SCP-2116-JP
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SCP-2116-JPレイアウトの1例

アイテム番号: SCP-2116-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2116-JPのIPアドレスは、全ての主要なインターネットサービスプロバイダからブロックされます。サイト移転監視作業時以外でのSCP-2116-JPへのアクセスは、Dクラス職員を用いた実験・検証の場合にのみ許可されます。認可外でのアクセスが発生した場合、対応チームが現場へと派遣され、アクセス者の状態に応じて尋問・勾留・記憶処理が適宜実行されます。

実験時、被験者の胃内は内視鏡カメラによって観測・記録されます。また、その際に出現・生成されたSCP-2116-JP-α群は必要に応じて摘出され、サンプル採取もしくはインタビューが行われます。

説明: SCP-2116-JPは、現時点においてドメイン"head-dish-delivery.███"からアクセス可能なウェブサイトです。現在までに4度ドメインが変更されており、基本的にインターネット広告、もしくは広告メールに設置されたリンクを介して一般人のアクセスを誘致します。

このウェブサイトのレイアウトは、複数の"オンラインフードデリバリーサービス"サイトのフォーマットを掛け合わせたテーマで構成されています。また、SCP-2116-JPトップページ上のインターフェースでは、簡易的な個人情報の入力フォームと、"夢幻茶屋協賛、オネイロイ・コレクティブがお腹いっぱいの夢をお届け"という文章表示が確認できます。

サイト利用者が個人情報の登録を行った場合、SCP-2116-JPは現時点で注文可能なメニューの一覧を表示します。この状態において、利用者はサイト内操作で上記一覧から任意の料理を1つ選択し、注文することが可能となります。この注文に際し、利用者への金銭等の費用請求は一切発生しません。

これら表示されるメニュー内容は利用者ごとに異なる他、一覧には部分的に抽象・概念的な名称の未知の料理も確認できます。さらに、日ごとの利用者の心理的・身体的状態によって、表示される一覧のラインナップも変動することが確認されています。その一方で、その正確な相関性については現在も未解明です。

注文完了から12時間以内に利用者が睡眠を行った場合、その胃内部には起源不明の物体群(以下、SCP-2116-JP-α)が出現・生成され始めます。この現象は一定時間経過後に終了し、出現したSCP-2116-JP-α群も利用者の覚醒に伴って消失します。

また、上記現象に伴う形で、睡眠中の各利用者は"自身が注文したと思わしき料理を摂食する"という共通内容の夢を経験します。しかしながら、夢に登場した料理、出現したSCP-2116-JP-α群の各内容が、多くの場合で一致しない点に留意ください。

なお、本来ならば有害・消化不可能・異常性を示すSCP-2116-JP-αの出現例も確認されていますが、基本的には利用者の健康状態へと悪影響を及ぼしません。その一方で、一部メニューには"危険"を示唆する注意表記と免責事項が設けられており、それらを注文した利用者に限り、身体的健康あるいは精神的健康、もしくはその両方に対する大小様々な被害が確認されました。

付録1: 以下は、実験試行にて確認されたメニューとSCP-2116-JP-α群の中でも、特筆すべき内容の抜粋です。

料理名 説明概要 夢に登場した料理 出現したSCP-2116-JP-α群
活きベタの刺身 激しい闘争の日々で鍛えられたベタを贅沢にも刺身に。その身は歯応え抜群。 白身魚の刺身盛り合わせ 生きたベタ1匹、未知の種のコンブと貝殻の破片。ベタは胃から腸へと自発的に移動したため、体外への摘出・観察には成功せず。
コバンザメのフカヒレスープ グルメの食べ残しを餌に育てられた夢鮫由来の逸品で作る、蕩けるような黄金スープ。 フカヒレ入り中華スープ 未知のサメ類の歯16本、ムカデ1匹、淡水200ml。ムカデは体外へと摘出されるまでの間、胃内を噛み続けていたが被験者への影響はなかった。
深緑色の酒蒸し 著名人にもファンがたくさん。独特の苦みが癖になる和食。ただし、二日酔いに注意を。 ホウレンソウとアサリの酒蒸し 緑色の気体状アルコール、被験者の口内より勢いよく噴出。噴出後、気体アルコールは消失するまで室内を漂い続けていた。なお、覚醒した被験者は激しい酔いの不快感を報告。
ツキウサギのロースト たくさんの仲間と飛び跳ねながら育った元気なウサギをローストに。特製ソースでどうぞ。 ウサギ肉のロースト ウサギの毛玉に包まれた灰長石の破片15g。摘出された後、破片は捕獲されるまで室内を飛び回り続けた。
悪しき候補への復讐譚 奇跡的に遂げられた刺激的な顛末を、ついに味覚にて再演。二度美味しいディナー。 アルバニア料理のオードブル 破損したドリームキャッチャー、切断されたUSBケーブル。USBケーブルは自発的に胃から口内へと這い上がって来たが、摘出以降は移動性を示さなかった。
虚構の平面体 闇ブローカーより仕入れた新鮮な虚構。生じた出来事に関して、責任は一切負いかねます。 白い板チョコ 胃内の観測は許可されず。カメラによる遠隔監視では、睡眠中の被験者が睡眠麻痺症状により頻繁に痙攣する様子が観察された。覚醒後、被験者は突発性解離性障害に罹患。
寄り添う幸福な少女感 失われた幸福と意識を呼び覚ます、最高にスパイスが効いた逸品。味付けには自信あり。 目玉焼き、ソーセージ、食パン 睡眠薬4錠、手鏡。その詳細については、付録2を参照のこと。


付録2: 20██/██/██に実施された実験検証時、被験者の胃内部より摘出されたSCP-2116-JP-αの1つが、突如として発声・発話を行う事態が発生しました。以下は、実験検証時に記録されたログデータの内、対象との対話内容を抜粋したものです。

実験ログ2116-JP - 日付20██/██/██

対象: SCP-2116-JP-α-24-2(手鏡)

担当者: ██研究員

付記: 下記対話は、担当者による摘出内容の記録中、偶発的に生じたという点に留意のこと。また、対象は日本語(標準語)及び、"もごもごした呟き"と称される研究中の特殊言語を部分的に用いて発話を行った。


<記録開始, 20██/██/██>

[無関係な内容のため省略]

担当者: 2つ目のオブジェクトの摘出に成功。対象は丸型の手鏡、直径は50mm程度。

対象: [識別不能] 誰?

担当者: [驚き声]

[担当者がカメラを取り落としたため映像が暗転する。数秒後に復帰]

担当者: 今、喋ったのか?

対象: ああ良かった、私以外にも来ているヒトがいたのね。

担当者: あー[数秒間思案]君は、喋れるのか?

対象: 変なことを言うのね。今、こうして話しているじゃない。あれ、でも話せないヒトもいたんだったかしらん?

担当者: 君は誰なんだ?

対象: あらやだ、ご挨拶しなくちゃ。私は[識別不能]

担当者: ふむ、なるほど、あー、分かったよ。それで君は、ここに来るまでは何をしていた?

対象: あっ、聞いて、私ったら抽選が当たったのが嬉しすぎて、ホストさんの中で時間のずっと前から待っていたの。それなのに、実は待っていた場所が全然違っていて。ふふ、だから、あっちで貴方とは会わなかったのね。

担当者: ああ、そうだな、他に誰もいなくて、私も変だと思っていたんだ。

対象: やっぱりそうだったのね。私、今日はひとりぼっちなのかと思って、ちょっと不安だったの。

担当者: 安心してもらえて良かった。ところで、君は今の状態を分かっているね?

対象: [識別不能]? えっと、私たちがお料理になって、ホストさんのお腹をいっぱいにしてあげて、代わりにこうしてツアーをさせて貰っている、で合っている? でも、どうしてわざわざこんなことを聞くの?

担当者: えっと、ツアーとは?

対象: あら? そっちが目的じゃないなんて、もしかして貴方、食べられたがり屋さんだったの? [識別不能]

担当者: あー、その通りだとも。

対象: そういうヒトもいるって聞いていたけれど、とっても変わっているわ。だって、多くのヒトは、自分の知らないことを知るために、自分のお母さん、お父さんのお腹の中や外を探検することに時間を使うのに。貴方たちは、お腹いっぱいの自分を食べてもらって、そのホストさんもお腹いっぱいになって貰うことが目的だなんて。

[識別不能]ああ、ごめんなさい、別に悪く言っているわけではないの。きっと、私が現実でホストさんのお腹の中から取り出されたいと思っているのと同じくらい、貴方たちもホストさんに選んでもらって食べられたかったのよね。分かるわ、とっても楽しみよね。私、図書館で赤ずきんを読んでからずっと憧れていたの。それが、最近になって外へと出して貰えるツアーも増えていて、つい応募しちゃった。ああ、外に取り出されるのはまだかしら。

担当者: えっと、君の方は現実に来たくて抽選に応募を?

対象: え? だって、抽選自体は、それが本来の目的じゃない。

[数秒間沈黙]

対象: あの、貴方、[識別不能][識別不能]

担当者: それは、あー[沈黙]

対象: ああ、やだ、私ったら勘違いして[声を潤ませる]コレクティブの人に怒られちゃう。

担当者: 待ってくれ、誰に怒られるだって?

対象: ごめんなさい[識別不能]口を利いちゃいけなかったのに。

[無関係な内容のため省略]

<記録終了, 20██/██/██>

終了報告書: 上記対話の終了後から被験者が覚醒するまでの間、対象が新たに発声することはありませんでした。また、以降の実験検証においても、発声を行う新たなSCP-2116-JP-α個体は発見できていません。

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