クレジット
タイトル: SCP-2106-JP - 怪魚アカメ
著者: ©︎
yanyan1
作成年: 2020
アイテム番号: SCP-2106-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2106-JPの収容区画内には2台の監視カメラを設置し、2名のセキュリティ担当者により24時間体制で監視されます。SCP-2106-JPの周囲2m圏内への侵入は実験に参加するDクラス職員にのみ許可され、それ以外の職員の接触は原則禁止されます。
SCP-2106-JP-1は同収容区画の専用保管ロッカーに収容してください。分析実験を行う際は主任研究員である小森博士の許可を得た上で行ってください。
SCP-2106-JP周囲の山林内には大規模な変電施設に偽装した収容施設が設置されています。もし、一般人が内部に侵入した場合はクラスB記憶処理を行った上で解放して下さい。
説明: SCP-2106-JPは全長160㎝のスズキ目・アカメ科に属する魚類アカメ(Lates japonicus)と同様の形状をした実体です。SCP-2106-JPは現在地上から約140㎝空中を浮遊しかつ遊泳挙動を示しており、異常性発現時には日本語での発話を行います。
SCP-2106-JPの異常性は人間(以下、接触者)がSCP-2106-JPの周囲1m圏内に侵入した際に発現します。接触者がSCP-2106-JPの影響範囲内に侵入した場合、SCP-2106-JPから接触者に対して5つの質問が行われます。これらの質疑応答は正解不正解に限らず接触者が回答した段階で次の質問へと移行する形式で行われ、全ての質疑が終了するまでこの段階が継続します。一問の回答時間に関する制約は存在しません。質疑が終了した場合、突如接触者は呼吸困難を訴えはじめ、その約5秒後に地面内へと消失します(この際、地面は液体の様な挙動を示します)。これらの消失プロセスは接触時に接触者が回答を拒否した場合も発生し、複数人の接触者が同時に回答した場合も発生します。
現在、担当研究者はこれらの質問に対する回答内容が消失プロセスの発生条件であると予想しており、関連文献等も含め調査を継続しています。なお、2000年時点で質問に関する正確な回答は判明しておらず、消失プロセスを回避、もしくは帰還した接触者も確認されていません。
質問の内容
質問1.アカメについての知識を有しているか。
質問2.アカメの所在地を知っているか。
質問3.アカメという名前の意味を知っているか。
質問4.浴室でアカメの飼育は可能か。
質問5.アカメに好意を持っているか。
発見経緯: SCP-2106-JPは1998年5月██日に行われた一般人の通報により発見されました。当時、[編集済]山周辺の民家にて「一緒に山を散策していた知人が喋る魚に消された。」という通報が行われ、すぐさま現地警察署に潜入していたエージェントが対応しました。結果、エージェントによるオブジェクトの存在が確認され、すぐさま財団に詳細を報告。財団はこれを受け現地に機動部隊を派遣し、[編集済]山周囲を封鎖することでオブジェクトの一時隔離に成功しました。なお、発見者に関しては聞き取り調査を行った後にクラスB記憶処理を行い、カバーストーリー「滑落事故」を適用したうえで解放しました。
現在、SCP-2106-JPの収容体制に関しては上記の異常性により移動は困難であると判断され、現場隔離の体制が維持されています。なお、SCP-2106-JPは現地点からほぼ移動しておらず、小規模な遊泳行動以外は静止状態を維持している点もこの収容体制の要因となっています。
補遺: 2000年現在、SCP-2106-JPの真下25mの地点に位置する地底湖の存在が実験後の調査により判明しています。なお、地元の地質調査記録等の文献には一切対象の地底湖に関する記述が存在しない為、対象地底湖自体が異常実体である可能性が示唆されています。また、内部調査により推定10歳前後の児童の物と思われる白骨体(以下、SCP-2106-JP-1)と倒壊した小型の祠(以下、SCP-2106-JP-2)、その周囲に散乱していた大量の魚類の骨も発見されており、SCP-2106-JP担当研究班はこれらがSCP-2106-JPの起源であると推測しています。なお、SCP-2106-JP-1とSCP-2106-JP-2の回収後もSCP-2106-JPの異常性は顕在であり、移動もしていません。
現在、SCP-2106-JP-1の身元は調査時に回収された「3ねん2くみ ██ あかめ」と記入された名札やSCP-2106-JP-1自体が着用していた衣服等から、1994年8月█日に行方不明となった██ 紅芽氏(当時9歳)であると判明しています。ですが、未だ地底湖内に遺体が存在した経緯は判明しておらず、紅芽氏の母親:杏子氏(当時45歳)の証言とも照らし合わせ、これらの事件概要についての調査が進められています。
以下はSCP-2106-JP-1発見の切っ掛けとなった実験の記録です。
実験記録SCP-2106-JP002
対象: D-7732
付記: D-7732には回答用のメモ用紙が配布されています。
<再生>
SCP-2106-JP: はじめまして。私はアカメです。今からあなたに質問をします。良いですか?(10歳前後の女性のものと思われる声)
D-7732: ……ああ。
SCP-2106-JP: ありがとうございます。では質問1。あなたはアカメを知ってますか?
D-7732: ……知ってる。
SCP-2106-JP: 何を知ってますか?
D-7732: ……スズキ目・アカメ科に属し、高知県沿岸に生息している海の魚。目が赤く光って、めちゃくちゃでかく育つときもある。あと肉食性。……これで良いか?
SCP-2106-JP: [沈黙]
D-7732: おい。
SCP-2106-JP: はい、ありがとうございます。では質問2。あなたはアカメのいる場所を知ってますか?
D-7732: [沈黙]
SCP-2106-JP: 知っていますか?
D-7732: ……高知県沿岸。海の中だ。
SCP-2106-JP: はい、ありがとうございます。じゃあ質問3。あなたはアカメの意味を知っていますか?
D-7732: [沈黙]
SCP-2106-JP: 知っていますか?
D-7732: ……何なんだ、これは。
SCP-2106-JP: 答えてください。
D-7732: ……光を当てた時に目が赤く光る。それが由来だ。これで満足か。
SCP-2106-JP: はい、ありがとうございます。では、質問4。
D-7732: ……馬鹿馬鹿しい。
SCP-2106-JP: ……あなたは、お風呂でアカメは飼えると思いますか?
D-7732: ……風呂?
[水音]
D-7732: [息が上がる]なんだ、これ……!
[気泡音]
D-7732: 寒い……! 寒い……!
SCP-2106-JP: 答えてください。
D-7732: うるせえ……! 今、それどころじゃ……!
SCP-2106-JP: 質問4。
D-7732: 一体、何が起きて……!
SCP-2106-JP: お風呂で、アカメは飼えますか?
D-7732: し、知るかよ! そんなくだらない事! く、クソ、何がどうなって……!
SCP-2106-JP: はい、ありがとうございます。では、質問5。
[D-7732の震えが止まる]
D-7732: ……何だったんだ、今の……。クソ……!
SCP-2106-JP: あなたは、好きですか?
D-7732: ……何?
SCP-2106-JP: あなたは、アカメのことが好きですか?
[8秒間の沈黙]
D-7732: 好きなわけねえだろ。お前なんか。
[3秒間の沈黙]
[突如、D-7732何らかの影響で転倒する]
D-7732: 何だ……!? 誰かそこにいるのか……!?
[3秒間D-7732は周囲を見回す。その後、再び転倒する]
D-7732: 止めろ……! 止めろ……!
[D-7732がその場に蹲る]
D-7732: だ、誰か……! 助けてくれ……!
SCP-2106-JP: ……ごめんなさい。
D-7732: 何がどうなって……!
SCP-2106-JP: ごめんなさい。
D-7732: 誰か……!
[5秒間、この状態が継続する]
[SCP-2106-JPがD-7732に接近する]
SCP-2106-JP: ……アカメはここにいます。
D-7732: ……何?
SCP-2106-JP: ここがアカメの居場所です。
D-7732: てめえ、何訳の分からなこと……!
[消失プロセス発生]
D-7732: [嗚咽]い、息が……!
SCP-2106-JP: ……アカメはここです。
D-7732: [水中にいるかの様な音声]
<終了>
追記: 以下は██ 杏子氏に対して行ったインタビュー記録の抜粋です。
音声ログSCP-2106-JP003-2
対象: ██ 杏子氏
インタビュアー: 小森博士
付記: インタビューは██ 杏子氏の自宅で行われました。
<再生>
[冒頭部分は割愛]
小森博士: では、改めて事件当日の状況を教えて下さい。
杏子氏: ……あの日は、あの子と一緒に川に遊びに行ったんです。それで、途中置いてあった荷物が風に飛ばされて……。それを取りにちょっと目を離した隙にあの子は姿を消しました。
小森博士: あなたの証言では、川の中などを捜した後すぐに通報したと。間違いありませんか。
杏子氏: ……はい。
小森博士: 失礼ながらご主人は?
杏子氏: ……あの子が生まれてすぐに家を出て行きました。他所に良い人が居たみたいで。今はもう連絡すら取っていません。
小森博士: なるほど。では、質問を変えまして……。こちらの音声を聞いてもらえますか。
杏子氏: 音声?
[SCP-2106-JPの発声箇所のみの音声を流す]
杏子氏: ……何なんですかこれは。
小森博士: 失礼と承知しながらお聞きします。この声は、紅芽さんの物ですか?
杏子氏: [沈黙]
小森博士: ██さん。お答えください。お願いします。
[3秒間の沈黙]
小森博士: ██さん。
杏子氏: もう帰ってください……。気分が悪いです……。
小森博士: 深い意味はありません。ただの確認です。これは、紅芽さんの声で間違い無いですか?
[5秒間の沈黙]
杏子氏 ……知りません。
小森博士: 知らないとは、どういう意味でしょう。
杏子氏: 知らない物は知らないんです……! もう良いでしょう、帰ってください……!
小森博士: ██さん。あなた、事件前に児童相談所から指導を受けていますね。
[3秒間の沈黙]
小森博士: 学校関係者の話では、紅芽さんの服が何日も変わっていなかったりだとか、近隣住民からは日中の浴室からよく子供の声がしていたという話もあります。警察関係者からも調書は取られたでしょうが、改めて訊ねます。偶然の一致かもしれませんが、先程の音声の内容とこれらの要素がよく当てはまる気がするんです。██さん。何か、心当たりはありませんか?
杏子氏: ……知りません。あたしには何の事だかさっぱりです。警察にももう全部伝えました。用が無いならもう帰って……。お願いです。もうあたし達には構わないで……。
[5秒間の沈黙]
小森博士: ……██さん?
杏子氏: ……嘘。
[物品が倒れる音]
杏子氏: ……嘘……! 何で……!
小森博士: ██さん? どうかしたんですか? ██さん?
[複数の物が割れる音]
杏子氏: 来ないで……! 来ないで……!
小森博士: ██さん……! 落ち着いて、落ち着いてください……!
杏子氏: あたしはやってない……! 何もしてない! 何で誰も信じてくれないの……! あの子は攫われたの……! あの魚に攫われたのよ! あたしは何もやってない! 違う……! 違う違う違う! ……あたしは関係無い……!
小森博士: ██さん!
杏子氏: 嫌! 来ないで! あんたなんかあたしの子じゃない! 嫌!
[水音]
杏子氏: うっ……!
[嗚咽音]
小森博士: ……██さん? ██さん!
<停止>
終了報告書: このインタビューの際、杏子氏は口内から突如大量のアカメを排出しました。現在一命はとりとめたものの未だ意識は回復しておらず、財団所有の病院にて治療中です。また、杏子氏の自宅浴室に突如SCP-2106-JP-1、2が出現し、後の調査で同時刻に専用ロッカーからSCP-2106-JP-1、2が消失していた事が判明しました。
追記2: インタビュー同日、杏子氏が卒倒したのと同時刻に収容施設内で大量の大型魚類の死骸が落下してくるという事案が発生しました。結果、計3名が負傷、施設の一部な軽度の破損に発生し、収容施設内の廊下や地面が一部波打ち隆起するという事象も観測されました。当時の状況に関して遭遇した職員に調書を取ったところ、地下を巨大な実体が泳いでいるようだったと証言しました。
事案終息後に死骸を解剖した結果、外見的特徴は通常の魚類と同様ですが内部構造は人間の内臓や骨格等の組織で構成され、かつ遺伝子情報も人間の物であることが判明しました。また、計5体の死骸が過去の実験に参加したDクラス職員の物と一致し、この事案によりDクラス職員を起用した実験は凍結、更なる地域調査が実施されました。現在、死骸の出現経路は未だ判明していません。
調査の結果、[編集済]山周辺地域では一部の集落にのみ豊漁を司る神についての伝承が確認され、SCP-2106-JP-2との関連性が示唆されました。しかし、[編集済]山山林内は海岸から離れた地域でありかつ関係のある港も存在していない為、これらの信仰が定着した経緯は未だ不明です。
現在、SCP-2106-JPには「人間を魚類に変異させる」異常性があると推測されており、これらの現象が[編集済]山周囲の信仰に起因しているとみて調査が継続されています。なお、SCP-2106-JPに対して██ 紅芽氏に関連する回答を行う実験も実施しましたが、通常通り消失プロセスの発生が確認されました。