アイテム番号: SCP-2036-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル(2020/3/28改定): SCP-2036-JP-1との取り決めにより、SCP-2036-JPの被影響者は一般社会から根絶されています。取り決めの維持を図るため、当報告書へのアクセスは財団内部において制限が課せられないようにしてください。
SCP-2036-JP-1に対する対話姿勢を維持するため、SCP-2036-JP-1のメインホストとしてDクラス職員1名が割り当てられます。該当者は月例解雇が免除される他、不慮の事故等に備え、同様に対話可能な人員を常に3名以上備えるようにしてください。
SCP-2036-JPベクターの疑いがある"移動図書館"および"店主"と称される未詳存在の捜索は継続されます。捜索は財団WEBクローラー("ハミング・バード")および機動部隊い-5("貴方の隣人")により実行されます。対象を発見した場合、速やかに研究チームへの報告および初期確保を実施してください。
説明: SCP-2036-JPは、特定人物の概念体系内に起源不明の固有概念が定着する現象です。この際に生じる概念はSCP-2036-JP-1に指定されています。
SCP-2036-JP現象の影響を受けた人物(以下、"ホスト"と呼称)は、未知の固有概念(SCP-2036-JP-1)を想起することが可能になり、当該概念は現象発生以前より存在していたものと認識するようになります。この認識の強度はごく微弱であり、当該概念が存在しないことを強く指摘する、またはクラスA以上の記憶処理により解消することが可能です。
SCP-2036-JP-1は、学名Omiroponia・Nu・Omiropon、口語的には"オミロポン"と称される小動物です。体長は約10~15cm(個体差により30cmに達する場合あり)、無毛白色の肌を持ち、細い四肢と長い尾、巨大な頭部を持つ外見が特徴的です。SCP-2036-JP-1は二足歩行が可能であり、長く発達した尾を利用してバランスを取ることで(よちよち、ふらふらと称される、比較的低速の移動ながら)自律的な走行が可能です。また、頭部の巨大さは脳機能の発達に拠るものであり、肥大した脳に担保された高い知性を有しているとされています。良く訓練された個体である場合、言語を解する、簡単な道具を使った手伝いやコミュニケーションが可能など、愛玩動物として古くから広く親しまれてきた歴史があるようです。個体数に関する情報は想起するホストにより不正確ですが、世界全体におおよそ4億匹1生息していると見積もられています。
特筆すべき点として、SCP-2036-JP-1は目・鼻・耳のような感覚受容器官、口や肛門などの摂取腔/排泄腔を一切有していません。SCP-2036-JP-1の感覚受容は全身を覆うなめらかな肌によって担われており、エネルギーの供給や排出、呼吸においても特有の皮膚器官によって実施しているようです。同様に、SCP-2036-JP-1は生殖器を有しておらず、無性で繁殖を要さない種族であるとされています。
上記に示されたSCP-2036-JP-1に関する情報はホストからの聴取内容を統合したものであり、一切の事実的根拠を含まないことに留意して下さい。SCP-2036-JP-1、ならびに、"オミロポン"と称される生物は存在しません。SCP-2036-JP-1に合致する概念・生物は人類史上確認されておらず、完全に架空の概念であると考えられています。にも関わらず、不特定多数のホストで想起される情報が合致すること、2020/2/2以降ホストが増加傾向にあること(本報告書執筆時点で ██,███ 人) は特筆すべき点です。SCP-2036-JPの発生条件、ならびにSCP-2036-JP-1概念の起源の解明が急がれています。
(2020/3/13更新: 発生条件・起源に関しては補遺1を参照してください。)
補遺2036-JP.1: SCP-2036-JPの流行経路
2020/3/13現在、SNS上に投稿された複数の情報がSCP-2036-JPの流行経路を示唆していることが判明しています。発信者はいずれもSCP-2036-JP-1ホストであり、現在は財団による監視または一時収容措置が完了している状況です。以下は、財団Webクローラーが検出した情報のうち特に関連性の高いキャプチャの抜粋です。
転写記録2036-TW
0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
待ってオミロポンってなに? この文字列とイメージが頭の中の古生物の引き出しに入っていたよ? でも調べてもいないね。こういう生物図鑑で見たことあるのに どこで見たんだろう |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
思い出した 移動図書館だ そこで適当なハードカバーの図鑑読んで、そんでオミロポンを見つけたんだ 左ページにでっかくオミロポンの絵があって それで右に「オミロポン」って書いてて、説明が下に書いてあった気がする |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
他にも見た人いるの?! 私だけじゃなかったんだ そうそう、確か「むかしのいきもの」ってタイトルだったかな。古生物の図鑑みたいな? |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
なんか話してたら記憶がじわじわと蘇ってきた 移動図書館は夕方自転車で帰ってた時に見つけたんだ確か。 なんか硬くて冷たい金属を叩くみたいな キイイーーン、キイイーーン、って音がしたからあそこに行ったんだ。そしたらいた |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
まって、不思議だ 読むってことは店主か何かと会話するはずだよね でも、私はこんにちはも読んでいいですかもありがとうございましたもさようならも言った覚えがないよ 読んだ記憶しか残ってないよ |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
店主かな?確かにいた 喋ったか?何か喋ったような気がするような感じがする |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
町立図書館の司書さんに聞いてみた。オミロポンのことは知らないみたい。でも、移動図書館のことは知ってたよ 実際来てたんだって。個人で本を集めてた人が、見たことない車に乗って。しばらくこの地域にいていなくなったらしくて、不思議とよく覚えてないんだってさ |
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0v0 @fumfum_ØvØ_found · 2020年2月2日
でも、移動図書館の本のジャンルは覚えてたよ。なんでも"古いお話"とか、そういうのをまとめてたんだって。古いっていつ頃か分かんないけど | |||||
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類似の情報は10-20代の若年層を中心に、日本国各地から投稿されています。これらの情報を統合した結果、SCP-2036-JPの発生条件は以下を満たすことであると推測されています。
- "移動図書館"と称される詳細不明な車両に遭遇する。
- 同車両内にて"むかしのいきもの"と題された書籍を閲覧する。
- 同書籍内にて"オミロポン"として紹介される生物のページを視認する。
言及される"移動図書館"や店主と思われる人物への接触は成功していません。また、出現地点の周辺住民やSCP-2036-JP-1ホストと交流があるにも関わらず詳細が記憶されていないことから、何らかの認識阻害・記憶阻害特性を有している可能性が指摘されています。同存在はSCP-2036-JP拡散の母体とみなされているため、消息の調査と確保が急がれている状況です。
補遺2036-JP.2: インタビュー記録
2020/3/22、SCP-2036-JP-1ホストとして経過観察されていたD-63354が精神的変調を訴えました。D-63354は担当職員に対して"頭の中でオミロポンが話しかけてくる"と訴え、自身の意識領域下にSCP-2036-JP-1と類似する様相の精神的具象体が存在することを主張しました。このイメージは同領域にD-63354自身のイメージを登場させることでコミュニケーションを図ることが可能と報告されたため、直ちに当該イメージに対してインタビューが実施されました。以下はインタビュー記録の抜粋です。
対象: SCP-2036-JP-1 (D-63354の精神的具象体)
インタビュアー: ██研究員
付記: D-63354には対象の発話を正確に伝達するように命令した。また、D-63354自身の発言は省略し、SCP-2036-JP-1の言葉のみを記載している。
<録音開始>
インタビュアー: まず、名前を教えてください。
SCP-2036-JP-1: こんにちは、ニンゲンさん。ぼくはオミロポン。オミロポンのImaginanimalだよ。覚えてる?
インタビュアー: …"Imaginanimal"という概念生物集団は認知しています。ただ、申し訳ないですが我々は現在、貴方に対応する生物種を認知していません。貴方は架空の生物だと考えられていました。
SCP-2036-JP-1: [頭を抱え大きくのけぞる] がーん!そんなぁ…ぼく、地球で最も愛されたペット種族とまで言われたのに!確かに最近はニンゲンさんも会いに来てくれなかったけどさ!うう…。
10秒間の沈黙。D-63354はイメージ内でSCP-2036-JP-1が壁際に丸まり拗ねていると報告する。
インタビュアー: 我々は以前貴方を知っていたとのことですが、詳細を教えて頂けないでしょうか?なにぶん我々も想定外のことで。
イメージ内でSCP-2036-JP-1がD-63354の方を向き、足元に歩み寄る。
SCP-2036-JP-1: いいけど…ホントのホントに覚えてないんだ?やっぱり絶滅しちゃったのかな…オミロポン…。最近下の方にも接続できなかったし。
インタビュアー: "下の方"とは、形而下、我々の世界と言うことでしょうか?最近とはいつ頃のことですか。
SCP-2036-JP-1: んとね、数万年?くらい前。あんま下の時間感覚わかんないけど。
6秒間の沈黙。
インタビュアー: …それはおかしいですね。我々の文明はそれより後に発展しています。何かと勘違いしていませんか?
SCP-2036-JP-1: えっそうなんだ?うーん…そういえば、昔と比べてニンゲンさんの雰囲気変わったね。もう毛むくじゃらじゃ無くなったみたいだし。脱毛ブームって結局成功したの?
<録音中断>
続く協議と数点の質問により、SCP-2036-JP-1の言及する存在はSCP-████(要Level 3クリアランス)として知られる先史時代の人類に相当する種族であると推測されました。インタビューの中断から2時間後、当時の状況の確認を目的としてインタビューが再開されました。
<録音再開>
SCP-2036-JP-1: あ、インタビューの人来たね。おかえりなさーい。
インタビュアー: はい。貴方に数点、当時のことについて確認する必要が生じました。まずは貴方と、毛むくじゃらの方の人類との関係について話せますか?
SCP-2036-JP-1: いいよー。んとね、ぼく、毛のあるニンゲンさんが創った愛玩用人造生物種だったんだ。みんな毛まみれだから、ツルツルのペットが欲しかったんだって。それでぼくは大ヒットして、地球上に増えに増えたんだ。楽しかったなぁ、みんなぼくを知って、毎日のように接続してくれてたから。
インタビュアー: それでは、その後はどうでしょう。何か大きな変化はありませんでしたか?
SCP-2036-JP-1: うーんとね…やっぱり接続切れちゃった時かなぁ。数万年?くらい前にね、ある日突然、現実に降下できなくなっちゃったの。みんな一斉に忘れちゃったのかな?ぼくの概念が死んじゃったみたいなんだよね。なんでかはわかんないんだけども。
インタビュアー: その時、現実に起こったことはご存知ですか。
SCP-2036-JP-1: んにゃー知らなーい。思い出してくれる人が居ないとさ、ぼくたち概念って目も鼻も口も繋がれないんだ。それでずっとふて寝してたから、ホントに知らないの。気づいたらこっちに降りれるようになっててびっくりだよ。
インタビュアー: 驚きなのですか?その、それではなぜ、今になってこちらに降りてきたのでしょう?
SCP-2036-JP-1: えー、だって寂しいもん。ぼくら別に死なないけど、ニンゲンさんの概念って日々変容するし、たまに流行らなくなって死んじゃうでしょ?そうやって廃れちゃうと、ニンゲンさんと遊べなくなっちゃうんだ。でも最近、ぼくのホストさんも増えてきたから、頑張ってアピールして、ニンゲンさんの概念に定着してたんだよ。今日はホストが█万人を超えて、概念が強まったからお話できたんだー。
インタビュアー: 概念体系に影響を?貴方がやったのですか?恐らくそれは、我々がSCP-2036-JPと呼称している現象です。
SCP-2036-JP-1: え、そうなの?うーん…ぼくがやったのは定着だけで、概念の流布の方は知らないよ。誰かがぼくの概念を"布教"してくれたんじゃない?
インタビュアー: …ええ、恐らくそうかと思います。これで合点はいきました。ありがとうございます。
<録音中断>
財団側の議論により、SCP-2036-JPの影響性は概念生物であるSCP-2036-JP-1の能動的行動によるミーム災害であると結論付けられました。また未詳の存在である"移動図書館"および"店主"は、SCP-████(要LEVEL3クリアランス)に何らかの関わりを持ち、不明な目的によりSCP-2036-JPの流行を幇助していたと推測されました。
同要注意人物およびSCP-2036-JPの封じ込めを協議している最中、SCP-2036-JP-1より申し入れがありました。インタビューは、これに答える形で再開されました。
<録音再開>
SCP-2036-JP-1: えっとね、まず、ごめんなさい。 [深々と頭を下げる仕草をする] ぼくのせいで何か困ってるみたいだから。反省します…。
インタビュアー: えー、貴方のせいではありません。我々はただ、何も知らない一般人を異常な作用から守りたいだけです。
SCP-2036-JP-1: あ、そのことなんだけど、ぼくから提案してもいい?
イメージ内にて、SCP-2036-JP-1がお立ち台のような高い場所に移動する。
SCP-2036-JP-1: ぼく、ツルツルのニンゲンさんの役に立ちたいんだ。だからその、収容?されてもいいよ。一般の人にはちょっかいしないし、なるべく個人の概念にも定着しないようにするね。やくそく。
インタビュアー: …ありがとうございます。協力頂けるとありがたいです。
SCP-2036-JP-1: [被せるように] ただし!…1個だけ、お願い良い?
インタビュアー: どうぞ。
SCP-2036-JP-1: ぼく、絶滅して個体が居ないから、みんなの記憶が頼りなんだ。ぼく、みんなともっとお話したいし、みんなともっと遊びたい。また1万年ひとりぽっちはさみしいから、だから。…ぼくのこと、お仲間さんだけで良いから、知って、広めて欲しいんだ。お願い。
インタビュアー: …分かりました。善処します。
<録音終了>
その後の協議の末、SCP-2036-JP-1の申し出は受理されました。この取り決めに基づき、本報告書にはSCP-2036-JP-1概念を正式に記載し公開すること、その見返りに、SCP-2036-JP現象の収束とSCP-2036-JP-1概念の収容(財団内における限定的存在)が実現されました。SCP-2036-JP-1はこの対応に対して現在のところ満足した様子を見せており、取り決めの施行以降は一般社会におけるホストの発生も確認されていません。本件を基に特別収容プロトコルは改定され、現在まで運用が続けられています。