こんにちは、財団総合ネットワーク局職員殿
外部アンテナ(ID-35282)が不明な地点からのデータを受信しました
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データ解析中……
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ミーム的異常:検出されず
情報災害:検出されず
認識災害:検出されず
他数十の異常:検出されず
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プロトコルに基づき、受信されたデータを開示しますか?
[YES] [NO]
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データを開示しています……
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Lock Overridden |
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SCP File

SCP-2131-JP発見地点の付近(正確な位置は[削除済])
アイテム番号: SCP-2131-JP
オブジェクトクラス: Binah
特別収容プロトコル: 不可逆のRoDクラス:滅びの再来シナリオが差し迫っているため、SCP-2131-JPの収容は実質的に放棄されました。現在、本人の希望から対正常性逸脱存在部門職員のヴァーズテール博士が収容対策施設に駐留しています。
説明: SCP-2131-JPは空間異常を発生させる金属製の仮面です。SCP-2131-JPの形状は着用者の顔全体を覆うように作られており、また、その形状は外部のトリガーによって変化します。(手に持った人物の顔面部に応じて大きさを変化させるなど。)
SCP-2131-JPが存在する半径70mは、外見的な裂け目及び歪みや、超小規模な空間ポータルの発生などの異常を表します。この空間内でSCP-2131-JPを着用することで、空間内にあるエンティティを知覚することができます。
Excerpt of Entity
エンティティ-006: モノクロ写真。写真は不定期に変化するが、都市に向かって核兵器と思わしき物体が降下している、という点が共通している。
エンティティ-047: カラーボールの破片。異常数学を用いた測定によって、かつて完全な球体を構成していたことが判明している。メモが付属しており、“イデアは死んだ(Idea is dead)”という一文が添えられていた。
エンティティ-102: 背中から羽が生えた人型実体の死骸。羽は常に飛翔時の蝶に似た動作をしている。死因は足部の損傷による失血死と考えられる。
My Diary
いつにもまして悪い一日だ。
寝坊はするし、朝飯は食えなかったし、財布を落として3時間も探す羽目になった。
それにあの通達ときた。
評議会が言うには7年ぶりの“深刻な正常性の危機”だそうだ。これが前に来たときは世界中が不景気になって、その前に来たときは国が一つ吹っ飛んだ。
今回は何が起こるか考えると気が滅入る。
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この空間を捻じ曲げる仮面の担当職員になってもうすぐ13年になるのか。案外、時が進むのは遅い。もう50年ぐらい経ったと感じていた。
仮面が作り出す不思議空間の中のアイテムは、他のScipと類似性がみられるやつや、有効に活用できそうなやつがあるから、こんなに長い間調べてるんだろう。
馬鹿な話だ。収容室の怪物たちをそんな簡単に飼いならせるのなら、何年も前に世界平和が達成されてるだろうに。
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昼に研究員が評議会の通達について話してるのを聞いた。おかしい、あいつらのクリアランスは2のはずだ。なんで下位の研究員がそんな重大な事案を知ってるんだ?
記憶違いかもしれないが、気になったので書いておく。
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仮面を被ってあの場所にいるとおかしな気分になる。上手く表現できないのだが、まるで自分が永遠の時の中にいるような感じがしてる。あの場所にあるアイテムは関係性のかけらもないようだし、何を意味してるのかも分からない。
自分はなんでアノマリーに意味を見出そうとしてるんだ。
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あれは記憶違いじゃなかった。聞くとレベル1以上の全職員に通達がきたそうだ。通達はレベル4以上か限られたレベル3までかと思ってたんだが。
こんなことは初めてだ。
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どこかのサイトで収容違反が起こったとの通達があった。なぜかあの仮面が気になって一日のことをよく覚えてない。
今日はこれだけしか書くことが無い。(といっても普段からそこまで書いてない。)
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しばらくこれを書いてなかった。テレビで明らかに現実改変者らしい実体が映ってたのを見た時は驚いた。普段なら、テレビ局に圧力をかけるか、内部工作するかで事前に対処するはずなのに。各地の収容違反はまだ続いている。起きていることがよく分からない。
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通達がきた。要約すると自主的に収容活動を行えだそうだ。それができるならもうしてる。
施設管理官(前に何度か顔を合わせたやつかもしれない。)は他の職員と、まだまともな会話が可能な人間がいるサイトに向かうと言った。もちろん、自分は誘いを断った。
エセ預言者に撲殺されるのなんてごめんだと伝えると、そいつは収容プロトコルを改訂した後に、施設管理者用のカードを渡して出て行った。
今ここにいるのは自分だけってことになる。
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ラジオで“自分をキリストと主張する人間が1000人以上に上った”、なんてニュースを聞く日がくるとは思わなかった。どうやらそいつらは触れた物体を赤色の液体に変えてしまうそうだ。
こんな不条理劇が世界の最期らしい。
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今まで気づかなかったがオブジェクトクラスも改訂されていた。Binahなんてクラスは見たことが無い。あの管理官はどうしてクラスを変えたんだ?
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自覚がないが、相当ストレスが溜まっているらしい。最近、あの仮面を被った人間の幻覚を頻繁に見る。
気晴らしに外にでると、遠くで何かが爆発する音や、教会で聞くような祈りの声が聞こえた。全てがいかれてやがる。
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あの幻覚はいつも口を動かしてるが、喋ってることは聞こえない。幻覚がどんどん鮮明になってるのは、酒が尽きたせいだ。
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施設の生活は思ってたより快適だ。水も出るし、電気も通ってる。(それに管理官は少しばかりだが、缶詰を置いといてくれた。)まだ、インフラが生きてるのは奇跡的としか思えない。
そんなわけで、今日はずっと管理室で仮面について考えてた。こんな状況であれについて考えてる理由は、幻覚の出現頻度がさらに増えたからだと思う。
あと、ラジオからはあれ以来何も聞こえてこない。
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昼前に来た評議会からの通達はこうだ。
“私たち9目を切り開くときa、神と天使は笑う。神は不変であり、天使2現象だ。自分と同僚y友人と家族の目をつぶ7てください。それが一番の選択でrrrrrrrrr”[原文ママ]
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施設を行き来してた時、ちょっとした物を見つけた。2番ドアの横に保管庫があるなんて今まで知らなかった。セキュリティロックがかかってたが、管理官のカードがある。
アルコールは無かったが、ビデオ装置が一つ保管されていた。報告書で映像記録を作る時に使う、音声が文字おこしされるやつ。最期の記念に何か残しておくのもいい考えかもしれない。
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外から聞こえる祈りの声で目が覚めた。滅びの再来とやらが近いらしい。もうすぐ缶詰もなくなる。
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幻覚がいつものことになって気に留めていなかったが、明らかに前と違ったように見える。何かを伝えようとするような感じ。
これを確かめる方法は何となく分かる。仮面を被ることだ。
Video Recording
[記録開始]
ハロー
……
何か言ったらどうだ?
……
お前は一体何を言おうとしてる? 何が伝えたい?
……
それは……
要求してるのか?
ずっと目の前に現れて来たのは何かが欲しかったから?
……
成程な
その様子だとあいつ-管理官の前にも現れたんだな
いや、この施設にいた全員にか
そして誰一人としてお前の欲しい物を渡さなかった
……
情けをかけてるつもりか?
それは単にお前が欲しいからだろう
……
自分が生み出した存在だから
……
私にはなんの意味もない
誰からも覚えられなくなることが怖くなんてないさ
……
もし……
もし私がそれを与えたら、どうするつもりだ?
……
その三人はお前の子供に当たるわけだな
エンティティは玩具のつもりか?
……
玩具じゃない?
……
理解Binahした
……
お前に渡せるのはお前が二番目に欲しい物だけだ
……
くれてやる
……
[記録終了]
インシデント-2131/JP-001
19██/██/██、財団総合ネットワーク局管理下の外部アンテナが不審なデータを受信しました。データは細かい差異が確認できるものの、財団のアノマリー報告書と酷似しており、その内容から上位職員による調査が提言されました。提言は承認され、調査チームによる割り出しと超常探索網の出力結果からデータのものと一致するアノマリーが発見されました。アノマリーはSCP-2131-JPに割り当てられ、現在、異常性の調査が行われています。
初期実験の際、SCP-2131-JP周辺の空間内で異常な実体群(以下、SCP-2131-JP-1)が発見されました。これらはデータ内のエンティティに相当する存在であると推測されます。実験実行者はSCP-2131-JP-1の一つとして、データの“My Diary”の項と同様の内容が書かれた日誌を発見しました。