SCP-2043-JP
rating: +22+x
アイテム番号: 2043-JP
レベル4
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
warning

koutisyo.jpg

SCP-2043-JPの外観


特別収容プロトコル: SCP-2043-JPから半径5km以内のエリアは非居住地域に指定されます。SCP-2043-JPの情報はB種機密情報に指定され、これに関する財団から認可を受けていないメディアの報道は検閲されます。また、探索において使用したDクラス職員は死刑として扱われます。

SCP-2043-JP内の居住区にはDクラス職員が常に3人以上滞在しています。これまでの探索の経験から、SCP-2043-JPは財団の派遣した職員を柔軟に受け入れることが判明しています。SCP-2043-JPの敷地内に1度立ち入った人物を回収する方法は判明していないため、その方法が確立されるかSCP-2043-JPが無力化されるまでDクラス職員の回収は延期されます。

説明: SCP-2043-JPはかつて異常性保持者社会復帰センター(サイト名: サイト-81A3)として利用されていた施設です。異常性保持者社会復帰センターは多様化する犯罪に対応するための刑事施設として建設されました。 2013/7/15に生じた特異的な現象により現在の異常性を獲得するにいたりました。終了室の消失、地下部の構造の変化などの建築物の形状的異常の他、後述するイベント-Gallowsを定期的に発生させます。

サイト-81A3は1998年以降、超常技術、奇跡術、現実改変などを利用した犯罪、所謂"超常犯罪"の増加を背景として設立されました。とりわけ、2001年に発生した地下鉄呪殺事件は宗教団体による呪術的な大人数の殺害が行われ、異常性の介入した事件への対策を求める世論の動きが活発化しました。超常犯罪の原因は非常に多岐にわたり、個々の異常性を鑑みた上での対策を講じる必要が生じていました。その一環として、超常犯罪を犯した人物の収容先として設けられたのがサイト-81A3です。サイト-81A3は犯罪を犯した異常性保持者に自由刑を行うための施設です。超常犯罪者の収容を法的に可能にするため、サイト-81A3は財団の施設とは異なった位置づけにあり、多くの刑務所と同様に同省の矯正局が管轄していました。‬しかしながら、矯正局には元々財団職員も多く所属しており、実際は財団の管理も十分に行われてきました。

SCP-2043-JPは内部にいる人物1に対して一定の規則を強要します。この規則に逸脱した人物は事前に近くのエリアの放送で「執行」が行われることが通告され、その後1〜3分の間に群発生頭痛を経験します。個々の事例によってはそのインターバルには差が見受けられますが、およそ5分後までには頭部が爆発することにより死亡します。

強要される規則はサイト-81A3の受刑者規則に関連が見られます。代表的なものでは以下のような要素を含みますが、各イベント-Gallowsのルール違反においては群発生頭痛の過程を得ない即座の頭部の爆発が実行されます。

  • 外から持ち込んだものの飲食。しかし、例え外から持ち込まれたものであっても水やお茶などの飲料水、ごく少量(パッケージにして2個まで)の菓子類は認められた。
  • 器物の破壊。壁への殴打などもそれに含まれる。ただし、損害の程度によっては必ずしも異常性の発現には繋がらない。
  • SCP-2043-JP-A、-Bおよび受刑者に対する暴力行為。程度により頭部爆破までのインターバルの時間は異なり、基本的には暴力的な傾向が強くなればなるほど短くなる。とりわけ、ナイフなど相手を即座に致死できるものを凶器に用いると、それが完全に実行される前に頭部が爆発する2
  • SCP-2043-JP外への脱出。
  • 指定時間外における、個別に割り当てられた自室からの外出。
  • 性行為。ただし同性同士は除く3

サイト-81A3の中央講堂には異次元ポータルが出現しています。これは講堂の壇上にある脇に位置する形で存在しており、そこから2種の人型実体(SCP-2043-JP-A/B)が発生します。このポータルは一方通行であり、こちらからは、便宜上存在が想定される異次元の探索は不可能です。探索を試みた人員は単純に壇上の脇に備えられた小部屋に到達しました。この小部屋は元々存在していたものであり、いかなる異常性も有していませんでした。

このポータルは2タイプの人型実体を生じさせます。人型実体はそれぞれSCP-2043-JP-A、SCP-2043-JP-Bと分類されています。SCP-2043-JP-Aは灰色の作業着を着用した人型実体です。SCP-2043-JP-Aは複数存在し、男性型と女性型があります。SCP-2043-JP-Aは一貫した身体的特徴を持ち、性別以外で見られる唯一の個体の判別基準は胸に着けられたネームプレートのみです。ネームプレートには「堕中」「差頭」「不死岡」など名字らしき文字列が記載されていることが確認できます。確認された文字列は全て、一般的に名字として存在しないものです。SCP-2043-JP-Aは暴力的加害に対しては、ほとんど反応を見せません。コミュニケーションはいくつかの成功した事例が存在していますが、基本的には受刑者や財団の派遣した人員に対して興味関心を持っているようには見えません。SCP-2043-JP-Aの主な役割はイベント-Gallows中に生じた受刑者らの死体や破壊された器物などの掃除であると推測されています。

SCP-2043-JP-Bは「煉獄」と呼称する仏僧の姿をした男性人型実体です。その姿や言動からは教誨師4を模した存在であると考えられています。SCP-2043-JP-Bはイベント-Gallowsの各種ルールの説明を行います。イベント-Gallowsの発生に伴って放送される音声は彼の声と同一です。しかしながら、SCP-2043-JP-Bはイベント-Gallowsの内容を本質的には十分に説明を行っていません。財団の研究者は、意図的に隠された重要なルールの存在や「執行」の対象になる人物がやや作為的であると指摘しています。

SCP-2043-JPでは定期的にイベント-Gallowsと呼称されるイベントが発生します。イベント-Gallowsが開始されると、多くの場合前述のポータルからSCP-2043-JP-AやSCP-2043-JP-Bの出現を伴い、また、その会場となるSCP-2043-JP内のいずれかの場所が活性化します。イベント-Gallowsの形態は多岐にわたりますが、与えられたルールに従いながら特定の課題を満たすことで進行します。イベント-Gallowsの失敗およびルール違反は、参加者の一部が前述の頭部の爆破によって死亡することにつながります。各イベントの詳細は補遺の探索記録を参照してください。

補遺2043-JP.1: 経緯
サイト-81A3は2001年に引き起こされた地下鉄呪殺事件を契機として成立しました。1998年以降、超常技術の社会的な広まりが進むにつれ、それらの異常性が関与した犯罪も増加していきました。特に2001年にアメリカ合衆国で発生した超常テロ事件である、9.11事件を契機とし超常テロリズムの危険性が世界的に認知されるようになりました。日本国内においても同様に、超常犯罪への社会的危機感が高まっていました。当時、国内で発生した超常犯罪事件の件数は小規模なものも含めて急激に増加しており、財団や警察機関に対し、取り締まりの強化が求められるようになりました。そうした世論が形成される中で発生したのが、東京都地下鉄呪殺事件です。事件の概略については以下を参照してください。

異常事件報告

eki.jpg

事件の現場となった霞ヶ関駅


場所: 東京地下鉄株式会社の一部路線

状態: 終了(関係者の法的な処理済み)

日付: 2005年2月20日

脅威レベル判定: イエロー

犯人: (天道の会)大前田旭、馬込亜弓、高木裕也、原田知世、白乃瀬飛沫、煤吹内治


事件概要: 国内の宗教系要注意団体である天道の会(‪GoI‬-2559)が東京地下鉄株式会社の地下鉄車両内において‬、指定封印呪術を用いて引き起こした呪術テロリズム。乗客および乗務員、係員、さらには派遣された財団の機動部隊からも多数の被害者が発生し、最終的には6800人にもおよぶ人数が影響下におかれることになった。事態の収拾に財団の機動部隊癸-3("キセル乗車")が出動したが、完全に地下鉄の安全性が保証されるまでにさらなる時間を要した。

電車内は疑似呪縛症候群に似た症状を示した乗客によって、呪術の影響を免れた他の民間人が襲われる事態が引き起こされた。これらの乗客は、天道の会の制御下には既になく、彼らが制御可能なキャパシティを超過していた。

天道の会は地下鉄の性質を利用してタイムラインの「乗り換え」を試みていたと考えられる。これは財団の研究者からは、地下鉄道という施設の拡大解釈5による類感受術の1種であると指摘されている。天道の会のパンフレット6によれば、現在のタイムラインは壊された駅に行き着く列車であり、それとは違う運命に乗り換えるためにこの事件を引き起こしたとされている。この「乗り換え」はインタビューにより"不完全に成功"したと証言されているが、財団の大多数の研究者は儀式的に見ても杜撰な箇所が多いとの見解を示しており、実際のところこれがどのように成功したのかは未だ判明していない。

この事件は大小様々なメディアにより取り上げられ、日本に深刻な社会不安をもたらしました。超常技術に対する不安は夏鳥思想勢力の出現を招き、大小様々な異常な事件が報告されました。この事件は財団の一早い介入により終結しましたが、既存の刑事施設においては収容が困難な犯罪者の処遇についての問題を解決しなければいけませんでした。この事件の首謀者である団体の構成員は、暫時的な措置としてそれぞれ別のサイトに移送されました。

サイト-81A3は元々人型実体の収容に用いられていた財団のサイトでした。このサイトの名称を「異常性保持者社会復帰センター」に変更し、管轄を日本政府の法務省に移譲することにより、部分的には自由刑を行使する刑事施設として認められました。依然として、財団の高度な収容設備はそのまま維持されていたため、既存の刑事施設では問題のある受刑者を受け入れることができました。これらの受刑者は主にタイプ・ブルーなどの異常性保持者が大半で構成されていました。

2013/7/15、サイト-81A3の管理収容房区画で異次元ポータルが構成されました。ポータル形成の主犯格だった受刑者は天道の会の大前田旭、有村組構成員の猪野左海、品川呪詛師事件の犯人である美原久美であり、この3名を含む合計8名の受刑者が、このポータルを利用して現場の管理体制を撹乱し、逃走を試みました。しかし、財団による対策とは別に、自然に生じた異常現象によりそれらの逃走は失敗しました。

美原久美が構成したポータルは本来、異次元との接続を意図しないものでした。これは純粋に逃走者を全員サイト-81A3の外部へ安全に送るためのポータルであり、ごく小規模な1m2ほどの「小部屋」を経由して外に繋げたものでした。しかしながら、不明な理由により現在SCP-2043-JP内に存在するポータルに偶然接続されてしまいました。結果として侵入不可能なポータルが形成され、また、ポータル内の異次元に由来するとみられる人型実体(後にSCP-2043-JP-Aおよび-Bと指定)を多数生じさせました。これらのことは、以下の補遺に見られるようなイベント-Gallowsの連鎖的な多発につながりました。財団はこれを受けて、サイト-81A3が異常な事態に陥ったと判断しました。

補遺2043-JP.2: 探索1日目
事態が引き起こされてから財団はただちに調査隊の派遣を決定しました。事前に得られた情報からは、サイト-81A3の受刑者の脱走事件がある程度関わっていることが判明していましたが、この探索の当初においては、それ以外の情報は殆ど不明であったことに留意してください。以下はDクラスを用いた探索記録です。

補遺2043-JP.3: 探索2日目
さらなるSCP-2043-JPの理解と救助のために次のDクラス職員を派遣することが決められました。また、今回の探索ではサイト-81A3の人員の救助も視野に入れて行われましたが、それらの人員は見つかりませんでした。この探索においては、SCP-2043-JPで反復するイベントについての詳細が判明しました。

記録ファイル

被害者

事件当時に居たサイト-81A3の人員から推定。

A級収容困難者9 53名

B級収容困難者10 103名

C級収容困難者11 201名

管理職員(看守) 235名

研究員 224名

調査により判明した内容からは、受刑者は居住区での生活を強制されていた。コンクリートで埋められていた101号室を除けば、居住区の部屋の数は131部屋である。各部屋の定員は6名であるため、現在サイト-81A3の居住区に収容を行えば明らかに過剰収容である。受刑者およびサイト-81A3の職員は5:00〜21:00までの厳密に定められたスケージュールの元で生活している。これに違反することによる罰則も存在し、故意にスケージュールから逸脱した事例ではトラウマ的経験を伴う幻覚を認識している。

2013/7/16に行われた2回目の探索ではイベント-Gallowsの詳細な内容が確認されました。‬以下はその概略です。

補遺2043-JP.4: 関連資料
SCP-2043-JPの挙動に被験者の来歴が強く関わっていることが判明しました。さらなる異常性の理解のためにD-1926に関連する過去の資料を以下に記載します。

資料.1 天道の会概要


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル2

ファイルコード: 459636-A


概要: GoI‬-2559は仏教、キリスト教、日本の古代思想の3つの要素を含む思想を持った異常宗教団体です。団体名である「天道」はしばし運命論的な天道思想と関係があるとみなされてきました。天道とは太陽が規則に従い天空を運行する様子を指していますが、のちに天の節理、天理と関連づけられています。

GoI‬-2599は物事に決定された運命が内在すると考えており、それから逸脱する事象を存在するものとしては認めません。これは信者が前述の偶然やエラーがまったく存在しない世界観を持つことと同義です。この思想を要因としていくつかの殺人や暴行事件が引き起こされています。信者は最終的に新天地へ向かうことを信じているため、これらの無謬的本質主義はGoI‬-2599の思想の中心であり、信者の精神的支柱です。GoI‬-2599は具体的な神や崇拝対象を持たないことを標榜していますが、明らかに教祖を崇拝しています。

GoI‬-2599は信者に呪術的な改造16を施すことがあります。この改造は背中に紋様を彫ることで効果が得られるタイプのものですが、有効な効果の発揮に自身を触媒とする必要があるために身体的な負担がかかります。この被害は大きなもので視力の喪失、半身麻痺などにつながります。この改造を受けた人物の半径10m以内の領域に5分以上滞在した人物は、疑似呪縛症候群の症状をまもなくして呈し始めます。これらの改造には当然信者にも精神的な抵抗がありますが、これを緩和するため、会の中心教義である無謬的本質主義が利用されます。この自己犠牲的な改造を、本質的な運命であると解釈することにより信者の抵抗感を減らします。あるいは、自発的に立候補するような状況を作り出します。この改造の結果死亡した信者の数は判明しているだけでも10名、実際にはそれ以上存在するとみられています。


資料.2 月刊クリオネの記者に実施されたインタビュー


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル1

ファイルコード: 467686-C

前説: オカルト雑誌月刊クリオネは2001年に天道の会の呪術的能力を紹介する記事を掲載しました。以下は地下鉄呪殺事件後に、当時月刊クリオネの記者であった井伊村創時に対し行われた、財団によるインタビューの記録です。


<記録開始>

井伊村: 世間の誰しもがあんなことを起こすなんては思っていなかったと思います。私もそうでしたし、多分ニュースキャスターも芸能人も新聞記者も子供も大人もそうだったと思います。もちろんその一部には真実に気付いていた人もいるかもしれませんが、そんなのは所詮ごく一部であり、やっぱり大半の人はあの大前田旭のことをテレビにたまに出てくる変なおじさんとしか思っていなかったと思います。誰しもがそうですよね?ドリフを怪しもうとする人はいないわけですから。自分でこんな記事を書いといてなんですが、いや、つまりは娯楽の提供側であった私だからこそ言えるかもしれないことなのですが、人間には本来的に恐ろしいものを娯楽にしてしまうという本能があるのです。

Agt.蒲原: あなたは「天道の会」が娯楽化されていた、とはっきり申し上げるわけですか?

井伊村: 娯楽化とは本意ではないのですが、はっきり言う必要があるのですね。はい。あれが事件を起こした時──私もそうですがあなたも、なんとなく飼い犬に手を噛まれたと思ったのではないですか?

Agt.蒲原: それは比喩的な言い方です。まあ確かにその傾向はあったと言えるのでしょうね。

井伊村: はっきりとその傾向が現れたのはあれですね。実際に、テレビに大前田旭が出てきた時のことですよ。なんて言ってたのか忘れてしまいましたが、その番組のあるコメンテーターの発言は的を射ているように思えます。天道の会という団体のおかしさを一言で表したような言葉でした。あれの教義は徹頭徹尾選ばない、究極の運命主義だというのですから、これは誰だっておかしいように見えますよね?しかしその当時の天道の会は肯定的な捉え方をされることも珍しくはありませんでした。やはり私たちは彼らのことを甘く見ていたという事実は否定できない。

Agt.蒲原: 「異常」に関する興味が盛り上がっていたのも確かその時でしたよね。ショパンが現れて、異常な存在が確かにそこにあることがわかってしまった。あの時はいやに「異常」に傾倒した若者がいたのを覚えていますよ。別になんてことはないのに表だけでるコインとか、それを自慢げに見せつける人々。財団職員としてはひたすらに虚しい思いでしたが、確かに異常が受け入れられていたということですね。

井伊村: つまり異常なものを肯定するか肯定しないかという判断ゲームを我々は失敗してきたんですよ。夏鳥思想なんてもそう、彼らは異常な何もかもを全てを否定すると選んだ集団です。私たちが失敗したのは、アニマリーを否定し、そして運命論を肯定してしまったことです。まるきっり逆であるべきでした。人間の定義に迷い、本質を見ていない。人間は人間であるし、危険な存在は危険な存在であるということを見失っていたのですね。財団がやたらめったら異常を収容していたのは、危険な存在と安全な存在の区別がつかないという以上に、自身で判断をするのには手にあまり過ぎていたからだと思います。[沈黙]問題ありませんか?今の発言は。

Agt.蒲原: 概ねそうです。無害なものでも危険なことがあります。また、それを隠すためという目的もありましたが。

井伊村: そうですね。[苦笑]しかしヴェールが消えれば選択をしなければなりません。すなわち、どれが本質的に有害であり、どれが無害であるかということについて。それはまさしく天道の会の教義とは真逆のことになります。

Agt.蒲原: それはつまり選ばない。運命は決定されている。ということですか。

井伊村: 本当に。現実には運命なんてものは存在しない。故に判断をしなければならない。判断をしない人間は騙されます。

Agt.蒲原: 急に話が飛んだかと思いますが。

井伊村: すいません。ただ、騙されてしまうことについては思い入れがありましてね。選ばない人間は騙されるんですよ。私たちが天道の会を信じていた時のように。世の中には罠を張り巡らされています。これは注意深くあたりを観察して気をつけていれば、なんてことはないのですが、社会経験に未熟な若者や学の足りない人間がよく騙されます。

Agt.蒲原: なるほど。その話ですか。それについてもかなり報道されていましたね。

井伊村: 異常というのはどうも即物的で即座に世界すら変えうる能力を持っているように思えますが、殆どの人間はその異常性を持っていないわけです。だからこそ錯覚する。力のない人間は力があるように錯覚する。それが第一段階。第二段階では悪が定められます。それは財団であったり、また別の何かだったりします。それを変えるために、なにかをしようとする。しかしそれは有効ではない。選ぶためにはまず立場も知識も必要ですからね。ほとんどの人間が現実改変能力を持っていないように…

Agt.蒲原: [沈黙]

井伊村: 多くの人はそれを変える立場や学を持っていないわけです。世界はそう簡単に変わらない。いかんせん、ショパンやらなんやらでそれが簡単なことであるように思えてきますが、それは間違いです。

Agt.蒲原: なるほど。テロを起こした人にとってはそれが正義のことなわけで、それで世界がとは言わないまでも財団が変わると思っている。しかしそんなことでは財団は変わらないし、変わるにはもっと途方もない努力がいる。

井伊村: そういうことです。社会との接点がないままにセカイが変わるなんてことは、それこそマンガの中にしかないわけです。今回の地下鉄呪殺事件についても、それが運命のもとに新天地に導かれることである、と思っていたわけでしょう?新天地の存在が空想であれ、真実であれ、効果のないことであることは間違いない。宗教だけではない問題であるのですが、宗教についてのみ話を絞りますと、これは無力な若者が大人の権威の中に不正があると信じ込み、そしてそれを標榜するなんらかの集団──これは天道の会のことになりますが、その集団は新天地へと向かうことができると力説します。それはできない。あるいは失敗に終わる。適切な選択ではないからです。

<記録終了>


資料.3 説明会と思わしき音声記録


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル1

ファイルコード: 467676-A

前説: 天道の会の旧拠点の1つである東京都7区の法楽ビルから発見された音声記録。天道の会が会の勧誘のために実施した一連の説明会のものであると思われ、その当時行方不明になっていた神田倫子の描写がある最後の記録です。


<記録開始>

[しばらく拍手の音が続いている。音の反響から考えるとそれほど大きなホールで話しているとは思われない。]

こんにちは。私がこの会の長をやらせてもらっている大前田旭というものです。あえて長と申したのは、この会には特定の教祖などはおらず誰もが運命のもとで平等にあることを強調するためです。私は便宜上の取りまとめ役であって偉くはないのです17。この会の教えについて話しましょう。詳しくは「星々の誓願」18に書いてあるので適宜参照してください。この会は運命が実在するという考えの者たちが集まった奇跡のような団体なのです。では運命とは何か。運命とは最終的にどこに行き着くかということです。運命の至る場所には運命を信じる者だけが辿り着けます。しかしそれは私たちだけの話ではありません。私たちの他にも運命を信じる者はいますから。この世界は不安に溢れています。そして不平等に溢れています…。知っていますか?アメリカ人は1週間でおよそ18kgのゴミを出します。しかしアフガニスタンに住む人々の出すゴミはその7分の1にも満たないのです。栄養失調にあるアフリカの子供達、干上がる河川、殺される動物ら…。その一方で潤沢に生きている人々もいます。それは運命なんて言葉で片付きません。まったく。では何が運命なのか、それとも運命は実在しないのか。いいえ。運命はあります。それも平等に。

私たちが回帰する場所、そして最後にたどり着く終着点が運命です。私たちは普段あまり意識していませんが、運命によって世界が選択をされているということは事実です。あなたが今日ここに足を運んだのも運命であり、なんなら玄関を出る時左足から踏み出したのも運命です。それはおそらく神の導きだとか、大層な名前がついているかも知れませんが、単純にそうあると決められているからです。だから、あなたがやったことについて責任を取る必要はありません。運命はいずれ終着するので、最後には全て大団円が迎えられます。あるいは、もうその序章が始まっています。早ければ数年後に私たちは「新天地」に向かうことができるでしょう。いや、それは明らかです。運命のお導きなのですから。

[司会から"質問タイム"に入ることが告げられた]

はい。そこの背の高い男性どうぞ。

"私は数年前に妻を亡くしました。実は私、最近までポーランドの大使館で働いてまして。しばらく妻とは別々に暮らしていたのですが、ようやく仕事も落ち着いてきたと思い思い切って妻もポーランドに誘ったんですね。はい。ここまで言えばもう分かると思うのですが、妻が死んだのはあのショパンによる大規模な災害なのです。しかしあれはどちらかと言えばショパンが妻を殺したというよりかは、財団のショパンへの攻撃が原因で死んだとネットでは聞きました。これは運命なのでしょうか?この世の苦しみも同様に、運命のもとにあるのでしょうか?"

なるほど。私からもお悔やみ申し上げます。それが運命かについてですが、この世の苦しみは運命と別のものです。運命がもたらすのは新天地のみで、悪はまた別個のものとして存在します。これについては‪ 「想起」アナムネーシス19を参照してください。その悪を退けるためには、運命に新天地をもたらしてもらうしかないのです。そしてそのことについてあなたが気を病むことはありません。新天地で妻と会うことができるからです。また、人はあらゆる責任を持つ媒体としての能力を有しません。なぜなら、運命がそれを決めているのですから。

それでは次の質問にいきましょう。ではそこの小さい女性どうぞ。制服着ている人です。はい。あなたです。若いのに殊勝ですね。

"私はある種この会の哲学的思考に興味があるのですが、どうやら話を聞くあたりこの会は人間の本質を信じているようです。本質主義には批判も多く、例えば先程の運命が全てを決めていると言った発言は、神の死によって明らかに否定されるとは思うのですがどうでしょうか。"

[笑い]あなたのような方がここにくるのを歓迎します。あなたの今の発言は明らかに会の趣旨に反していますし、本来であれば今すぐ退出を願うべきところなのですが、今回は特別に回答しましょう。運命は実在します。それはキリスト教徒と無神論者が対立するような必然です。そもそもがおかしい。それを証明するために手品じみたことはしたくはありませんが、いたしかありません。あなたには壇上に上がってもらいましょう。

[足音]

それでは自己紹介をしてもらえますか?会の皆さんに。

"神田倫子です。私はここの話を聞いていてとても感動しました。素晴らしいです。ここまで原始的な本質主義を真面目に話せるなんて。紀元前何世紀の話をしてるのかと思いましたよ。話の最中何度も吹き出しそうになりました…。特にアフガニスタンのくだりは本当に面白かったです。これって要は神を運命に置き換えただけですよね。私に全然神を否定するつもりはないんです。ニーチェは神は死んだって言いました。これはニヒリストが所謂ただ悲観的な連中であるということを示すからではなく、「人間は神によって作られていない、だからこそ責任がある」という意味なんですよ。あなたの言ってることはそれ以前の哲学です。"

[長い沈黙]

あー私はあなたと全然喧嘩するつもりはないんですよ。ええ、天道の会は思想の多様性も認めていますから。要は運命が有れば…全然いいんです。それで?あなたは結局何をいいにきたんですか?そうです。キリスト教徒はわざわざニヒリストの前に行くことはありません。興味があっただけではないですよね。それとも私と哲学的な議論を交わしにきたんですか?

"あなたに反論する余地はありませんよね[笑い]実は私はお母さんを探しにきたんです。昨日の晩からお母さんがいなくなっていまして、ここにやっとたどり着いたんです。あなたは信者の前ではいい顔をしておいて、もっと重要なことを隠している…[中断]"

[大前田旭が小声で何か発言するが該当部分は記録されていない]

仕方ない。

[ポン!となるような音が発生する。しばらく聴衆のざわめき声が続いた]

見ましたか?これが運命という正体です。ええ手品じみたことはやりたくありませんでしたとも。本来ならばこれは正会員にしか見せないのですが、ここまできたんならば仕方ありませんよね。しかしこれが運命は実在するという確固たる証拠です。そして我々の使命はこれを使って運命に現実を導くことです!

[聴衆のざわめきは誰かがまばらに拍手を始めるとそれに合わせて段々と拍手に変化していく]

<記録終了>


資料.4 職員記録


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル2

ファイルコード: 36265-D


氏名: 白乃瀬飛沫

活動状況: Dクラス職員として雇用

概要: PoI-5368は神奈川県出身の日本人男性です。天道の会が施した呪術的改造の結果、緑内障で左目の視力が完全にありません。20天道の会の幹部として1980年ごろから活動していました。呪術用の和彫を背中に施していること、または後述の異常性は天道の会で施されたものであると考えられます。

PoI-5368は1986年の神奈川県綾瀬市で出生しました。日本の要注意団体"日奉一族"の日奉葱の息子です。しかしながら、幼少期に行われた一斉検診で若干視力に問題があるとされたこと以外は、特筆すべき性質を示すことはありませんでした。

天道の会とのつながりは大学時代のサークルの関係者からのものであると考えられています。いくつかのサークルは天道の会の勧誘とつながっていると見られましたが、直接的には無関係な慈善サークルの体をとっていました。関係者へのインタビューでは、PoI-5368の素行はむしろ良好であったと述べられています。いわゆる好青年であり、特定のサークルに入るまでは人間関係も健全でした。ただし、いくつかの傾向としては、PoI-5368は優柔不断であり、何かを選ぶことが苦手な人間であったとされています。

地下鉄呪殺事件においては実行犯の役割を果たしました。天道の会が施した呪術的改造が彼の背中に見られます。現在では有効に機能していないものの、事件当時はこれを用いて乗客らを疑似呪縛症候群にしました。しかしながら、これが不完全なものであったため、本来自由に操作できるはずの乗客が暴走しました。


資料.5 疑似呪縛症候群


閲覧区分: セキュリティクリアランスレベル3

ファイルコード: 252599-Q


概要: 疑似呪縛症候群(Pseudo spell syndrome)は呪術的な作用により身体の形状を歪ませられた異常な疾患の症状です。「擬似」と呼称されているのは、その受ける呪術の種別により真正呪縛症候群21と別れるからです。擬似呪縛症候群は身体的、精神的、あるいはその両方の自由が剥奪され、呪術的チャネルを介した操作の影響を受けることが非常に特徴的です。体は歪に変形し、外奇形や内奇形を多数生じさせます。この過程において、身体の部分的な生命活動は保たれていますが、全体としての機能は著しく破壊されるため、疑似呪縛症候群はおおよそ不可逆的であると言えるでしょう。ごく一部の事例では、先天的な症例も確認されていますが、これまでに確認された症例の9割は後天的なものです。

治療方法は確認されていません。精神的な自由を縛り付けるという性質から、患者との意思疎通は非常に困難です。会話の試みは、単調な内容を繰り返すのみで終わっています。財団医療部門の研究では、これが何か呪術的な「縛り」であることを明確にした上で、治療の方針を研究しています。

地下鉄呪殺事件において主力の武力として行使されました。これは呪術の実行者の背中に彫られた儀式的紋様が行使した、広い範囲(半径15m)での発生です。乗客のうち半分が擬似呪縛症候群の症状を示し、それ以外は頭痛や嘔吐など軽度な症状に終わりました。また、この呪術の実行者は代償として視力を失っていることが明らかになっています。これが疑似呪縛症候群とどのように関係しているかは不明です。

補遺2043-JP.5: 探索3日目
D-1926とD-2031が初めてSCP-2043-JPの中で生存したことにより、SCP-2043-JPは元から存在した受刑者でなくともイベント-Gallowsおよび関連する異常現象の対象にすることが判明しました。このことから、以降の探索はSCP-2043-JP内で滞在するDクラス職員が継続して実行することに決まりました。

補遺2043-JP.6: 会議議事録

会議音声記録転写

出席者:

  • 異常災害部門部門長 エイレーン・ホワイト
  • 財団倫理委員会 半夏生 憂羅
  • 終了スペシャリスト ゴドー バルバストル
  • 財団哲学研究者 ベンジャミン・セネカ
  • ‪要注意人物管理係 国木田 都築
  • 財団異常次元部門 副部門長 辻君 至布

<記録開始>

ホワイト部門長: こんにちは。本日はこれまでに明らかになった研究成果とその倫理的な問題についてお話ししましょう。また、この会議の顔ぶれを見て奇妙に思った方もいますでしょう。これは現在我々が直面している問題について様々な点からアプローチすることを意図したものです。倫理的な問題もその側面の1つですが、これはその他と違った重大な問題を孕んでいますので、特別に後述するとします。まだ事態の発生から大した時間が経っていないのにも関わらず、これだけ迅速な対応ができているのは財団故と言えるでしょう。本日の議題はSCP-2043-JPの解決についてです。

辻君副部門長: 異常次元部門はSCP-2043-JP-B、サイト-81A3の受刑者が呼ぶところの煉獄についての研究を行ってきました。事前に配布された報告書にはさらに詳細な記述がありますが、記録のためここでは簡単に述べておきます。結論から言えば、SCP-2043-JP内のポータルは異次元につながっています。アクセスは終始一貫して不可能であったものの、外部からの観測によりいくつかの知見が得られています。おそらくは…ポータルの先に存在する次元のことですが、それは私たちのように人が住んでいることは間違いがありません。何をもって異常とするのか、あるいは我々のようなヴェールをめくった世界線もあるでしょうが、この世界線について特筆すべき点は社会構造にあります。ポータルの先の社会構造は何といいますでしょうか…「全てが平等に行われている」というような私たちとは異なった価値観のもとに動かされています。それがどのような意味を持つのかについては次の発言者に譲ります。

セネカ研究員: 私が論理的な構造について考察しました。煉獄についてですが…。

国木田博士: ええ、と。この会議ではSCP-2043-JP-Bの呼称として「煉獄」が用いられるということでよろしいですか?

ホワイト部門長: 呼称は重要な問題ですがささいな問題です。問題はないでしょう。

セネカ研究員: それでは煉獄で続けさせていただきますね。煉獄はいくつかの西洋哲学を採用しています。間違いなく。例えば最初の探索記録に見られた発言の「限界状況」というのはドイツの哲学者カール・ヤスパースの言葉です。命をかけたものではないと彼の言うところの「暗号」を解読するに至らないということなのですが、これにはおそらくデス・ゲーム的な状況と関連づけられます。デスゲームはイベント-Gallowsの表現として使っています。すいません。あまりにも適切だったものなのでつい。つまり、彼の──煉獄の主張はそういったことなのです。ヤスパースは自身の著書「哲学」の第2巻「実存解明」で3つの概念を説明しています。《交わり》《限界状況》《絶対的意識》です。交わりは自己開示であり、イベント-Gallows「狂人さがし」と関わりがあるかと思われます。受刑者らは自らの罪について語って、ある意味では必死に「狂人」を探しています。この言い方は多少露悪的であるとは言え、「存在の意識への変革」を行うためには必要な要素を満たしていたのです。絶対的意識は名前の意味するところの通り、絶対的な意識であり、自分の存在に確信して超越的な存在に面していることです。煉獄はこれを目指していると考えられます。ここで翻って私たちが派遣したDクラスの来歴を見てみましょう。

国木田博士: 高木裕也、原田知世、白乃瀬飛沫、煤吹内治…などが1番最初に派遣されました。これは数年前に日本で起きた地下鉄呪殺事件の主犯格であるメンバーです。彼らは全員死刑でした。もちろん日本の法律に照らした上でのことです。財団はDクラスの不足のためにそんなことはしていません。教祖の大前田旭以外は、Dクラスとしての雇用が行われてきました。これまでの統計から言えば、日本で死刑判決を受けた人間はほぼ財団のDクラス職員に雇用されています。歴史的に正規の手順で死刑された人物は10人にも満たないでしょう。奇しくもそれはヴェールが剥がれた年と同じですが1998年まで日本政府は「年間の死刑執行数だけ」を公開していました。死刑囚の名前が公開されたのはそこからさらに7年後の2005年です。まあ日本政府と財団の関係は蜜月でしたからね。すいません。話が脱線しました。で、彼らがどんなふうにSCP-2043-JPと関係しているかと言いますと、彼らの所属していた宗教団体の教義です。報告書は読みましたか?

半夏生研究員: ええ、読みましたよ。運命論ですよね。私の個人的な哲学から言えば、自分の行動に責任を持たないことはもっとも唾棄すべきことです。彼らは責任を持てなかったのでしょう。

国木田博士: はい。ならば話は早いです。つまりは…対立しているんですよね。先程セネカ研究員はSCP-2043-JP-B、煉獄のことをヤスパースと関連があると説明しました。ヤスパースは実存主義者です。間違いないですね。

セネカ研究員: はい。運命論、ここでは本質主義と言い換えてもよいでしょう。この換言は、哲学的な論争について深く突っ込んでいます。

国木田博士: 天道の会は運命が導いていくために自分たちには何も責任がなく何も「選ぶ」必要がないということを考えています。煉獄は彼らにやはり「選ばせる」ようなゲームばかりを当ててきます。それ以外の受刑者は「サバゲー」とか「ロングウォーク」とかやらせているのにも関わらず。これは彼が財団に注目しているのか、それとも受刑者ごとに適切な哲学的含意のあるゲームを選択させているかはわかりませんが、やはり何らかの指向性があることは間違いないです。実存主義と本質主義、その対立が行われていたのです。

半夏生研究員: なるほど。しかし実存主義と本質主義の戦いならば、本質主義は敗北したようなものではないですか?やはり彼らは死刑台の上に最初から立っていたのですか?

ゴドー: 私から予想できることが1つあります。これは無根拠であることに留意してください。

半夏生研究員: どうぞ。

ゴドー: サイト-81A3の地下には死刑の執行室がありますよね。あれが最終的にイベント-Gallowsが決着をつける場所ではないかと思うのです。あまりにも異常な事態に我々は忘れてしまいましたが、これは見方によっては比喩的な用法として捉えてもよいのでしょう。私は今まで人を殺してきた…その内いくつかは死刑ですらないような状況であったのですが、死刑囚が行き着く先はもちろん死刑台。普通の受刑者は労働と不自由を持ってして罪を償います。死刑囚は死を持って償います。あれが本当に拘置所やそういった類の建物であれば、彼らが最終的にたどり着くのは‪死刑台 Gallows‬であるのだと思います。それがゲームであっても、勝っても負けても関係ありません。なぜなら、彼らは罪を犯したのですから。

セネカ研究員: 意味のない殺しは憎んでいるとあなたは言いますが、煉獄は意味のある殺しをしているのでしょうか?あの見た目、分析するまでもなく教誨師ですよね。もし教誨師が悪役の小説なんて書かれたら世界中からの非難は必至だとは思いますが、彼は一体何をやってるのでしょうか?

ゴドー: 第一に私は煉獄が間違ったことをやってるとは思いません。第二に煉獄が正しいことをやってるとは思いません。第三にDクラスは犯罪者です。

セネカ研究員: ええ、1と2はともかく、最後に関しては事実です。

ゴドー: 誰しもが死刑の執行は嫌でしょう。人を殺したくはない。私も。東京拘置所の執行室にはボタンが3個あって、それぞれ誰が押したかわからないようなシステムになっています。誰も殺したくはないが…誰かが殺さなければいけない。煉獄はそういったことをやっているのだと思います。 

セネカ研究員: それを持ってして実存主義が勝利する。あなたが言うと説得力がありますよ。なんといっても責任を持つそれと責任なしのそれは全然違うのですから。

ゴドー: かと言って責任を持ったからと言っても罪はなくなりません。私も犯罪者です。

セネカ研究員: それでは私も犯罪者です。毎日、この財団で研究に勤しんでいます。それは死の上に間違いなく成り立っています。

ゴドー: そう言うことではなく──

半夏生研究員: では私も犯罪者なのでしょう。倫理委員会として赤子を誘拐することを何度も正当化しようと試みてきました。

ゴドー: 全員が犯罪者であればいいということではないのですが。

国木田博士: わかりました。財団職員である以上罪から逃れられないということなのでしょう。受刑者と財団職員の区別をすることは難しい。それは同じく犯罪者であるから。

ゴドー: [沈黙]

辻君副部門長: 皆さん落ち着いてください。ゴドーさんも混乱していますよ。

ゴドー: いえ、すいません。あなた方の言う通りです。選んだ上で、たしかに私たちは犯罪者でした。だからといってどうという話かもしれませんが。

<記録終了>

補遺2043-JP.7: 探索4日目
地形データが十分に蓄積され、SCP-2043-JPは拡張されていたような空間があるものの、基本的には通常の線形空間から逸脱していないことが完全に証明されました。

補遺2043-JP.8: 結論
D-1926が正面入り口で回収されるとSCP-2043-JPはただちに崩壊し始めました。元から花婿実体の被害によりかなりの損害が確認されていましたが、その中でも残存していたいくつかの建物も構成に必要な基盤がすみやかに失われていきました。また、これまでに見られていた異常性も確認されず、これ以降イベント-Gallowsの再発生はありませんでした。以下に示すのは事後調査として行われた機動部隊甲-9("おわり")の探索記録です。

SCP-2043-JPに関する全ての探索が終わった後、D-1926が心神喪失状態に陥ったことが確認されました。インタビューを試みた際は、同じ文言を繰り返すのみで話が成立しませんでした。以下に示すのは、D-1926の娘にあたる"白乃瀬霞"へのインタビュー記録です。

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