アイテム番号: SCP-204-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-204-JPは強固な金庫に保管した上で、縦/横/高さ共に12m以上の広さをもつコンテナの中心部に固定してください。職員はこの内部に進入すべきではありません。コンテナ内部と搬出口は収容違反が発生しないよう常にカメラを通して監視する事を推奨します。何らかの理由で移動などの作業が行われる際には遠距離操作可能な機材を使用し、決して素手で接触する事の無いように注意してください。職員は少なくともSCP-204-JPから半径6m以上の距離をとってください。
説明: SCP-204-JPは一般に『銅鏡』と称される直径40cmの青銅製の円盤のように見えます。その片面には形状に沿って複雑な文様が刻まれており、その中には未解読の言語や未知の生物と思われる姿も含まれます。模様の刻まれた側は劣化が見られますが、鏡面は非常に高い精度を保っています。
SCP-204-JPはその周囲に近づいた人間に、強い畏敬と誘惑を引き起こす事が確認されています。この力は障壁となる存在に関わらずに働き、影響を受けた対象者はSCP-204-JPに接近しようと出来る限りその障壁を取り除こうとします。この効果は対象をSCP-204-JPから離す事により解消されます。
SCP-204-JPの鏡面に触れた人間(以降:接触者)は瞬間的に生命活動が停止しますが、1秒以内に活動を再開しSCP-204-JP-Aへと変化します。その肉体には生命活動らしき働きはあるものの脳死状態と確認されています。SCP-204-JP-Aは接触者と同一人物のように振る舞いますが、その実体は接触者とは全く異なる自我を持つ目視不能の何らかの存在:SCP-204-JP-Bであると推測されます。SCP-204-JP-Aは友人や家族を含む周囲のSCP-204-JP-A以外の人間にSCP-204-JPとの接触を促します。現在、SCP-204-JP-Aに一般的な人間以上の能力が[編集済]。実験の結果、既に死亡している人間でもSCP-204-JPと接触させる事で同様の変化を起こす事が判明しました。(これをSCP-204-JP-Cとします)しかし死後の経過が長いほど元の人物に関する記憶は薄れており、それによる矛盾や相違、または言動の不一致などが指摘された場合、高い確率で沈黙または暴走をします。これは簡単に鎮圧可能ですが、暴走したSCP-204-JP-Cは未知の言語を発する事が確認されており、いまだ解読はされていません。
補遺: SCP-204-JP-Cへのインタビュー記録
インタビュー実験記録 - 日付2005/12/4
対象: SCP-204-JP-C
インタビュアー: 豊田博士
付記: SCP-204-JP-Bは死後約一週間が経過したDクラス職員(以下D-3033と称する)の遺体をSCP-204-JPに接触させたもの。D-3033はサイト8104での実験中に死亡。
<録音開始>
豊田博士: こんにちは。体調はいかがでしょう?
SCP-204-JP-C: ・・・ああ、特に問題ないよ、何も。
豊田博士: あなたのIDをどうぞ。
SCP-204-JP-C: ・・・えーっと、IDはたしか、D-3432・・・じゃなくてD-3533だったかな。
豊田博士: D-3033です。
SCP-204-JP-C: ああ、そうだ、それだ。
豊田博士: ご出身は?
SCP-204-JP-C: 広島・・・じゃない、山口だな。
豊田博士: 随分と記憶がおぼろげな様ですね。
SCP-204-JP-C: ええっと・・・。
豊田博士: 質問に移ります。あなたは先日の爆発事故にて危険な目に遭ったそうですが、その件についてなるべく詳しくお話ください。
SCP-204-JP-C:ああ、あの時は本当に死ぬかと思った。恐ろしかった。軽い怪我だけで済んだのが奇跡みたいだ。他の奴ら、しっかりは見てねえけど多分何人も死んだんじゃないかな。俺もまさかあんなのに巻き込まれるなんて・・・。
豊田博士: どのような行動をとったのか、詳しくお話ください。
SCP-204-JP-C: ・・・実は、ほとんど覚えていない。気がついたら、安全な場所に隠れてたんだ。きっとこれはお鏡様<SCP-204-JPの事だと思われる>のお陰だ。あの方が俺を導いてくださったんだ。
豊田博士: “お鏡様”とは誰です?
SCP-204-JP-C: 我々を導く存在だ。この世の全てを知り、安泰をもたらしてくださる。あんたもお鏡様と契りを結ぶべきだ。
豊田博士: “契り”とは、SCP-204-JPに触れる事でしょうか?それを結ぶと、どうなるんです?
SCP-204-JP-C: そんなものは、やってみればあんただって分かるだろう。ほんの一瞬の事だ。すべてが変わるんだ。
豊田博士:その“お鏡様”はあなたや私に何をしてくれるのです?
SCP-204-JP-C: 今生の穢れを落とし、新たな命を与えてくださる。
豊田博士: “お鏡様”や、あなたが目指すものは何ですか?
SCP-204-JP-C: すべての人間が我々と共に歩むことだ。俺たちは世界を取り戻さなければならない。
豊田博士: “取り戻す”とは、どういう意味ですか?
SCP-204-JP-C: 世界は元々人間のものではなかった。お鏡様は世界を奪われて一枚の鏡に閉じ込められた。我々はそれを元通りに返すべきなんだ。
豊田博士: あなたはその情報を何処から聞いたのですか?SCP-204-JPに触れて以来、あなたは誰とも接触をしていませんが。
SCP-204-JP-C: ・・・お鏡様と契りを交わした瞬間にすべてを悟ったんだ。
豊田博士: あなたが“契りを交わした”のはいつです?
SCP-204-JP-C: ・・・・よ、よく覚えてない。
豊田博士: いつかも覚えてないのに、悟った内容は覚えているのですか?
SCP-204-JP-C: お、俺はどうも調子が悪いみたいだ。今日は休ませてくれないか?
豊田博士: 話を戻しますがD-3033、あなたの身体に負傷は見られませんが、何処を怪我したのですか?
SCP-204-JP-C: も、もう治ったみたいだな。
豊田博士: ・・・実は、爆発事故など最初から発生してません。
SCP-204-JP-C: ・・・。
豊田博士: あなたは疑問無く私の嘘に証言を重ねていました。何故ですか?
SCP-204-JP-C: ・・・。
豊田博士: D-3033本人はある実験の際に既に死亡しています。先ほどからあなたの言動は職員により生前のD-3033のものと比較検証されていますが・・・どうやら、一致しないようですね。
SCP-204-JP-C: ・・・。
豊田博士: SCP-204-JP-C、あなたは一体何者です?
SCP-204-JP-C: ・・・████。<未知の言語による発言>
豊田博士: はい?
SCP-204-JP-C: ████████!████████、████!!
豊田博士: ど、どういう意味です?
SCP-204-JP-C: 衣を寄越せ。<続いて、SCP-204-JP-Cが豊田博士に襲いかかろうと暴れる音>
豊田博士: すぐに収容するんだ!早く!
<録音終了>
終了報告書: SCP-204-JP-Cは宗教的発言には意慾的になりましたが、その他の内容は比較的消極的です。発言に矛盾が多く見られ、知能はそれほど高くないと考えられます。「世界は元々人間のものではない」「世界を奪われ鏡に閉じ込められた」という発言は他のSCP-204-JP-Cの主張とも共通しています。SCP-204-JP-Cが発した未知の言語については解読されていません。
SCP-204-JP-Cの口調や声はD-3033にある程度似ているものの、どうにも無視出来ない違和感があった。私にはまるで何かがD-3033の着ぐるみを着て、D-3033の真似でもしているように感じたんだ。──豊田博士
SCP-204-JP-AやSCP-204-JP-Cは多くの場合鏡を中心とした宗教的な主張を持ちますが、これらには整合性や具体性、合理性などが薄い事が指摘されており、また各個体や集団により内容も食い違っています。恐らくSCP-204-JP-A、SCP-204-JP-Cが対象者を集める為にとっている一種の擬態であると思われます。
SCP-204-JPは19██/8/██に██県山間部の███村で財団エージェントにより発見されました。発見された当時SCP-204-JPは村役場の集会所を改装した社に御神体として祀られていました。この際3名のエージェントがSCP-204-JPの影響を受け鏡面部に接触しており、検査を行ったところ3名ともSCP-204-JP-Aに変化している事が判明しました。その後の調査により住民のほぼ全員がSCP-204-JP-Aとして財団により収容、もしくは処分されています。生存者にはAクラス記憶処理が施され、「天然ガス災害」のカバーストーリーが施行されました。
補遺: 村役場職員█████の日誌
これはSCP-204-JPがエージェントにより発見されるおよそ4ヶ月前まで記述されています。
1/10:郷土史家の███先生・開発担当の████氏と北東区の史跡発掘についてのミーティング。
現時点の推測では古墳・弥生時代のものかもしれないとのこと。
こりゃ、水道工事がとんだ村興しに化けたかもしれない。
1/23:現場を視察してきた。遠くから眺めただけだが現場はかなりの活気だ。
あんな作業熱心なやつらは初めて見た。寒い中御苦労な事に、一部は夜通しの発掘だそうだ。
気持ちは分かるが普段からあれぐらい働いてくれればな。
2/25:どうやら史跡から遺物が出てきたそうだ。銅鏡らしいがまるでミイラでも出てきたような盛り上がりだ。
俺も見に行ったが、どうも変な集団が現れたらしい。こんなちっぽけな村のどこから湧いたのか。
2/27:あの時の作業員達がおかしな団体を作ったらしい。自分たちは神の使いとか名乗って、この前出てきた銅鏡を神様みたいに祀り上げてやがる。いつまで続くか知らんが、あいつらはせっかくの村興しのチャンスを潰すつもりか。
3/10:ありえない。あのカルト共、2週間もせず北東区のやつらをみんな洗脳しやがったみたいだ。
発掘の作業事務所を簡易的な社にしてるらしい。上に相談しても「信教の自由」だそうだ。ふざけてやがる。
3/11:「鏡の民」というのがあのカルトの名前だそうだ。北東区を中心に堂々と布教活動をしてやがる。
爺ちゃん婆ちゃんは片っ端に取り込んでるようだが、実際に利益があったとかで噂が持ち切りだ。どうも胡散臭い。
3/15:██と██が鏡の民に入信した。それから福祉課は既に大抵鏡の民のメンバーだそうだ。
俺もここ数日ずっと勧誘ばかりだ。見渡すかぎり信者・信者・信者だ。助けてくれ。
3/22:どうもあいつらは不気味だ。いつも貼付けたような笑顔で社に誘ってくる。
あの███が俺に笑いながら神の世界を語るんだ、気持ち悪いったらありゃしない。
あと█年したら神さんが手下を率いてあの鏡から出てきて、この世を統べるんだとさ。もう何もいうまい。
3/30:いい加減ムカついたもんで、「俺と話をしたきゃ役場の人事課で面会希望の書類を書いてからにしてくれ」ってつい勢いで言っちまった。
まあ、それでも来た時はそのときだ。
4/6:恐ろしいな。あいつら本当に書類を作成してるらしい。
どうせこの村に信者じゃない奴なんてもう幾ばかしか残ってないんだ。
話して駄目なら麓の街にでも転居するとしよう。
4/17:明日18日に「鏡の民」より正式に面会要請。
一度言ってしまったからには、手続きを済ましてきたとなるとこちらも拒否できない
いいかげんうんざりしてた所だ、明日はカルト共にはっきり物言ってやろう。
4/18:[編集済]
4/19:御主による洗礼にて、私は使い人たる役を得た。
御神の使者として集合所を早急に社とし、渡し窓を安置する手続きを計る。
我は鏡の民なり
上記の遺跡は発掘途中で放棄されているのが財団職員によって発見されています。遺跡は古墳時代前期のものと思われ、調査の結果SCP-204-JPがあったと推測される箇所を中心として約13m四方の石の囲いと祭祀場跡が見られました。
補遺: ███村周辺に伝わる民俗伝承をまとめたいくつかの書物に、SCP-204-JPと思われる記述が見つかりました。最初にSCP-204-JPについての記述がされたのは奈良時代後期と推測されますが、口頭伝承と書き写しが繰り返された事により内容は乱れており、現存するものも劣化による欠損が多いために一部箇所しかその様子が確認出来ていません。共通している記述は、SCP-204-JPは“古の人々”の依り代であり、それらが自らの“衣”を求めている、というものです。この“古の人々”については調査を続けていますが、現在進展はありません。
補遺: 20██/12/██に神奈川県██市に本部を置く宗教団体「████」がSCP-204-JP-Aの集団である事が発覚しました。回収された「御神体」はSCP-204-JPとは異なる外見をしているものの、同質のものであると確認。SCP-204-JPはSCP-204-JP-1とし、回収された鏡はSCP-204-JP-2と分類されました。団体は財団によって早急に処分されましたが、この一件によりSCP-204-JPが複数存在する事が発覚しました。以降、この報告書が作成された時点までにSCP-204-JP-1からSCP-204-JP-4までの4つが収容されています。
補遺: SCP-204-JPをketerに再分類すべきとの提言がなされました。この提言については現在議論中です。
SCP-204-JPの発見・確保に職員は全力を尽くすこと。このオブジェクトがSK-クラスシナリオ発生の危険性を僅かながらも含んでいる事を忘れてはなりません。-豊田博士
ページリビジョン: 12, 最終更新: 21 Feb 2024 12:34