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イベント指定: EE-2110-JP
特別対応プロトコル: 報告書執筆時点で超常現象EE-2110-JPが観測されたのは一度のみですが、前例に従い、同様の現象発生に備えて対応プロトコルとオブジェクト指定が維持されています。EE-2110-JPが再発生した場合、収容部隊こ-9”虹龍”が直ちにEE-2110-JP-X群の収容及び破壊を目的として行動を開始します。部隊は全員が認知抵抗値γ-13以上のパラヒューマン職員のみで構成されており、同水準の認知抵抗を持つ通常人類の職員が研究と情報収集をサポートします。部隊にはEE-2110-JP-X群との直接戦闘を想定した装備と遠隔操作ドローンが付置されます。EE-2110-JP現象の影響を受けた一般庶民に対しては、発生地域を管轄する軍政部と機動部隊が密に連携し、現象の影響から脱した地域より逐次軍隊を投入、通常兵器を用いた速やかな暴動鎮圧と負傷者の救援に努めます。
EE-2110-JP現象発生の兆候は、常に財団の包括的都市監視システム及びウェブクローラーによって警戒されます。特に各種ソーシャルネットワーキングサービスユーザーによる、嘲罵・悪態・暴言・恫喝・卑語・難詰・非議・扇惑・誹謗・中傷・巷談・差別語・淫猥なスラング等を用いた論争は、EE-2110-JP現象の発生要件を満たしていないか厳正なチェックが行われます。不審な点が見られる場合、該当するアカウント群を一時保存の上、強制的にサービスから削除します。
先行イベント: 2021年8月初旬、東京都新宿区にて、深夜1に大型のハシブトガラス(学名:Corvus Macrorhynchos)の群れが散発的に目撃されるようになりました。複数の目撃証言やSNS上にアップロードされた写真により、通常のハシブトガラスには存在しない鋭い牙と大型の爪、また夜間に赤く発光する眼球を全個体が共通して保持していることが判明しました。財団はこれらの異常個体を暫定的にAO-2110-JPと指定。サイト-8195の異常物品調査チームが捕獲及び研究を目的として調査を実施していましたが、サンプルの確保には至りませんでした。EE-2110-JP現象の発生に伴い、個体群はEE-2110-JP-Xへと再指定されました。
2021年8月22日20時頃、東京国際アスリートフェスティバル(IAF)22021の開催を二日後に控えた東京国立競技場前にて、同イベント開催反対派と賛成派のデモ隊が衝突し、一時乱闘寸前に陥る騒動となりました。反対派がMercury-33の感染拡大によるイベント開催リスクや日本国政府に対する不信感を主張する一方で、賛成派はMercury-3の影響は限定的であるとし、開催による国威発揚と経済効果の拡大を主張していました。両者の衝突は警官隊によって阻止されましたが、双方共に「より効果的な主張の喧伝のため」、翌23日20時より、東京都に対する正式な届け出無く同内容のデモを再開しました。これらの一連の先行イベントにEE-2110-JP現象がどれほど影響したかは明らかとなっていません。
以下はEE-2110-JP現象に関連して新たに要注意指定された人物の詳細情報です。現象の発生により、PoI-2110-JP-A及びBは既に死亡したと見られていますが、関連情報管理の観点からPoI指定を維持されています。
本名: 堂近 理咜どうちか りた
年齢: 32歳
性別: 女性
略歴: PoI-2110-JP-Aは著名なインフルエンサー兼市民活動家であり、ネット上では『LITA♥』のハンドルネームで知られていました。高校在学時は空手部に所属、インターハイへの出場経験があります。京王義塾大学進学後にラディカル・フェミニズムに傾倒。株式会社八正堂美容部門に広告コンサルタントとして就職後、大小様々なデモイベントを組織し、その多くでリーダー的な役割を果たしてきました。
デモ等を通じた主張は反体制・左派ポピュリズム・ラディカルフェミニズム等の点で一貫していますが、「急進的」「過激で極端」と評される主義・手法から、論敵のみならず穏健なフェミニストの一部からも強い批判を受けていました4。また、ジェンダー平等の観点から女性の化粧文化に否定的見解を示す一方、自身は熱心な美容研究家であり、SNS上にしばしばコスメティクスレビューを投稿していたことから、支持者からも言行の矛盾を指摘されていました。
本件におけるデモの実施には、イベント開催を巡る政府のスキャンダルや、Mercury-3流行による女性の雇用減を批判する狙いがあったと見られます。
特記事項: PoI-2110-JP-Aの母親である堂近 偉子どうちか よしこは日本のネオ-サーカイトであり、健康食品販売会社を経営する傍ら、サーキック由来の異常物品を複数の要注意団体へ極秘裏に流通させていました。2012年の████████社崩壊事件にて偉子は死亡。PoI-2110-JP-Aは財団に関係者として拘束されました。徹底した身辺調査の結果、PoIは母親がサーカイトである事実を知らなかったものと確認され、記憶処理の後解放されていました。偉子が販売した異常物品の多くは財団により回収されましたが、一部が行方不明となっていました。
尚、偉子は多くのネオ-サーカイトと同様に、教団の古い経典や創設者に対する敬意は全く持ちあわせておらず、「己が欲望の追求と力の獲得」のみを信奉していたようです。
以降の記録には大量虐殺や性的拷問を含む極めてショッキングな描写が含まれています。また、差別用語も原則として変更せず記載しております。
PTSDや精神疾患の既往症を持つ担当研究者は、EE-2110-JP研究チーム特任クリアランスを使用し、抄訳版を閲覧することを強く推奨します。
閲覧によって生じたあらゆる悪影響に関して、報告書作成チームは一切の責任を負いません。また、疾患の治療に財団の傷病保険は適用されません。