
回収直前に撮影されたSCP-2027-JPの繭(写真中央右)
アイテム番号: SCP-2027-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2027-JPはサイト-8164内の10×10×10mの標準生物収容房に収容されています。収容房内はSCP-2027-JPが生息していた環境が再現されており、気温が常に氷点下になるよう保たれています。収容されているSCP-2027-JP個体数が一定以上となった場合、形成されたSCP-2027-JPの蛹の1/3を破壊し、SCP-2027-JPの総数を減らしてください。
説明: SCP-2027-JPは分類不明の蝶に酷似した生物です。SCP-2027-JPの90%は水分であり、必要最低限の生体組織のみ有していることが確認されています。SCP-2027-JPは体温が常に0度を下回っているにも関わらず、体液が凍結することはなく、内臓器官や神経系統も正常に機能しています。これまでに行った実験から、SCP-2027-JPは一定の温度に晒された際、瞬時に溶解することが確認されています。溶解したSCP-2027-JPを再び凝固させる実験では、SCP-2027-JPが再生したケースは確認されていません。SCP-2027-JPは卵、幼虫、蛹、成虫によって融点が異なっており、卵は30度、幼虫、蛹は15度、成虫は10度で溶解します。この融点の高さは体液および後述する分泌液に依存していると推測されています。
SCP-2027-JPは11月末頃に孵化し、1か月程度で第5齢まで成長します。SCP-2027-JPの胸脚は鉤爪状に発達しており、蛹に変態する際に用いられます。また、SCP-2027-JPは体内にて体液とは異なる特殊な液体を分泌することが可能です。この液体は外気に接触してから5秒程度で凍結し、人間が触れた場合軽度の凍傷になることが確認されています。SCP-2027-JPは外敵に襲われた際、この液体を口器から噴射し自衛の手段として利用します。実験の結果この液体の融点は、幼虫同様15度であることが確認されています。
第5齢になったSCP-2027-JPはその後2週間程度で蛹に変態します。変態の直前、SCP-2027-JPは胸脚を利用して地中5cm程度の場所に潜ります。その後口器から前述の液体を分泌し、4cm程度の柱状に凝固させたものを複数作成し、それらを纏めることで繭を形成します。その後SCP-2027-JPは蛹に変態し、5日から1週間程度で羽化します。繭の形状は霜柱に酷似しており、容易に破壊することが可能です。繭の材料である液体は無色透明かつ無味無臭であるため、近距離からの観察以外の手段でSCP-2027-JPと霜柱を判別することは非常に困難です。繭の形状が霜柱に酷似している理由は不明ですが、ある種の擬態ではないかと推測されています。
SCP-2027-JP成虫には口吻が存在しておらず、幼虫期に蓄えた栄養分のみで生命活動を維持します。SCP-2027-JPの翅は90%以上が水で構成されており、鱗粉が一切付着していません。翅の表面はいくつもの平面を連続させた構造になっており、翅を通過した光が全て上方向に放出されるようになっています。この際、光は不明な原理により増幅されることが確認されており、SCP-2027-JPの自衛手段であると考えられています。羽化の後SCP-2027-JPは繁殖を行い、木の根や地中に産卵した後溶解します。
補遺: SCP-2027-JPは1990年に「子供が虫を触ったら凍傷になった」「蝶を見たら目が見えなくなった」等の通報が相次ぎ、財団の知る所となりました。その後財団によって継続的な対象の確保が行われていますが、地球温暖化に伴う暖冬化および土地開発により、生息地の縮小が確認されています。また毎年、大量のSCP-2027-JPの繭がその外見の為に一般人によって踏まれ、破壊されていると考えられています。
前述のとおり、SCP-2027-JPの繭は氷より融点が高く溶解しにくい為、破壊された際に人間にとって小気味良い音1を生じます。この音を聞いた人物は強い高揚感を覚え、多くの場合より多くの霜柱を踏みつけたいという衝動により、周囲に存在する霜柱とSCP-2027-JPの繭を破壊します。この高揚感及び衝動は精神異常の類ではなく、一般的な軽い興奮状態であることが判明しています。これらの理由から、近年確保及び確認されるSCP-2027-JPの個体数は加速度的に減少しており、2040年頃に自然界に存在するSCP-2027-JPは全て死滅すると推測されています。