SCP-2031-JP
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アイテム番号: SCP-2031-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-2031-JP-A群はサイト-81██内の低脅威物品用ロッカー内に保管されます。

説明: SCP-2031-JPは児童加虐者断罪戦士ジャッジング・バイオレットと自称していた、未知の金属と繊維から構成される紫色を基調とした装甲服及び各種装備(以下、SCP-2031-JP-Aと呼称)を着用した人型実体です。声質から若年の男性である可能性が高いと予想されています。 SCP-2031-JPは常にSCP-2031-JP-Aを着用しており、SCP-2031-JP-Aを脱衣させる試みは成功していません。 SCP-2031-JPの無力化に伴い、SCP-2031-JP-Aは当該オブジェクトから分離しました(事件記録2031-JP参照)。現在SCP-2031-JP-Aはいずれも損壊状態にあり、その機能は失われたものと考えられています。

以下はSCP-2031-JP-Aの機能一覧です。
番号 説明
SCP-2031-JP-A-1 SCP-2031-JPの頭部側面に装着されたアンテナ状の装置。SCP-2031-JPは「アビューサセンサー」と呼称し、「悪人の存在を探知する装置である」と証言している。
SCP-2031-JP-A-2 SCP-2031-JPの右前腕部に装着された手甲状の装置。SCP-2031-JPは「パニッシュアーム」と呼称し、SCP-2031-JPが断罪対象とみなした対象に接触させることにより異常な手段で死亡させる機能を有する。
SCP-2031-JP-A-3 SCP-2031-JPの右肩部に装着されたスピーカー。小型AIが搭載されていると見られ、SCP-2031-JPの活動時に断罪対象とされた人物の罪状1を読み上げる。
SCP-2031-JP-A-4 SCP-2031-JPの左肩部に装着された小型ドローン。SCP-2031-JPは「モニタリングドローン」と呼称する。SCP-2031-JPの活動時に分離、転移し、SCP-2031-JPの活動を機体前部のモニターにより映像として遠隔地へと中継する機能を有する。

SCP-2031-JPはGoI-8139"超  電  救  助  隊Hyper Electric Rescue Organization"との関係を示唆する発言を行っていますが、当団体への所属を自称する他の実体群とはその目的や活動内容が異なります。本オブジェクトは2011年頃から存在が確認されており、"断罪"と称して犯罪者への異常性を用いた私刑行為を繰り返していました。この際"断罪"の対象は直接若しくは間接的に18歳以下の児童に被害を及ぼした成人に限定され、この条件を満たさない人物が対象とされた事例は確認されていません。

以下はこれまでにSCP-2031-JPにより行われた私刑行為の内容(抜粋)です。

対象の犯した犯罪 対象の死因 SCP-2031-JP-A-3による音声
12歳女児に対する逮捕・監禁 地中への転移による窒息死 幼い児童を連れ去り、無限の孤独と恐怖を与えた罪、許せない。お前に相応しい最期は…
民家への放火2 身体内部からの発火による焼死 幼い児童の家庭に火を放ち、その心身に大きな傷を負わせて両親を奪った。お前に相応しい最期は…
実子である3歳男児への暴行 全身への重度の打撲 保護すべきその手で圧政の拳を振るい、幼い児童に大きな傷と絶望を残した。お前に相応しい最期は…

その後の調査によりSCP-2031-JPは東京都██区周辺での確認事例の多さが指摘され、児童への暴行の前科を持つ16人のDクラスを囮にした当該地域での収容作戦が展開された結果、2014/07/11に収容されました。この際SCP-2031-JPは抵抗を試みたものの、財団エージェントに対して異常性の行使を行わなかった事は特筆すべきです。

以下は収容直後に行われたインタビュー記録の抜粋です。

インタビュー記録2031-JP-1 - 日付2014/07/11

対象: SCP-2031-JP

インタビュアー: 天倉博士

付記: SCP-2031-JPは、仮収容房内部の椅子に拘束されている。

<録音開始>

天倉博士: こんにちは。

SCP-2031-JP: こんにちは、か。俺をどうしようってんだ。解放してくれないかな?

天倉博士: それはできません。ですが現時点で、貴方の処遇の全てが決まったわけではありません。これはそのためのインタビューでもあります。

SCP-2031-JP: ほぉん。まぁいい。で、そのインタビューの内容ってのは?

天倉博士: まず、貴方の姓名と所属を教えて下さい。

SCP-2031-JP: 俺たちは超電救助隊HEROの異端児さ。俺はその一人、児童加虐者断罪戦士ジャッジング・バイオレットってんだ。おう、あんたの言いたいことは分かるぜ?ヒーローにしちゃ言葉遣いが粗暴なやつだ、ってんだろ。

天倉博士: 続けて下さい。

SCP-2031-JP: おうよ。俺はな、異端児でダークヒーローなんだ。他のメンバーは人々の命を救うが、俺たちは子供たちの心を救う。尤もそのせいで、俺たちは超電救助隊からは除名扱いを受けてるけどな。

天倉博士: 尋ねたい項目が二つあります。まず俺たち、とは貴方以外に誰を指すのですか。

SCP-2031-JP: 仲間たち、そして偉大な先輩さ。超電救助隊本隊とは対立気味だが、俺と同じ正義を信じてるんだ。先輩は俺みたいなやつらに装備、そして生きる上での目標をくれた。対立気味の本隊にも敬意を払ってるとこも尊敬できるな。おっと喋りすぎたか、これ以上は言わねぇよ。

天倉博士: そうですか。では二つ目に、貴方の行為がどのように子供の心の救済に繋がるのでしょうか。

SCP-2031-JP: 分かってねぇな、俺はただ悪人を倒すだけじゃねぇ。俺の左肩を見ろ。この「モニタリングドローン」は悪人にやられた子供んとこに飛んでって、その悪魔に鉄槌が下されるところを中継してくれるのさ。

天倉博士: (6秒間沈黙)それは即ち、加害者への私刑の映像を被害児童に見せる、という解釈で正しいですか?

SCP-2031-JP: その通りだ。いいか?子供ってのは人格形成の最中なんだ。そこに悪人どもの魔の手が及べば、命が助かったって心に深い傷を負っちまう。俺はそれが許せねぇんだ。だから他人を恐れるようになっちまったような子供たちには、俺みたいなヒーローが必要なのさ。

天倉博士: 俺みたいなとは、具体的にどのようなヒーローの事ですか?

SCP-2031-JP: 極悪非道をぶっ叩き、勧善懲悪の実在を証明してくれるヒーローさ。それができなきゃ子供の心は未熟で脆いサナギと同じ…、[視線を落とすように俯く]知ってるか?幼い心は、蝶のサナギ一つ死なせちまったってだけでも傷つく程に弱いってな。

<録音終了>

本インタビューの後、SCP-2031-JP-A-4と遭遇した被害児童や目撃者の調査並びに記憶処理が実施されました。またこれに伴い当時13歳の安井 █氏から、約1年前にSCP-2031-JPと直接接触した旨の証言が得られました。以下は安井氏へのインタビュー記録の抜粋です。

インタビュー記録2031-JP-3 - 日付2014/09/03

対象: 安井 █氏

インタビュアー: 天倉博士

<録音開始>

天倉博士: すると貴方が会ったヒーロー、バイオレットという人物が、いじめの首謀者だった同級生を。その事について詳しく聞かせてもらえますか?

安井氏: はい。僕、当時は小学生で。僕、気が弱いので狙われるんです。それであのときも校庭のジャングルジムから落とされたりして、その日の帰り道で突然、後ろから誰かに小突かれて。そのときは、てっきりまた苛めっ子が来たのかと。

天倉博士: なるほど。続けてください。

安井氏: 急いで振り向いたら、そのドローンが飛んでたんです。モニターがついてて、そこに苛めっ子たちとヒーローが写ってました。それでヒーロー、バイオレットが苛めっ子たちを一人づつ、軽々と投げ飛ばして。

天倉博士: そして、苛めっ子たちはどうなりましたか。

安井氏: いえ、特にどうも。ビックリしたのか滅茶苦茶に喚いてましたけど。それで、バイオレットが苛めっ子たちに言ったんです。何だったかな?「悪い大人にはなるな」、とか「今なら間に合う時だ」とかって。それ以来、あいつら僕を苛めたりしなくなりましたよ。

天倉博士: ふむ…。その後、貴方はそのヒーローと直接会ったとの事でしたが、そちらは。

安井氏: はい。僕興奮しちゃって、そのドローンに向かって話しかけたんです。そしたら映像に写ってたバイオレットは、こっちに気付いてくれて。

天倉博士: そこでヒーローと会話したのですね。詳しい内容は覚えていますか?

安井氏: そこまでは…。でも、僕が戦隊ヒーローが大好きだ、って言ったのと、次の日町外れの神社で会う約束をしたのは確かです。それで、本当に会って話したんですから。

天倉博士: 実際に会ったというのは██神社ですね。どのような話をしましたか?

安井氏: 前の日の事のお礼を言って、そしたら「気にしなくていい」、って言ってくれました。その後はキョウリュウジャーとかの…僕、鞄に戦隊ヒーローのストラップ付けてたんです。そしたらバイオレットは昔の戦隊に詳しくて、懐かしいな、って言ってそれから二人で話しました。怪人どもを必殺技で爆発させるの格好いいよね、とか。でも悪人は絶対に許せない、って言うときのバイオレット、何か怖い感じだったな…。あとバイオレットは怪人のこと、トカゲみたいな顔してたり触手が生えてたり、きっと中身の悪さが見た目にも滲み出てるんだって言ってました。

天倉博士: そして、その後もヒーローとは会ったのですか?

安井氏: ううん。自分も悪を倒すヒーローだから行かなきゃ、って言ってそれっきり。そうそう、バイオレットは別れるとき、最後に誰かと電話してたよ。

天倉博士: 電話ですか。その相手は分かりますか?

安井氏: いや、流石に。慌てた感じで電話に出て、別れ際には「ネイビーが呼んでる」、「大きな事件だ」とかって言ってたけど、それが誰なのかまでは分からなかったな。

天倉博士: 分かりました。有り難うございます。

<録音終了>

補遺: 本インタビューの後、安井氏の証言の正確性及び証言内で言及された"ネイビー"なる人物の詳細を確かめるためSCP-2031-JPに対する追加インタビューが実施されましたが、SCP-2031-JPは児童のプライバシーの保護を理由に回答を拒否しました。

補遺: 2019/12/04、SCP-2031-JPは一時的な錯乱状態に陥り、その後一切のインタビューに応じなくなりました。以下はその直前の収容室内の映像記録です。

<記録開始>

[SCP-2031-JP-A-3から電子音声が発せられる]

[SCP-2031-JPが立ち上がり、収容室の扉に視線を向ける]

SCP-2031-JP-A-3: 児童加虐事例214の真犯人が判明しました。

[SCP-2031-JPは5秒間静止し、SCP-2031-JP-A-3に対して小声で判別不能な内容を呟く]

SCP-2031-JP-A-3: 過去の検知にエラーがあった模様です。父親はシロです。犯人は未だのうのうと暮らしています。今こそ断罪を。

SCP-2031-JP: ふざけてんのか。

SCP-2031-JP-A-3: 過去の検知にエラーがあった模様です。真犯人に断罪を。

[SCP-2031-JPは俯き、収容室の壁面を殴打する]

<記録終了>

事件記録-2031-JP: 2020/03/04、「シノビ・ネイビー」を自称する、装甲服を着用した人型実体(PoI-8523と指定)による財団サイトへの襲撃事案が発生しました。PoI-8523はSCP-2031-JPの収容室へと続く廊下の一角で初めて存在が確認され、そこに至るまでの侵入経路は不明です。

以下はその際の映像記録の抜粋です。

<記録開始>

[PoI-8523がSCP-2031-JPの収容室の扉に金属片を接触させる]

[収容室の扉が解錠され、PoI-8523が収容室内に侵入する]

PoI-8523: シノビ・ネイビー、参上。同士よ、君の力が必要だ。

SCP-2031-JP: (7秒間沈黙)先輩か…。他を当たってくれ。

[機動部隊が収容室に続く廊下まで到着する]

[PoI-8523が丸薬状の物体を廊下へと投擲し、収容室の扉を閉じる]

PoI-8523: やはりか。君の事だ、落ち込んでるとは思ったよ。だがそんなことでヒーローが立ち止まってどうする。

[丸薬状の物体から煙幕が発生し、機動部隊員が嘔吐、失神する(後に不明な成分を含む有毒ガスと判明)]

SCP-2031-JP: そんなこと?

(3秒間沈黙)

SCP-2031-JP: 正義って何だったんだろうな。

PoI-8523: 決まってるじゃないか。悪を倒し、無垢を助く。今もまた、悪人どもが跋扈しているんだ。

[PoI-8523がタブレット端末を提示する]

SCP-2031-JP: これは…?俺が先輩と最初に救った子たちじゃねぇか。

[端末がコンクリート張りの室内で拘束された2名の若年男性の映像と音声を再生していることが確認できる]

[SCP-2031-JP-A-3から電子音声が発せられる]

SCP-2031-JP-A-3: 彼らは子供たちに些細な事柄で因縁をつけ、暴行する輩。その思惑ははかつて見た強いヒーローの仲間になりたい、という身勝手極まるもの。この罪、許しがたい。

SCP-2031-JP: そうか…、俺は救えたつもりでいたのにな…。

[端末より再生される音声から、「正義をやってただけだ」、「正しいことだろ」、等の発言が確認できる]

[SCP-2031-JP-A-3から雑音が発生する]

SCP-2031-JP: 正義か…。[この際SCP-2031-JPの声質がエコーのかかった低音に変化する]

PoI-8523: おい、どうしたバイオレット。しっかりするんだ。

SCP-2031-JP-A-3: 自分こ[雑音]がヒーロー[雑音]自惚れ[雑音]多くの子供た[雑音]歪め[14秒間雑音]相応しい最期[雑音]空ちゃんの父親を[12秒間雑音]けんと君と[判別不能]君を悪の道[雑音]相応しい最期は…。

[SCP-2031-JPが装甲服のメット部分を脱ぎ捨てる(この際SCP-2031-JPは俯いていた為、詳細な容姿は確認できない)]

[SCP-2031-JPの身体が変形を開始し、頭部が鱗に覆われる]

[SCP-2031-JPの頭部の骨格が流線型へと変形し、背面から8本の触手が発生]

PoI-8523: おい、おい。

SCP-2031-JP: 正しい正義が存在するなら、なんで除名なんて受けたんだろうな。

PoI-8523: それは本隊の正義とは違ったから…。

SCP-2031-JP: 矛盾してるぜ。(11秒間沈黙)おい、俺たちは何だ?

PoI-8523: ヒーロー、に、決まってるじゃないか。

[SCP-2031-JPがPoI-8523を収容室の壁に押さえ付ける形で組み付く]

PoI-8523: 落ち着け、かつて助けたはずの者でも悪は悪だ。私は間違ってな

SCP-2031-JP-A-3: [雑音]正義なんて無かった。

[SCP-2031-JPが爆発し、収容室並びに記録機器が損壊]

<記録終了>

本事件の後、損壊したSCP-2031-JP-A並びにPoI-8523の死体とその装備が回収されました。SCP-2031-JPの身体は、完全に焼失したものと見られています。

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