アイテム番号: SCP-2133
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 周辺地域との出入り接触を防ぐべく、SCP-2133の周囲10km範囲における警備を必ず維持する事となっています。周囲に沿って警備員が常時配置され、ロシアの軍事施設としての偽装を維持します。民間人または敵対的な存在によるセキュリティ侵害の発生時には、致死性の武器の使用が認可されます。SCP-2133の人里離れた環境により、偶然の発見は稀な事が保証されています。SCP-2133への探査および当共同体との交流時には、職員はレベルAのHazmatスーツを着用する事となっています。
説明: SCP-2133は北部ウラル山脈に位置する無名の村です。正確な数は記録困難ですが、推定される人口は50人です。様々な病原菌がSCP-2133近郊において発見されており、そのうち幾つかは未知の物です。病原菌には以下の物が含まれます。
- マイコバクテリウム属のらい菌及びその種(ハンセン病の原因となる)
- エルシニア属ペスト菌(肺炎、敗血症、線ペストの症状を示す)
- サルモネラ属エンテリカ種の亜種(腸チフスの原因となる)
- インフルエンザウイルスA型、B型、C型
- ビブリオ属コレラ菌(コレラの原因となる)
- 天然痘ウイルスmajorタイプ及びminorタイプ(天然痘の原因となる。1975年時点で、SCP-2133外部では根絶)
SCP-2133-1と指定されるSCP-2133の住民は、これらの病気に対して相対的な抵抗性を示します。症状は通常の病気と同様に進行し、外見上にも病態となり衰弱はするものの、死は比較的に稀です。
SCP-2133-1は、彼らがSCP-2133から去る事を望まない、あるいは出来ない事を示しています。遺伝子分析からは重度の近親相姦が明らかになりましたが、封じ込め下に入ってからの有性生殖行為は一度も観察されていません。病気は彼らの主要な異常性が示す症状であり、病気そのものは異常ではないと仮定されています。
SCP-2133-1に関する最も重要な異常性は、一種の転生を行うことです。死亡した個体は急速に腐敗し、次の新月の夜に、畑から幼児の姿で収穫されます。SCP-2133-1個体は、転生前の記憶と外観を持ち続けています。畑からの土壌サンプルは、胚に関する流体を含んでいると分かりました。
SCP-2133-1は古風なロシア語の方言で話します。定期的にインタビューには応じるものの、彼らは概ね歴史や伝統についての本質的な詳細を打ち明ける事は拒絶します。彼らの生活様式は14世紀の農奴と類似したものが記録されており、高度な技術に対する深刻な恐怖症を示しています。住民たちは文盲であると思われ、当村に言語が記された物は書物も他の如何なる物も全くありません。彼らの文化や信仰について分かっている部分は、観測活動と僅かな回数だけ成功したインタビューを通じて収集されたものです。SCP-2133-1は自分たちの宗教を”赤き収穫の教会”であると語りますが、その教義や神話は余り分かっていないままです。
SCP-2133-1は財団職員を無視する傾向があり、何らかの行為で彼らの日々の作業が邪魔された際のみ敵意を表します。職員はSCP-2133-1の反感なく建物内にも入る事が出来ますが、これは教会を只一つの例外とします。教会に進入する試みは全てSCP-2133-1およびSCP-2133-2との激しい戦闘行為を引き起こし、結果としてHazmatスーツの損傷を介した病原菌への感染、あるいはSCP-2133-2による絞殺および刺突によって複数の死亡者が出ています。
SCP-2133-2は、SCP-2133全域で発見される把握力を有した有機構造体であり、色は暗赤色で、触手状です。SCP-2133-2は教会を完全に包み込んでおり、そこに侵入を試みる職員を攻撃、あるいはSCP-2133-1個体の入場を可能とするためだけに動いているように思われます。SCP-2133-2から除去された組織サンプルは、遺伝的に同一であり、ホモ・サピエンスと密接に関連するものでした。
SCP-2133-1は夜明けから夕暮れまで畑で働きます。日没時にSCP-2133-1全員が教会に入って行き、おそらくは日々の収穫を積み上げると共に、帰宅するまでの約3時間を教会内で過ごしています。SCP-2133-1はその後夜明けまで眠り、翌日になると同じ過程を始めます。SCP-2133の収容記録を通してみても、この日課に特に変化はありません。SCP-2133-1の振る舞いにはまた、2時間程も虚空を見上げている、壊疽した手足や増大した腫瘍を自己切断する(これらは教会内に置かれます)、定期的に支離滅裂な呟きをしばしばする、といったものが含まれます。
転生という異常な用途を除けば、畑は主にカブを育てるために使われます。SCP-2133-1以外の者の死体では異常な再生はされません。SCP-2133-1個体から採取した糞便は、見たところカブが唯一の食料源にも拘らず、高タンパクの食事を取っていることを示唆しています。
SCP-2133はGRU”P”部局によって1936年10月3日に発見・収容され、その制御は1991年のソ連消滅後に財団へと委譲されました。アーカイブ文書は、GRU”P”部局がSCP-2133の存在を知ったのは地域で発生した疾病のパンデミックが原因であることを示唆します。SCP-2133の封じ込め及び調査のために、適切な手順が間もなく確立されると共に、数ヶ村が検疫下に置かれました。
アウトブレイクは、SCP-2133と接触・感染した鉱物調査チームの帰還によって始まったと仮定されています。調査隊らは、南に向かう旅路で集落との接触を介し、意図せずして流行の引き金となった後に死亡したと思われます。
インタビュー:
インタビュー対象: SCP-2133-1-10 『アリスターク』。外見は老年男性であり、左腕が欠損し、皮膚の大部分は壊死している。
インタビュアー: ジュディス・ロゥ博士
序: 最初に成功したSCP-2133-1へのインタビューである。ロシア語で行われたものを、明瞭さのために編集している。
<記録開始>
ジュディス・ロゥ博士: こんにちは。幾つか質問をしたいのですが。
SCP-2122-1-10: 話してくれ。
ジュディス・ロゥ博士: これの始まりはいつなのです? 貴方はどれくらい昔まで思い出す事が出来ますか?
SCP-2133-1-10: 皇帝と王侯の時代だ。
ジュディス・ロゥ博士: 貴方の体調は。苦しいのですか?
SCP-2133-1-10: 痛む。そうだ。奮闘が教える。我らの体から罪を引き千切る。来る天国に我ら備えるもそれは決して来ない。
ジュディス・ロゥ博士: 貴方たちが受ける”再生”のこと。説明して貰えますか?
SCP-2133-1-10: 赤き収穫の教会だ。我らは終焉まで尽くす。それこそが我らの協定の条項。
ジュディス・ロゥ博士: 死体が回復するのですか? それとも完全に新しい身体なのですか?
SCP-2133-1-10: 龍は自身を屠り、結合させ、植え付ける。それが彼女が我らに話した事だ。盟約が破れる事は決して無いだろう。我らはこの地に飲み込まれ、この地は新しくした我らを吐き戻す。
ジュディス・ロゥ博士: 目に見えて苦しんでいるのに、貴方たちは何故こんな事を続けるんです?
SCP-2133-1-10: 選択肢は無い。この地が呼ぶ。我らが答える。これまで何も変わらない。
ジュディス・ロゥ博士: 質問を言い換えましょう。どういう成り行きでこの状態になったのですか?
SCP-2133-1-10: 巫女が我らの村に来た。もう幾つもの死の前だ。彼女は楽園の土地を提供し、我らは終焉まで尽くす。彼女は終焉は近いと言ったが、もう随分と長く続いている。
我らはもう疲れ果てた。これは地獄なのか? 我らは偉大なる者を何かしらか失望させたのか? 冬からまた冬へ。我らはその回数を数え続けようとしたがその数はもうあまりにも大きくなっている。
我らは忘れられてしまったのか?
否。否。疑ってはならぬのだ。赤き収穫の教会は真実だ。他には何もない。
<記録終了>
後記: 対象は静かに涙を流し、これ以上の会話は望まなかった。畑の土壌サンプルが採取され、分析に回された。
インタビュー対象: SCP-2133-1-26 『アーニャ』。外見は6歳から8歳の女児である。
インタビュアー: ジュディス・ロゥ博士
序: 二回目に成功したSCP-2133-1へのインタビューである。ロシア語で行われたものを明瞭さのために編集している。
<記録開始>
ジュディス・ロゥ博士: こんにちは。危害を加えるつもりは無いんです。貴方の共同体についてどうか話して貰えませんか?
SCP-2133-1-26: ここの者では無いな。立ち去れ。
ジュディス・ロゥ博士: 申し訳ないですが、そういった事は出来ないのです。病気の様ですね。もし協力してくれるなら医療支援を提供出来ますが。
SCP-2133-1-26: お前は盟約の者ではない。決して分からないだろう。
ジュディス・ロゥ博士: 理解しようと努めています。どうかお願いします。貴方の話す盟約とは何なのです?
SCP-2133-1-26: 血に刻まれた約定。我らの償い、呪い。我らは全ての終わりまで尽くす。
ジュディス・ロゥ博士: 貴方の宗教的な信念について教えて頂けますか?
SCP-2133-1-26: 信念は頼み少ない者どものもの。他所者のものだ。古き手法を無視する異教徒どものためのもの。我らには分かっている。
ジュディス・ロウ博士: では、せめて教会の重要性については説明してもらえませんか? 食べ物が内部に運ばれますが、私たちはそれが運び出されるのを一度も見たことがありません。共同の食事なんでしょうか?
SCP-2133-1-26: お前たちは我らを見るべきではない。お前たちが理解することは決してあるまい。ここは錆と血の神々が死するために来る土地なのだ。
ジュディス・ロゥ博士: 私の質問への答えになっていません。
SCP-2133-1-26: [苛立ちを示唆する口調] 教会は村よりも遥か前からここにあった。地の下にある石の教会。神聖なものだ。十字架を奉ずる異端の、木の教会がその上に建てられた ― 我らが真の信仰を受け入れる前の事だ。カルキスト・アルカはお前の蒙を開いてくださるだろう。お前が生きているのは、彼女がお前を生かしておこうと選んだからに過ぎぬ。
ジュディス・ロゥ博士: 誰に仕えているのです? 神かもしくは…
SCP-2133-1-26: [遮る]我らの不滅の父。アディトゥムの魔術師王だ。お前が彼の愛を知る事はできない。立ち去れ。赤き収穫の教会はお前たちのような輩のものではない。
ジュディス・ロゥ博士: お願いです、協力してください。最後に一つだけ。この村に名前はあるのですか?
SCP-2133-1-26: [黒く粘り気のある液体を嘔吐する]
ジュディス・ロゥ博士: 医師の診察を受けた方が良さそうですね。貴方の調子が良くなった時に、また話しましょう。
<記録終了>
結: 当初の予想よりも遥かに良い結果です。吐瀉物からサンプルを収集し分析に送りました。SCP-2133-1-26の発言が、既知の信仰や文化的伝統と一致するかどうかの調査が行われる予定です。この地域には、非正統的な宗派を生み、守ってきた歴史があります。教会への入場を強く進言いたします。財団はさして困難を伴わずにSCP-2133-1集団を制圧できるはずです。
探査:
機動部隊ベータ-7("マズ帽子店")は、財団工作員およびSCP-2133-1個体の死傷者を出さずに、SCP-2133住民を制圧することが出来ました。MTFベータ-7の工作員12名から成る探査チームは、頭部装着無線・ビデオレコーダー・A型Hazmatスーツ・汚染されていない空気のボンベ(3時間供給)を装備していました。焼夷弾による顕著なダメージを受け、SCP-2133-2の巻き髭は土壌内に後退しました。
教会内部では、幾つかの呪物(骨と革で製作されたもの)と、鉄鉤に吊り下げられて天井から鎖で下がる有機物(後に腫瘍の塊と判明)が見つかりました。建造物の中心部では大きな亀裂が発見されました。これはSCP-2133下部の洞窟への入り口であり、後日、近隣の山へと拡張している事が判明しました。
探査開始から約25分後、これ以降SCP-2133-3と指定される数匹の生物が発見されました。生物の大きさと、その場を去りたがらない性質から、MTFベータ-7はSCP-2133-3個体の1匹を終了して解剖のために持ち帰りました。
剖検報告書
体重: 181.437kg
体長: 270cm
年齢: 不明
死因: 頭部外傷
胃の内容物: Brassica rapa subsp. rapa。白カブとしても知られる。
詳細: 対象は、脂肪組織および骨の過剰な成長と、全般的な物理的再構成を示している。臓器は肥大しており、肉には切開と再生を繰り返した証拠が見られる。肉を得るため養われていたと思われる。左前肢の表皮に”P”および交差した鎌と鎚の刺青あり。現在では解散しているGRU”P”部局の工作員に共通する刺青である。
死亡したSCP-2133-3個体を運び出した後、探査チームは空気ボンベを交換して任務に戻りました。特に何事も無い探査が約50分続いた後、ビデオおよび無線での接触は争いの様子も無く途絶しました。約6時間の沈黙の後、無線連絡は再確立されました ― ビデオ映像は途絶えたままでした。
フェルゼンシュタイン博士: 誰か受信してるのか? 神よ、頼みます…誰か答えてくれ!
サイト司令部: フェルゼンシュタインか? 何時間も連絡が付かなかったんだ。マイヤーズは何処だ? 状況の更新が必要だ。
フェルゼンシュタイン博士: 死んだ、と思う。しばらく俺一人だ。あれは…あれはホントに酷かった。[啜り泣きが聞こえる] あいつらは皆死んだ。あるいは何処かに行っちまった。叫び声が上がったんだ。俺はそう思う。多分…何か大きな音がして、骨が震えるのを感じた。ブリッグズが…神よ。神よ。何かがあいつを捕まえたんだ。俺たちはそれを引き離そうとした。まるで…分からん。長かった。どのぐらい長いかは見当もつかない。ツルツルしてた。それで…それで… [過呼吸] 俺は、大の大人がちっぽけな穴に引き込まれていくのを見た…
[呟き] 俺は臆病者だ。あいつらを見捨てたんだ…俺は…
サイト司令部: 彼らは戦闘訓練を受けていた。だが君は違う。君はすべき事をしたまでの事だ。自分が何処にいるか見当はつくか? 援軍を送ることも可能だ。
フェルゼンシュタイン博士: 駄目だ。頼むから止してくれ。俺は歩く死体以外の何者でもない。割れ目に落ちちまってるんだよ。足を挫いたと思う。スーツも破れた。空気が。肺が燃えるようだ。この酷いクソ穴でありとあらゆる病気から袋叩きにされ続けてるんだぞ。
サイト司令部: 自分で身体を引き上げてみてくれ。他の者たちを無駄死にさせてはならない。君はまだ、我々に送るデータを取得することはできるんだ。私たちに脅威をより良く理解させてくれ。
フェルゼンシュタイン博士: ああ…ああ。あいつらにはそれだけの借りがあるしな。試してみる。
良し。1、2の、3…
[ゴトゴトという音] クソッ!
サイト司令部: 状況報告を。
フェルゼンシュタイン博士: [泣き笑い] ますます深く落ちちまったよ。スライムみたいなもんが多すぎる。掴み所を探すにはツルツルし過ぎてるんだ。これ以上滑ったら…押し潰されちまう。 [奮闘を示す荒い息遣いの音。罅割れるような音と喘ぐ声] 自由だ。足には感覚が無い。他は何処も彼処も酷く痛む。だがとにかく自由だ。
サイト司令部: 何が見えるか教えてくれ。
フェルゼンシュタイン博士: 俺、マジで此処で死ぬことになるんじゃないか? 俺は今…デカい割れ目の縁の部分にいる。底は見えない。この場所はかなり深いぞ。山の中か、あるいはその下に行き着いちまったんじゃないかと思う。腐敗臭がする。目が、肌が ― 何もかも燃えるようだ。多分スライムのせいだろう。開いた傷に灰汁を塗り込むようなもんだ。
サイト司令部: 君が比較的落ち着いた状態で嬉しいよ。そこから君を助け出すチャンスはまだある。
フェルゼンシュタイン博士: こんな痛み、今まで感じたことが無い。これほど死に近付いたことが無いんだ。だが、もう失うものは何もない…恐れることは何もない。だが痛いのは止まらん。
サイト司令部: こちら側への敵対者の報告を受けた。どうやら我々が適切に確保できなかったSCP-2133-1が数人いるようだ。対処できないほどではない。
フェルゼンシュタイン博士: 引き続きこいつに沿って…這っている、って所か? 俺は下に向かっている。どの道、俺には先が無いんだ。何が見えるかを伝えていく。多分それで、此処を壊滅させるようにO5共を説得するのに十分だろう。
サイト司令部: 地上では事態が悪化している。SCP-2133-1と思われる連中が数百名、山から押し寄せてきた。我々は避難している。通信回線を開けたままにしてくれ。全ては記録されている。君に何が見えているかを説明してほしい。援軍を連れて戻って来る。
フェルゼンシュタイン博士: 了解。俺には俺の、あんたにはあんたの指令があるさ。幸運を、さぁ早いとこ撤退しな。
サイト司令部: す…すまない。我々としては、一体どう…
フェルゼンシュタイン博士: あんたにはあんたの指令があるんだ。
[サイト司令部は避難するが、通信を保つ。記録は継続]
[荒い呼吸、咳、嘔吐が5分間続く]
割れ目の中に降りてきた。[咳、続けて喘ぎ] 濃い黄色の霧が立ち込めている。石は歪んでて、多孔質だ。蜂の巣の内部みたいに。俺はもう何も感じることができない。そんなに時間は経ってないはずだが。
卵がある。何百か。何千か。多分もっと。地面が殆ど見えない。幾つか肉の山が見える、そこに生き物…大きさが [咳] 大きさが猫ぐらいの生き物がそれを食べてるようだ。蛆虫の様な身体をしている。顔は人間の幼児のようだ ― 大きさもほぼ同じだな。連中は俺に気付いていない [咳] …あるいは多分、単に気に掛けてないんだろう。もうあいつらの顔を見ることができない。人間に近すぎる。近すぎる。
何かの建物もある。寺院のように見える。以前見たどんな物にも似ていない建築様式だ。黒い。 [激しく咳き込む] 磨き上げられているが、鋭い。角度が…角度のせいで見辛いな。何かおかしいぞ。何で俺はまだ動いてるんだ? どうして…
[ヒステリックな笑い] 引き摺られてる。根っこ…触手、巻き髭か…何だっていいな。連中が俺を捕まえた。完全に無感覚だったんで、気付きもしなかった…ハハッ…ハ… [啜り泣きが聞こえる] ガスが…スライムが…流れていく、俺には見える。ただ血の跡が…ただ…でさえも…さえ…何故? 何故だ?
連中は…未だに俺を引き裂いてない。何故だ? 殺せよ! [弱弱しい嘆願] さっさと殺して好きにしろよ… [必死の叫びと支離滅裂な呟きが切り替わりながら続く]
もっと下に降りてきた。もっと薄汚い農民どもが。いや。他の奴らとは違うな。病弱でも弱弱しくも無い。連中は強い。俺を見ている…引き摺られていく俺を見ている。クソみたいな死んだ目で凝視してる。テメーら皆くたばれ…息…息が出来ない。感じない… [呟き] 何をしたいんだ…そいつは何をしたい…
天使だ…俺は天使を見ている…
彼女が俺を抱きしめている…一千もの翼で…とても美しい…とても…
彼女…彼女が俺を誘い寄せる…彼女の…その…露わな胸に… [空電] 俺は…俺… [ガサガサという、恐らくはHazmatスーツ(および装備されている無線)が脱ぎ捨てられる音]
[接続は途絶した。]
<記録終了>