SCP-2100-JP
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財団記録・情報保安管理局より通達

本文書は報告書の第2版であり、参照のためにアーカイブ化されたものです。
現在と異なる事実認識が含まれることに留意してください。

本文書の原本は1989/07/09に編集されました。

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SCP-2100-JP (最新の観測衛星WMAPによる描像)

Table.1: 物理的性質
波長 1.9×10-3m
振動数 160.2Ghz
スペクトル 2.725Kの黒体放射に極めてよく一致

アイテム番号: SCP-2100-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 以前までのSCP-2100-JPの定義は更新され、現在のSCP-2100-JPに付随する関連現象(SCP-2100-JP-A)として再定義されます。以前の特別収容プロトコルの一部はSCP-2100-JP-Aへの対応手順として引き継がれました。こちらの対応手順の詳細は添付文書:プロトコル2100-JP-Aおよび本報告書の過去版を参照してください。

電波天文学の研究に用いられる全ての天文台は監視され、SCP-2100-JPの兆候が検出されていないか精査されます。各研究機関に潜入する財団エージェントは観測データを確認し、SCP-2100-JPの存在を示唆するデータを従来のカバーストーリーと矛盾のない状態に編集してください。SCP-2100-JPの描写を含み、かつ一般科学界に既に周知されている情報に対しては、カバーストーリー「最新の学説による再解釈」を適用して否定または修正を行ってください。

SCP-2100-JPの精密観測および起源の特定を目的として、大口径電波望遠鏡/地球周回観測衛星/深宇宙探査機/有人宇宙探査設備が開発されます。開発に必要となる宇宙物理理論の構築および各種施設の建設/運用に要する膨大なリソースは秘匿が困難であるため、一般社会/一般科学界への限定的な干渉をもってこれらを実現します。各国の研究機関には財団による資金供与/限定情報の提供を実施し、一般科学界における宇宙物理学/天文学/航空宇宙工学の十分な発展を促してください。

同時に、財団の深宇宙観測体制が各国の宇宙開発事業に偽装された状態で構築されます。SCP-2100-JP研究チームは各国の研究機関を通じて構築済み観測施設を運用し、SCP-2100-JPの精密な観測を実施してください。

説明: SCP-2100-JPは、一般に宇宙マイクロ波背景放射として知られる、宇宙空間より飛来する起源不明の電磁波放射です。SCP-2100-JPの物理的性質の概要はTable.1を、詳細は別紙PhysicalReport-2100-JPを参照してください。

SCP-2100-JPの発信は常時継続されています。地球及び人類はSCP-2100-JPの放射を常に受け続ける状況に置かれていますが、この状況はSCP-2100-JPの穏健な性質により幾分か緩和されているようです。SCP-2100-JPの信号強度は人類の用いる通信用電波に比して極めて弱く、波長もマイクロ波スケール1であるため、人体への影響は限りなく低いと見なされています。これらの性質を鑑みれば、人間がSCP-2100-JPを知覚することは通常困難であることが予測されます。

しかしながら上記の性質にも関わらず、一部の人間はSCP-2100-JPを「上空より響く女性の歌声(SCP-2100-JP-A)」として知覚することが可能です。このような差異の原因は近代統一奇跡論からのアプローチを用いることで説明可能です。近代統一奇跡論によれば、この現象は「SCP-2100-JPという電磁波には未知の奇跡論的伝播(定常EVE2流の1種)が含まれており、この伝播に適合する超感覚受容器を持つ人間の知覚にのみ、SCP-2100-JPが影響を及ぼしている」として説明できます。この説明に登場する未知の奇跡論的伝播は”EVE背景放射”と称されており、超常科学界において既に研究が開始されている現象です。SCP-2100-JPの知覚メカニズムは、この研究の成果を流用する形式で明らかになりつつあります。

補遺2100-JP.1: 発見経緯

SCP-2100-JPの初の兆候は、当時勃発していた第二次世界大戦に対抗するためのレーダー機器の研究において偶然発見されました。1941年当時、財団は将来的なレーダー網の配備を念頭に新型レーダーの開発を急いでおり、当時の技術において最先端のマイクロ波レーダーの基礎実験を実施していました。SCP-2100-JPは、この際のノイズ測定実験の異常データとして初めて見出されました。

発見当初、SCP-2100-JPは正常な自然科学現象の一種であると見なされていました。この認識は当該データを含む一次報告書を査読した財団研究員のStein Garnerにより否定され、SCP-2100-JPの異常存在としての側面が明らかになりました。SCP-2100-JPのオブジェクト指定以前、Stein研究員は当時のサイト管理官に宛てた書簡の中で次のように述べています。

[転写開始]

[前略] 確かに、この電磁波放射は至極弱く、取るに足らない自然現象の一種と見られがちです。未だ基礎研究段階にあるマイクロ波レーダーの微弱ノイズなのですから、一介の電気技師らがこの認識に至ることは仕様の無いことでしょう。

しかしながら、この電磁波放射には明らかに異常な点が見受けられます。問題は電磁波そのものではありません、その発信源です。

この電磁波は、宇宙の全方向から同時に発せられています

言い方を変えましょう。この電磁波は地球から宇宙を眺めた際の、視界に見える全方向、すなわち全天球上から同時に来るのです。地球をすっぽりと覆うような未知の球体、その内面から一斉に放射されているに等しい状況です。特定の発信源を持たない電磁波放射、そのような存在は既存の物理学にも、超常物理学にも例がありません。

この現象の根源は、少なくとも何処かの要注意団体の仕業ではないと思われます。大海原の全ての水面に同時に波を立てることはできないでしょう。それと同じことを、この特異な電磁波の発信者はやってのけているのですから。

[中略] …ええ、"発信者"と書きました。私はこの発生源を、何らかの知性体の構築物として想定しています。このような信号の生成には、およそ銀河系よりも遥かに巨大なシステムが必要でしょう。そのような構造が自然に形成されるとは考えにくいのです。

しかも、この電磁波は既存技術で観測不可能なほど遥かに遠くの宇宙から発せられています。人類の知らない遥か遠くの世界、宇宙の彼方に未知の高度知的文明が存在し、日々我々に何かを訴えかけようとしている。私にはそのように思えてなりません。

この異常は、各地のレーダー情報を傍受できる我々財団にしか気づけないでしょう…今のところは。近い将来、電磁波受信設備が一般化した未来には、この未知の宇宙的恐怖に人類社会は恐れ慄くことになると思われます。そうなる前に、財団はこの異常電波について何らかの対応を開始しなければならないと考えています。

それでは、色好いお返事をお待ちしております。

[転写終了]

上記の指摘事項は後の追試実験により裏付けられ、SCP-2100-JPの発信源が未知の宇宙論的巨大存在である可能性が浮上しました。この情報は財団の関心を大いに集める結果となり、同時期に判明したSCP-2100-JP強度とSCP-2100-JP-A報告件数の強い相関も相まって、SCP-2100-JPはオブジェクトとして正式に指定される運びとなりました。

上記の書簡は研究における重要な提言として扱われ、研究初期の段階からSCP-2100-JPの発信メカニズムには未知の外宇宙脅威が関係する可能性が想定されました。事実として、SCP-2100-JPは微弱ながら宇宙の遥か遠方から地球に影響を及ぼしています。この事実を念頭に、SCP-2100-JP発信者が地球文明の脅威となる可能性は組織的に検討されるようになりました。

この懸念は、国際社会にも影響を及ぼしました。SCP-2100-JPの背景には地球文明の外敵が想定に含まれていたため、この共通の仮想敵の出現は大戦期における国際闘争の抑止力の1つとして機能しました。事実、SCP-2100-JPの存在が秘密裏に各国首脳へと報告された後、SCP-2100-JP研究への国際協力が名目の1つに数えられ、結果的に大戦は終結へと誘導されています。

第二次世界大戦の終息後、SCP-2100-JPの情報はカバーストーリー「宇宙背景放射」として一般社会に流布されました。カバーストーリーには1948年における宇宙背景放射の予言、1964年における宇宙背景放射の発見が偽情報として組み込まれており、現在に至るまで一般社会における歴史的事実として認識され続けています。

補遺2100-JP.2: 一般社会/科学界への干渉

カバーストーリー「宇宙背景放射」の公表後、Karkavitsas監督官の主導のもとSCP-2100-JPの観測および起源の特定を目的とした宇宙開発プロジェクトが開始されました。これらプロジェクトの対外的な推進剤には国際社会における”宇宙時代の到来”および冷戦の対立構造が利用され、これを補強するための世界的な宇宙関連学の発展/宇宙開発事業の促進が財団の誘導を受けて実現されました。

以下は、本報告書執筆時点までに財団の介入/誘導を受けた、天文学/航空宇宙工学上の主な出来事の一覧です。

発表年 一般公開された情報 財団における目的
1960年 オズマ計画(地球外知的生命体の公的探査計画)開始 地球外現象の一般レベルでの探索
1969年 初の公的月面着陸(アポロ11号 一般社会における宇宙事業の促進
1977年 ヴォイジャー1, 2号打ち上げ 深宇宙探査の開始
1984年 国際宇宙ステーション(ISS)計画が発足 宇宙開発の国際的協調姿勢を一般展開
1989年 マイクロ波異方性探査機(WMAP)打ち上げ SCP-2100-JP主力観測設備の確保3

本報告書執筆時点でSCP-2100-JPの観測網構築はほぼ完了しており、残された課題は技術的限界(宇宙の観測限界およびSCP-2100-JPの観測精度問題)の克服のみとされています。

SCP-2100-JP研究の今後の方針には、一般社会/一般科学界を十分に誘導・活用し、各国の公的な協力の元に観測技術の向上を目指すことが目標として据えられる予定です。SCP-2100-JPの発信源特定のための技術的ブレイクスルーを目標として、研究は継続されています。

貴方は私を探して旅に出た。貴方の成長を私は見届けたい。

本文書は1989/07/09に編集されました。

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