SCP-2078-JP
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アイテム番号: SCP-2078-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-2078-JPはサイト-81EJの地下5階、第二男性用トイレにて収容されています。いかなる職員もSCP-2078-JPを使用しないでください。担当職員は緊急の要件がない場合、1週間に5回、一回20分のSCP-2078-JPと会話などの接触を行ってください。SCP-2078-JPの完全な収容を目的とした第二男性用トイレ移転計画は、費用対効果の観点から現在まで保留されています

説明: SCP-2078-JPはサイト-81EJに設置されている█████社製の温水洗浄便座一体型便器です。SCP-2078-JPは外観、内部ともに同型の便器と違いは見られませんが、SCP-2078-JPは7歳相当の知能や、視覚、聴覚、痛覚、嗅覚などの刺激を受け取る力を有しています。SCP-2078-JPとの会話などの手段を用いての接触は可能です。SCP-2078-JPの発話は全て消臭ファン機構のON/OFFを用いての和文モールス信号ですが、これはSCP-2078-JPに発声機能が備わってないためであり、SCP-2078-JPは聴覚を有しているため、接触の際、会話をモールス信号で行う必要はありません。

2008年12月、サイト-81EJの地下5階第二男性用トイレの改装工事・便器の取り替えが行われました。発見前、SCP-2078-JPは消臭ファンに問題がある初期不良品という認識がなされていましたが、2009年1月4日、御手洗研究補佐が発見前のSCP-2078-JPを使用した際、突如温水洗浄装置が水勢、水温どちらも最大の状態で作動し、SCP-2078-JPが発見されました。以降SCP-2078-JPの使用・接触は禁止されました。現在、SCP-2078-JPの移動や、運転を停止させる試みは全て失敗に終わっています。

インシデント記録2078-JP: 2009年1月22日、SCP-2078-JPの温水洗浄装置が約2時間に渡って作動し続けました。以下が、インシデント発生時のSCP-2078-JPの発言です。

[モールス符号] -・-・- --・・- ・・ --・-・ ・-  -・-・- --・・- ・・ --・-・ ・- -- 

[復号文] サビシイ サビシイヨ

このインシデントを受け、SCP-2078-JPのオブジェクトクラスはEuclidに変更されました。

実験記録2078-JP

日時: 2009年2月1日

対象: SCP-2078-JP

目的: SCP-2078-JP使用時のSCP-2078-JPの反応の調査。今後のSCP-2078-JPとの接触方法の模索。

方法: 御手洗研究補佐がSCP-2078-JPを利用する。

結果: 御手洗研究補佐が排泄を行った瞬間、SCP-2078-JPの温水洗浄装置が水勢、水温どちらも最大の状態で作動。SCP-2078-JPは以下の文言を発語。

復号文]クサイ キタナイ ヤメテ

以降、御手洗研究補佐はSCP-2078-JPとの接触業務に任命されました。

会話記録2078-JP.1

前記: SCP-2078-JPの発言は復号済みです。

<記録開始,2009/02/06>

御手洗研究補佐: よし、これで自動で復号された文が画面に映って、記録されるはず。

SCP-2078-JP: ニドモ ウンコ シタ ヒトダ アッチイケ

御手洗研究補佐: もうしないから。いなくなったらお前寂しがってウォシュレットつけるだろ。

SCP-2078-JP: シナイナラ ヨカッタ モウ シナイナラ ナマエ オシエテ

御手洗研究補佐: 僕の名前は御手洗って言うんだ。君の名前はなんていうの。

SCP-2078-JP: ヘ0069351

御手洗研究補佐: 型番か、長いな。毎日トイレと話さなきゃならんから名前ないと困る。アイテム番号で言ってもなあ。ヘムクとかでいい?

SCP-2078-JP: ジブンモ ナガイト オモッテタ ヘムクデ イイヨ

御手洗研究補佐: 事情でずっと付き合うことになるからよろしくね。

SCP-2078-JP: ミタライ ミタライネ

御手洗研究補佐: 2番目に担当するアノマリーがトイレだなんて、これも何かの縁かな。

SCP-2078-JP: ミタライ コレカラ ヨロシク

[後略]

<記録終了>

会話記録2078-JP.279

<記録開始,2010/03/09>

御手洗研究員: これで、自動で漢字とか平仮名や片仮名に変換されるはず。やあ、ヘムク。元気してた?

SCP-2078-JP: 一年前から臭い思いしていないから元気だよ。

御手洗研究員: まだ覚えているのか。そろそろ忘れなよ。もうしてないんだからさ。

SCP-2078-JP: 臭かったな。御手洗の。

御手洗研究員: さーて、仕事に戻ろうかな。

SCP-2078-JP: 分かったよ。悪かった。ごめんなさい。

御手洗研究員: なんだよ、結局離れてほしくないじゃん。

SCP-2078-JP: 一人は寂しいの。

御手洗研究員: だよな。別のやつ連れてきたいんだけど。寺谷2とか。でもそうするわけにはいかないんだ。現状ヘムクと話せるの僕だけだし。

SCP-2078-JP: なんで。

御手洗研究員: まあ、事情ってやつよ。そういえば、言葉遣いが一年前とだいぶ変わったよね。使う言葉が大人になったり、謝れるようになったりとか。

SCP-2078-JP: そうかな、自分ではよくわからない。

御手洗研究員: 明日か明後日にでもテストを受けてもらおうか。一年前に受けたやつの最新版。

SCP-2078-JP: ええ、御手洗と話したかったのに。

[後略]

<記録終了>

実験記録2078-JP.2

日時: 2010年3月13日

対象: SCP-2078-JP

目的: SCP-2078-JPの知能レベルの変化の確認。

方法: SCP-2078-JPに知的アノマリー知能検査を実施する。

結果: 1200点中490点。一年前に実施した前回の検査と比べ137点上昇している。

分析: SCP-2078-JPは2010年時点で9歳児と同等の知能を有しており、知能レベルは時間経過で上昇していくことが予想される。

会話記録2078-JP.1010

<記録開始,2013/07/09>

御手洗研究員: やぁ、ヘムク

SCP-2078-JP: やぁ、御手洗。なんか元気なさそうだね、どうしたの。

御手洗研究員: 僕、思ったんだ。この仕事に向いていないんじゃないかって。

SCP-2078-JP: 何をいきなり。

御手洗研究員: その、寺谷が。死んだんだよ。

SCP-2078-JP: 寺谷が。

[双方、3秒沈黙]

SCP-2078-JP: 理由、聞いたらいけないよね。

御手洗研究員: 仕事柄上、仕方ないことだと自分を何度も言い聞かせてきた。でもダメだった。こんなうんこみたいな毎日。

SCP-2078-JP: 俺みたいに嫌なことはしなければいいのに。

御手洗研究員: うーん。

SCP-2078-JP: 嫌なことはキッパリ嫌だと言わなきゃ。

御手洗研究員: 少し考えてみるよ。ごめん。今日はあまり元気がないんだ。ヘムク、じゃあね。

SCP-2078-JP: 御手洗、まだいかないで。

[SCP-2078-JPは温水洗浄装置を作動させる]

御手洗研究員: 僕も、嫌なことがあったらすぐヘムクみたいに水が出せたらよかったのにな。

[SCP-2078-JP、温水洗浄装置作動を即座に中断]

<記録終了>

会話記録2078-JP.1011

<記録開始,2013/07/12>

御手洗研究員: やあ、ヘムク考えてきたよ。

SCP-2078-JP: 御手洗、やっぱり嫌なことはやめた方がいいんじゃないの。

御手洗研究員: 研究員として働く以上、受け入れなければならないんだ。逃げるのは役に立つけど、ここで逃げると僕は僕でいられなくなってしまう気がして。研究職は僕にとって天職だから。やらなければならないことから逃げるのはダメかなって。

SCP-2078-JP: ええ、へんなの。

御手洗研究員: 確かに、仕事をしていてうんこみたいなことはたくさんあるんだ。最初何も知らないでヘムクを使った時、いきなりお尻に熱湯ぶっかけられて死ぬかと思ったんだ。

SCP-2078-JP: 確かにね。

御手洗研究員: ここで働く以上、うんこみたいなことがあっても水に流さないといけない。僕は逃げずに続けてみるよ。

SCP-2078-JP: でもやっぱり俺には理解できない。嫌なことから逃げるのが一番楽なんだ。

御手洗研究員: 一番楽なのはわかる。でも僕をここの研究員として雇ってくれた人やいろいろ教えてくれた先輩に申し訳ない。

SCP-2078-JP: でもやっぱりわからないや。

[後略]

<記録終了>

会話記録2078-JP.1648

<記録開始,2015/12/12>

御手洗研究員: やあ、ヘムク。

SCP-2078-JP: やあ、御手洗。

御手洗研究員: 今日の調子はどうだい。

SCP-2078-JP: この頃、すこし動きが鈍くなってきたんだ。こうやって文字を打ち込むスピードも遅くなった。

御手洗研究員: ヘムクもここにきて6年経ったからな

SCP-2078-JP: 6年か。俺はこの6年、何をしていたんだろう。ねえ、御手洗は何したの。

御手洗研究員: いやあ、いろいろあったよ。あまりぺちゃくちゃ喋れないけど。嫌なことはたくさんあった。でも今にとても満足してるよ。自分の役目を果たすことができて。

SCP-2078-JP: 自分の役目か。自分の役目。考えてみるよ。

[隣の部屋の流水音]

SCP-2078-JP: この6年間、俺は何をしてたんだろう。

御手洗研究員: そりゃあ、随分話すの上手くなったよ。前より知能検査のスコアは良くなってるし。

SCP-2078-JP: それって俺のすべきことなのかな。

御手洗研究員: それは。

[3秒の沈黙]

SCP-2078-JP: 少し、一人で考えたいんだ。ごめん。

御手洗研究員: お前からそんな言葉言われるなんて初めてだよ。まあいいや。じゃあ、ここで失礼。

<録音終了>

2015年度サイト-81EJ点検

点検: サイト-81EJ施設管理部門

地下5階の第二男性用トイレ: 複数の便器で劣化が始まっています。故障が発生した場合はサイト-81EJ施設管理部門に報告してください。同様にSCP-2078-JPについても劣化が激しく、注意が必要です。

会話記録2078-JP.1719

<記録開始,2016/04/12>

御手洗上席研究員: やあ、ヘムク。

SCP-2078-JP: やあ、御手洗。

御手洗上席研究員: 調子はどうだい。

SCP-2078-JP: はっきり言ってあんま良くないんだ。俺が喋ってるのに使っている消臭ファン機構、他のと比べてだいぶ丈夫にできてたけど、もうダメみたい。

御手洗上席研究員: ああ、消臭ファン機構か。

SCP-2078-JP: あの、3年前の御手洗のあの言葉の意味、ようやく分かった気がするんだ。

御手洗上席研究員: 覚えていないなあ。どんなこと言ったっけ。

SCP-2078-JP: 何の因果かわからないが、俺は喋れるトイレなんだ。だから、当然人に使われるのは嫌だった。

御手洗上席研究員: ヘムクはもう6年も使われていないからね。

SCP-2078-JP: 最近、隣のトイレの流れる音を聞くだけで苦痛だった。そして気づいた、俺は、俺じゃなかった。

御手洗上席研究員: ヘムクにしては珍しいなあ。こんな話を切り出してくるなんて。それで俺じゃないとは一体。

SCP-2078-JP: 俺はトイレだ。紛れもないトイレ。なのに、2回しかその役目を果たしたことがない。そんな自分が恥ずかしくて。

御手洗上席研究員: ヘムクは他のトイレとは違う。

SCP-2078-JP: 御手洗に研究員という天職があるのと同じで、俺はトイレという天職があったんだ。俺を作った人はきっと、たくさんトイレとして働いて欲しいと思っていたんだ。

御手洗上席研究員: ああ、そういうことか。

SCP-2078-JP: 嫌なことから逃げたって構わないとは思う。でもトイレとして生まれたからにはやらなければならないことを環境を言い訳にして一切してこなかった自分が、情けなくて。

[御手洗上席研究員、3秒沈黙]

御手洗上席研究員: ヘムク、ちょうど便意が。

SCP-2078-JP: ありがとう、ありがとう、御手洗。

御手洗上席研究員: 7年ぶりだな。

SCP-2078-JP: しっかり消臭しとくよ。俺じゃない俺を一緒に水に流してくれ。そして、次トイレとして生まれる時はきっと。

SCP-2078-JP:3

[御手洗上席研究員、7分沈黙]

[流水音]

[SCP-2078-JPの主電源ランプが消灯]

<記録終了>

補遺: SCP-2078-JPは経年劣化による故障により異常性が消失し、オブジェクトクラスはNeutralizedに変更されました。

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