アイテム番号: SCP-2052
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2052は現在、サイト-██の真空室に保管されています。A面とB面は見分けやすいようにそれぞれ赤と青に染められています。承認を受けた実験に使用されていないときには、SCP–2052はA面を上にして真空室の中で平らにして置かれなければなりません。SCP-2052は常に0.5パスカル以上の気圧に曝されてはいけません。
一次格納容器は、二次格納容器2052-C2の中に保管されています。2052-C2にはSCP-2052を一次格納容器から取り出すことを可能にする3つのタイプB真空ポンプ、及び真空内での作業に適した4つの防護服一式が備え付けられています。SCP-2052の一次格納容器からの取り出しは許可された実験もしくは一次格納容器の定期メンテナンスの目的に限り認められています。
SCP-2052を扱う研究者は許可された実験の一部として意図的に行う場合を除き、常に布が同じ向きに一部分も重ならないようにしなければなりません。
説明: SCP-2052は12センチメートル四方の絹の布です。SCP-2052を通して加えられた物理的な力は、ニュートンの運動第3法則に従いません。B面に加えられた力は、通常の物理学によって想定される同じ大きさの力ではなく、約810倍の力で押し返されます。対照的に、A面を通して加えられたあらゆる力は810分の1の力で押し返されます。SCP-2052の内部を圧力の分析した結果、異常な効果はA面の30マイクロメートル下で瞬時に起こることが判明しました。
SCP-2052を重ねることにより、適用される異常な効果を累積することが可能で、それにより力の増幅率が指数的に増加します。3つかそれ以上の層が同じ方向を向いて重なっている場合、SCP-2052の重量はSCP-2052を支持する構造体の完全性に対する脅威となる恐れがあります(事案記録2052-I-3を参照)。
SCP-2052が標準的な気圧に曝された時、SCP-2052は圧力の不均衡によりB面の方向に進みます。SCP-2052は82MPaの圧力に抵抗できる固体の障害物に衝突するまで不規則に高速で浮遊します。
発見記録: SCP-2052が財団の関心を惹いたきっかけは、「TeslaFyMe」というユーザ(後にイギリスのハダースフィールドのKyle Wathersであると判明)によって投稿され、2052-V-1として保存されたYouTubeのビデオにおける奇妙なフレーズを自動ウェブクローラCASIMIR-J87が検知したことでした。このアカウントでの以前の投稿は、主としてフリーエネルギーや永久機関とされるものの実験や改良を中心とする113のビデオから構成されています。当該動画を調査した財団の研究者は、それ以前の動画で現れる機関は異常な反応をしないと判断しました。CASIMIR-J87は2052-V-1をあらゆるユーザの閲覧前に正しく消去しました。
Wathersのアカウントでの投稿の87%に「Discord_33」という名前で、Wathersが個人的に友人関係を持っていると思われる違うユーザへの参照が含まれています。このアカウントのビデオには多様な顔と声の変装技術が用いられており、財団がそのユーザの身元を特定することを困難にしています。内容は概して理論的性質についてのもので、異常な効果を生み出すことが財団に知られている工学技術についてのいくつかの講義が含まれています。これらの講義は、おそらく意図的に、CASIMIR-J87が感知できないような方法で言葉にされています。CASIMIRのプログラム情報が漏洩した可能性について調査が行われています。
それらの奇妙な内容を発見した際に、財団のエージェントがDiscord_33によって投稿された全てのビデオを削除しようと試みましたが、それらは既に削除されていました。
(Wathersは住宅用ガレージの中の机に座っている。この配置は彼の以前のビデオで82回使用されている。既に登場したことのあるいくつかの機器が向こう側の壁に接触している作業台の上に置かれていることが視認できる。直径約70cm、高さ20cmの短い円筒形の筐体を設置する空間を作るためにそれらは脇に移動させられている。この筐体はSCP-2052-1と指定されている)
00:00 - やあみんな、最近投稿ができてなくてすまない。実生活でやることがたくさんあって、動画のために思うように時間が取れなかったんだ。何について言ってるか分かる人がいるかもしれないね。僕はDiscordがやってることを知ってるけど、えっと、そのゾッとするような詳細で他のみんなを退屈させるわけにはいかないからね。もし興味があるならSkypeか何かで僕に連絡してほしい。
00:22 - それで、この前のビデオにたくさん、何の磁石を使っていたのかについての質問、そして僕がどれだけ物理学や熱力学とかを理解していないかというありふれたコメントがついたから、それらの問題について説明して、あー、語っていきたいと思う。
00:42 - 09:40[無関係なデータにつき省略。先の動画のコメントへの返答。完全な筆記録は文章2052-V-1Fにて閲覧可能です。 -Collier博士]
09:41 - それでDiscordのビデオを見てたんだよ。ところで、えっ、「口調曖昧フィルター」?(笑う)本当に?大企業がこれを握り潰したいってのは知ってるけど、それはバカげたことだよ。誰も君がどれぐらいの頻度で「だ」とか「の」と言っているかなんて気にしてないよ。ともあれ、量子真空エネルギーについてもう一度考え直させられたよ。そう、僕はそのことについてずっと口酸っぱく言ってきたけど、結果を見せれば許してくれると思うよ。もし物理学の理解が正しければ、量子真空中の不連続性は一種の一方通行のように作用するだろう。だからもし僕の思った通りに上手くいけば次の動画で数学を使ってやってみようと思うけど、今ここで僕の装置を見てもらうのが一番早いと思う。
(カメラを取り、SCP-2052-1を映しながら作業台の方にカメラを持っていく。ここで、筐体の後ろから数本のワイヤーが伸び、付近にあるオシロスコープと操作盤に伸びていることが視認できる。続いて蓋を開け始めると、内部を囲むひと繋がりの電磁石と用途不明の追加装置が交互に並んでいることが明らかになった。筐体の下半分は不明な透明な液体で満たされている。絹の正方形が液面とほぼ同じ高さの筐体の側面から吊り下げられている)
11:03 - 電気伝導性のないゼロ点膜が必要だけど、絹がそれにとてもよく向いてるって分かったんだ。だから難しい部分はもうできた。それを[データ削除済]に曝して、それから数時間外で乾かさないといけないんだ。Discordはそれをどうやるのかについての素晴らしい動画をあげている。それを乾かしたら、起動済みの筐体に入れて、そして部分的にだけ浸かっていることを確認する。もし、両側が浸されたら全工程がダメになっちゃうから最初からやり直さないとダメだよ。(蓋を戻してスイッチを入れる。低い音が鳴る)さて、あとは適切な共振周波数を設定するだけ。理論通りに上手くいけば、今すぐ反応を見ることができるはずだよ。
13:47 - 14:16 (ダイヤルをゆっくりと回す。オシロスコープに予測できない間隔でわずかな乱れが表れ、徐々にその頻度と強度が増していく。およそ14:12でピークに達するまでそれは続く)
14:17 - よし、それが今回得られるだろう反応の全てだと思う。十分に綺麗な共振を得るためには、テスラエミッターをもっと慎重に並べないといけないと思う。でも、この特定の周波数で何かが起ころうとしていることは明らかで、それは僕が何かを掴んでるってことだ。そして、知ってると思うけど、もしこれが動作したら、それは自由エネルギーよりもっとたくさんのことをやるだろう。これで手袋を作って、素手で鉄を成形できるだろうね。あー、この場合は素手ではないか。ともかく、僕が何を意味しているか分かるよね。僕たちには危ない重機なんてもう必要なくなるんだ。つまり、大手の製造業者も石油カルテルと同じくこのことを知っているだろうということ。だから、もし僕が明日突然謎の失踪をしたら、そう、みんなは何が起きたのか分かるだろう。
15:20 - 今僕がするのはここまでだ。みんな応援の言葉をありがとう。できれば通常の更新に戻したいと思う。あ、高評価も忘れずにね。
回収記録: 20██年8月7日の午前10時15分、財団のエージェントの到着前に、地元警察がWathersの近隣で起こった大規模な爆発の報告に対応しました。財団職員は全ての目撃者にクラスC記憶処理を施し、天然ガス漏れの結果であるとするカバーストーリーを流布しました。捜査により、破壊は2052-V-1に登場するガレージから始まったということが裏付けられました。SCP-2052-1は依然として存在し、一部分に82MPaの圧力がかけられた場合に一致する大きな穴が開いていました。SCP-2052は西向きの壁から出て行ったようで、隣の3軒の家、電柱、SUVを不明な順序で飛んで通過し、地面に衝突し、地中3メートルで静止しました。報告された負傷者はいずれも軽症でした。法科学的分析は当該イベントが約7秒間継続したことを示しています。
財団の回収チームはサイト██へ輸送するために、SCP-2052を真空室に移動することに成功しました。SCP-2052-1も復元されましたが、研究者はその異常な効果を再現することはできませんでした。
Wathersのノートパソコンにインストールされた財団のスパイウェアは取り付けられていたウェブカメラを起動させ、一連の事案を記録することに成功しました。
00:00 - (ウェブカメラがWathersの作業台の正面にある机の上に設置されている。Wathersは画角の左端で作業台の前に腰掛けていて、2052-V-1で見られるのと同じようにダイヤルを回している。注目すべき点として、オシロスコープでは安定して高い数値が示されている)
00:05 - (大きい音がする。ウェブカメラが机から落ち、壁側を向いてUSBケーブルで吊り下げられる)
00:06 - 0:13 (さらに数回大きな破壊音がより遠くで起こる)
00:14 - 00:25 (無音)
00:26 - 02:15 (慌ただしく歩き回る音とともに浅い呼吸と、時折深い呼吸が聞こえる)
02:16 - 02:28 (金属物が動く音。Wathersがウェブカメラを机の上に戻し、短くカメラに向かって手を向ける。極度の不安による震えが見られる。ここではカメラは違う壁を向いている)
02:16 - 02:28 (呼吸が元に戻る。Wathersは一時的にガレージを出て、戻ってきた後、同じ行動を二回繰り返す)
03:13 (車が敷地に入ってくる音がする)
03:18 - 身元不明の声: 大丈夫か?
03:21 - Wathers: ああ、多分。僕を逮捕しに来たのか?
03:26 - 不明: いや、俺はDiscordだ。警察ならあと──
03:30 - Wathers: なんだって?そんなはずはない。
03:35 - 不明: 顔と声は動画のために変装してあるって言ってただろ?
(3秒間の沈黙)
03:46 - Wathers: そんなわけはない。本当に僕が君のことをそうだと信じてるって──
03:51 - 不明: 君はただ3つの家にティッシュペーパーを打ち込んだだけだ。ビデオ編集を信じてないのか?
03:57 - Wathers: 全然面白くない。
04:02 - 不明: 分かってるよ。そしてすまなかった。でも急いでるんだ。だって、今や君はフリーエネルギーが本物だって知ってるし、それに──
04:10 - Wathers: 前までは信じてたよ。
04:13 - 不明: 現実を見ろよ。誰もが何かを初めて見るまでは心の底から信じないものさ。今となっては君も理解したと思うけど、大事なのはそのことが、君が隠蔽は真実だと知っている、と意味するということだ。そして警察がここで何が起こったかを解明したら、奴らは君が知ってると気付く。その時に何が起こるか分かるか?
04:31 - Wathers: あー、何を言おうとしているんだ?隠れればいいのか?僕の残りの余生を君の基地で、昼間からテレビを見たりして過ごせと?
04:42 - 不明: 違う。君は陰謀と戦うことになると言っているんだ。俺たちには秘密の研究所がある。そこで君には機械の製作を手伝ってもらう。その機械は──
04:54 - Wathers: 待てよ。「俺たち」?
04:57: - 不明: 複雑なんだ。でもそこに着いたら説明する。
(4秒間の間)
05:05 - Wathers: 本当に僕が石油カルテルを倒すことに役立てる?
05:11 - 不明: 君が作るもの全てが隠蔽工作の影にいる奴らと戦うために使われるって約束するよ。
補遺 2052-A-1:20██年11月26日、SCP-████を奪おうとする敵対勢力が、SCP-2052と似た性質を持つ質量2.4×104kgの4枚の鋼板を用いサイト██を襲撃しました。これらのうち3枚は敵対勢力によって回収され、残った一枚は自己破壊し、分析のために回収することはできませんでした。Kyle Wathersと彼の協力者の調査はレベル3の優先順位に引き上げられています。