アイテム番号: SCP-2160-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-2160-JPはその性質から物理収容が不可能です。次善策として異常性の発生を抑止することで人類社会への影響を極小化するプロトコル-"柄杓握り"が採用されます。
プロトコル-"柄杓握り"に従って複数のフロント団体を通じて日本国内の歴史研究における既知の事実を更新するイベントを一定周期で発生させ、書籍1を出版する全ての団体、マスメディア、インターネット上のサイトやSNS等を通じて一般に流布します。このとき流布される新たな事実の内容は真偽を問いませんが、既知の情報から合理的に導出されるものが望ましく、インシデント回避の観点から証拠の捏造を排することが要求されます。
SCP-2160-JP-Aのうち収容が可能な物品についてはサイト-8181内の通常物品格納倉庫に収容されます。収容が困難である場合は適宜カバーストーリーを適用して一般への露見を回避して下さい。
プロトコル-"柄杓握り"の詳細は別添資料を参照して下さい。
説明: SCP-2160-JPは一定の条件を満たすことで発生する現実改変現象です。これまで確認された事例に共通する条件として、単位空間あたりに存在する人間のうち一定以上が共通の認識を持つ歴史的事実が対象となることが判明しています。対象となる歴史的事実の真偽は発生条件と無関係であることに注意して下さい。
SCP-2160-JPは対象とする歴史的事実を覆すのに十分な物的証拠(以後、SCP-2160-JP-Aと呼称)を不定の地域に生成します。SCP-2160-JP-Aの量や形質等は対象となった歴史的事実の内容に完全に依存しており、最小のもので直径約1cmの装飾品、最大のもので推定20平方kmの城下町跡が確認されており、確認済みの全事例で人工物のみが生成されています。SCP-2160-JP-A自体には異常性は見られず、常識的手段により損傷ないし破壊が可能です。放射性炭素年代測定に代表される物体に対する通常の調査によってSCP-2160-JP-Aを同時代に製造された同種の物体と区別することには成功していません。
2017/12/██: SCP-2160-JP-Aの疑いがある物品に対して、統計的手法を用いることで判定する技術が考案されました。2018年7月までの試験期間中に221件の検査を行い、このうち17件についてSCP-2160-JP-Aであると判別することに成功しました。
この成果を受けて2018/08/██にSCP-2160-JPの特別収容プロトコルが大規模改定され、世代間で異なる歴史認識を植え付けることで条件成立の確率を抑えてSCP-2160-JPの発生を予防するプロトコル-"柄杓握り"が制定されました。
SCP-2160-JP-Aが一般に露見した場合、従来の歴史を覆す新事実として公表・流布されて本来の歴史研究が汚染されるという副次的影響が考えられます。これを避けるため、現在財団ではSCP-2160-JPの発生防止と同時にSCP-2160-JP-Aの収容を継続しています。
収容済みSCP-2160-JP-Aリスト(一部抜粋)
Case | 形状 | 推定年代 | 発見時の状況 | 備考 |
02 | 約170平方mの古墳跡 | 4世紀後半 | 1998年 北海道中川郡 工事で採掘中に発見 |
日本最北の古墳として一時期注目を集めたが由来不明のまま通常の調査は2006年に終了。 2018年1月、昭和期の模造物であるとするカバーストーリー"不発の町興し"を流布し収容。 |
08 | 武田太郎2から上杉朝興3への書状 | 1535年 | 2019年 山梨県██市 古民家の蔵より発見 |
テレビ番組スタッフとして潜伏中の財団職員が視聴者からの投稿を受け発見。 1534年に死去したとされるはずの妻子の近況について言及あり。 カバーストーリー"江戸期の創作"を適用した後、学芸員に偽装した職員が回収。 |
11 | 木簡 | 798年 | 1994年 京都府██市 市内の博物館に所蔵した状態で発見 |
『平城京、長岡京、洛長京と遷都が続いたが騒乱が絶えず、愛宕のあたりを選んで改めて遷都すべき』との主張が記されている。 館内の整理中に発見されたものの収蔵時の記録が無く経緯不明。警察に潜入中の財団職員が通報を受けて回収後、Anomalousアイテムとして保管。 "洛長京"に関する情報は本品以外存在せず詳細不明。 |
緊急 | サイト-81A94の職員証 | 2014年 | 2019年 香川県██市 近接する収容サイト-81A5で発見 |
発行年月日は2014/03/██。2014年時点の財団規格に適合するため正規品と見られる。 レベル3セキュリティクリアランスが認められるが該当の職員は存在しない。 SCP-████-JPの発見は2018年であり、サイト-81A9への収容後はカバーストーリー"歴史資料館"を適用。 2020年現在も収容状態を維持している。 |
補遺1: サイト-81A9に関する調査と研究の結果、SCP-2160-JPによる現実改変は現在における物体発生現象ではなく、負の時間方向に作用する過去改変事象であると推測されています。現在において発生したSCP-2160-JPは認識圧力の発生源となった歴史的事象Aに反する特定の歴史的事象¬Aを過去に遡って消去していると考えられます。
SCP-2160-JP-Aは過去改変事象により消去された特定の歴史的事象¬Aに関する史料の残存物であり、現代において発見(もしくは"再発見")されることで改変の影響を受けていない本来の歴史を明らかにできる可能性がある一方、SCP-2160-JP-Aを根拠とする歴史史観は現実からは既に消去されたものであり、一般に流布された場合不測の事態を引き起こす可能性があります。財団では本来存在していたであろう歴史の保護を目的としてSCP-2160-JP-Aの確保を継続することを決定しました。
補遺2: 2019年から少なくとも2519年まで継続する実験の結果、現在適用中の任意のアノマリーに関するカバーストーリーが一般に流布されたまま遠未来まで残存し、かつ財団の収容活動が歴史的事実として一般に認知されなかった場合、SCP-2160-JPの発生によって過去に遡って財団の存在が消去される危険性が指摘されました。想定される最悪のシナリオでは、財団が過去から現在、未来に至るまでに収容する全てのアノマリーの収容違反が発生するものと思われます。
2020年時点で財団が保有する抗現実改変設備ではSCP-2160-JPによる現実改変を逃れることは極めて困難であると考えられるため、影響回避のために財団の管理下にあるカバーストーリーについてもプロトコル-"柄杓握り"の対象とすることが求められます。一方で特別収容プロトコルとして定期的な変更が不可能であるカバーストーリーが複数存在するため、画一的な対応は現実的ではないと判断されています。
いずれにせよ何らかの手段によって財団そのものがSCP-2160-JPの影響を受ける事態を回避する必要があり、現在O5評議会の指揮によって対応策の検討が進められています。