アイテム番号: SCP-2086-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2086-JPは敷地を高さ1.5mの防獣ネットで囲い、SCP-2086-JP-Aの居住施設は隣接する土地に建設してください。常に野菜が栽培されている状態にし、管理は通常の畑と同様に行ってください。現在SCP-2086-JPでは大豆、小麦が栽培されています。農作業はSCP-2086-JP-Aにこちらの栽培プロトコルを熟読させた後に行わせてください。収穫物は全て財団フロント企業「酒井エココンシャスプラスティックス」で生分解性プラスチックの原材料として使用されます。SCP-2086-JP内に弾丸が落ちていた場合はすぐに回収し、出元を調査してください。SCP-2086-JP-A由来の物ではないと判明した場合、起源を調査してください。新たにSCP-2086-JP-Aを栽培する場合、担当職員に許可を取ってください。
説明: SCP-2086-JPはロシア連邦の██████州に存在する80平方kmの畑です。ソビエト連邦時代にコルホーズとして使用されていたことが判明しています。SCP-2086-JPは第二次世界大戦中にソビエト連邦陸軍の歩兵が携行していた火器の弾丸を種子として蒔くことによりSCP-2086-JP-Aを栽培し、収穫することが可能です。
SCP-2086-JP-Aの外見は、頭頂部にビート(Beta vulgaris)のシュートが生えており、第二次大戦中のソビエト連邦陸軍標準の歩兵装備一式を身に着けている事を除いては一般的な身長180cm程の東スラヴ系ロシア人男性です。収穫前は頭頂部以外が地中に埋没しており、外部からの力が加わり全身が地表に出て初めて活動を開始します。頭頂部以外の身体構造、身体能力は一般的な20代男性と差異は無く、知能、生理的欲求、DNAも一般的な人間と差異はありません。装備品に関しても異常性は確認されませんでした。性格は温厚で、非道徳的な命令をしない限りは従順です。また、"ノルマ"という概念に対して明らかな嫌悪を示します。
SCP-2086-JP-Aの栽培には通常の植物同様、水と栄養分を必要とし、収穫については垂直方向に引く抜くことで重量に関わらず容易に収穫することが可能です。現在確認できている特異な行動として、生命活動が停止する直前に装備している弾倉を投げることが確認されています。またその後、弾倉が弾丸を残して消滅することが確認されています。
SCP-2086-JP-Aの地中でのライフサイクルは、そのサイクル速度と種子を形成しない事を除いて通常の根菜類と差異はありません。SCP-2086-JP内の土壌に弾丸を播種して1日程で弾頭部が割れ、薬莢内から発芽します。そして播種から4日程から葉、茎が異常な速度で成長し、同時に地中にSCP-2086-JP-Aが生成され始めます。そして播種から7~10日で成熟し収穫が可能になります。成熟後、2日程すると開花します。開花から1日後に枯死し、同時に地中のSCP-2086-JP-Aも死亡します。この場合でも弾丸を残し弾倉が消滅したことが確認されています。成熟前のSCP-2086-JP-Aを収穫すると全裸の状態です。ですが臓器未発達による多臓器不全により、収穫後2分程で死亡します。SCP-2086-JP-Aが成熟前の収穫は禁止します。
SCP-2086-JP内の土壌を外部に持ち出すとその土壌でのSCP-2086-JP-Aの栽培は不可能でした。また、外部の土壌をSCP-2086-JP内に持ち込むと通常通りSCP-2086-JP-Aの栽培が可能でした。このため、土壌ではなくSCP-2086-JPの領域自体に異常性があると考えられます。
日付: 日時: 2███/04/05 14:00
対象: SCP-2086-JP-A-2
インタビュアー: スホーイ博士
<録音開始>
スホーイ博士: それでは、インタビューを始めます。SCP-2086-JP-A-2、よろしいですか?
SCP-2086-JP-A-2: はい!大丈夫です!
スホーイ博士: 非常に威勢の良い返事ですね。
SCP-2086-JP-A-2: 親父に「返事ははっきり、大声で」って教えられたので!…ところで、さっきここに呼ばれた時から気になってたんですけど、そのSCなんとかっていうのは俺の新しい識別番号ですか?
スホーイ博士: 識別…(3秒間沈黙)ええ、そうです。ここではそう呼ばれます。
SCP-2086-JP-A-2: (小声で)へへ…やっぱり"俺だけの"ってのはカッコイイなぁ。
スホーイ博士: 話が逸れてしまいましたね。ではまず、あなたについて教えてください。
SCP-2086-JP-A-2: はい!俺の名前はボリス・アントーンです!所属は第4歩兵師団第3大隊!誕生日は1911年7月9日、年齢は30歳でノヴゴロド出身!好きなものはお袋が作ったボルシチです!妻と今年3歳になる娘がいます!
スホーイ博士: な、なるほど。ありがとうございます。(10秒間沈黙)すみません、今は何年の何月何日でしたっけ?
SCP-2086-JP-A-2: もう!それくらい覚えといてくださいよ!えーと、俺が生まれてひい、ふう、みい…(10秒間沈黙)1941年?の4月…5日です!はい!
スホーイ博士: そうでした。ありがとうございます。(5秒間沈黙)それでは次の質問です。その頭に生えている物は何ですか?
SCP-2086-JP-A-2: えええっ!これを知らないんですか?ビートですよ。あなたロシア人じゃないの?
スホーイ博士: いえ、ビートはもちろん知っているのですが、なぜそれが生えているのか、ということです。
SCP-2086-JP-A-2: なぜって、生えてるのが普通でしょ!?親父も姉貴も、ヴァジムもタチアナだって生えてますよ?あ、ヴァジムとタチアナは昔っからの友達です!(2秒間沈黙)あっ、今思うとあんたとかさっき見た白衣のべっぴんさんには生えてないな…なんででしょうか?
スホーイ博士: さあ、それは不明です。我々には生えていません。(5秒間沈黙)これでインタビューは終了です。お疲れ様でした。
SCP-2086-JP-A-2: えっ!もう終わりなの?(ため息)ここに来る前、何聞かれるかと思ってちょっとドキドキしてたよ。
スホーイ博士: 何を聞かれると思っていたのですか?
SCP-2086-JP-A-2: いや、俺はてっきり「スターリンさんの事をどう思いますか?」とか「シベリアへの転属について」とか。あ、いや、別にス、スターリンさんにふふ、不満があ、あるわけじゃないですよ!?
スホーイ博士: そんな事は聞きませんよ。大丈夫ですか?先ほどから震えているようですが。
SCP-2086-JP-A-2: だ、大丈夫ですよ!お疲れ様でした!祖国に勝利の女神が微笑まん事を!
<録音終了>
このインタビュー後にソビエト連邦陸軍第2歩兵師団第3大隊に所属していた人物を調査しましたが、「ボリス・ アントーン」という名前の人物は確認されませんでした。また、1941年のノヴゴロドの住民票を調査しましたが、アントーン家並びにヴァジム、タチアナという名前の人物は愛称を含め、確認されませんでした。また、同日に別のSCP-2086-JP-A2人にも同様のインタビューを行いましたが、いずれも日付を1941年4月5日と発言したため、SCP-2086-JP-Aは現在を第二次大戦中と認識している事が判明しました。
2███/02/24にSCP-2086-JP付近の民家から「武装した男が歩いている」という通報が発生した際、拘留されたSCP-2086-JP-Aの不可解な供述が警察署内の覆面エージェントの耳に留まり調査をした結果、当オブジェクトが発見されました。後に関係者全員にクラスB記憶処理が実施されました。
発見当時のSCP-2086-JPは大部分が荒れ果てていましたが、一区画のみ最近まで管理していた痕跡が発見されました。この事から、何者かがSCP-2086-JP-Aの異常性を理解し、栽培した可能性が考えられます。
現在、SCP-2086-JP周辺を中心にこの人物を捜索していますが、未だ発見には至っていません。
補遺1: 2███/10/12に実施された要注意団体「ロシア連邦軍参謀本部情報総局"P"部局」の廃墟化した施設の調査中、以下の文書が発見されました。
異常事象No.0043
1938/07/24に██████州████にて異常事象が発生する地帯を発見。
説明: 弾丸を種子として蒔くことにより人型生物を栽培、播種後30日程度で収穫可能な畑。
備考: 人型生物は歩兵装備を身に着けており、頭頂部にビートが生えています。そのビートを引っ張ることにより収穫できますが、その後2分程で死亡します。
1938/09/19
No.0043を改良する時が来た。首相からの命令だ。要求内容は1941年までに
「寿命を1か月以上にする」「栽培期間10日」だ。
今の技術力なら可能なはず。いや、可能にする。私が率いるチームならできるさ。
1938/12/05
1回目の播種。まずは寿命を改良した。うまくいきますように。
1939/01/06
よし、あいつを収穫してから2時間たったがまだピンピンしている。このまま1か月いってくれよ。
1939/01/08
試しに銃を持たせて的に射撃をするよう命令すると、素直に従ってくれた。命中精度も悪くなかった。
1939/02/06
1か月経過したが生きている、大成功だ!この調子でもう1つの要求も達成できたらいいのだが。
1939/05/17
2回目の播種。成長速度を改良した。うまくいきますように。
1939/05/28
残念、失敗した。小さな肉塊が埋まってただけだった。最初は運が良すぎた。めげずに頑張ろう。
1940/05/07
15回目の播種。今回こそはうまくいきますように。
1940/05/18
よし!10日で収穫できたぞ!成功だ!あとは微調整のみ。
1940/05/21
3日で死んでしまった。何がいけなかった?早急に追求しなくては。
1940/10/20
駄目だ。全て3日以内に死んでしまう!時間が無い、急がなくては。
1940/11/14
期限的にもこいつが最後だ。頼む…!
1940/12/25
やった…完成だ!10日で収穫して1か月経過しても死んでいない!最高のクリスマスプレゼントだ!
1941/01/15
今日はあいつらの出撃の日だ。50人、頑張って戦ってくれよ。
1941/01/20
…全滅したそうだ、50人全員が。その上一切の戦果無し。話を聞くと、誰1人として人を攻撃しなかったらしい。敵を殺せと命令すると銃を捨てたらしい。あれだけ必死に頑張ったのに、できたのは不良品か…クソったれ。計画は予算不足で停止。私も処分されるだろう。
補遺2: モスクワ時間2███/11/7の13時00分、SCP-2086-JPの地面から180dBの歌詞が改変されたソビエト連邦国歌の1番が繰り返し流れ続ける事態が発生しました。以下の文章はロシア語の歌詞を翻訳したものです。
広大なる我らの揺るぎないこの畑は 偉大なるビートが永久に保ち続けるのだ!
農民の意志によって築かれたる ひとつの強きコルホーズに万歳!
野菜を植えよ、我らが自由なる畑に 何も植えずして、何が畑か
ビートの力、農民の力が 豊作から豊作へと導かん
歌詞を分析し、遠隔操作UAVを用いてSCP-2086-JPに大豆の種を蒔いたところ、曲が止まり事態が収束しました。この際、付近に居た職員2名が聴覚を失い、SCP-2086-JP-A1名が聴覚に損傷を受ける被害が発生しました。その後、SCP-2086-JP-Aの半径3kmの住民に対しクラスA記憶処理を行いました。このような事態が再発生することを防ぐため、特別収容プロトコルが改訂されました。