SCP-2016-JP

クレジット

タイトル: SCP-2016-JP - 臆病な大木
著者: ©︎solvex
作成年: 2020

FROM: 倫理委員会
TO: 全職員
件名: 財団、倫理委員会からの声明

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財団並びに倫理委員会より声明が発表されました。詳細は添付資料を参照してください。

声明文.pdf

財団、倫理委員会の今後についての共同声明

先日、ある1人の職員がDクラス職員に行わせる業務を自らが代わって負いました。その結果として彼は今も交流が不可能な状態にあります。彼は己の倫理と、財団の倫理を照らし合わせ、ついには自らがその犠牲となりました。彼は最後まで信じた倫理を貫きました。財団、倫理委員会として彼の行動は責任を取るべき行動と捉えるのがルールであり、"通常"です。ですが、我々はこの事態を強く受け止める必要がある分岐点に立っているのだと思います。

財団の業務というのは一般的な倫理観から見れば逸脱していると言っても過言ではないでしょう。今この瞬間も数多の人々の命、心、生活を侵しています。それは一重に人類の保護、文明の保護のためであり、そのための尊い犠牲であると信じ、割り切り、我々は日々懸命に行動をしていました。無論、倫理委員会も同様であり、財団としての倫理を護り続けました。

しかし、現実には彼のように財団の"異常"を受け止めきれない人が居ます。そしてそれは彼だけではありません。今も多くの職員が、矛盾する2つの倫理に挟まれ苦しんでいます。彼の行動は奇しくもそのような"通常"の職員の存在を我々に気づかせました。

人の命というのはその人に1つしかありません。そのたった1つしかないものをそれを遥かに上回る世界の都合で扱うのは赦されることなのでしょうか。無論、このような問題は人類史上で常に激しい議論がされたものであり、明確な正解は出ない、もしくは存在しないのかもしれません。我々としても今、正しい答えを出すつもりはなく、また出せるものとも考えていません。しかしだからこそ、犠牲に甘んじている側の我々は、人の命を無条件に扱っている側の我々は、その対極にある"人の命を尊ぶ"という考えに寄り添う必要があると考えます。

我々財団、そして倫理委員会は今一度自身の倫理を再考し、財団である前に人として、また別の人に向き合えるよう努力していきます。

2020年2月15日

SCP財団
倫理委員会