SCP-2127-JP
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アイテム番号: SCP-2127-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2127-JPの電子的記録は観測次第規制され、カバーストーリー「安全志向」に基づき演目における危険性を減少させて下さい。1998年度██████高校に三年生として在籍していた男子生徒及びその関係者に対しては継続的な調査を行って下さい。地下への調査は現在検討中です。

説明: SCP-2127-JPは滋賀県に存在する██████高校で発生する現象です。高校内で組体操に該当する催しが行われた場合、体操の技ごとに参加している生徒の身体の部位に欠損が発生します。SCP-2127-JPを目撃した対象は直接的・間接的に限らず違和感を感じる事はありません。目撃者の影響はクラスCミーム処置により除去が可能です。
2015年7月、インターネット上を走査させていた財団情報収集用botが動画投稿サイトで発見した「2012年███████高校_組体操」上における異常現象の発見、動画投稿者へのダイレクトメール機能を用いたインタビュー及び調査により学校の特定に成功しました。インタビューによると「自分の子供が出たので許可を得た上で撮影・投稿した」との回答がありました。以下は動画上で確認された異常現象です。

組体操の技: V字バランス

参加者の状態: 生徒全員の首が消失する。

結果: 全員問題無くバランスの姿勢を取る事に成功。終了と同時に首は再出現した。

組体操の技: 支え倒立

参加者の状態: 倒立する生徒の左腕が欠損する。

結果: 全員が右腕のみで倒立を行った。バランスを崩して4組が転倒。終了と同時に左腕は再出現した。

組体操の技: サボテン

参加者の状態: 土台役となる生徒42名の右脚が欠損する。

結果: 残存する左足に両足を掛ける形で乗った。バランスを崩して3組が転倒。うち2名が軽傷。終了と同時に右脚は再出現した。

組体操の技: 扇(3人)

参加者の状態: 中央を担当する生徒24名の両脚が欠損する。

結果: 中央の生徒は全員両脇から引っ張られ、空中に浮き上がる形で固定された。バランスを崩して2組が転倒。うち1名が肩の捻挫。

組体操の技: 扇(5人)

参加者の状態: 生徒全員の両脚及び右腕が欠損する。

結果: 両手を繋ぎ合わせる代わりに5人が隣の生徒の脇腹を掴む形で身体を繋ぎ合わせた。バランスを崩して1組が転倒。軽症者なし。

組体操の技: ピラミッド

参加者の状態: 頂点役の1名以外の首・両腕・両脚が欠損する。

結果: 頂点役の1名が残存する胴体を担ぎ上げては10段ピラミッドを成形するまで積み上げる行為を続け、頂点へと乗った事でピラミッドを成立。体育教師のホイッスルに合わせて頂点役が頭から落下した。軽度の脳震盪を発症。

2013年~2015年の間に行われたSCP-2127-JP発生阻止の為の処置は全て失敗に終わりました。体育祭における組体操を廃止した結果文化祭の出し物として組体操が加えられ、組体操に該当する行為を禁じた結果最寄りの████高校内においてSCP-2127-JPが発生しました。これにより過剰な封じ込め処置はSCP-2127-JPの拡散に通じると考えられ、現プロトコルが設定されました。

追加情報: SCP-2127-JPに関する調査を行った結果、該当する██████高校において1998年に組体操中の事故が発生していた事が発覚しました。当時においては組体操に参加していた当時三年生の生徒である冨山晃二氏を中心とした死傷事故が発生していたと報道されました。
以下は報道された新聞記事の見出しです。

「あっという間でした」組体操中の事故、1名還らず
9月23日に██████高校で行われた体育祭において、不慮の事故が発生した。
三年生の男子生徒が最後に象ったピラミッドタワーのフィニッシュ中、冨山晃二君(17)が還れぬ人となった。
「まさかこんな事になるなんて。練習した通りの事を本番でもできると思っていたのに」と語るのは██████高校校長を務めている鞍塚健蔵氏。
1995年に在籍してから今まで校長自ら組体操の位置取りを熱心に教え続けており、富山君の失敗は今でも心に深い傷を残しているという。

SCP-2127-JPとの関連性を調査する為、事故の関係者に対してのインタビューが行なわれました。

対象: 鞍塚健蔵。1998年当時の██████高校校長。

インタビュアー: エージェント・鯱星

<録音開始, 2014/09/13>

エージェント・鯱星: 1998年の体育祭で起こった事故について、お話願えますでしょうか。

鞍塚氏: はい…あれは酷い事故でした。当時の組体操は今現在行っている物よりも派手なものが多く……

エージェント・鯱星: 派手だったんですか。

鞍塚氏: ええ、それはもう派手で大層なものでしたよ。締めに行われるピラミッドも、今は人数の関係であぶれた生徒が周りで支える役なんてやっていますが、昔は全員が参加していましたからね。

エージェント・鯱星: 当時の男子生徒141人がピラミッドを。

鞍塚氏: ええ、ええ。一番大きなピラミッドに、その脇にあぶれた生徒達が小さいピラミッドを作って。あ、小さいピラミッドの上でサボテンをさせるんですよ。それがまた高さも出て…

エージェント・鯱星: それで、事故が起こったのですね?

鞍塚氏: (頭を抱える)ええ、アレは本当に…あの事故さえなければ、素晴らしい最後を飾れたと思っていたのに…冨山晃二君については、本当に悲しかったです。結構な騒ぎにもなって…

エージェント・鯱星: ピラミッドを作って、その最後に事故が起こってしまったと。

鞍塚氏: 最後の最後に教師のホイッスルに合わせて皆で一斉に崩れるんです。毎週頑張って練習していましたけど…最後の最後で……

エージェント・鯱星: 冨山さんの家は何か言っていましたか?

鞍塚氏: その時からずっと話し合って…年内には何とか収まりましたよ。あんなに悲しい事故があったのは、お互い本当に申し訳ないという気持ちで一杯でしたからね…

鞍塚氏: 今となっては、あんな出来事がもう二度と起こらない事を祈るばかりです。冨山君の様な生徒を出さない様に。

<録音終了>

対象: 冨山晃二。1998年度██████高校三年生として在籍していた。

インタビュアー: エージェント・鯱星

付記: 事故が発生したにも関らず本人が生存していた事に関して、周囲は完全に認知している。

<録音開始, 2014/09/12>

エージェント・鯱星: 確認ですが、貴方は1998年に高校で行われた組体操に参加していたのですか?

冨山氏: はい。あの時は学校の中で一番背が低くて、陸上部をやっていたので体力にも自信がありました。

冨山氏: 皆がピラミッドを組んでる間に、練習通りに本番でもやろうとしたんです……でも……

エージェント・鯱星: あの事故が起こったと。当時の校長は貴方の事を嘆いていたのですが

冨山氏: (頭を抱える)そりゃあそうでしょう…最後の最後に、俺はしくじったんですから。あの時の光景は覚えています。今になっても夢に出てしまいます。

冨山氏: 時々揺れるピラミッドの上で俺がしゃがみ込む。ホイッスルに合わせて全員が同じ方向を向く。右、左、上…そして全員下を向いた途端に、一斉にピラミッドが崩れる…

エージェント・鯱星: ……それで、何が起こったのですか?見た所貴方は怪我も障害も、何も残っていないではありませんか……

冨山氏: (目元を手で覆う)…本当に…あれだけ練習したのに…あれだけ頑張って皆で一緒に頑張ろうって言ってたのに…(涙を指で拭う)

エージェント・鯱星: 落ち着いて、ゆっくりと話をして構いません。ですから…

冨山氏: ……俺だけ、立ち上がってしまったんです。当時のあの空気も忘れられません。崩れた皆の中で、全員が驚きと失望をしているのが見えました。思わず俺は泣いてしまいました。泣いている間に組体操をずっと見ていた保険の先生に連れられて、保健室に連れ込まれてから親がやって来て……

エージェント・鯱星: 立ち上がってしまったとは?

冨山氏: 皆と一緒に、最期を飾れなかったんです。

<録音終了>

終了報告書: インタビューの内容から、1998年に発生した事故において冨山晃二氏以外の組体操に参加した生徒140名が死亡していたと予想されています。

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