SCP-2134-JP
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アイテム番号: SCP-2134-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 島根県嵯峨野川村に関してはカバーストーリー「廃村」を流布し、閉鎖します。村の外に続く道には監視カメラを設置し、村民の出入りが無いか監視してください。また村の周囲3kmにはカバーストーリー「土砂崩れの恐れ」が適用され立ち入りが制限されます。担当エージェントは4ヶ月に1度村を訪問し、異常性の変質・拡散の可能性がないか確認してください。

説明: SCP-2134-JPは島根県山間部に存在する嵯峨野川村で発生している一連の異常現象です。嵯峨野川村の住民(以下、SCP-2134-JP-1)は2017年頃より、「村内の空いている土地には全て太陽光パネルを設置するべきである」という認識異常に曝露しており、空き地や休耕中の田畑を埋め尽くすように異常な量の太陽光パネルを設置するようになりました。その多くは必要な配線を行なわず、パネルのみを地面に置く形になっています。2017年末頃からは家屋や施設を積極的に取り壊し空いた土地に太陽光パネルを並べ、住民はその上で生活しています。2018年夏頃よりは太陽光パネルが不明な原理で増殖・消滅を始め、破損したパネルは速やかに新品に取り替えられたのち消滅します。現在嵯峨野川村は、地上のほぼ全面が大小様々の太陽光パネルに乱雑に覆われている状態です。

太陽光パネルそのものには認識災害は発生しておらず、SCP-2134-JP-1は「太陽光パネルに埋め尽くされている村である」という認識のもと生活しています。嵯峨野川村の農業・インフラは既に崩壊状態にありますが、SCP-2134-JP-1は飢餓・寒さなどに対する耐性を獲得しており、問題なく生活しています。なお、村民でない者・村民であったことがない者が村内に侵入しても上記の影響を受けることはありません。

SCP-2134-JPは、2017年より地元の太陽光パネル設置業者に異常な量の発注が入っていたことから財団の興味を惹き、収容に至りました。業者には適宜記憶処理・カバーストーリーの適用が完了しています。

補遺: インタビュー記録

インタビュー記録: 2019/11/04

インタビュアー: エージェント・日置
対象: 景山 公造氏、千春氏
前記: 方言は可読性を加味し標準語に再編集しています。

<記録開始>

[エージェント・日置が太陽光パネルの上に座り談笑している景山夫妻に近づく]

エージェント・日置: こんにちは。少しお話いいですか?

公造氏: なんだ、お兄ちゃん見ない顔だね。旅行かい?

エージェント・日置: 私民俗学の研究をしている者なんです。この辺りのことを取材出来たらと思っていて。

公造氏: へえ。この辺は別に何も無いよ。あるものと言ったらほら、[足元を指さす]太陽光パネルくらいだ。

エージェント・日置: ……それなんですが。皆さんはここで生活されているようですが、不便だとか、寒さだとかは感じられないのですか。

公造氏: いや?50年続けた農業をやめることになったのは寂しい気もするが、困ることは何もないねえ。

千春氏: もうどこからどこまでがうちの畑だったかもわかりませんもんねえ。ふふ。

エージェント・日置: ……なるほど。どうもありがとうございます。ん?うわっ。

[破砕音。エージェント日置が立ち上がった際、劣化した太陽光パネルを踏み抜いたことによるものと思われる]

エージェント・日置: す、すみません。

公造氏: いやいや、構わんよ。上に座ったり歩いたりしたらそりゃあ割れるもんなあ。

千春氏: また明日か明後日になったら元通りになってますもんね。ねえ、これ持って帰ったら?研究員さんなんでしょう。こんなのも使えたりしないのかしら?

[千春氏がパネルの破片を差し出す]

エージェント・日置: あ、えっと、どうも。

<記録終了>

インタビュー記録2: 2019/11/04

インタビュアー: エージェント・日置
対象: 松山 実夏子氏

<記録開始>

[重要度の低い会話を省略]

エージェント・日置: それでは2年前まで東京にいらっしゃったのですね。

松山氏: 就職は東京だったんですけど、離婚してシンママになって。それを機に地元に帰ってきたんです。高校生の時はこんな田舎早く出てってやるって感じだったんですけど、やっぱり私の原点はここなんだなあと思って。

エージェント・日置: なるほど。地元に戻ってきて、驚かれたりはしなかったのでしょうか。その、随分と景色が様変わりしていると思うのですが。

松山氏: いや、びっくりしましたよ![笑い声]まさか実家まで無くなってるなんて思わなくて。でも両親も元気そうだし、まあいいかって。娘も伸び伸びしてて楽しそうですし。

[松山氏の視線の先に、推定5歳前後の女児がいる。20cm四方のパネルを積み上げて遊んでいる様子である]

[エージェント・日置が松山氏の後方に視線を向ける。乳児がパネルの上で眠っている]

エージェント・日置: そちらもお子さん、ですよね?

松山氏: そうなんです!去年生まれたんです。よかったら見てやってください。

[ボディカメラが乳児を映す。乳児の顔面、腕に火傷痕が存在する]

エージェント・日置: あの、これは火傷の痕、ですよね。

松山氏: ああ、最近はすっかり寒くなりましたけど、夏頃はどうしてもねえ。これがもう、すっごい熱いじゃないですか。[足元の太陽光パネルを軽く叩く。松山氏の腕にも薄く火傷痕が残っている]1

松山氏: 私も来たばかりの夏は火傷しちゃいましたけどこの子も直に慣れますし、痕もそのうち消えますからね。

[数分雑談を交わす。前方より10名前後のSCP-2134-JP-1が接近する]

エージェント・日置: あちらの方は。

松山氏: ああ、お葬式ですね。向島さんのところのおばあちゃんだったかな。

[集団のうち4名の男性が160cm前後のパネルを運んでおり、中央には老女の遺体が横たわっている。松山氏の正面に接近した際、松山氏が集団へ頭を下げる。エージェント・日置もそれに倣う]

[集団が遠ざかっていき、数分後目的地と思われる場所に到着する。1人がパネルを持ち上げる。露わになった地面に遺体が滑り落とされる]

[遺体の上からパネルが被せられる]

[エージェント・日置のボディカメラが周囲を映す。村内に遮蔽物がほとんど存在しないため、点々と映るSCP-2134-JP-1が遺体の方角に向かって手を合わせている様子が確認出来る]

松山氏: 寂しくなりますねぇ。

<記録終了>

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