アイテム番号: SCP-2123-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: サイト-81TDのオブジェクト保管庫に収容してください。標準木製オブジェクト保護プロトコルに基づき、湿度および温度管理を徹底してください。
説明: SCP-2123-JPは台輪寸法75cm(2.5尺)、本体高150cm(5尺)の神輿です。本体は平屋台造りで、素材には白木のケヤキが使用されています。装飾部には黒漆で塗装されたヒノキが使用されています。担ぎ棒は白木のヒノキ製で、長さ500cm(16.5尺)の2点棒です。総質量は400kgです。装飾の意匠などから、江戸時代中期に作られたものと見られます。本体下部、および担ぎ棒はヒトの血液を主成分とする汚れに汚染されています。
SCP-2123-JPはヒトによって担がれ、神輿振りが行われると、振られている時間、およびその激しさに比例して重量を増します。神輿振りを続けた場合、SCP-2123-JPの担ぎ手は増した重量を支えきれずSCP-2123-JPを取り落とします。この時、人の肩の高さである約1.5mの高さから地面と接触するまでの約0.5秒の落下時間中に、SCP-2123-JPの重量は約400tまで急激に増大します。これによる地面との衝突エネルギーは約580万Jに達し、周囲に多大な衝撃を与えます。結果として衝突地点周辺の担ぎ手は大けがを負うか死亡します。衝突に際して、SCP-2123-JPは破損することがありません。SCP-2123-JPは地面と接触してから2時間ほどで元の重量に戻ります。
SCP-2123-JPは現在の██県██郡██村の██神社に奉納されていました。1902年(明治35年)の夏祭りにおいてSCP-2123-JPが村人に担がれたことで、財団は異常性を察知し確保収容しました。
インタビュー記録2123-1 - 日付1902/8/10
対象: ██ ██氏(██村の名主の一族に連なる古老)
インタビュアー: エージェント██(東京から来た民俗学者を装っている)
付記: 本記録はインタビュアーが報告文書としてまとめた物を、現代のフォーマットに合うよう記載しなおしたものです。なお、対象の言語はインタビュアーによって標準語で記録されています。
インタビュアー: 神輿について、話を聞かせてもらえないか。
対象: 稲妻神輿についてですか。
インタビュアー: あれは稲妻神輿というのかね。
対象: はい。
インタビュアー: 神輿にはどのような謂れがあるのだろうか。
対象: いつ頃からあの神輿がこの村にあるかは存じません。私が子供のころにはもうすでにありました。古いものです。
インタビュアー: 稲妻神輿という名はどこから。
対象: あの神輿は担ぐと重くなります。"エッサ、エッサ"と掛け声をかけて、揺らせば揺らすほどますます重くなります。終いには、担ぎきれずに地面に落としてしまいます。その時に、ガシャーンと稲妻のようなとても大きな音がする。だからでしょう。
インタビュアー: 今年の夏祭りでは、それで大勢死人がでたと聞いたが。
対象: 稲妻に打たれれば死にもします。
インタビュアー: あの神輿は毎年担ぐのかね。
対象: 滅多なことでは担ぎません。前回担いだのは御一新の前、私がほんの小さな子供だった頃のことです。今年のような冷たい風の吹く夏に、豊作を願って担ぐのです。
インタビュアー: では、今年は豊作になるのだろうね。
対象: おかしなことをおっしゃる。東京の学者さんでも迷信を信じなさるのですね。
インタビュアー: 豊作にはならないのか。
対象: なりません。
インタビュアー: ではなぜ、あのような危険な神輿を担ぐ。
対象: 取れる米の量は増えませんが、米を食う口が減りますから。