ただし物質の効果の中に、アクティブ状態下において対象の被暗示性を高めるものがあることも考えられる。

しかしこれら欠点があってもオブジェクトの有効性が減じない状況というのがあるのです。例えば軍事紛争や衝突下。その中でも特に、戦闘員の参加が自らの意志によるものであって、かつ戦闘能力をゼロから創り出すのではなく向上させるだけでいいような場合です。ここで最大の懸念点となるのは当オブジェクトの存在から、こういった研究や安定的生産が可能なだけの科学的・技術的キャパシティを有する団体がウクライナ領土内に必然的に存在しているはずだ、という事実が炙り出されたこと。現に諜報部門もSCP-2014-RUが国外から供給されている可能性はまずあり得ないとしています。

サイト-7 化学・生命化学部門 ダイアグノスティクス研究所 副所長
カテリーナ・フォルトシュリット上級科学責任者 (SSOс.н.с.)

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