実験記録2046-JP-i - 日付2013/██/██
被験者: D-6401
実験監督者: ████博士
実施方法: 被験者にSCP-2046-JP-1への接触を繰り返し行わせ、得られた知識と精神的な変調について聴取する。
<再生開始>
████博士: それでは実験を開始しましょう。D-6401、SCP-2046-JPに触れて下さい。
D-6401: この浮いてる箱だよな、えーっと、こんな感じで[D-6401はSCP-2046-JP-1に掌で触れる]えっ。
████博士: どうかしましたか?
D-6401: ええと、何だ?[数秒の思案]なあ博士、デカい、虫だかエビだかみたいなのって居るのか?
████博士: どうしてその事が気になりましたか?
D-6401: いや何ていうか、コレに触ったらさ、なんか急に思い付いたっていうか、その事がヤケに気にかかるっていうか。
████博士: そうですか。申し訳ないのですが機密事項なのでお答えできません。ですが、どうぞ話を続けて下さい。何か重要な情報かもしれませんから。
D-6401: お、おう。えーと、いいか?[咳払い]そのデカい虫が目を覚ましてさ、身体をぐーんと持ち上げたんだよ、そしたらソイツの背中に乗っかってる島が全部落っこちて、バカみたいに高い波が地球を荒らしまわったんだ。そう言うイメージが頭の中に降って湧いたというか[数秒の沈黙]何言ってんだろな俺、意味わかんねえよな。
████博士: いえ、どんな所に重要な情報が潜んでいるか分かりませんから。因みに、その巨大な虫は何故目を覚ましたのでしょうか?
D-6401: ミサイルが直撃したんだ、水平線の向こうからすっ飛んできてさ。
████博士: それがどこから発射されたものかは?
D-6401: 全然分かんねえ、とにかく俺の頭に出てきたのは、ミサイルぶつけられて起きたデカい化け物がそこら中ボロボロにした様子だけなんだ。
████博士: 分かりました、ありがとうございます。[メモを取る]では実験を続けましょうか。もう一度触れてみて下さい。
D-6401: ほい。[D-6401はSCP-2046-JP-1に接触する]っとと。
████博士: 何か変化はありましたか?
D-6401: ああ、ミサイル、あれ、あんたらが飛ばしたやつだったよ。
████博士: 何故その様に判断したのですか?
D-6401: 何故って言われても、パッと頭に浮かんだだけだ、さっきと一緒で。なんかSCP-████がどうとか、そこら辺あんまはっきりしないんだけどさ。
████博士: SCP-████、成る程。他には?
D-6401: うーん、何ていうか、予想外って印象が残ってる。それくらいだ。
████博士: 成る程。更に実験を続けていきます。宜しいですね?
D-6401: [笑う]拒否権ないじゃんどうせ。
[省略。3回SCP-2046-JP-1への曝露を繰り返した所、SCP-████の未知の特異性を示唆する発言を得られた]
████博士: なるほど、ありがとうございます。それでは6回目の曝露実験に行きましょうか。
D-6401: なあ、博士。ちょっとさ、休みたいんだけど。
████博士: ええ、構いませんが。疲労しましたか?
D-6401: いや、そう言うのとはちょっと違うっていうか。[数秒の思案]怖い、んだよ。よく分かんねえけど。
████博士: そうですか。異常な知識や記憶の挿入による混乱もあるでしょうからね。分かりました、少し休憩を挟みましょう。
[省略。10分ほどの小休止を置いて実験が再開された]
████博士: では、改めて6回目の実験を行いましょう。D-6401、用意はいいですか?
D-6401: [髪をかき上げる]ああ、ああ。[SCP-2046-JP-1に触れる][呻く]
████博士: どうしましたか?
D-6401: ず、頭痛だ多分。
████博士: そうですか、何か新しい情報は得られましたか?
[D-6401はしきりに周囲を気にする仕草を見せる]
████博士: D-6401?
D-6401: えっ、あっ、ああ。えーと。変な、像?がゴリゴリって足を引きずってさ、目を逸らしたら、[呻く]千切れて、泣き別れに。
████博士: なるほど、他には?
D-6401: ほ、他って、ヤバイだろ、そんなの。[部屋を見回す]暗い、こんな所じゃ、目線も分からない。
████博士: 落ち着いて下さい、恐らく、それは我々が既に収容しているオブジェクトの1つです。ここにはいません。
[D-6401は無言で████博士を見つめる]
████博士: 実験を続けましょうか。7度目の接触を行って下さい。
[D-6401はSCP-2046-JP-1を睨み付ける]
D-6401: あれは、何なんだ。あれは、俺に何をさせたい。
████博士: [数秒の思案]我々は、あれが貴方に知識を与えてくれるものだと考えています。それ以上は分かりません、だから今調べています。
D-6401: そう、かよ。
████博士: 実験を続けましょう。
[省略。更に4度の接触が行われたが、有用な情報は得られなかった]
[D-6401は爪を噛んでSCP-2046-JP-1を睨んでいる]
████博士: D-6401、休憩が必要ですか?
D-6401: [無言]
████博士: [数秒の思案]12回目の曝露実験を行います。D-6401、接触して下さい。
[D-6401は腕を突き出し、SCP-2046-JP-1へと接近する。オブジェクトに近付くに従ってD-6401の呼吸が激しくなり、接触直前で硬直する]
████博士: 大丈夫でしょうか?
D-6401: [不明瞭な呟き]
████博士: どうしましたか?
D-6401: 死にたくない。
████博士: D-6401、しっかりして下さい。
D-6401: 死にたくない。もう死にたくない。
████博士: ここに差し迫った生命の危機は存在していません、D-6401。
D-6401: そこら中に溢れてるじゃないか!何度も浸されて、もう嫌だ。死が[以下、判別不能な呟き]
████博士: [数秒の思案]実験を終了しましょう。D-6401の精神状態を今一度チェックする必要があります。
<再生終了>
終了報告書: 実験後のD-6401は高度なタナトフォビアの症状を見せ、オブジェクトとのクロステスト全般に対する強い拒否反応を見せた。記憶処理では症状は改善しなかった。
実験記録2046-JP-vii - 日付2013/██/██
被験者: D-9841
実験監督者: ████博士
実施方法: 被験者にSCP-2046-JP-2への接触を繰り返し行わせ、得られた知識と精神的な変調について聴取する。
<再生開始>
████博士: それでは実験を開始します。SCP-2046-JPに触れて下さい。
D-9841: [SCP-2046-JP-2に指先を接触させる]えっ。
████博士: 何か、唐突に思い浮かんだ事はありますか?
D-9841: ええと、怖い、思い出話?を。
████博士: 思い出ですか。どの様な?
D-9841: 大昔に、外国人の女の子の知り合いが居たって思い出です。その子にあれこれと質問されて。
████博士: 成る程、それの何処に恐怖を覚えましたか。
D-9841: あー、その、思い出って言い方してましたけど、正直そんな記憶に心当たり何てないんです。なのに、頭の中にずっと、その記憶は嘘だ、その思い出に気を付けろって、そういう妙な印象が残ってて。
████博士: それが不気味に感じられたと。
D-9841: はい。
████博士: 成る程、分かりました。実験を継続していけば、その異常性についてより詳しく判明するかもしれませんね。
D-9841: 分かりました。
[省略。6度行われた曝露実験の結果についてはレポート『レテ-プロジェクトの無期限凍結について』を別途参照]
████博士: それでは、8度目ですね。お願いします。
D-9841: え、ええ。
[D-9841はSCP-2046-JP-2に腕を伸ばすが、触れる直前に動きを止め、逡巡する様に手を前後に揺らす]
████博士: どうしましたか?
D-9841: [数秒の沈黙]大丈夫、ですよね?
████博士: と、言いますと?
D-9841: [頭を振る]なんでもないです、そう、なんてことない。[SCP-2046-JP-2に接触する]
████博士: 何か、新しいことは。
D-9841: 嫌だ。
████博士: D-9841?
D-9841: [耳を塞いで]煩い!僕はお前みたいになんかならない、お前になんかならない!僕は何も知らない!知らないんだからあっちに行け、入ってくるな!僕は僕なんだお前じゃないんだ!
████博士: どうしましたか![小声で]ミーム汚染でしょうか。実験を終了、鎮静措置を!
D-9841: 僕の中に入ってくるな、出ていけ!もういいだろ!全部手遅れなんだお前は!僕に何をしろって言うんだ!僕は、僕は絶対に、僕のままだ!
[以降、D-9841は鎮静剤を投与されるまで、うずくまって叫び続けた]
<再生終了>
終了報告書: 実験後のD-9841は「自分以外の全員が自分を洗脳しようとしている」という誇大妄想を抱いている事が判明した。記憶処理では症状は改善しなかった。
実験記録2046-JP-██ - 日付2019/██/██
被験者: エージェント・██(SCP-████-JP収容の際に身体の12%を欠損したことでエージェントとしての職を辞し、被験者に志願した)
実験監督者: ████博士
実施方法: 被験者にSCP-2046-JP-3への接触を繰り返し行わせ、得られた知識と精神的な変調について聴取する。
<再生開始>
████博士: それでは実験を開始しましょう。本当に宜しいのですね?
エージェント・██: はい。せめて最期まで、財団の役に立ちたいんです。是非私を使ってやって下さい。
████博士: 分かりました。では、SCP-2046-JP-3へ。
[省略。5回の曝露実験で、ミーム異常・現実改変複合的な異常を引き起こす存在と、それに対し耐性を持つ人々に通底する特性が示唆された]
████博士: ありがとうございます。[メモを取る]統計的には、そろそろ精神面への影響が現れ始める所ですが、如何ですか?
エージェント・██: まだ、大丈夫だと思います。
████博士: 無理はいけませんよ?未知の精神影響が発生する可能性もありますので、どの様な変調であっても必ず報告して下さい。
エージェント・██: 分かりました。今は、実験を続けましょう。
████博士: ええ。
[省略。5回の曝露実験が行われたが、有益な情報は得られなかった]
エージェント・██: そうです、笑顔が、ああ、いえ、アレを笑顔だなんて言いたくない。貼り付けて、塗りつぶした様な。[頭を抑えて沈黙する]すみません、これ以上は。ただ、漠然としたイメージだけがあるんです、どうにも、言葉で言いづらい様な。[大きく息をつく]
████博士: ご苦労様です。[メモを取る]そろそろ、精神影響が明確になってくる頃合だと思われますが。
エージェント・██: ええ、そうなんでしょう。自分でも分かるような、[数秒の沈黙]自分?
████博士: どうかしましたか?
エージェント・██: 博士。自分って、何なんでしょうね。今、動いて喋ってる私は私?私はどうやって私になったんだっけ。最初から私?それはおかしいですよね流石に。でも、じゃあ。
████博士: エージェント・██?大丈夫ですか?
エージェント・██: 私、最初から私なんかじゃ。
████博士: エージェント・██!実験を終了します、彼女に、[エージェント・██が発言を遮る]
エージェント・██: それは駄目です![2、3度荒い息を吐く]それは、嫌です。私、これはやり遂げなくちゃなりません、私かどうか分からない、でもそれは必要なんです。だから、どうか。
████博士: [数秒の思案]実験を継続できますか?
エージェント・██: できます、大丈夫です。やらせて下さい。
████博士: 分かりました。第11曝露実験を行います。
エージェント・██: ありがとう、ございます。
[エージェント・██はSCP-2046-JP-3に向き直り、手首を接触させる。その瞬間、エージェント・██が身体を仰け反らせて転倒する]
エージェント・██: [断続的な叫び声]
████博士: 実験中止します、鎮静剤の投与を!
[████博士がエージェント・██に鎮静処置を行う。エージェントの叫声は徐々に小さくなり、うめき声を漏らすのみになる]
<再生終了>
終了報告書: 2019/██/██現在、エージェント・██の意識は回復していない。同様の反応を見せた被験者はSCP-2046-JP-1で3名、SCP-2046-JP-3で2名(エージェント・██含む)が確認されており、その全てがエージェントまたは研究員の被験者であった。SCP-2046-JPが未知の特異性を有する可能性について、研究が進められている。SCP-2046-JPの作動機序と被験者のパーソナリティから引き起こされる現象であった事が判明した。詳細は補遺を参照。