SCP-2079-JP
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アイテム番号: SCP-2079-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2079-JPは現在、財団が行方を捜索中です。また、後述のインシデント2079-JP-αにより帰還が現状不可能となったSCP-2079-JP-2-a、SCP-2079-JP-2-bは現在、財団の保護下にあります。インシデント2079-JP-α発生以前の収容方法は以下の旧特別収容プロトコルを参照してください。

説明: SCP-2079-JPは一般的な中型客船に類似した外見を持つ船舶です。SCP-2079-JPと同規格の船舶は現在に至るまで発見されていません。SCP-2079-JP内部の掲示物等の言語が日本語表記であったこと及び、防火設備等が1965年制定の船舶消防設備規則に則っていることから、SCP-2079-JPは1965年以降の日本国内で造船されたと推測されています。SCP-2079-JPの構造の大半は一般的な客船と類似していますが、船内へのハッチが20箇所ある点で他の客船と区別できます。これらのハッチに取り付けられた水密扉をSCP-2079-JP-1と呼称します。SCP-2079-JP-1に窓はありません。SCP-2079-JP-1のうち、1個体の例外を除く全ての個体は二重扉の構造で、船外側と船内側の扉を同時に開いた状態にすることができない性質をもちます。例外の1個体をSCP-2079-JP-1-aと呼称し、それ以外の個体をSCP-2079-JP-1-bと呼称します。SCP-2079-JP内外の塗装の一部に剥がされ塗り直された痕跡があること及び、SCP-2079-JP-1-bがSCP-2079-JP全体に比べ明らかに劣化が少ないことからSCP-2079-JPが一般的な船舶を改造して制作されたオブジェクトであると推測されています。

非活性状態にあるSCP-2079-JPは日本国愛知県の███港に停泊した状態で静止し、SCP-2079-JP-1は開閉できません。牽引による移動は失敗しました。また、甲板から非活性状態の船内に侵入する試みは甲板と船内を隔てるハッチが解錠に成功したにも拘らず開かなかったため失敗しました。SCP-2079-JPは偶数月の1日の午前0時になると活性状態に入ります。活性状態に入ったSCP-2079-JPはSCP-2079-JP-1の開閉が可能になります。ただし、SCP-2079-JP-1-bは外部から開閉することができません。その12時間後にSCP-2079-JP-1は自動的に閉じ、アメリカ合衆国███████州██████へ向けおよそ12日間かけて太平洋を横断します。横断中、SCP-2079-JP-1を開閉することはできません。この時操舵室は無人であり、装置は静止したままです。燃料タンクも常に空の状態であることから、未知の手段で船体を移動していると断定されます。██████に到着したSCP-2079-JPはSCP-2079-JP-1-aの開閉が可能になります。72時間休眠状態に入ったのちSCP-2079-JP-1-aが自動的に閉じ、███港へ同様におよそ12日間かけて帰港します。停泊後SCP-2079-JP-1は開閉可能になり、12時間後に自動的に閉じてSCP-2079-JPは非活性状態に入ります。この時船内に残っていた生物及びSCP-2079-JP-2は船外に全裸の状態で転移され、そのまま約3m自由落下し港に着水します。地面に落下した例は確認されていません。

SCP-2079-JP-1-bはそれぞれが異なる平行宇宙と基底宇宙を繋ぐ水密扉です。活性化するたびに不規則なSCP-2079-JP-1-b個体が開閉不可能になります。この現象は対応する平行宇宙が不安定な状態にある時に発生します。SCP-2079-JP-1-bはそれらの実際の開閉状態に関わらず船外からは常に閉ざされている状態のままです。

SCP-2079-JPが活性状態の時、SCP-2079-JP-1-bからは人間と科学的に差異がない人型実体が出現します。これらの実体をSCP-2079-JP-2と呼称します。SCP-2079-JP-2は基底宇宙における財団に相当する組織の構成員を名乗っており、財団の職員と概ね友好的です。しかしSCP-2079-JP-2個体が所属していると主張する組織のうち、およそ20%の組織はその理念が基底宇宙の財団と一致しません。SCP-2079-JP-1-bの船外側の水密扉は、それぞれに対応するSCP-2079-JP-2のみが外扉と内扉の間の空間に存在する場合にのみ開くため、基底宇宙及び対応しない平行宇宙の生物がSCP-2079-JP-1-bを介して平行宇宙に侵入することはできません。財団とSCP-2079-JP-2との間にはSCP-2079-JP内での諸問題の発生防止と各々の技術的向上を目的として財団主導のもと船舶保護条約2079JP及び特殊情報共有協定が制定されました。以下にその一部抜粋を記載します。

発見経緯: 2017/12/1午前0時ごろに███港に突如出現したSCP-2079-JPを、SCP-2079-JPに輸送船の停泊予定ポイントを占拠された地元の麻薬密売人█人が目撃し、SCP-2079-JPに威嚇射撃を行ったところを他のSCPオブジェクトの調査で偶然付近に居合わせた財団のエージェントが制圧し、サイト-8165へ報告したことでその存在が明らかになりました。麻薬密売人█人にはインタビューを行った後、クラスA記憶処理を施し警察へ引き渡しました。以下はSCP-2079-JPが発見された当日中に行われた初めての探査記録であり、船舶保護条約2079JP及び特殊情報共有協定が制定される以前のものです。

この探査及びインタビューによりSCP-2079-JPの大まかな特性が判明したため、これ以降の探索に不測の事態は発生しませんでした。船舶保護条約2079JP及び特殊情報共有協定が提案されたのは第3回探査時、締結されたのが第5回探査時です。締結以降のSCP-2079-JPへの乗船は「探査」ではなく「会合」として区別します。以下は探査及び会合にて把握できた平行宇宙の組織のリストから財団と特徴的差異が存在したものを一部抜粋したものです。

補遺

インシデント2079-JP-α: 2019/6/█ 13:21 第10回会合で太平洋沖を航行中だったSCP-2079-JPが正体不明な小型船の襲撃を受け大破しました。襲撃犯の特定には至っていません。このインシデントにより護衛にあたっていた小型船二隻とその乗組員█人を喪失し、1█名のSCP-2079-JP-2が行方不明になりました。しかし、SCP-2079-JPの残骸は生存者の目前で救命ボートを残し突如消失しており未だ発見されていないため、現在も異常性を有したまま財団の認識外に存在する可能性があります。このインシデントにおける生存者は財団が会合に派遣した鳴瀬博士及び2人のSCP-2079-JP-2(SCP-2079-JP-2-a、SCP-2079-JP-2-bと呼称)の計3人でした。以下は鳴瀬博士へのインタビューログです。

インタビューログ - 2079-JP-α-1 日付: 2019/6/1█
インタビュアー: 小武博士
対象: 鳴瀬博士


[記録開始]

小武博士: 体調の方はどうですか、鳴瀬博士。

鳴瀬博士: 随分よくなった、腰はまだ痛むが食欲は戻ったからな。ありがとう小武君、さぁ始めようか。

小武博士: はい、それではインシデントより前、SCP-2079-JPに乗船してから何か変わった事はありませんでしたか?

鳴瀬博士: 特になかったはずだ。強いて挙げるならエージェント右野、今はSCP-2079-JP-2-aに指定されている青年だが、彼とは初めての邂逅だったよ。通例通りにこの船について説明をして例の条約に加盟させたが、どうにも彼はつっけんどんな性格でね。会合中も退屈そうに窓の外を眺めていたよ。まあ現場職を椅子に座らせてそうなったのは彼が初めてではないし、私もさして気には留めていなかったよ。……と、変わった事は本当にこの程度しかなかったんだ。

小武博士: なるほど、わかりました。それではインシデント発生時の様子を順を追って説明してください。

鳴瀬博士: 事が起こったのは会合の真っ最中だった、外から銃撃音が聞こえてきた直後に船が前後で真っ二つになりよったのだ。文字通り、だ。間違いなくアノマリーを利用した犯行だろうな。私の隣に座ってた████とその向かいの席の███はその場で左右にぶった斬られた。人間、本当に驚くと何もリアクションなんて取れなんだな。

小武博士: 続けて下さい。

鳴瀬博士: ほんの少しの静寂があった後、一転して大パニックになった代表たちは散り散りになって断層から遠ざかるように逃げ惑っていった。避難訓練などやってないからな、救命ボートの在り処すら知らなかったろう、仕方あるまい。その場に残ってたのは反応が鈍った年寄り1人、つまるところ私だけだった。一度はさあどうしようかと考え込んだが、さっき代表たちが逃げ惑う中、わざわざ断層を飛び越えてまで船尾側に駆け抜けていった奴がいたことをふと思い出した。ネズミ……秘密結社の黒山鼡だった。

小武博士: SCP-2079-JP-2-bですね?

鳴瀬博士: そうだ。さては逃げる算段でも有るんじゃないかと睨んだ私は、老体に鞭打ち黒山を追って船の中を走った。

小武博士: それで、どうなりましたか?

鳴瀬博士: あの野郎、ちゃっかりボートの場所を把握してやがったんだな。黒山と、運よくそこへ辿り着けていた右野の2人でさっさと逃げてしまおうとしていた。12人乗りボートでだぞ?そこに何とか間に合った私は大声張り上げて奴らを呼び止め、私も乗り込んで脱出したんだ。

小武博士: 他のSCP-2079-JP-2の救出には向かわなかったのですか?

鳴瀬博士: 行けるなら行ってたさ。しかし現実そうすることは叶わなかった。私らがSCP-2079-JPを脱出した時、こんな事をしでかしてくれた連中がダメ押しに何かを海に放流してから撤収するところだったのだよ。

小武博士: 何か、とは?

鳴瀬博士: バケモンだ、そうとしか言い表せない。別にそいつのせいで世界が変わるだとか、そんなことは断じてなかっただろうよ、しかしその場で溺れかけてる丸腰の人間を瞬く間に食い尽くすには十分すぎた。ボートに辛うじて乗り込めた私らもすぐにその後を追うんだろうな、と、少なくとも私は諦めながらその阿鼻叫喚を聞いていたもんだ…

小武博士: しかし、そうはならなかった。

鳴瀬博士: そう!そうなんだよ!(勢い良く立ち上がる)

小武博士: 落ち着いてください、鳴瀬博士。

鳴瀬博士: (興奮した様子で)これが落ち着いていられるか!そのバケモンが他の連中食い尽くして私らに狙いを定め その馬鹿デカい図体で飛び上がって私らに禍々しい牙を向けてきたとき奴は!右野は!そのサメもどきの鼻っ柱をぶん殴ってぶっ飛ばしたんだぞ!

[記録終了]


終了報告書: インタビュー終了後、鳴瀬博士には鎮静剤が投与されたのち精神鑑定を受けてもらいましたが精神汚染は確認されませんでした。 - 小武博士

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