SCP-2102-JP
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アイテム番号: 2102-JP
レベル3
収容クラス:
esoteric
副次クラス:
ticonderoga
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
notice

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地中海沿岸地域におけるSCP-2102-JPの認識事例のマッピング


特別収容プロトコル

財団のウェブクローラー、回線の傍受、各コミュニティに派遣されたエージェントにより正体不明の視線について言及した事例を収集します。上記の情報は超常証跡データベース1に集積します。それらは既存のデータと統合した上で最新の領域2102-JPを算出します。

SCP-2102-JPを認識する可能性がある知性体が領域2102-JP内に滞在している間、対象はKušumクラスAnomalousリスト2において監視レベルが2から3に引き上げられます。該当する知性体は各種情報媒体への発信内容が領域2102-JP内に存在する期間は永続的に監視されます。従来のSCP-2102-JPに関するものを逸脱する情報を検知した場合はその発信者に対してインタビューを行い、記憶処理の後に解放します。

領域2102-JPとその周辺には比較実験用施設3を除いて財団の施設を建造することは禁止されています。現時点において確認されていませんが、領域2102-JPの変動により既存の財団施設が領域内に含まれた場合、場所依存性が無い限り当該施設は速やかに領域外へ移設されます。

領域2102-JP及び直上の範囲4は継続的な各種異常観測技術によって観測されます。他部門が発見したものを含みSCP-2102-JPに関連すると推測されるデータが検出された場合、SCP-2102-JPの起源解明を目的とした現地への調査部隊の派遣が許可されています。

説明

SCP-2102-JPは起源不明の"視線"です。SCP-2102-JPは地球上の特定の領域(以下領域2102-JPに指定)において観測が可能です。しかしSCP-2102-JPを認識するための感覚器官を大多数は有していません。そのためSCP-2102-JPを認識しているのはアノマリーとして登録した時点で5392人の人物と一部のアノマリーに限られています。SCP-2102-JPを認識した人物はSCP-2102-JPをその正体が分からないことに対する不信感は抱くものの、概ね肯定的に捉えます。

研究者覚書:人間を含む動物は、対象の瞳孔を観察することにより視線を認識する。そのため視界の外部から視線を察知することは不可能であり、そのような事象は認識バイアスや思い込みが原因であることが判明している。しかしこの事実に反して、視線を認識する異常性を有するアノマリーの発見例が多数存在する。主に人間を代表とする脳機能が発達した哺乳類で多く確認されているが、爬虫類や魚類においても視線に対して反応を示す個体が発見されている。また生物に限らず、無機物で構成されたアノマリーにおいても類似した性質を持つ実体が確認されている。例を挙げると、SCP-173は視覚などの感覚器官を有していないが、自身が見られていることを感知して行動を変化させる。

視線を認識する能力についてのメカニズムはいまだ未解明であるが、それを有する実体が多岐にわたる事実から、生物学的構造に依存しない感覚器官の存在を示唆しているとする仮説が提唱されている。(V. Hight et al., "超常感覚の分類と研究報告", Bio. Foundation, Vol. 2903 (2016), pp. 16-37.)

SCP-2102-JPを認識した存在は周囲の環境、また自身の行動や精神状態にポジティブな変化が認められています。この変化は例えば人間ならば想定される状況の標準偏差からは逸脱しない程度の弱いものであり、自身でさえ明確に認識しない場合も多々あります。

発見経緯

2004/03/03、超常証跡データベースを用いてSCP-UA73の捜索を行っていたマルケス研究員が、2003年8月を境として「未知の視線を感じる」という旨の証言を得られた場所の分布に有意な偏りが発生していることを報告しました。これを受けてデータの精査が行われ、世界中で113のおおよそ円形をした領域が存在することが判明しました。当該領域には21の財団サイトが含まれていたため、この時点で当該事象はURA5-8473に指定され初期調査が開始されました。初期段階として領域に含まれていたサイトで聞き取り調査を行ったところ、1名のAクラス職員を含む33名が未知の視線を感じていることを報告しました。この結果からURA-8473はSCP-2102-JPに指定され、研究チームの発足と領域への派遣調査が開始されました。また、SCP-2102-JPによる未解明の影響および収容済みアノマリーへの相互作用の可能性を考慮し、領域2102-JP内に存在していたサイトは領域外に移設されました。

また各国の歴史、文化、神話においても概ね100年から200年周期で未知の視線に関して言及された事例が確認されています。これらは過去のSCP-2102-JP発生事案例と考えられており、超常歴史学部門による協力の下での調査が行われています。

インタビュー記録

対象: 代望 咲希

インタビュアー: エージェント・島賀

前記: 代望氏は東京都在住の16歳の日本人女性です。Webクローラーによる電子諜報により対象に半年前を起点として私生活に変化が見られたこと、全国の企業と教育機関にて実施した「ストーカー被害」に関するアンケートに「視線を感じることがある」との回答をしたため、該当地域所轄の警察署へ「ストーカー被害が疑われる」との名目で任意の事情聴取を行いました。この時のエージェント・島賀のカバーは警察官であることに留意してください。

<録音開始>

[対象が取調室を見渡している]

エージェント・島賀: では、代望さん。貴女が最近感じている「視線」について詳しく聞かせてください。

代望: あ、えっと、はい、えぇっと、その。

エージェント・島賀: 慌てなくても大丈夫ですよ。ゆっくりいきましょう。そう、まずは「視線」を感じ始めたのがいつのことか、教えてください。

代望: は、はい。えっと確か、電車の定期券を更新した頃だから、8月頭くらい前だったと思います。

エージェント・島賀: 正確な日付は覚えていますか? 大体でも大丈夫です。

代望: そ、そうですね。でも視線を感じる気がするって、日常的なことじゃないですか。だから正確な始まりは、ちょっと覚えてないです。

エージェント・島賀: では、その頃にご自分のお部屋6へ来られたお客さんや業者について、後程リストを作っていただけますか?

代望: と、友達しか来たことないですよ! その中にストーカーなんて。

エージェント・島賀: そのお友達が元々被害を受けていて、貴女へ飛び火した可能性もあります。

[5秒沈黙]

代望: わかりました。

エージェント・島賀: では次に。視線を感じるようになった頃と前後して、私生活に変化はありましたか? 知人が増えたり、行ったことのない土地へ足を運んだり。

代望: えっ。

エージェント・島賀: あぁ、落ち着いてください。不審な視線と一口に言っても、悪質なストーカー以外にも、致し方ない事情で雇われた興信所のエージェントということもあります。そういった切っ掛けは、多くの場合は被害者の新しい友好関係に起因しますから。

代望: そう、ですか。

[10秒沈黙]

エージェント・島賀: 新しい趣味、とかですか?

代望: えっ。

[5秒沈黙]

代望: まぁ、はい。最近、夕方の河川敷をジョギングしてて。

エージェント・島賀: ほう、ジョギング。

代望: やっぱり意外、ですかね。根暗って感じの女子高生が運動って。

エージェント・島賀: いえいえ、僕の知人にも、インドア派だけどジョギングはしてるって人、多いですよ。

代望: そうですか。

エージェント・島賀: 面白いことに、彼らの多くは似たようなことを言うんですよね。走ると頭がすっきりするとか。

代望: 私は、わかります。

エージェント・島賀: ほう。

代望: 体を動かしていると、なんというか、重かった頭が軽くなるんです。

エージェント・島賀: 頭が軽く?

代望: 血が巡ってる感じなんですかね。ごちゃごちゃと考えすぎていた頭の血が手足へ抜けていく、みたいな。

エージェント・島賀: へぇ、楽しそうですね。

代望: それで、すごくたまに、すごく陳腐な表現かもしれないんですけど。あ、いや、えっと。

エージェント・島賀: いえいえ、やめないで、聞かせてください。

代望: その、風になれてるっていうか、私の場合、夕暮れの、空になる、みたいな。えっと。

エージェント・島賀: 素敵ですね。

代望: すっ、素敵、ですかね?

エージェント・島賀: ええ。本当に、素敵だと思います。

[3秒沈黙]

代望: ありがとうございます。

[8秒沈黙]

代望: えっと、その、私は走る時いつも一人なんですけど、帰る時間はだいたい部活終わりの頃になってるんです。それで、女子バレーの子と帰りにばったり会ったことがあって。その子と、最近はよく登校の時も一緒です。

エージェント・島賀: 今も仲がいい?

代望: だと、思います。

エージェント・島賀: 具体的に、どういった流れで仲良くなったのでしょう?

代望: んーと、確か、コンビニでお水を買おうとしてたんです。いつもはジョギングの時、水も持っていくんですけどその日は、たまには買い食いというか、スポーツドリンクを飲もうかなって、水筒の代わりに小銭だけもっていって。

エージェント・島賀: 買い食いは校則的にはいいのですか?

代望: えっ、あっ、いや。

エージェント・島賀: ははは、あそこの校則ではダメですよね。まぁ、警察は校則違反を取り締まったりしませんから。あそこの監視カメラの音声も、後で弄っておきましょう。

[インタビュアーが取調室の天井の隅に取り付けられた監視カメラを指さす。なお、この部屋にはこの他に隠しカメラが3台仕掛けられており、内2台はリアルタイムでのモニタリング用、残り1台は記録用として稼働中]

代望: そ、それっていいんですか?

エージェント・島賀: 話の流れから察するに、そのお友達の子もコンビニに来てたんでしょう?

代望: あ、うっ。

エージェント・島賀: 大丈夫、気にしないで。続けてください。

代望: す、すいません。その、それで、その子もコンビニに来ていて、私と同じスポーツドリンクを買っていて、その子は小銭が足りなかったんです。それで、なんとなく声をかけて、代金を立て替えたのが切っ掛けでした。

エージェント・島賀: 中々積極的ですね。

代望: そう、ですね。私はもともと、そういう気質じゃないんですけど。

エージェント・島賀: そうなのですか?

[8秒沈黙]

代望: いじめを受けてました、もともと。もう2年になります。中学からの同級生は今も私を疎んじています。前までは上履きや教科書をだめにされたり、授業中に恥をかかされたり。でも最近は、うまく回避できることが増えてきたんです。

エージェント・島賀: それは、今までに誰かに、相談出来ましたか?

代望: いえ。さっき話した子はクラスが別でしたし、寮生活なので家族にも伝えられていません。そう、もともと、いじめから逃げて少しいい学校に入ったのに、いじめグループの子も進学先が一緒だった時は絶望しましたけど。

エージェント・島賀: 今は、どうです?

[14秒沈黙]

代望: 今思えば、変な視線を感じるようになって、なんというか、クラスメイトとか、他人の目に敏感になった気がします。敏感と言っても見られてることに「気が付く」だけで、「気になる」わけじゃなくて、なんというか、「見られてる」ことが安心感がある、みたいな。

エージェント・島賀: 見られると安心する? 件の妙な視線でも?

代望: あ、いえ、視線を感じるのは気持ち悪いんです。でも、なんというか、見られてるってことは極端な話、私の生活に見ごたえがあるというか、私の人生に見る価値があるというか、そう思うと少し、次の行動に自信が湧くんです。

エージェント・島賀: 念のため聞いておきますけど、認証欲求とは違うんですか?

代望: そうですね。見られてることが嬉しいわけじゃないんです。お風呂場とかトイレでも、見られてるわけないのに視線を感じるのはやっぱり不快ですし、気持ち悪いです。

エージェント・島賀: でも、視線を感じると安心すると。いえ、厳密には違うのはわかりましたが、原因と結果だけを見ると、そういうことでいいですよね?

代望: そうですけど、過程こそ一番大事です。他でもない私にとっては。生活に自信が出てくると、なんとなくで正しいことが出来るようになったんです。通りすがりの人に親切に出来たり、店員さんにさらっとお礼を言えるようになったり。そうして、なんとなく背筋を伸ばして歩くようになったら待ち伏せされてるのがわかったり、そしたら今度は視力が少し良くなって、授業中も授業に集中して回りの妨害に気を取られなくなったり。そうしてまた、生きることに自信が湧いてきて、またなんとなく正しいことが出来るようになるんです。

エージェント・島賀: こうしてハキハキと喋られるようになったり?

代望: えっ、あっ。

[4秒沈黙]

代望: そう、です。

エージェント・島賀: わかりました。すいません、話をかなり脱線させてしまいましたが、とても参考になりました。個人的には、勉強にも。

代望: え、あ、え? いやいや脱線させたのは私なので。

エージェント・島賀: 質問に答えていただいた結果ですので、こちらの不手際ですよ。今日はひとまずここまでにしましょう。後日学生寮に大規模な改修工事が入ると思いますが、その間に隠しカメラ等がないかの調査を行うことになると思います7。それと、ここでのやり取りは一応他言無用でお願いします。人の口に戸は立てられませんが、あまり不用意に不安を煽るのも良くありませんので。

代望: わっ、わかりました。

エージェント・島賀: 最後になにかご質問はありますか? 伝えておきたいことなどでも。

[20秒沈黙]

エージェント・島賀: 無ければ大丈夫ですよ? 無理になにか言おうとしなくても。

代望: いえ、その、この部屋って監視カメラがありますよね。

エージェント・島賀: えぇ、あそこに1つ。

[インタビュアーが再度取調室の天井の隅に取り付けられた監視カメラを指さす。]

代望: そこと、あそこにもありませんか?

[対象が部屋の2方向を指さす。その箇所はリアルタイムのモニタリング用隠しカメラが設置されている。]

[5秒沈黙]

エージェント・島賀: えぇ、取り調べ室なので、隠しカメラはあります。不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ない。

代望: いえ、気にしてません。そういうことが必要なお仕事ですもん。で、それと。

[対象が部屋の1点を指さす。]

代望: あっちには無いんですよね。

[5秒沈黙]

エージェント・島賀: えぇ、そこにはありません。

<録音終了>

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