SCP-2132-JP
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自然下を想定した実験栽培でのSCP-2132-JP

アイテム番号: SCP-2132-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現在回収されているSCP-2132-JPはサイト-81IS内の専用施設にて生育されています。胞子が採取可能な状態になった段階で胞子と一部の子実体のみをサンプルとして回収し、他の子実体は処分してください。

フロント企業を含めた財団関連施設に流入した2004年以降発行の日本銀行券壱万円券は、専用の判定機器によって正常か判断されます。検査によってSCP-2132-JPが発見された場合、直近のサイトからフィールドエージェントを派遣し、施設とその周辺を消毒してからSCP-2132-JPを回収します。

説明: SCP-2132-JPは担子菌門に属する菌類の一種です。カサ、ヒダに相当する部位が確認されていますが、柄は存在しません。

SCP-2132-JPの子実体の外観は、2004年以降発行の日本銀行券壱万円券と酷似しています。表面の装飾、重量、質感、芳香などは壱万円券に限りなく近く、記番号も従来のパターン上に存在する番号が模様となって出現します。また、同じ株から別の子実体が発生する場合、既に発生している子実体の下から連続して発生します。この特徴によってSCP-2132-JPの子実体は束のように連なります。25~30日をかけて完全に成長したSCP-2132-JP一株は、壱万円券100枚の束とほぼ同一の外観となります。

SCP-2132-JPの胞子は適応力が高く、胞子が付着した場所が生育に適さない環境であっても胞子は形質を変化させて適応します。この特性により、SCP-2132-JPはあらゆる環境での出芽、生育が可能になります。しかしこの形質変化には相応の時間を必要とし、季節の移り変わりや生物の活動などの自然的な環境変化にSCP-2132-JPは対応できません。よって、自然下においてこの形質変化は活用されないと思われます。なお、SCP-2132-JPは自ら胞子の射出を行いません。完全に成長しても胞子が飛散することはなく、ヒダが捲られるなど外部から接触があった場合のみ胞子が飛散します。

先述した外観の特徴、及び生態の特徴から、SCP-2132-JPは通貨を偽造する目的で人為的に開発されたと思われます。ただし、紙幣の束に似た外観はヒダを捲るなどの接触行為を人間に対して誘発しやすいと考えられます。結果的にSCP-2132-JPは胞子の拡散に成功し、種として自生している可能性があります。

以上より、日常生活で人間がSCP-2132-JPの胞子を吸引する機会は一定数存在すると判断されています。しかし、SCP-2132-JPの胞子に強い毒性はないため、他の菌類と同様に過剰に吸引しなければ無害です。そのため、財団は自身の監視可能な範囲を除き流通する紙幣への干渉はしないという方針を取っています。

補遺: SCP-2132-JPは東京都中央区に位置するアパートの一室より回収されました。財団到着時、SCP-2132-JPは部屋のあらゆる地点から発生していました。同時に、入居者である武谷 敦彦が死体となって発見されています。死因は窒息死であり、死後から30日程度経過していました。

部屋には栽培用の原木が大量に設置されており、武谷はSCP-2132-JPを栽培していたと考えられています。武谷がSCP-2132-JPを開発したという証拠は現在まで見つかっておらず、武谷のSCP-2132-JP入手は偶然か他者からの譲渡によるものと思われます。しかし、調査研究班は起源となった開発者もSCP-2132-JPを既に放棄した可能性が高いと指摘しており、起源の特定より他の調査事項を優先するべきと主張しています。これは武谷の死因を受けての推測であり、特殊な設備のない環境でのSCP-2132-JP栽培が危険であることを示しています。

武谷の遺体の周辺には収穫されたSCP-2132-JPの子実体が存在し、指や気管支にはSCP-2132-JPの胞子が付着していました。特に気管支には大量の胞子が蓄積していたことから、武谷は日常的にSCP-2132-JPと接触し、子実体の数を捲って数えるなどして頻繁に子実体と接触していたと考えられます。それが過剰な量の胞子の吸引に繋がり、最終的に引き起こされたアレルギー反応による心肺停止によって武谷は窒息死したとされています。SCP-2132-JP栽培を開始したと思われる時期以降、武谷は過度な浪費を繰り返していたと周囲の友人は証言しました。資金調達のためにSCP-2132-JPの生産量を増加させたことが、武谷死亡の遠因にあると推測されています。

発見当時、武谷の死体からはSCP-2132-JPの子実体が出芽していました。露出している皮膚の他、口内や鼻腔を埋め尽くすように体内からも子実体が発生していました。この子実体は気管支に蓄積した胞子が出芽したものであり、財団の到着時、武谷の死体は既にSCP-2132-JPの菌床となっていました。死体の損壊状態も含めた部屋の侵食状況は菌類による被害としては規模が大きく、現場担当者は武谷の死亡状態を「金に溺れたよう」と表現しています。

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