SCP-2042-JP
評価: +72+x
アイテム番号: SCP-2042-JP Level 3/2042-JP
オブジェクトクラス: Euclid Classified

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SCP-2042-JPの外観


特別収容プロトコル: SCP-2042-JPは公然と外部に露出しています。収容の重点はSCP-2042-JPの継続的な監視と異常な活動の抑制にあり、財団はSCP-2042-JPの異常な活動が周辺地域あるいは民間人に影響を及ぼさないようにしなければなりません。財団のエージェントがSCP-2042-JPを中心とした生活圏に潜入します。任期は概ね3年であり、それ以上長期の任務は現在まで行われていません。エージェントはSCP-2042-JP内の活動において、奇跡論/神秘術を用いた未知のプロジェクトの調査に従事します。これはSCP-2042-JPの収容において最重要事項であると見なされています。そのプロジェクトの全容ないし具体的な内容が明らかになり次第、SCP-2042-JP調査班が新たな任務を指定します。

財団とSCP-2042-JP間で結ばれた「花籠財団条約」により以下の規則が定められています。

  • 財団はSCP-2042-JPの関係者(主に生徒及び教員)の基本的人権を侵害しない。これは継続的に財団サイトに拘留することの禁止を含んでいる。
  • 財団及びSCP-2042-JPの戦闘可能な集団は互いの占有する敷地内に侵入してはならない。
  • 両者の占有にない中間地帯に滞在する戦闘可能な集団は10名未満に限定する。
  • SCP-2042-JPは市街地における民間人の安全を保証する。

説明: SCP-2042-JPは日本の中高一貫校である「花籠学園」と呼称される団体に与えられた捜査名称です。SCP-2042-JPはその主な拠点を東京都9区の特別緑化地帯に置いています。SCP-2042-JPの敷地面積は9区にある特別緑化地帯の面積の大半を占めており、なおかつ特別緑化地帯における中枢施設です。その立地の関係上、SCP-2042-JPは財団による捜査が困難です。その開発から現在至るまで特別緑化地帯は経済産業省の管理下にあり、日本政府は「財団と政府の分業の原則」から財団のエージェントの侵入や機動部隊の常駐を拒んでいます。SCP-2042-JPの建設計画は財団に秘匿されて行われました。

SCP-2042-JPは一般に学校法人として存在していますが、特別緑化地帯における生命エネルギー資源の研究施設としての側面を持っています。2001年に実施された悪魔工学の再発見において、植物の生命エネルギーがより安定した"代価の支払い方法"であると証明されてから、経済産業省の非主流技術調査室は生命エネルギーの利用について研究を始めました。一般に公開された情報からはその研究が「9区のほぼ全域を用いて実験を行う」ことが仄めかされ、実際に2016年には9区に基幹ガーデンシステム1が導入されました。当初は限定された区画のみに設置されていたものの、9区に生じていた経済的空洞に多くの企業が参入し、さらに拡大していきました。

学校法人としてのSCP-2042-JPは異常なカリキュラムを有した超常教育の指定校であり、その性質上、要注意団体構成員の子女や異常性を持った生徒が集まっています。SCP-2042-JPは生徒を集めるための独自の関係網を持っていることが推測されており、異常な宗教団体や閉鎖的コミュニティに出身がある生徒も多々見受けられます。

SCP-2042-JPが存在する特別緑化地帯は民間人の侵入が禁止されています。SCP-2042-JPは当該地域において、「特別緑化地帯管理センター」を除く既知の唯一の大規模人口建築物であり、この事がSCP-2042-JPの閉鎖的な状況を作り出す要因の1つになっています。 SCP-2042-JPにアクセスするためには、生徒が登校に使うモノレールを利用します。モノレールはその始端の駅から、おおよそ20分ほどでSCP-2042-JPの正面入口にたどり着きます。これ以外の方法でアクセスを行う公的な手段はありません。

SCP-2042-JPの内部には多数の「庭」が存在します。ガーデンシステムの集約的エネルギー変換拠点である悪魔プラントはSCP-2042-JPの敷地内にあり、SCP-2042-JPの上層部が継続的に管理を行なっています。この悪魔プラントは現在研究途中の段階にあることが示唆されており、不安定な状況下にあります。

SCP-2042-JPはしばらくの間、政治的な要因から、財団の調査が行われない状況にありました。
他の団体と比べると監視の優先度は低いと考えられており、日本政府の認可があるSCP-2042-JPは異常な事故を引き起こすリスクは低いとされました。SCP-2042-JPの調査が開始されたのは、財団危機管理部門による「未確認団体に関する把握のマニュアル」の制定が発端となっています。このような超常団体の監視についての基本姿勢の大幅な厳格化は、危機管理部門の過剰反応であるとの批判も存在しました。一方で、倫理委員会による「SCP-2042-JPの生徒の人権が侵害されていないか確認する必要がある」との声明や、国内の要注意団体の監視を強くする動きもあり、SCP-2042-JPへの潜入調査が行われることとなりました。

補遺2042-JP.1: 潜入開始
財団はSCP-2042-JPに対し、不透明な計画内容を明らかにするように警告を行いました。財団が監査を行うこと、あるいは完全に中立な調査委員会を設けることが財団渉外部門から提案されましたが、SCP-2042-JPの意思決定機関である"10人委員会"がこれを拒否しました。SCP-2042-JPは日本政府からの強力な支援を得ているため、会議の上でもその意見を強く通すことが可能でした。これをめぐり、あるいは悪魔プラントの管理権をめぐり財団の機動部隊とSCP-2042-JPの戦闘部隊との市街地での交戦が行われました。戦闘の激化と共に民間人への被害が予想されたため、停戦協定が提案されました。その後、正式に「財団花籠条約」が締結されました。

財団の調査はSCP-2042-JPに対して秘密裏に行われました。財団はエージェントを関係者(その一部は生徒も含む)として潜入させ、プロジェクトの概要について把握するよう派遣しました。これらの手続きは財団が日本政府に持つ実行可能なコネクションから行われました。

以下はエージェントより提出された主観記録です。


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悪魔プラントa-23(放棄済)

中途入学に成功したAgt.野町はSCP-2042-JPへの通年アクセスが可能な生徒手帳を獲得しました。以降、Agt.野町は継続的に潜入活動を行いました。最初期の目標は特別緑化地帯の調査であると指示されました。Agt.野町は、それから3日以内に悪魔プラントについて容易にアクセス可能なルートを発見しました。SCP-2042-JPは特別緑化地帯におけるこのようなプラントの存在を公的には認めておらず、全てのプラントがSCP-2042-JPの敷地内にあると主張しています。Agt.野町の報告によって、この主張は虚偽のものであり、SCP-2042-JPが重大な保安法違反を犯している事が確定しました。

Agt.野町が発見した悪魔プラントa-23は既に放棄されたものとみなされました。この悪魔プラントa-23は周囲が人工的に作られた水路に囲まれており、最終的に水路はプラント下部に設けられた異常次元ポケットに流れ込むようになっています。検査の結果、水路から採取された液体には‪クンショウモが多く含まれていることが判明しました。このプラントは小規模に構築された実験的施設であり、悪魔プラントのエネルギー生成源としての藻類の利用可能性について研究がなされていたと推測されます。しかしながら、この研究計画は施設の放棄という形で中断されており、実験は失敗に終わったと見なされています。財団の悪魔工学研究者による試算では、悪魔プラントによって植物からエネルギーを得るためには、植物体の複雑な構造が相互作用する必要があり、単細胞あるいは群体レベルの藻類では十分なエネルギーが供給できないとされています。実際には水路内の他の植物群からエネルギーを得ていたと考えられます。

Agt.野町は1週間の間に以下の悪魔プラントを発見しました。

名称 概要 状態
a-23 フリューグ製法。SSE (Soul Spent Energy)ガスを貯蔵するための機構を備えており、外見上はガスプラントに見える。異常次元ポケットを下部に有しており、そこに悪魔を召喚可能な儀式手順が含まれたシステム系統が存在する。 放棄済
a-6 フリューグ製法。薄緑色の球体が悪魔存在の状態を定義する役割を果たしている。その球体を覆うようにクチナシ、アサガオなど多年草が多く繁茂しており、主な交換資源としての役割を果たしている。 休止中
a-19 フリューグ製法。地下にその大部分が存在し高木の根から交換資源を得ている。地上に突出した部位からはアスペクト放射が観測された。 稼働中
c-1 チャングン製法。多量の硝酸を生産するオスワルト法を用いた施設に隣接し、それを利用して不安定なSSEを安定させている。 稼働中
花籠 おそらくは花籠学園の敷地全域を指すと考えられる総合名称。目下調査を行う必要がある。 準備中

Agt.野町は「花籠」と称される擬似悪魔プラントの調査を命じられました。この時点で得られた情報は、「花籠」がSCP-2042-JP及び9区全体を利用した擬似的な悪魔プラントを指す呼称であるという事項のみでした。しかしながら、悪魔プラントの構成には召喚ラインを構築するメインシステムが必要であるため、SCP-2042-JPのどこかに大規模なメインシステムが存在することが予想されました。

補遺2042-JP.2: 調査
2029/5/26、Agt.野町は学校生活に馴染むことに成功したと報告しました。同時にSCP-2042-JPに通う生徒について調査しており、その代表的な例として以下の人物を提示しました。

監視人物ファイル

氏名: 日奉 桜

学年: 高等部1年

概要: 要注意団体日奉一族の血縁者。彼女の祖母の兄(日奉 枢?)が日奉の総本家である「木流」にあたるが、彼女自身はいわゆる分家筋の「草流」になる。しかし日奉一族に典型的に見られた内婚の風習は既に消えており、このような本家と分家の関係は弱くなってきていることに注意したい(それでも一般的とは思い難い風習や確執が散見されるが)。自らこのことを吐露したため、彼女は日奉の血に少なからずアイデンティティの重きを置いていることが見受けられる。

彼女は情報災害やミーム汚染に対して高い耐性を持つと推測されている。記憶処理の効果も徐々に薄まっており、これ以上の記憶処理の実行は計画の露見に繋がる可能性が高い。図.1は学園外のLoI-23859"日奉神社"で撮影された。彼女とは「超常怪異伝統研究会」(通称「カイケン」)の部活動見学において初めて遭遇した。彼女はカイケンの会長に"何ができるのか?"と問われると制服のポケットから式神実体を召喚し目の前で自由に動かして見せた。この式神実体は外見上ナミヘビに似ているように見える。式神実体は召喚されている時、常に体の終端部を日奉桜の服装のどこかに収納している。彼女は式神実体の全長は実質無限にあると述べた。前にためしたところによると100mまでは伸びたらしい(詳細不明)。


その翌日に主観描述ファイル#2は提出されました。Agt.野町が体験した事象について財団AIによる解析が実行されました。‪「Th.Wolf」「Lehm」「Maxim」の高度AIプログラムが初期化された上で採用され、いくつかの異なった人格を付与した上でヘッセ法を実行しました。以下は文章に直されたAI間の通信の記録です。

[解析開始]

Th.Wolf‬: それではAgt.野町から提出された主観描述記録についての解析を始めます。私たちにはそれぞれ別の解析システムが当てられています。私は「映像」Lehmは「描写」Maxim‬は「感情」。

Lehm: 私からそれぞれの違いについて説明しましょう。映像はそのまんま。基本的に主観の記録というものは非常に曖昧なものですから、私が平均値を割り出して他の人にも理解できるような形に変化させました。ここでは彼女が見たものについて詳細な分析を試みようと思います。描写は記録者の描写したことです。これは前者との違いが無いようにも思えるのですが、映像というのは見たそのものを指すのに対して描写はさらに一枚奥にあるという大きな差があります。最後に「感情」これはどの程度揺さぶられたかなどと捉えていただければわかりすく理解できるかと思います。3つの要素の中ではかなり重要ですね。これは大雑把に言ってしまえば何にどう思ったか、も含みます。

Maxim‬: それでは解析を始めます。

Th.Wolf‬: まず主観描述記録#1からですね。Agt.野町がモノレールの中について描述しています。その時彼女が座っていた座席は5人がけでラズベリーのような色をしていました。「視覚情報で示された」との描述からはAgt.野町がネットワークインプラントを行っていたことが示されていますね。

Lehm: また、ここでモノレールを電車に極めて似たというふうに描述することで後半の暗示をしています。私たちの母集合がここを物語構造の始まりと決定しました。

Maxim‬: ここでAgt.野町は言いようのない期待感と緊張感を持ち始めます。そして不安感から準備運動を始めます。

Th.Wolf‬: 少し唐突な気もしますね。

Maxim‬: 彼女は元から所在がなくなればこのような行動に出る癖があるのです。

Th.Wolf‬: そしてAgt.野町は窓の外に描述の目を移しました。窓の外はビオトープとだけ描述されています。

Maxim‬: 具体的にはどんなものがありましたか?

Th.Wolf‬: 草原だけが続いて奥の方には小高い丘があったようです。少しの高木──おそらくはBetula platyphyllaと見られるそれがあった以外は草原だけでした。空はとてつもない快晴で青色でした。

Maxim‬: それは綺麗で爽やかな気持ちをもたらしました。

Th.Wolf‬: 彼女は伊佐課長──便宜上の父親からからかわれます。

Lehm: ここを始まりにしたのはなぜですか?

Maxim‬: それが2人の関係性を示すのに必要だったからです。

Lehm: 確かにそれは理にかなっていますね。次にいきましょう。

Th.Wolf‬: Agt.野町と伊佐課長がSCP-2042-JPの学園長であるユリヤ・パヴロウナ・クルゥブニーカと会話しています。その際には様々な花を描述しています。種の同定を行いながら考察していきましょう。学長──と述べますが、その女性はこれを学園の本懐といいました。つまりこの花たちはなんらかの計算やエネルギー抽出作業に従事しているというわけですね。最初の花、Phalaenopsis aphrodite。さらなる種の同定はかないませんでした。次の花、Benthamidia japonica syn. Cornus kousa

Maxim‬: これはAgt.野町がハナミズキと描述しましたが…

Th.Wolf‬: 実際はそれとよく似たヤマボウシであると考えられます。実の形が大きく違うので結実していれば判別できたかもしれませんね。次は──

Lehm: Th.Wolf、キリがありません。簡潔に描写してください。

Th.Wolf‬: わかりました。表にしましょう。

呼称 同定された学名
サクラ Cerasus × yedoensis (Matsum.) Masam. & Suzuki ‘Somei-yoshino
ヒマワリ Helianthus annuus
ヘビイチゴ Potentilla anemonifolia Lehm
キク Chrysanthemum × morifolium Ramat.(いわゆる厚物と呼ばれる品種)

Maxim‬: こんなところですかね。

Th.Wolf‬: 呼称名サクラはいわゆるソメイヨシノであり、盆栽のように植えられていたと描述されています。この部屋の中の大半がエネルギー資源である一方でこの植物は計算負荷の中心となっています。それにヘビイチゴときて集合体の安定性が増しています。このバイオ構造が当てられた命令は単純に室内の環境制御です。温度や湿度が一定の閾値を超えないよう室内の機械を調整しています。植物は温度や湿度を感じあたかもセンサーのような役割を果たしながら命令を実行します。生来の感覚から植物に適応した環境を理解しているため、学習モデルが既に付与されたAIと同じように機能しています。

Maxim: これは室内のバイオ構造を維持するための計算なのですね。

Lehm: この時の感情は花の美しさについて言及していません。会話が進むにつれ課長へのイライラのつのりと学長への不信感が描述されます。

Th.Wolf‬: 学長が語っています。

Maxim‬: 花は基本的に大型の樹木と比べると安定性に欠けコンピュータとしてもイマイチでありながら、エネルギーとしての評価は高いです。したがって計算のためというよりかは──なんらかのエネルギーを必要としているプロジェクトを行なっていると考えられます。悪魔は古典的に多様な経験をした魂を好むとされています。それは人間の価値であるからです。花を悪魔工学に用いるときもその多様性が高い方がより効率的にエネルギーを生み出すのでしょう。

Th.Wolf‬: 今室内の多角的な解析を行っています。室内の全ての植物はある一定の方向に共感があることがわかりました。部屋の四隅に共感ポイントが配置されていて、そこから外部にある大型の樹木(描述されていないため詳細不明)につながっています。K2000-9?!これはまだ一般的には使われていない接続機器ですね。今理外研製薬で新しい医療機器として開発が行われているはずです。財団でさえこの開発データにアクセスできないほど機密性が高いはずなのですが…?

Maxim‬: Agt.野町はこれらのことを描述するのに成功しました。

Lehm: しかし依然として感情は人の方に向いていますね。不信感、それに気を配っている…?罠がないかどうかでしょうか。私たちの発見に彼女は気付いていませんが。その他に何かありましたか?

Th.Wolf‬: 彼女に危険なものはありません。学長は外に見張を張らせているようですが。銃で武装していますね。

Maxim‬: 気がつかれている…?!

Lehm: それはないでしょう。いわゆる大物の感といったやつでしょう。私たちも時折感じるでしょう。

Th.Wolf‬: 私にはよくわからないですが。そして彼女は磁力カードを手渡されます。白色にピンクの線が入ったデザインです。花籠学園(Hanakago school)と書いてあります。

Maxim‬: 彼女はそれを眺めます。

Lehm: 学長に「特別緑化地帯には入らないでください。」と言われて少しドキッとしています。これからやることを見透かされたような。

Th.Wolf‬: しかし学長はまだ財団のエージェントが潜り込もうとしている…ということには気づいていないようです。

Maxim‬: ここで主観描述ファイル#1は終わっています。

Lehm: それでは次にいきましょう。主観描述ファイル#2では謎の地下施設についてのみ焦点を絞っていこうかと思います。

Th.Wolf‬: あ、その前に「カイケン」の部室内にある「庭」の報告をします。一列に並べられていた万年青はレベル2のクラウド層までアクセス可能なほどの機能を持っていました。これは専用のデバイスを用いることで学園内の監視カメラの映像を閲覧することができるようです。所有者を今確認しましたが、「3314番白乃瀬 鯨」となっています。去年の9月頃から不登校気味にあるようですが、一応在籍記録にありますね。過去にカイケンに所属していたようです。

Maxim‬: 了解です。では地下施設の分析に戻りましょう。彼らは特定の手順を踏むことで地下施設に入ろうとしました。念のため、これは特定の怪異や異次元との関連はありませんでした。100%普通の地下空間です。一種のパスワードのようになっており、これを使うことでエレベーターの機能が利用可能になるようですね。そのシステムを確認しました。相当古いシステムです。学園内に人の判別くらいできる花たちがたくさんあるというのにも関わらず、時代遅れな判別方法を使っています。調べたところ、建築年1960年です。

Th.Wolf‬: これについてはも調査済です。驚くべきことに──今花籠学園が建てられている場所は地下鉄の建築予定があったようです。しかし、この記録はどこにもありません。それは単なる用途ではなく核シェルターとしての役割があったからです。およそ26年前、ロシアからやってきた女性は東京に居を構えました。彼女は隠れて工事を行い今の地下施設より狭い地下空間をつくりました。それがAgt.野町の到達した場所です。そこから拡大したのがいつなのかわかっていません。それ以来、この空洞のことは誰にも知られていなかったからです。花籠学園の運営者はそれを知ってか知らずか同じ場所に学園を建てます。

Lehm: それでは彼らが遭遇した実体はなんでしょうか。

Th.Wolf‬: 悪魔型実体と類似性が見られます。これらは外見的に以下の要素を持っていましたね?

中には乗客が満員電車のように────比喩でもなく実際に詰まっていて、それは触手を複雑にうねらせていて、それはダッフルコートを着た人型実体で、それは幼稚園の制服を着た人型実体で、それはスマートフォンをいじり続ける若者で、それは和服を着た老人で、それはウルトラマンの怪人の名前を叫び続けていた。人々は常に1つで、合体していた。

Th.Wolf‬: まず注目していただきたいのは変化し続ける外見です。どれも人のように見えますが、その年齢や性質は各々でまったく異なっています。それは「古典的悪魔」の条件とかなり類似しています。悪魔は一定の外見を有さないと伝説では良く言われます。そして電車に乗っていたという状況からも1つ考えられることがあります。これも古典的悪魔の話になりますが、多くの悪魔は遠く離れた場所からその契約を果たすことができません。そのため、悪魔の契約の恩恵を十分に受けたいのなら、常に同伴させておくか、一連の場所をぐるぐるまわさせておくしかないのです。ここでは後者をとったようですね。それが古典的な性質に基づいた理解です。触手を持っていたというのもそれに近いイメージでしょう。

Maxim‬: それでは花籠学園は悪魔を飼っていたと?

Th.Wolf‬: まったく違います。類似性が見られるということです。奇跡論的な考え方を用います。「相似なるものは相似なるものを生じさせる」、これが考え方です。つまり、Agt.野町らの遭遇した実体は極めて精巧に作成された悪魔工学デバイスである可能性が非常に高いということです。しかし、この後の描述がされていないせいで情報不足です。これ以上詳細に分析するならば、再調査の申請を行なってAgt.野町をまた遭遇させる必要があります。

Maxim‬: わかりました。その後のAgt.野町はどうなったんでしょう?

Th.Wolf‬: 描述がされていないのでわかりませんが、最初のポイントと時系列が逆転しているので生存は保証されています。

[分析終了]

補遺2042-JP.3: 資料
SCP-2042-JPの潜入作戦が実行される一方で関連各所へのインタビューや資料収集が行われました。以下はその資料群の内、特に重要性が認められるものの抜粋です。

資料.1 東京都9区について


閲覧区分: 公開情報

ファイルコード: 569547-A


概要: 東京都9区は23区の南西部に位置する特別区です。

元々この地域では‪Yakushi‬の傘下企業である株式会社"サティスプラント"が経済の中心となっていましたが、サティスプラントは2016年の連合内買収で理外研製薬と統合されたため撤退しました。そこで生じた経済的空洞に目をつけたのが日本政府主導の「生命エネルギー開発プロジェクト」です。以下は代表的な参入企業のリストです。実際には50社を超える企業が関わっていることに留意してください。

企業名 事業内容 資本割合
原崎産業 バイオ構造の研究開発を担当。バイオ構造の元となる植物を生産する工場を保有しており、生産から加工までを一手に担っている。 3割
プロメテウス・メディカルケア バイオ構造の医療的側面から研究する。現在までにバイオ構造を利用してある種の脳性麻痺を治療することに成功している。 1割
雪村土木 9区の建築物に表面積を増やすテトラ状ポットなどの構造を導入。新設のビルディングの建築も担当する。 1割



資料.2 「生命エネルギー開発プロジェクト」


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル2

ファイルコード: 236565-A

前説: AIによる高度な主観描述記録の分析は、SCP-2042-JPとK2000-9型ゲートウェイのつながりを示しました。これから、本来極秘であったはずの開発機器がここで用いられていたことについて理外研製薬に追求がなされました。以下は理外研製薬から提出された資料のまとめです。


K2000-9型ゲートウェイは「庭」クラウド層とデバイス層を中継する抽象概念接続機器です。「庭」はこれまでの問題で提起された通り、温度、湿度、触覚などデジタルデータによる再現が困難な抽象概念の入力を行なってきました。従来のクラウド層中継機はその中から学習機に記録された感覚のみを取捨選択していましたが、K2000-9型ゲートウェイはある種のパターンデータの認識と処理を行うことでこれまで不可能であったことが可能となりました。

アナログデータの多くは物理量で表現でき、デジタルデータに比べて連続的かつ演算の高速処理が不可能という性質を持っていました。これらは代表的にマルチビット角度センサが入力各変位に対応しています。絶対値エンコーダは位置や角度の絶対値を表示しています。「庭」の持つアナログデータを処理するためには植物のパターンを生じさせる法則性の認識が必要であり、それらは可逆圧縮コンバータにより可能となりました。

この開発により「庭」のアナログセンサーとしての役割を生かしたサービスの提供が期待されます。例えば以下のような用途に用いられることが想定されています。

  • 大人数の中に存在する潜在的異常疾患の判別。
  • ある一定の室内を完全にモニタリングすることにより異常事態への即座の対応が可能に。
  • 交通インフラの革新。これまでスケジュール通りに運行されていた公共交通機関が個人のライフスタイルに合わせた運行を行えるようになる。
  • ロボットの完全没入による遠隔操作。
  • その他脳障害に由来する疾患の治療。

2010年からすでにK2000-9型ゲートウェイの開発は始まっており、経済産業省の非主流技術調査室が生命エネルギーの調査を行う前から主に医療用として開発されていました。理外研製薬はサティスプラントと‪Yakushi‬内部での合併を行った際、‪その研究データを引き渡す必要があり、この時点で‪既に‪Yakushi‬全体で共有される情報になっていました。‪Yakushi‬の序列2位企業村雨医機は日本政府の「生命エネルギー開発プロジェクト」について資金提供を受けており、研究内容の共有がなされた可能性があります(それが理外研製薬に知れることはない)。

現在では理外研製薬以外にも村雨医機などの他の‪Yakushi‬関連企業で研究が行われています。


資料.3 非主流技術調査室の説明会書き起こし


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル3

ファイルコード: 235353-A

前説: 花籠学園の創立について行われた「生命エネルギー開発プロジェクト」音声記録の書き起こし。理外研製薬から提出された。


こんにちは、私は経済産業省の非主流技術調査室渉外班の赤花衣織というものです。このような小娘ですが、皆さまに私たちのやろうとしていることについて説明しようと思います。我が国のエネルギー資源は乏しいといっても過言ではないでしょう。国内には名の知れた活火山を持っていますが、それらは地熱発電や温泉の観光資源という形でしか利用できず、それすらも乏しいと言わざるを得ません。石油経済は50年以内に破綻すると見込まれています。これは石油が限りなく存在するものではないという一般にも公開されている真実です。しかし私たちもそのような事態にあぐらをかいていたわけではありません。何よりも魅力的な資源が私たちの身近にあったのです。それは「花」です。

確か2001年のことでしたね?東芝のある開発部門が悪魔工学の再発見を行いました。まず、この悪魔工学とかいうけったいな名前で面を喰らわされた方も多いかと思いますが、実のところこれは特定の儀式やパターンから成り立つエネルギーの生産方法です。ここで詳しい理論について説明すると長くなってしまうのでしませんが、昔から魔法陣を引いて願い事を叶えてもらうように特定の図式が電磁波によるエネルギーの生産を行います。納得いきませんか?詳しくは配布した資料3をご閲覧ください。図.1はその技術が用いられてきた例です。その危険性から悪魔学拡散防止協定が生まれましたが………。待って、待ってください。まだ席を外さないで。何が防止協定ですか、私たちには安全な手段があるというんです。ちょっと待ってくださいね。

[資料を探す少しの間]

ああ、これだ。ガーデンシステム「庭」の技術です。もうすでに環境保護の名目で「緑化地帯」を用意してあります。これはただの庭園ではありません。エネルギー資源の材料となるのです。植物が相互にやりとりを行う能力があるというのは最近になって検討され始めた研究内容です。動物は脳やら脊髄やらその中枢に重要な神経を置いていますが、植物はそのような器官がなく散在的な思考回路を持っているとされています。39ページを見てください…これが実験結果です。単純に2+6が何かという問いです。これに実験森林αは8と回答を出力しています。この時に用いたのが理外研製薬様のデバイスです。つまり植物は明らかに知的生命体としての要素を集団において持っていると考えられます。それはつまり、先程説明した悪魔工学においては安全な代価の支払い方法であるということなのです!

植物を触媒として用いることでIoTのような機能も提供できるほか、そのいかなる資源の損失なしにエネルギーを生み出すことができる「庭」はまさに夢の資源です。

その実用化にかかる費用はそれほど高くないと見積もられています。現在まで3億円が特別緑化地帯に費やされましたが、これは特別環境保護費として計上される予定ですのでいかなる負担もありません。参加企業の皆様と他の技術の開発を分担してやればさらに高い利益が見込めます。


資料.4 学園長の身元調査


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル3

ファイルコード: 32831-B


説明: ユリヤ・パヴロウナ・クルゥブニーカは2005年に日本に渡航した花籠学園の学園長です。彼女がクルゥブニーカの姓を得たのはおよそ1963年のことであり、ロシア、オレンブルク州の小さな町の孤児院で戸籍上の両親となった2名の養子になったことに起因しています。彼女の生物学的な両親は不明、かつ複数の孤児院をたらい回しにされているため出身地がどこにあるかも曖昧です。彼女は奇妙な振る舞いをすることが多々あり、周囲からも疎まれていたことが孤児院の管理者により述べられています。彼女を引き取ったクルゥブニーカ夫妻は、彼女に愛情を与えて育てますが彼女が23歳になる1980年に交通事故で死亡します。

彼女は夫妻の土地を継承し小麦の栽培を始めることで資産を得ました。1994年には取引のために株式企業を設立し、2000年にはその利益が莫大なものとなりました。しかし、2003年にその企業を売却しています。

2005年に日本で学園法人を設立します。それが花籠学園であり、時代の流れに沿った超常の学園団体として名を広く知られるようになります。

補遺2042-JP.4: 展開

この記録の後Agt.野町は"カイケン"に所属していた白乃瀬 ‪くじら‬氏の家を訪問しています。その理由は、学園の探索行で確認されたいくつかの学園長に関する噂の検証を(主観描述記録#3を参照)彼女の「庭」のアクセス権限で行うことです。その結果、「庭」に記録されていた映像が採集されました。以下に示します。

映像記録#1

噂の内容: 「屋上で飛び跳ねる学園長」

日時: 2028/7/6


屋上は簡易の庭園になっており休眠中の「庭」である。毎日8:00と16:00に所定の管理者が来る以外は無人が保たれており、基本的に他の人間は入る権限を持たない。この日は晴れていたが2:23になると急速に天気が崩れ積乱雲が形成される。雨が降り出した3:32に屋上階段のトビラから学園長はバク転を繰り返し現れる。学園長は「庭」に入り、激しい運動から草花を荒らしながらバク転で進む。

屋上の末端にたどり着くと学園長は一旦バク転を停止し手を横に振り上げる。そこから100m先には別の校舎棟が存在するが高い柵に囲まれている。学園長は赤く発光し始める。

学園長は屈伸運動を1分ほど繰り返した後、高く跳躍する。屋上を囲っている柵を超えて向こう側の校舎に着地することに成功する。彼女の足が骨折したように見える。膝から崩れ落ちてしばらく動かなくなる。上半身の力だけで階段までたどり着きそこから降りていく。


映像記録#2

噂の内容: 「石灰岩を食べる学園長」

日時: 2028/3/19


直前まで卒業式が体育館で行われており、その「学園長の話」が終わった後の出来事であると推測されている。

学園長はそのままの格好で体育館の裏に現れる。倉庫のような場所から荷車とスコップを運び出してくる。そのまま校庭の松の木の根本を掘る。

学園長が赤く発光し始めると振動が発生しスコップで掘られた穴が拡大する。学園長はそこに顔を入れて石を拾い食べる。これが30分以上続けられるように見える。


映像記録#3

噂の内容: 「硫酸をかけられる学園長」

日時: 2029/5/8


学園長はB棟1階にある生物資源学習室で椅子に縛られている。カーテンが閉められていてあたりは暗く見通すことができない。この映像は室内の角に置いてあるサボテンから傍受されているため画質が良くない。 学園長は必死に抵抗しているように見える。拘束されてから3分程度経つと明かりがつく。そして多数の男子生徒に囲まれている。複数の男子生徒は学園長にビーカーを投擲していく。これはしばらく止むことがない。学園長はそれにより強く苦しむ。なぜこのような状況になったか現状では情報に欠けている。

多数のビーカーが衝突したにも関わらず学園長は確認できるダメージを有していない。いくつかの白い煙が体表面から発生していることが見てとれるが、それがどのようなことを示しているのかは不明である。学園長は赤く光り始める。彼女は縄での拘束を自ら解いて立ち上がる。

それから消失する。


映像記録#4

噂の内容: 「自分の肉を料理する学園長」

日時: 2027/11/19


調理室での出来事であると思われる。食品科の授業におけるクリームシチューの大量生産が行われていたが、その中に学園長が平然と紛れ込む。生徒や教員は学園長が目の前を通り過ぎてもその存在に気がつくことはなかった。学園長は人とぶつかったり、調理台ので寝そべったり、自分の切断した小指を鍋に投入したりしたが、これらの状況はまったく気にされていない。

30分が経過すると学園長は赤い光を放ち、全ての欠損した部位を再生させた上、異常な形態の部位を体に発現させた。背中に構成された大量の指と酷似した器官を用いて調理室内の壁を這い回り、換気口に体を捻り込んでその場から脱出した。


映像記録#5

噂の内容: 「"1人"で演奏する学園長」

日時: 2029/7/1


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未探索の地下施設

全ての生徒が学校からいなくなった19:00ほどの出来事であると思われる。Agt.野町の探索行(主観描述記録#2を参照)にある地下施設と連続した場所にあるように観察された。図にあるように学園長が入った施設はオペラホールと似ている。学園長はトロンボーンを携え壇上の上まで歩いた。その時学園長はこれまでより一際強く赤く発光したように見受けられる。

学園長がトロンボーンを大きく吹くと壇上、客席、指揮台の上に学園長と酷似した人型実体が出現する。彼らは外見上、学園長であるかそれ以外の老年の女性によく似ている。この実体群は演奏を始める。この演奏には概ね異常性は見られなかったが、唯一の懸念点として3番目の楽曲が華麗なる大演舞曲であり、その演奏が行われている間地面が揺れ続けたことが挙げられる。この点について財団神学部門は既知の神格降臨事件との類似性を指摘し、神格の召喚につながるリスクについて警告を行った。

映像記録での検証は、学園長の噂がいくつかの事実に基づいているものだということを示唆しました。これから推測される範囲内では、学園長は少なくともレベル3の再生能力を所持しており、奇跡論に基づいた魔術的能力を行使することができ、おそらくは現実改変者であるという仮説が成り立ちます。

補遺2042-JP.5: イベント - スクールカーニバル
2029/9/14から2029/9/15の2日間にSCP-2042-JPで文化祭に当たるイベントが開催されることが判明しました。この花籠祭と呼ばれるイベントの最中は生徒の親族に限って(生徒は"招待状"を規定の枚数まで発行できる)SCP-2042-JPへの侵入が許可されます。この間モノレールは無料で利用することができるほか、限定的に特別緑化地帯をガイドの元で巡ることもできます。このような機会が発生したことにより、財団は工作員をさらに送り込むことができました。

財団はこの機会に伊佐課長と鏑木博士を潜入させることに決定しました。この時、SCP-2042-JP内で実行された儀式手順によって悪魔実体が出現していることが認知されました。後に判明した情報によると軽音楽部の野外ライブで発生した反復的な異音がきっかけとして、発火とともに緑色を呈する煙が発生し始め、まず最初に第一の悪魔実体が出現しました。これは現場の目撃者によれば学園長と良く似ている女性の悪魔実体でした。これは頭蓋に5cmほどの突起部を有しており、肌が本来の学園長のものよりも浅黒く変化していました。その後、SCP-2042-JP内の各所、主に文化祭の展示が行われている場所において悪魔実体が確認されるようになります。

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地下施設で撮影された写真

伊佐課長と鏑木博士の2名は学園長に酷似した人型実体と地下の施設で遭遇しました。Agt.野町はそこに集合することができず、戦闘可能な職員がいなかったため即座の撤退が決定されました。

補遺2042-JP.5: 結論
イベント - スクールカーニバルにおいて財団が派遣した人員は学園長と相対しました。そこで負傷したAgt.野町及び日奉桜を一度外に避難させました。伊佐課長は「庭」の機能で本当の学園長の居場所を発見し(偶然、Agt.野町と彼の精神変動値が±5pmに収まったことと財団植物エンジニアのバックアップがあったことにより検索が可能になった)、屋上で学園長を捕縛することに成功しました。しかしながら、学園長は歯に仕込んだ青酸カリにより自害しました。

その後の事後調査によりSCP-2042-JPで行われていたことが概ね判明しました。地下施設はケレン分類によるところの類感呪術の根本となる原理構造であり、地下鉄は悪魔実体と結びついていました。Agt.野町が遭遇した実体はGeorgクラス悪魔実体であると推測されました。この実体は典型的に肉体の強化や変造を付与することが可能であり、その代価に契約者死亡時の余剰魂エネルギーを受け取ります。

1. 悪魔プラントが「庭」を基にして熱エネルギーを生成する。この時、悪魔実体からの支援を次元内の関税の免除という形で受け、実質想定されるエネルギーのロスなしに地下施設に貯蓄する。

2. 契約を通して学園長に身体構造の変化や強化を付与する。類感呪術を通すことにより学園長と地下施設は繋がっている。

3. Georgクラス悪魔実体は主たる利益として「学園長の生命」を徴収する。

4. Agt.野町が「記憶の消去」及びその知性化現象エネルギーを代償に日奉桜の頭部を再生する。
 

学園長が死亡したことにより悪魔実体は消失し、これ以降地下施設の異常な性質は見られなくなりました。Agt.野町との契約を完了した悪魔実体は、それがこれ以降に異常な性質を示さないことを証明し、いわゆる「利息分」に相当する金1.3KgをAgt.野町に渡しました。

日奉桜の治療は「庭」に不明な領域からダウンロードされた不明データを用いて実行されました。かねてより研究されていた「庭」を用いた「MinD in a Device」のプロジェクト結果がこのデータが日奉桜の感覚知性伝達複合体であることを示唆しました。SCP-2042-JP全体の80%の「庭」がそのデータを処理するために稼働しており、未だ不活性な状態にある伝達複合体を覚醒させることができれば、理論上日奉桜の復元が可能です。

復元計画が実行され、成功しました。日奉桜の頭部が完全な状態で存在していたことと、殆どの感覚知性データが存在していたことが、完全な再生の成功に繋がりました。本件は特異な例であり、現行の技術では精神を「庭」にアップロードすることがそもそも不可能である事、その上で対象人物と適合可能な脳構造が保存されていなければ完全な再生は不可能である事に留意してください。詳細なレポートはサイト-81Q5の管理官に申請することで閲覧してください。

結果的に日奉桜は、2029/9/14、サイト-81Q5の特殊割り当てA3保養室で目を覚ましました。以下は状況整理のため行われたインタビュー記録です。

インタビュー記録2042-JP

インタビュアー: Agt.野町

対象: 日奉桜


インタビュアー: それではインタビューを始めます。現在あなたがいる状況について把握なされていますか?

対象: [声を出そうとするが口をうまく動かせない]すいません…。まだ、よくわからなくて。

インタビュアー: 記録のためにもここで簡単に説明したいかと思います。あなたは異常現象により一度脳を破壊されました。その後発見され、ここサイト-81Q5で治療を行い無事に回復したのです。まだ治療方法が確立されていない物なので救命可能性はそれほど高くなかったのですが、うまくいってよかったです。

対象: [頭を抱えながら]ああ、そうでした。しかし私に話せることは少ないようです。

インタビュアー: 事件の影響で記憶が曖昧なのでしょう。それで覚えていることはありますか…?

対象: 文化祭の最中に火が吹き上げてそこから人が出てきました。その時、先生を連れてこようとしたけどシャッターが閉まってて出れなかったんです。私は窓を割ってそこから飛び降り…。私はエレベーターを目指しました。エレベーターの下には地下鉄があって、そこから沢山の学園長が現れていたからです。

インタビュアー: なぜエレベーターから地下に行けることを知っていたのですか?

対象: 前に行ったことがあって、その時のことを鮮明に覚えていました。私はそこで誰かとはぐれてしまって…。確か藤峰会長が周りからいなくなってしまって。

インタビュアー: あなたの部活動のメンバーですね。

対象: はい。そこから記憶がありません。

インタビュアー: 眠っていた時、何か覚えていることはありませんか?

対象: 長いこと眠っていたような気もするのですが、誰かがそこから優しく起こしてくれたような感じもするんです。

インタビュアー: [沈黙]

インタビュアー: そうですか。軽い聞き取りなのでこれくらいでいいでしょう。お望みなら記憶処理を行いますが。

対象: いや、記憶処理はしなくてもいいです。

インタビュアー: わかりました。それではよくご養生してくださいね。

対象: はい。


終了報告: 彼女に問題は見受けられませんでした。

最高裁で日本政府、いかなる関連企業も花籠学園の経営権を持たないと認められた通り、その経営権は一時的に財団に移りました。これにつき、中立委員会が設立され、暫定的な1年間の試運期間において経営が差し支えないと認められれば、正式に花籠学園は財団の傘下に移行します。

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