SCP-2150-JP
特別収容プロトコル: SCP-2150-JPの収容は事実上不可能ですが、その性質により一般社会に露見しないため、具体的なプロトコルは制定されていません。
後述のSCP-2150-JP-Aは一般社会に多大な影響を及ぼすため、SCP-2150-JP-Aが発生した場合はカバーストーリー『引火による火事』を流布してください。しかしながら殆どの場合カバーストーリーの流布は性質上困難であるため、干渉をせずに監視に留める事が推奨されます。必要に応じてカバーストーリー『人体自然発火現象』を流布する事も許可されます。
SCP-2150-JP-Aにのみ見られる後述のSCP-2150-JP-Bが含まれる四肢には防腐処理を施したうえで標準遺体保管庫に保存してください。
説明: SCP-2150-JPは一般的には『人体自然発火現象』の都市伝説として知られている、人体の異常な発光・発熱現象です。当該現象は以下の状況下において発生する事が確認されています:
- 対象が天井のない任意の場所にいる。
- 対象の周囲にいる人間が4人以下である。
- 対象の周りに火元がない。
- 11:00~14:30の時間帯。
上記の条件を完全に満たした場合、低確率でSCP-2150-JPが発生します。
発生時、対象の体温が急激に上昇し、それに伴って発光し始めます。この発光は約10秒の間持続した後、光は減衰を経る事無く瞬時に消滅します。光の消滅と同時に、対象者の肉体も完全に消失する事が確認されています。発光・発熱の原理は判明していません。
対象の消失と同時に著しい過去改変が行われ、対象に関する全ての情報が抹消されます。この改変は社会に重大な影響を及ぼしていると考えられていますが、現時点において財団が有する技術ではその影響を観測する事が不可能である為、未だ不明のままです。
上記の一連の事象は反ミーム性質を含んでおり、対象と対抗措置を施した人物以外には認識する事が出来ません。
SCP-2150-JP-Aは、ごく稀に発生するSCP-2150-JPの例外的なケースです。SCP-2150-JP-Aでは、上記の条件を満たさずに現象が発生します。更に反ミーム性質と過去改変性質は発現せず、一般人にもSCP-2150-JPを認識する事が可能な状態になります。また、対象者の肉体も完全には消失せず、その場に焼け爛れた状態の四肢の一部が残留します。
残留した四肢は非異常ですが、皮膚の表面に微細な赤色のシンボルマーク(SCP-2150-JP-B)が必ず刻まれています。どのようにしてマークが発生しているかは判明していません。また、SCP-2150-JP-Bを視認した人物は太陽に対して畏敬の念を抱く様になり、熱や光に対しての恐怖心が著しく低下します。
『人体自然発火現象』の都市伝説は、SCP-2150-JP-Aが一般社会で複数回確認された為に一般人に作成されてしまったものです。しかしながら当該都市伝説は一般社会の注目を適度に操作出来ることから、財団もカバーストーリーの一環として利用しています。
SCP-2150-JP-Aの発生確率は限りなく低いと考えられ、発生地点が地球上のランダムな地点と広範囲であるため、積極的な収容の対象とはなっていません。
特筆すべき点として、SCP-2150-JP、-Aのどちらのケースにおいても、二次災害は発生しません。また、反ミーム対策をした状態で対象者を観察した場合、観察者は対象者が光や熱を発しているのを認識する事が出来ますが、接近すればするほど光や熱は減衰し、対象から5mにまで接近した時には光・熱が完全に失われているように感じます。更に接近すると観察者は対象者を認識できなくなり、干渉は不可能になります。
この特殊な性質から、SCP-2150-JPは対象者だけでなくその周辺空間にまで影響を与えている可能性が示唆されていますが、詳細は不明です。
補遺 - 発見: SCP-2150-JPは2009/03/13から各地で確認され始めました。東京で試験的に作動されていたウィルソン因果歪曲検出機(WCDD,過去改変の発生を検出することの出来る装置)が03/13を境に大量の過去改変の発生を検出するようになったのがSCP-2150-JP発見の起源です。
補遺 - 実験: SCP-2150-JPに関する更なる情報を得るため、幾つかの実験が行われました。以下は実験記録の抜粋です。
実験6
2009/05/09 12:39
被験者: D-39000
監督者: 原田博士
実験内容: SCP-2150-JP発生条件を満たし、SCP-2150-JPを発生させる。
実験方法: サイト-81██の敷地内の運動場の中心に被験者を配置し、XACTSをD-39000から50m離れた位置(XACTSの効果範囲内である)に配置する。
付記: 原田博士は記憶補強剤を使用した上でビデオカメラでSCP-2150-JP事象を記録します。
結果: 発生条件を満たして約1時間30分後にD-39000は発光、消失しました。特筆すべき点として、記憶補強剤を使用した原田博士は一連のプロセスを視認できたにも関わらず、ビデオカメラ映像にはD-39000含めた一切の事象が記録されていませんでした。
実験10
2009/06/08 13:19
被験者: D-39602
監督者: 原田博士
実験内容: D-39602に思考転写装置(対象の思考を文章形式に転写することの出来る装置)を取り付け、SCP-2150-JPプロセスの最中の思考を調査する。
実験方法: #1の方法に加え、D-39602の肉体に耐熱加工を施した思考転写装置を取り付ける。転写された内容は原田博士のコンピューターに転送される。
結果: 事象開始から約8秒で、熱によって思考転写装置が故障しました。その後、思考転写装置と共にD-39602は消失しました。以下は思考転写の内容です。
2秒36: [手足 熱い 俺あ あtttttttttttttttt誰]
3秒11: [眩s 焼け からだ 透 俺は]
3秒40: [喉焼ける いゆゆゅゅゅゅゅゅ やたあらぅ 神よ]
4秒12: [誰]
5秒00: [おお 私は ]
8秒02: [融uuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu]
この記録が何を示しているのかは未だ判明していません。
実験12
2009/06/11 13:54
被験者: D-14300、D-12988
監督者: 原田博士
実験内容: D-14300にSCP-2150-JPを発生させ、プロセスの最中にD-12988をD-14300に接近させる。それによってプロセスによる他者への影響を調べる。
実験方法: #6と同様。D-12988にSCP-2150-JPプロセスが発生していることが確認された場合、すぐに反ミーム対策をしたD-14300をD-12988に接近させ、発光・発熱による影響を確認する。
結果: D-12988は問題なく発光・発熱しました。しかし、D-14300がD-12988にいくら接近しても身体への影響は見られず、やがてD-12988に接触しようと試みるも、D-14300はD-12988に如何なる干渉もできませんでした。
後に行われたインタビューにおいて、D-14300は「最初は眩しかったけど、近づくにつれて光や熱が弱まっていって、やがて何も感じなくなった。D-12988の姿も見えなくなって、触れる事すら出来なかった」と証言しました。
SCP-2150-JPに関する実験記録の全ては、別途資料を参照して下さい。
補遺 - 詳細調査: SCP-2150-JPの詳細情報を得る為、本部で実行されたプロジェクト・パレルソンにあやかって世界規模での調査が行われました。
プロジェクト・パレルソン
2009/08/05
序: 本プロジェクトはSCP財団本部を主導として行われる大規模なプロジェクトです。プロジェクトの目的として主に以下が挙げられます。
- 過去改変事象の発生地域・発生頻度の調査。
- 新たなオブジェクトの発見。
- 秘密裏でのシャンク/アナスタサコス恒常時間溝(XACTS)及びウィルソン因果歪曲検出機(WCDD)の一般社会での運用。
- 立案された試験的な収容プロトコルの仮運用。
- Thaumielクラスオブジェクトの作成。
計画概要: 本プロジェクトのために相当数のWCDD、XACTSが作成されます。作成されたWCDDは財団フィールドエージェントによって事前に指定された地域に埋め込まれ、起動されます。起動されたWCDDは財団AI"MoS"によって管理されます。
その後、WCDDによって過去改変事象が検出された場合、財団エージェントによって当該箇所の調査及び作成されたXACTSの埋め込みが行われます。
計画地域: 作成できるWCDD、XACTSの個数には限りがある為、人口密度、国の発展度、面積を基に機材数が割り当てられます。◆ | 北アメリカ | 東ヨーロッパ | 東アジア | 北アジア |
---|---|---|---|---|
WCDD | 1400 | 1200 | 1100 | 970 |
XACTS | 300 | 120 | 90 | 85 |
◆ | 北アフリカ | 西アフリカ | 中央/西アジア | 南/東南アジア |
---|---|---|---|---|
WCDD | 800 | 600 | 540 | 410 |
XACTS | 60 | 55 | 40 | 40 |
◆ | 北/西/南ヨーロッパ | 南アフリカ |
---|---|---|
WCDD | 410 | 200 |
XACTS | 40 | 30 |
配置されたWCDDは2009/09/01から作動されます。
この文書に関するデータが
2 件更新されました。
更新1.2009/09/17
プロジェクト・パレルソンによってWCDDとXACTSがそれぞれ埋め込まれ、作動されました。その結果、下記の事実が判明しました。
- WCDDの効果範囲内だけで過去改変事象は1日あたり1300件以上発生している。
- そのうちの95%以上がSCP-2150-JP事象である。
また、発生件数が余りにも多い事から、XACTSによって過去改変を阻止すると対象者の情報抹消が行われなくなり、1日あたりの行方不明者数報告が██%増加する為、一般社会への重大な影響が発生する事が判明しました。
また、WCDD効果範囲外の地域の事も考慮した場合、SCP-2150-JPは1日あたり約6000件発生していると推測されています。言い換えると、1日あたり6000人の人物が抹消されているという事を示します。
プロジェクト・パレルソンは無期限に中断されます。XACTSは撤去され、WCDDのみが継続して作動されます。
更新2.2009/09/18
Agt.ジェームズがSCP-2150-JPの被害を受けて消失しました。その際、Agt.ジェームズはSCP-████の調査の為に偶然にも特殊耐熱加工の施されたGPS機器やビデオカメラを起動させており、ビデオカメラ映像はサイト-██にモニターされていました。また先述のプロジェクトにおいて配置されたXACTS、WCDDの効果範囲内で被害に遭った為、過去改変が行われること無く記録する事が可能でした。
以下の写真は、Agt.ジェームズがヘルメットに装着していたビデオカメラに映っていたものの中で、認識が可能な部分を抜き出したものです。
5枚目の写真は太陽を示しています。
これらの更新データと追加実験により、以下の事実が判明しました。
#1 対象者の選定
太陽に対する信仰心が強ければ強いほど、対象に選定される確率が増加する傾向にあるようです。特に、SCP-2150-JP-Bを視認して太陽への畏敬の念を抱くようになった人物は選定される確率が大幅に上昇します。
#2 発光・発熱の原理、及び対象者のその後
発光・発熱は"体を構成する物質の分解"によって発生したものです。人体を構成する化学結合が未知のプロセスによって原子レベルに乖離・破壊される際にエネルギーが発生し、そのエネルギーが発光・発熱という形で空間に放出されています。
また、人体を構成する物質の20%以上が分解されると、対象は消失するのではなく、分解された物質と共に太陽へと超高速で引き寄せられ始めます。非常に高速であるため、これまでこれは"消失"と誤認されていました。
太陽の表面に到着する頃には対象者の肉体全てが原子レベルに分解され、分解された物質はその加速度を維持したまま太陽周辺を高速で回転し、他の物質と衝突します。これにより、先述のエネルギーよりも遥かに膨大な発光・発熱のエネルギーが発生します。この原理は核分裂・核融合反応に酷似していると考えられていますが、詳細は不明です。
SCP-2150-JPに含まれる反ミーム性質は、肉体の70%が原子レベルに分解された段階から徐々に消滅していきます。これは別の理論が関わっており、簡単に述べると"人体"に対する反ミーム性質は人体という総体に掛り、細胞レベルでは掛っていないという事実に基づきます。詳細は別途論文を参照してください。
当該反応が始まって数時間後、対象者の肉体が不明な原理により瞬時に再構成されます。再構成された肉体は先述の分解・衝突プロセスを再度繰り返します。この一連の構成-分解-衝突プロセスは現在に至るまで終わること無く繰り返されている事から、無限に続けられているのではないかと考えられています。
この一連のプロセスにより、SCP-2150-JPが散見され始めた2009/03/13までは水素の減少化によって収縮傾向にあった太陽が、現在では膨張傾向にあります。
上記の一連の現象によって発生しているエネルギーを我々は、『太陽光』と呼称しています。