SCP-2100-JP
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財団記録・情報保安管理局より通達

本文書は報告書の第3版であり、参照のためにアーカイブ化されたものです。
現在と異なる事実認識が含まれることに留意してください。

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最新のSCP-2100-JP検出施設 "KAGRA"

アイテム番号: SCP-2100-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 以前までのSCP-2100-JPの定義は更新され、現在のSCP-2100-JPに付随する関連現象(SCP-2100-JP-B)として再定義されます。以前の特別収容プロトコルの一部はSCP-2100-JP-Bへの対応手順として引き継がれました。こちらの対応手順の詳細は添付文書:プロトコル2100-JP-Bおよび本報告書の過去版を参照してください。

SCP-2100-JPの露見を防ぐため、一般科学における重力波理論はSCP-2100-JPの影響を補正した状態へと修正されます。各種の重力波天文学研究機関には専任の潜入エージェントを派遣し、将来的に建設されうる観測施設への補正機器の組み込み、ならびにSCP-2100-JPの検出が認められる観測データの改ざんを実施してください。

2019年以降、SCP-2100-JPの主力観測施設は従来の"LIGO"から変更され、財団81管区内、日本国岐阜県神岡鉱山山中に建設された重力波天文台"KAGRA"に指定されています。本決定に伴ってオブジェクトの管理権限は移管され、オブジェクト番号は正式に"SCP-2100-JP"へと指定されます。SCP-2100-JP観測/研究チームは財団81管区へ移籍し、現地にてSCP-2100-JPの研究を継続するようにしてください。

”KAGRA”を用いたSCP-2100-JPの観測において、観測範囲は基底宇宙1の全領域とします。観測は常時継続して実施されるものとし、SCP-2100-JPの空間変位が標準偏差±σを逸脱しないか精査するようにしてください。SCP-2100-JPの変位が標準偏差を逸脱した場合、基底宇宙の最深部(宇宙端内縁部)を重点的に観測し、基底宇宙内におけるSCP-2100-JPの影響を詳細に記録してください。

基底宇宙の外側を観測する手法の確立は、財団における最重要事項の1つに指定されます。財団による一般/超常科学界への干渉は継続され、時空間工学および外宇宙観測学の発展を優先的に誘導するようにしてください。

説明: SCP-2100-JPは、微細定常重力波として観測可能な、基底宇宙空間の振動現象です。空間振動の性質の詳細は、別紙PhysicalReport-2100-JPを参照してください。

SCP-2100-JPは、基底宇宙内部の空間そのものが一斉に振動する現象として見なすことができます。表面上、この微小振動はSCP-2100-JPに特有の空間-物質相互作用として発露し、基底宇宙内部に存在する全ての物質を対象とした様々な物理現象を発現させます。例として、以前のSCP-2100-JPの定義と見なされていた"天の歌声"や"宇宙背景放射"といった現象は、SCP-2100-JPが宇宙内部の物質に及ぼす副次的効果であることが判明しています。

宇宙の内部空間の全てが振動するという性質上、SCP-2100-JPの発生源は現在までに活発に議論が続けられていました。発生源に関する提言は、2018年に完了した外宇宙観測プロジェクトの成果を根拠として得られています。以下は、プロジェクトの完了を受けたSCP-2100-JP研究の成果報告会の書き起こしです。

映像記録抜粋


開催日: 2018/8/21

発表者: 屋良戸博士


[記録開始]

屋良戸博士: まず最初に述べておきます。SCP-2100-JPとは、私たちの宇宙をさざ波のように伝わる時空の歪みです。宇宙全てが振動しますので、波というよりは「宇宙の鳴動」とでも言った方がイメージしやすいかもしれません。

屋良戸博士: SCP-2100-JPは明らかに異常な現象です。通常の重力波、ブラックホールやその他大きな天体ショーの結果放出される重力波は通常光速で伝わります。そのところ、SCP-2100-JPはこのように…[スライドを操作する音]…部分的には光速すら超えるようなのです。既存の物理法則を超えて、私たち地球人へと常に降りかかってきているわけです。

屋良戸博士: 私ども研究者は、長年このSCP-2100-JPの発信源、場合によっては発信者とでもいうべき存在を追い求めてきました。望遠鏡の時代から電波天文台の時代へ、多くの宇宙観測衛星や深宇宙探査機の時代を経て、今日の人類は既知の領域を広げ続けています。表の歴史に残らない名もなき科学者たちは結集し、人類の宇宙への理解は飛躍的に深まりました。SCP-2100-JPの発生源は、この変化の歴史に横たわる重大な謎の1つです。

[屋良戸博士の咳払い。博士は身じろぎし、集まった聴者を見渡す。8秒間の沈黙。]

屋良戸博士: えー、この度私ども研究チームは、SCP-2100-JPの発生源に関して、一つの確信を得ることができました。このことは皆さまにとって予想外のことであると思われます。

屋良戸博士: 端的に申し上げます。「この基底宇宙内において、SCP-2100-JPの発生源は存在しません。

[どよめき]

屋良戸博士: ええ、どこにも居ません!私らのチームは宇宙の全ての領域、数限りない外宇宙文明を調査し尽くしました。財団による超光速航行すら可能になった現代、この調査は時間こそ掛かれど不可能ではない作業でした。しかしその結果は…受け入れがたいものでした。人類が長年探し求めていた答えは、遂にどこにも見つけることができなかったのですから。

[屋良戸博士が再度咳払いする。会場が静まり返る。]

屋良戸博士: 確かに、この事実は私どもにとってもショックなことです。財団が恐れた未知の超高度文明、深宇宙の外宇宙脅威など、初めから存在しないのですから。ですが、可能性はまだ残されています。

[屋良戸博士は静かに上方を指し示す]

屋良戸博士: "宇宙の外側"。私どもが"超外宇宙"と定義したその領域に、彼らは存在すると考えられます。SCP-2100-JPの起源について、財団はアプローチを変えなければなりません。


[記録終了]

財団により並行して収集されていた深宇宙探査機ヴォイジャー号やペレグリン-9遠征隊による基底宇宙端部の観測データは、上記の提言を裏付けています。データによると、SCP-2100-JPは基底宇宙の端部よりも"向こう側"、超外宇宙と定義された領域から発信されたことが強く示唆されています。この推定は、SCP-2100-JPがSCP-2100-JP-B"宇宙背景放射"と同様、基底宇宙端部の全領域より同時に発生している観測事実により補強されています。

SCP-2100-JPの発生源には、宇宙の外側に位置し、宇宙そのものを一個の実体として干渉可能な未知の存在が想定されています。この存在に関する検討は現在も研究途上の状況にあります。

補遺2100-JP.1: ハイペリオン仮説

本報告書執筆時点において、SCP-2100-JPの発生源を「超外宇宙領域に位置する未知の知的存在による空間干渉が原因である」とする仮説が提唱されています。この仮説はハイペリオン仮説と呼称されており、現時点で最も有力な仮説と見なされています。

主要なエビデンスが"宇宙の外"という未知の領域に存在するとされるため、ハイペリオン仮説は現在も未検証のままの状況にあります。にも関わらず、ハイペリオン仮説は現在最も支持されている仮説です。本仮説が「SCP-2100-JPのもたらす効果の全てが人類にとって認識可能な形式を取ること」「効果の集積ポイントが全宇宙空間において地球であること」という観測事実によって補強されているためです。

ハイペリオン仮説には、地球および人類を明確に知覚し干渉を試みる、宇宙構造規模の大きさを持つ未知の知性体の存在が含まれています。本仮説を念頭に、SCP-2100-JPにはKeterクラスが割り当てられ、発生源となる超外宇宙存在の存在有無の確認が今後の研究の優先課題とされました。超外宇宙存在という仮定上の存在を確認する為、超外宇宙領域の観測手法の確立が急がれています。

私は貴方の傍には居ないけれど、いつだって貴方と共に在ります。

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