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文書 087-IV

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ようこそ、担当職員様。


警告: 以下のファイルはレベル5機密情報です


レベル5権限なしにファイルへアクセスするあらゆる試みは記録され即時の懲戒処分と終了処分が適用されます。

文書 087-IV: 探査 IV

D-10987は、平均的な体格・容貌を持つ33歳のアジア系アメリカ人の男性で、身体能力テスト上位成績者の記録を持っています。精神面に特筆すべき問題はなく、従順な性格と高い忠誠度が評価されています。D-10987は24時間分の電池残量のある75ワットの投光器を装備し、ストリーム通信を行なう小型ビデオカメラ及び、管制室にいる██████博士との通信用のマイクヘッドホンを携帯しています。また、D-10987はバックパック内に水3.75リットル・栄養バー15本・サーマルブランケット1枚を持たせられています。

D-10987は2名の作業員とともにSCP-087に進入します。被験者が作業員を照らしている間、作業員はそれぞれ800m・1600mのロープに補給物資を結び付け、最上階から地下へ吊り下げていきます。作業が終了した時点で、作業員らは退出します。

D-10987はSCP-087の地上階から地下階を見下ろします。投光器は階段の9段分までしか照らし出しません。

D-10987: ここを降りていけばいいんだな。

██████博士: その通りだ。始めてくれ。

D-10987は最初の13段を降り、踊り場で向きを変えると同時に立ち止まります。

D-10987: 子供の声がする。

██████博士: こちらでは確認できない。もう1つ先まで降りてくれ。

D-10987は指示に従います。次の踊り場に着いたとき、以前の三度の探査と一致する子供の泣き声をマイクが拾います。

██████博士: ありがとう。音声が確認できた。先へ進んでくれ。

D-10987: ここには何かいるのか?

██████博士: 音源は未確認だ。しかし、それとは別の実体が内部を徘徊している。実態が危害を加えてきたことはないが、兆候に注意してくれ。

D-10987: ああ。

D-10987は降下を再開し、地下16階まで進みます。

██████博士: もうすぐ地下17階に着く。(間)そこだ。床を調べてみてくれ。

D-10987: 特に変わったものはないな。[しゃがみこんで表面に顔を近づける] 少し金属臭い。

探査Ⅲの映像で見られた汚泥らしきものは見られません。概ね同じ箇所には赤茶けた染みが薄くついているのが観察されます。

██████博士: ありがとう、記録した。他に何か変わったことがあるまで降下を続けてくれ。

D-10987は地下51階まで降下を続けます。51階目の踊り場は前回の探査の時と変わらないままで、同様の観測がなされます。被験者はさらに地下88階まで事故無く降下します。

██████博士: 次のフロアの床に穴が開いている。足元に注意してしばらくそれを観察してくれ。

D-10987: わかった。

D-10987は慎重に階段を降りて、地下89階の踊り場に空いた床の穴を発見し観察を始めます。特筆すべき変化が起こらず5分が経過します。

██████博士: ありがとう、十分だ。泣き声は聞こえ続けているか?

D-10987: ああ、変わらず聞こえてるよ。距離も — そうだな、変わっていないように感じる。

██████博士: なるほど。さらに降下を続けてくれ。実体との遭遇に注意するように。

D-10987はバックパックから水を取り出して飲み、降下を再開します。被験者は地下100階でSCP-087-1の兆候がないことを慎重に確認し、以降20階ごとに繰り返します。地下201階で、被験者は補給物資を発見し、追加の水とレトルトパウチを回収します。食事を終えた後、被験者はさらに36階分を踏破します。238階目へ降りる階段にさしかかったとき、██████博士が異変を指摘し被験者は立ち止まります。

██████博士: D-10987、ロープが揺れていないか?触れたりしたか?

D-10987: いや、触ってない。いったい — 何が起きているんだ、件の実体と捉えるべきか?

██████博士: (間)判断しかねる。ただ、その可能性は十分に考えられるだろう。より警戒を強めて続行してくれ。

D-10987: わかった。

D-10987は約1時間降下し続け、156階分を止まらずに進み続けます。探査の開始から約3時間が経過し、被験者は地下393階、地上階からおよそ1.6km下方にいると推測されます。393階目に到達したとき、被験者は補給物資のロープが破断しているのを発見します。

D-10987: ロープが切れてるな。

██████博士: そのようだな。先ほどのロープが揺れていた時に何かが起きたと考えられる。なにか物音を聞いたか?

D-10987: いいや。ここに来てからは泣き声しか聞いてない。博士もそうだろ?

██████博士: ああ。泣き声以外の音声は記録されていない。

D-10987: 誰かが来て持ち去ったとか?

██████博士: (間)未帰還の探査人員の生死は確認されていないが、期間を考慮すると生存している可能性は低い。SCP-087-1によるものかもしれない。

D-10987: 実体は下へ行ったってことか?

██████博士: 確証はないが、そうだろう。だが、実体は過去に探査人員を追うように上の階から現れたことがある。警戒は怠らないように。

D-10987: ああ。

D-10987は降下を続行し、さらに数分かけて地下405階まで進みます。

D-10987: これは—

██████博士: ボトルだな。補給物資に入っていたものだ。

D-10987: この辺りで2回目の補給があったはずなんだよな。

██████博士: そうだな。他になにか痕跡が見つかったら報告してくれ。

D-10987: [周囲を軽く見回す] わかったよ。(間)ずいぶん深くまで降りてきたな。

██████博士: ああ。

D-10987はいったんその場に座り込んで水を飲み、降下を再開します。特筆すべき出来事はなく、被験者はさらに63階分を踏破し、地下468階を通過します。

██████博士: 以前の被験者は次のフロアでSCP-087-1と遭遇した。なんらかの痕跡が残されていると思われるため、調査してくれ。

D-10987: わかった。(間)うお、壁にデカい穴が空いてる。見えてるか?

██████博士: ああ。床に注意しながら詳しく調べてくれ。

D-10987: [壁面に接近する] これ、崩れたっていうより壊されたんじゃないか?

カメラが壁面の崩壊している部分の境界を映すと、穴の外縁にはいくつかの円弧状の溝がついているのが見えます。

D-10987: 上の階で見たのと同じ傷がある。

██████博士: そのようだな。記録した。穴の深さはわかりそうか?

D-10987: (間)ダメだろうな。

D-10987は落ちている瓦礫のひとつを拾い上げ、穴を覗きながら投げ込みます。瓦礫は暗闇の中へ落ちていきますが、階段の下方からの泣き声を除いて、音声は記録されません。

D-10987: 15秒くらい経ったか?

██████博士: 少なくとも — 1キロメートルほどの深さがあるようだな。

D-10987: (間)まだそれくらい降りていく必要があるってことか?

██████博士: わからない。この構造がどこまで続いているのかは不明だ。あるいは、単に落下音が聞こえないだけかもしれない。

D-10987: (間)そうか。

██████博士: 続行してくれ。

D-10987: ああ。

D-10987はさらに168階分を事故無く進み続けます。探査の開始から約5時間が経過し、被験者は地下637階、地上階からおよそ2.5km下方にいると推測されます。

D-10987: うわっ(間)何だこれ。

██████博士: どうかしたか?

D-10987: ここの床に — 何だろう、水か? 液体が撒かれてる。

床には一見無色の液体が、一面に撒かれています。液体は細口の容器からこぼされたように見受けられ、わずかな量が階下へ流れています。

D-10987: 博士?

██████博士: (間)無色か? においはどうだ?

D-10987: 無色だ。においは [屈んでにおいを嗅ぐ] しないな。ただの水だろう。

██████博士: ありがとう。記録した。

D-10987: (間)少し疲れたな。一度休憩してもいいか?

██████博士: ああ、構わない。

D-10987は階段を数階分降りて濡れていない部分に座り、栄養バーを1本消費します。水を飲んだ後、被験者は壁に寄り、ブランケットを膝にかけて眠ります。約45分後、被験者は水音によって目を覚まします。

D-10987: なあ、何か音がしないか?上の方から — 水音だ。

██████博士: なに? こちらでは確認できな — いや、いま聞こえた。

D-10987: ついにお出ましか?

██████博士: そう考えて差し障りないだろう。

D-10987: ど、どうすればいい?

D-10987はバックパックを背負い、ブランケットを掴んだまま立ち上がります。ときおり水を踏む音が聞こえ、被験者の息が荒くなります。数秒後、階上からSCP-087-1が姿を現します。実体は被験者の方向をまっすぐ向き、被験者を認識していることを示します。以前の探査と同様に、映像と音声が短時間乱れます。

D-10987: おい?

██████博士: そのまま実体を観察してくれ。

D-10987: な — で、できるかよそんなこと!離れちゃいけないのか?

██████博士: 落ち着いてくれ、奴は無害だ。

D-10987: そうだといいんだがな —

SCP-087-1がD-10987の前方約80cmの距離まで急速に近づきます。

D-10987: [叫び声]

██████博士: D-10987、落ち着け、止まれ!

D-10987: [叫び声]

D-10987は十数階にわたって叫び、嘆願しながら駆け下ります。静電気の様な金切り音のノイズに重なって聞こえる階下からの泣き声が、次第に大きくなっていることがわかります。その後も被験者は██████博士の呼びかけを無視して駆け下り続け、およそ200階分を半狂乱になって降下します。最終的に、被験者はSCP-087の終着点に達します。

終着点には、鉄製の扉とそれを上から照らす小さな白い電灯、および壁から床にかけて大きく空いた亀裂があります。被験者は冷静さを取り戻さないまま扉に縋り付き、がちゃがちゃとノブを回します。扉は施錠されていて開かず、泣き声が依然として聞こえ続けています。

D-10987: おい!こっちこそ助けてくれ!追われてるんだ!なあ!

D-10987は息を荒げながら振り返ります。SCP-087-1が後を追ってくる兆候は見られません。被験者は恐慌状態のまま扉に向き直り、二度体当たりします。扉に変化がないことを確認すると、被験者はそのまま壁の亀裂へ飛び込みます。およそ8mほど落下し、被験者は気絶します。この間に、泣き声の音量は段階的に下がり、記録されなくなります。投光器が破損し、映像はもはや暗闇のみを映しています。

被験者は約28分後に目を覚まします。

D-10987: [うめき声]

██████博士: D-10987、聞こえるか?

D-10987: [うめき声] あ — ここは?

██████博士: SCP-087の — さらに地下だ。

D-10987: そ、そうだ。俺は上から落ちて —

D-10987が上方を見上げると、亀裂からSCP-087-1がこちらを覗っているのが見えます。

D-10987: [息をのむ]

██████博士: (間)君が起きるまでずっとああしていたのだとしたら、降りてくるつもりはないようだな。

D-10987: [ため息] それなら [より深いため息] よかった。

██████博士: それなりの高さから落ちたようだが、身体のほうはどうかね?

D-10987: ああ。(間)たぶん左腕が折れてる。痛いが、動けないような怪我じゃない。バックパックがクッションになったみたいだ。ライトはおしゃかになっちまったな。

██████博士: 周りの様子はわかるか?泣き声が聞こえなくなったが、そちらではどうだ?

D-10987: ああ、同じだ。こっちでも聞こえなくなってる。(間)少し目が慣れてきた。あそこ、うっすら光が漏れてるな。

D-10987がカメラを向けると、壁に空いた穴らしき箇所から、赤い光が漏れているのが見えます。被験者が穴に歩み寄ると、その場所には扉があり、落ちてきた瓦礫によって扉が歪んで隙間ができている様子が見えるようになります。

D-10987: この扉 — 壊せそうだ。

D-10987が力を込めて扉を押すと、扉はぎしぎしと音を立てながら次第に動き、激しく音を立てて倒れます。

██████博士: やるじゃないか。

D-10987: いや、いや。

隙間から漏れる光が増えたことで、周囲の様子があらわになります。D-10987がいたのはおよそ5m×5m×5mの部屋で、床には瓦礫と、大量の破損した照明の欠片が散らばっています。被験者は部屋から退出する前にもう一度亀裂を見上げます。亀裂からは依然としてSCP-087-1が被験者のほうをじっと見ています。

被験者は扉に向き直り、隙間を通り抜けます。室外は廊下になっており、赤い光の光源は廊下の中央にある非常灯であることがわかります。被験者が周囲を見回すと、現在位置は廊下の突き当りであり、先ほどまでいた部屋が最奥であったことがわかります。

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鮮明化処理済み

D-10987: ここは — 何かの施設、みたいだな。

██████博士: 内部を探索してくれ。

D-10987: ああ。

D-10987が足を動かそうとした瞬間、何かがこすれる大きな音がします。被験者が驚いて足元を見ると、倒した扉の傍に1枚の金属製のプラカードが落ちているのを発見します。被験者がプラカードを拾い上げて裏返すと、そこには”暗中模索”Searcher in the Darkと記されています。

D-10987: なんだ、これ。ネームプレートってことは、何かの名前か?

██████博士: (間)ほう。

D-10987: わかるか、博士?

██████博士: いや、残念だが。(間)記録した、先へ進んでくれ。

D-10987は廊下を進みながら他の部屋を調べます。7mほど進んだ先に、別の扉が発見されます。扉には、”赤子の唇”Baby Lipsと記されたプラカードが取り付けられています。扉は半開きになっており、床には何かを引きずったような跡が残っています。室内の調査では、最初の部屋と同様の観測がなされます。廊下にはさらに2つの扉が等間隔に並んでいますが、いずれの扉も施錠されており内部の情報は得られません。プラカードにはそれぞれ”年少の啓蒙家”Younger Enlightener”無垢”Innocenceと記されています。2番目の部屋から続いていた跡は、排水口に入り込んで途絶えています。

被験者は最後の部屋の対面にもう一つ扉を見つけます。扉は施錠されており、その横にキーパッドが取り付けられています。キーパッドには次のように表示されています。

ステータス: 収容違反
遮断済み

██████博士: D-10987。そこにキーパッドがあるな?

D-10987: ああ。

██████博士: (間)今から言う数字をそこに打ち込んでくれ。「4」「9」「7」「1」だ。

D-10987は指示に従います。入力が終わると、電子音が鳴り、扉が開錠されます。

D-10987: なあ、博士 — いや、いい。

██████博士: ああ。内部を探索してくれ。

D-10987は入室します。室内にはいくつかの机や棚が置かれていますが、ほとんどは空になっています。最奥に配置された最も大きな机の引き出しを開けたとき、いくつかの報告書が見つかります。

被験者はそれぞれの報告書の内容を映像にくっきりと映します。

D-10987: 博士、ここのこと、本当はどれくらい知ってたんだ?

██████博士: ほとんど知らない — わからない。ここは過去に多くの情報とともに失われた場所だった。

D-10987: (間)そうか。

D-10987は室内にさらに調べるべきものが残っていないことを確認し、退室します。室外で、被験者は非常灯をひとにらみしてから、バックパックを下ろして壁にもたれかかります。

D-10987: [深いため息] これで全部か?

██████博士: (間)おそらくは。

D-10987: これで終わりか?

██████博士: ああ。そうだ。

D-10987: (間)なあ、博士。ここには出入口はなかったな?

██████博士: [応答なし]

D-10987: 別に、責めようってんじゃあない。救助を期待してるわけでも [言いよどむ] ない。

██████博士: (間)ああ。

D-10987: 俺はここまでなんだろ?

██████博士: そうだ。協力に感謝する。(間)契約に従い、君の親族には十分な額の手当が出ることになるだろう。君は — 苦痛を感じない自死のために、ブルータブレットが支給されているはずだ。

D-10987: お気遣いどうも。

D-10987は背中を引きずりながら座り、ブランケットを被ります。

D-10987: いいんだ。俺は使い捨てだからな。いいんだ。けど — いやだ。すまない、もう終わりにしてくれて構わない。

██████博士: ああ。

D-10987: ここは暗い。暗い場所で死ぬのは怖い。

D-10987はすすり泣き、バッテリー切れによって映像が途切れるまで、同様の映像が続きました。

これ以降に予定されていた探査はキャンセルされました。SCP-087に関する研究は凍結されました。



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