SCP-2071-JP
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アイテム番号: SCP-2071-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2071-JPの製造は無期限に禁止されます。SCP-2071-JPを摂取した人物は記憶処理剤の投与や記憶混除去などをはじめとする処置である処置-2071-JPを受けてください。

説明: SCP-2071-JPはヒトの意識への作用効果を有する液状の薬剤です。SCP-2071-JPの製造過程の一部にはSCP-2419との類似点が存在しています。例として、死体の有する固有情報1を抽出して作成される点が挙げられます。

SCP-2071-JPの異常性はヒトが摂取した際に発生します。SCP-2071-JPを摂取した人物(以下、対象)は幻覚を体験します。幻覚の内容について対象へインタビューを行ったところ、対象によって体験する幻覚の内容は異なるものの、以下の共通点があることが確認されています。

  • 景色に色相が存在しない。
  • 主に老齢の男性(SCP-2071-JP-Aに指定)が存在している。
  • 時間の流れを感じない2
  • 別の世界のように感じる3
  • 太陽をはじめとする光源が存在しないにもかかわらず、晴天下の屋外と同等の照度を維持している。

SCP-2071-JP-Aは、前述の通り老齢男性の外見を有する人型存在です。SCP-2071-JP-AはSCP-2071-JPによる幻覚を構成する要素の1つであることが判明していますが、振る舞いなどの複数の状況的証拠から独自に知性を有しているものと考えられています。

SCP-2071-JPは1960年代に財団によって開発された技術をもとに、1971年にウェスト博士のチームから技術共有を受けたエリー博士によって発案されたプロジェクトを実行した結果、発生しました。該当のプロジェクトは「故人の記憶を蒸留したものを液状薬剤として抽出し、それを服用することによって故人の記憶と経験に基づいた各種技術を他の存命の職員へと引き継がせる」ことを目的としたものでした。

しかしながら、結果として生じたものは幻覚効果とSCP-2071-JP-Aに分類された老齢男性の幻覚でした。このことから該当のプロジェクトは失敗と判断され、継続計画は凍結されました。該当のプロジェクトに関する詳細情報は別途資料(資料2071-JP.1)を参照してください。


補遺2071-JP.1: 観察記録

1971/10/17から1971/10/27にかけて、Dクラス職員を用いたSCP-2071-JPの幻覚内容の観察が行われました。以下は観察記録の一部抜粋です。

記録2071-JP-1

故人: D-2071-14

対象: D-2071-2

結果: 体験した幻覚についてD-2071-2は「芸術作品のような世界だった」と、SCP-2071-JP-Aについては「ベレー帽をかぶった初老の男性」と回答した。

記録2071-JP-4

故人: D-2071-75

対象: D-2071-8

結果: 体験した幻覚についてD-2071-8は「ところどころに毛糸玉の浮かんでいる世界」と、SCP-2071-JP-Aについては「安楽椅子に座った年配の男性」と回答した。

記録2071-JP-7

故人: D-2071-136

対象: D-2071-14

結果: 体験した幻覚についてD-2071-14は「廃れているが、ところどころに植物の新芽が存在している世界」と、SCP-2071-JP-Aについては「たくさんの花束を持った中年の男性」と回答した。

記録2071-JP-10

故人: D-2071-197

対象: D-2071-20

結果: 体験した幻覚についてD-2071-20は「ひどく廃れた世界」と、SCP-2071-JP-Aについては「初老の女性」と回答した。また、その後のインタビューによりSCP-2071-JP-Aが「あの人は弔ってもらえない。わたしが代わりに弔うしかないの」と発言していたと証言した。


補遺2071-JP.2: 調査記録

1971/10/31に、SCP-2071-JP-Aに対するインタビューを目的としたSCP-2071-JP内部についての調査が行われました。以下はその際に行われたインタビューの内容の一部を転写したものです。

インタビュー記録 2071-JP #001


インタビュアー: エージェント・春馬

対象: SCP-2071-JP-A

付記: エージェント・春馬による調査時に使用されたSCP-2071-JPは、当該オブジェクトの担当職員であった倉岡博士より抽出されたものです。倉岡博士は1971/09/27に非異常性のすい臓がんによって死亡しています。


«記録開始»

エージェント・春馬: はじめまして。あなたの名前を教えていただけませんか?

SCP-2071-JP-A: 人が作り出した偶像に名前は普通ないものです。君が憧れる理想像に名前はありますか?

エージェント・春馬: それは……答えかねますね。

SCP-2071-JP-A: まあ、なんていうか、好きに呼んでください。

エージェント・春馬: 分かりました。では、SCP-2071-JP-A。あなたは何故この空間にいるのですか?

SCP-2071-JP-A: 私がこの世界にいる理由ですか。

エージェント・春馬: はい。

SCP-2071-JP-A: 私がこの世界にいる理由  それはこの世界を弔うためです。

エージェント・春馬: 世界を弔う? 詳しく聞かせていただけませんか?

SCP-2071-JP-A: はい。この世界は、私を生み出してくれたあの人が見ていた世界なのです。ですが、あの人は亡くなってしまいました。

エージェント・春馬: あの人とは、倉岡 雛田さんのことですか?

SCP-2071-JP-A: はい。彼女は、既に皆に弔って貰えている。だから、彼女の遺した世界は、もう誰にも見られる事はないのです。

エージェント・春馬: 私は、今こうして見ていますが……。

SCP-2071-JP-A: えぇ。ですが、彼女以外が、この世界に想いの創造を齎すことはもう無いのです。だから、私はこの世界を、そして私自身を弔わねばいけません。

エージェント・春馬: [相槌]

SCP-2071-JP-A: もう私を必要とする彼女はいないけど。ただ。……あの人から受けた愛を、私は決して忘れません。

エージェント・春馬: ……最後に1つお聞きします。あなたは、彼女にとっての何者だったんですか?

SCP-2071-JP-A: 私は、元々彼女が幼い頃に憧れたヒーローであり、大人の像であり、年長者であり、またその故人が青春期に拠り所とした「導き手」の漠然としたイメージであり、壮年期や晩年に見つめた「先人たち」の像であり、そして、その彼女自身が作り出した偶像だったんです。

エージェント・春馬: [沈黙]

SCP-2071-JP-A: わたしは彼女をこの世界と共に導いてきました。

エージェント・春馬: 彼女は、あなたを頼りに生きてきた、と。

SCP-2071-JP-A: はい。一つお願いです。もう、死んでしまった者の墓とも言えるこの世界は、故人の為にあるのです。生者が見るべきものではないのが事実です。なので、もうこれ以上、墓地への  世界への立ち入りはご遠慮いただけませんか。

エージェント・春馬: ……分かりました。他に、何か言いたいことはありませんか?

SCP-2071-JP-A: 他に言いたいことはないです。なぜなら私の役目はもう終わりましたから。あとは、この世界の行く末を、私が消えるまで見続けるだけです。

«記録終了»


終了報告書: 本インタビューの結果、SCP-2071-JP-AがSCP-2071-JPの服用を拒んでいることが明らかになりました。これを受け、倫理委員会を交え、調査担当チーム内で協議を行った結果、倫理的観点からSCP-2071-JPの服用は禁止され、SCP-2071-JPを用いた実験は無期限に凍結されました。以下はSCP-2071-JP研究チーム代表であるロバート・スミス氏の覚書の転写です。

SCP-2071-JP-Aの話を聞くに、SCP-2071-JPによって見る幻覚は、死んでいった彼彼女らを最期まで見続け、支え続けてきたものであり、そして墓標だったのだろう。

時に死者について語ること、深追いすることは、死者に対しての冒涜となる。しかし、私達は墓に入って、なおかつ少々好き勝手し過ぎた。これは彼彼女らからしたら墓を荒らしていることになるのでは無いだろうか。

勿論、自分が生きたことを憶えておいて欲しいという者もいる。しかし、墓を荒らしてまで憶えておいて欲しいとは思わないだろう。私達は死んでしまった君たちの意見、そして君たちを導いてきた立派な偶像の意見を尊重する。もう墓を荒らすことはしない。

安心してくれ。私達は君たちが何かに憧れ、何かに想いを馳せたことを覚えているし、それらが消えゆくことはない。

  ロバート・スミス

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