SCP-2045-JP
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SCP-2045-JP。

アイテム番号: SCP-2045-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 体外に存在する場合、SCP-2045-JPはサイト-8139の標準収容ロッカーに保管されます。実験を行う際はサイト管理者の許可を得たうえで、サイト-8139の医療チームに連絡し、適切な被験者を選定したうえで植え込み手術を行ってください。

SCP-2045-JPを植え込まれた被験者は、通常の被験者管理マニュアルに従って管理されます。

説明: SCP-2045-JPは、アメリカ合衆国██████社製のものに外見が酷似した心臓ペースメーカーです。大まかな構造は類似型番のものと変わりませんが、バッテリーにリチウムイオン電池が使用されておらず、未知の方法で電力を生成します。

被験者の体内に植え込まれたSCP-2045-JPは、通常時は一般的なペースメーカー同様、周期的な電気刺激により心収縮を発生させることによって、被験者の不整脈を改善します。しかし、特定の条件下において、SCP-2045-JPは周期外の刺激を発生させます。この周期外刺激は周期内のものよりも強く、心エコー検査の結果は、周期外刺激において左心室が外部から打撃を受けたような激しい凹みを発生させることを示しました。毎秒1回未満の周期外刺激が人体に影響を及ぼす可能性は低いですが、それ以上の周期外刺激は被験者の心拍数と血圧を若干増加させるとともに、心筋に損傷を与えます。

以下は、現在までに発見されている、SCP-2045-JPが毎秒1回以上の周期外刺激を発生させた条件と、その際の1秒あたり最大刺激回数の例です。なお、これらの心拍数の測定は、すべてDクラス職員への植え込みのもと、遠隔心電図観測装置にて行いました。

  • 通常業務中における逃走(最高8回/秒)
  • 公道における交通信号の無視(最高30回/秒)
  • 深夜、寮内でのおよそ90dBの騒音(最高28回/秒)
  • フォロワー100人程度のSNSで、政治的に過激なコメントを投稿する(最高132回/秒)

発見経緯: SCP-2045-JPは、東京都在住の小木曽 優人 氏(享年22)の遺体から摘出されました。小木曽氏は2018年2月11日、21歳のときに徐脈のためペースメーカーの植え込み手術を行いましたが、医療機関にどのようにSCP-2045-JPが混入したか、もしくはSCP-2045-JPがどのように異常性を獲得したかについては、現在も究明が進められています。

小木曽氏は「暴龍ゲンジ」名義でYouTubeチャンネルを設立し、広告収入で生計を立てていました。彼の動画の共通点として、低評価数が多いこと、撮影時に小木曽氏が興奮状態にあることなどが挙げられます。以下に、彼のチャンネルにアップロードされた動画の一部を示します。なお、再生回数は彼のアカウントが停止される2019年4月1日までのものです。

映像記録2045-JP-008

動画タイトル: 粗大ゴミを拾って道で売ったらいくら儲かるの?

アップロード日時: 2018年4月16日 20:00

再生回数: 89,025回

高評価数: 245件 低評価数: 3,719件

動画内容: 早朝に市街地の粗大ごみを無断で収集し、適当な値段をつけて路上で販売するという動画。コメントでは、ごみや小木曽氏自身の不潔さが多数のユーザーから指摘されている。撮影中、小木曽氏は軽度の興奮状態にあった。

映像記録2045-JP-019

動画タイトル: 道行くブスに「ブス!」って言ったら怒られるの?

アップロード日時: 2018年5月27日 20:00

再生回数: 108,759回

高評価数: 132件 低評価数: 5,019件

動画内容: JR渋谷駅付近を通行する女性に罵倒を投げかけ、その反応を見る動画。結果的に、誰からも反応が返って来ることはなかった。撮影中、小木曽氏は興奮状態にあった。

映像記録2045-JP-035

動画タイトル: 【神回】あの大物YouTuberの家を特定しました

アップロード日時: 2018年7月3日 20:00

再生回数: 453,157回

高評価数: 1,053件 低評価数: 1.2万件

動画内容: 当時チャンネル登録者数835万人のYouTuber「████████」を尾行し、自宅を特定するという動画。投稿から3日後、同YouTuberの所属事務所からの申し立てを受け、非公開となった。撮影中、小木曽氏はかなりの興奮状態にあった。

映像記録2045-JP-059

動画タイトル: 真実を話します。

アップロード日時: 2018年8月11日 20:00

再生回数: 205,581回

高評価数: 3,952件 低評価数: 4,189件

動画内容: 自身のYouTuberとしての沿革を語る動画。彼曰く、不整脈で手術を受けた際に死を意識し、生きている実感を得るために動画投稿を続けている、とのこと。中でも彼は、「動画を上げた後のドキドキ感」や、「世界からの注目」に生きている実感を覚える、と強調する。

コメントは、信念をもって生きる暴龍ゲンジを評価するユーザーと、いかなる理由があっても彼の悪行は許されないというユーザーに二分された。撮影中、小木曽氏は冷静を保っていた。

2018年9月18日、小木曽氏はYouTubeでの生配信中に死亡しました。死因は、SCP-2045-JPの周期外刺激を瞬間的に大量に受けたことによる心筋の破裂とみられています。以下は、生配信の内容の要約です。

映像記録2045-JP-078

動画タイトル: 【初生配信】渋谷の真ん中でキャンプしながらコメ返信

配信開始日時: 2018年9月18日 12:00

最大同時接続数: 11.9万人

高評価数: 2,960件 低評価数: 5.1万件

配信内容: 配信の冒頭で、小木曽氏は渋谷スクランブル交差点の中央にテントを立てると宣言。その後、実行の準備に移るが、途中で計3回「動悸がする」と述べ、合計時間12分ほど準備を中断する。その間に同時接続者数は10万人を超えるが、コメントは暴龍ゲンジに否定的なものが多数を占める。

配信開始から18分12秒経過、横断歩道の前に立っていた小木曽氏は突如絶叫し、スクランブル交差点の中央に向けて走り始める。3秒後、小木曽氏は転倒し、配信を行っていたスマートフォンを手放す。その後、カメラには倒れたままの小木曽氏、救命措置や119番通報を行っていると思われる通行人、クラクションを鳴らす通行車などが約10分間映し出される。

この様子はメディアでも大々的に報道されたが、一般人にはカバーストーリー「急性心不全」が適用されている。

小木曽氏の事案に関して、特筆すべき点は2点あります。

  • 動画の撮影時、小木曽氏は興奮状態にあることが多かったですが、SCP-2045-JPに興奮作用は確認されていません。すなわち、小木曽氏は周期外刺激を「スリルによる心拍数の増加」と解釈していた可能性があります。
  • 検死の結果、小木曽氏の心筋組織は遅くとも2018年7月ごろから打撲によって壊死していたと推定されました。これは、小木曽氏が心筋の壊死後もSCP-2045-JPの周期外刺激によって血流を維持していたことを示唆しており、周期外刺激が電気的なものではなく外部からの打撃であるという仮説の裏付けとなっています。
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