アイテム番号: SCP-2169-JP
オブジェクトクラス: Pantokratōr1
特別収容プロトコル: SCP-2169-JPの存在する箱庭群への既知の"門"は封鎖され、財団の監視下に置かれます。対象の箱庭内には三次元能動放逐・警報システム3-D Active Exploiting and Alarming System(3D-AEAS)を始めとする観測及び防衛機器を配備し、SCP-2169-JP及びその周辺環境に対する警戒を行ってください。
特記事項: 箱庭
箱庭は、四次元宇宙上に存在する複数の三次元空間の総称であり、基底現実における人類種の主な活動地域です。箱庭間は基本的には断絶していますが、"門"Doorways
と呼称されるポータルを通しての移動が可能です。"門"の形態は一貫しておらず、扉、鍋、クマの胃袋、巨大な門など多岐にわたります。箱庭や"門"の多くはこれまでに行われた探検によって発見されていますが、現在も未発見の"門"や箱庭が存在する可能性は否定できません。また、箱庭の存在は一般社会に広く周知されていますが、一部の正常性維持に不都合な情報は、フロント企業である"空間征服"公共財団"Space Conque"Public Foundation
によって遮断されます。
財団船舶によって撮影されたSCP-2169-JP。
説明: SCP-2169-JPは、南大西洋箱庭群の上空、つまり一般に空として認知されている天蓋の上に存在する巨大な節足動物です。SCP-2169-JPの全貌は、当該オブジェクトが複数の箱庭に跨るように存在しているため未だ知られていませんが、その体長はおよそ2000~8000kmに及ぶと推測されています。
SCP-2169-JPは、古くから船乗りや詩人の間で伝説上の怪物「リヴァイアサン」として語られていましたが、その存在が実際に確認されたのは19██年██月██日に██号箱庭で行われた機動部隊ベータ-7 ("マズ帽子店")による█████████次元影(座標南緯██度██分、西経██度██分)付近の調査中でした。この調査では、恐らくは生命に由来すると思われる複数の次元影の観測と対処をその主な目的としていましたが、その最中に以前は別の箱庭であると考えられていた影が本来の位置からおよそ1ウェーロン2ほど移動していることが判明しました。当初財団はこれを何らかの理由によって外部から力を加えられた箱庭が運動を行っていると考えていましたが、問題の影が██号箱庭上部に落下した後に行なわれた調査によってSCP-2169-JPが有機体であることが判明しました。SCP-2169-JPから僅かに採取された体表を解析したところ、このオブジェクトは少なくとも先カンブリア紀以前から生命活動を行っていたことが判明しました。
また、SCP-2169-JP発見のきっかけとなった調査の本来の目標であった複数の生命由来の次元影は、SCP-2169-JPに引き寄せられてやってきたとされています。原理は不明ですが、SCP-2169-JPは呼吸に類似した生命活動をしている様子が確認されており、その際に周囲に発生する空間潮流が周辺を移動していた異次元生命体群を吸い寄せています。回収されたサンプルを解析した結果、GoI-6510("スミレ")3に類似する特徴が観察されました。このようにして吸引された生物はSCP-2169-JPの口と思しき場所に入る場合もありますが、SCP-2169-JPは食事を必要としないらしく、大抵の場合すぐに吐き出されます。探査機器をSCP-2169-JP体内に進入させる試みは、同様の理由により失敗しました。
また、SCP-2169-JPの起源に関する記録は、16世紀ごろに執筆されたZ.アッカ―の「彼方に見たものについての論考」第五章に見られます。
そして、イェアロウィロエナエからの3人の放浪者はこう語った。
「悪しき魂を喰らうものが、いずれ来るであろう。箱庭に巣食うニフィロタが大回廊へと向かう時、その向こうから来るであろう。それこそがこの壁に閉じ込められ、行き場のない者たちへの救いの時である。」
そして彼らは眼前に広がる広大な壁を指し、それからその先に見える星々を指した。私はその彼方に目を凝らし、赤く輝くセプトゥーロンの太陽の近くに蠢く巨大な生き物の影を見た。それが何を思い、何故そこにいるのかは分からないが、生物と運命に精通した後世の研究者のために座標を記録する。
なお、記述されていた座標は多元宇宙空間の限界と考えられる多次元的なグレート・ウォールのおよそ30000ウェーロン先を示しています。文中の"壁"とこの多次元封鎖の関係性は不明です。また、その先に見たとされる巨大生物とSCP-2169-JPの関係性は不明です。
補遺1: SCP-2169-JP周辺生物
SCP-2169-JPは傷を負っているように見えます。そのため部分的に表面の覆いが無い個所があり、その地点を周辺に生息する四次元生命体群が摂食する様子が観察されています。現在確認されているだけでも、SCP-CN-█████("黒ナメクジ")を始めとした数十種の生物が周囲を取り囲んでおり、うち何匹かは██号箱庭の三次元空間に侵入しています。また、これらの生物によりSCP-2169-JPの腹部にごく小さな穴が開き、不明な生物(SCP-2169-JP-1に指定)が一体落下しました。SCP-2169-JP-1は巡回中だったSCPSクラーワに回収され、サイト-██に収容されています。
インタビューログ2169-JP-1
SCP-2169-JP-1は明らかに知性を有しており、収容担当者とのコミュニケーションを図ろうとする行動が見られた。以下は身振り手振りによるSCP-2169-JP-1へのインタビューログである。
<記録開始>
インタビュアー: [お辞儀をする。]
SCP-2169-JP-1: [身体上部に付いている、恐らくは生殖器であると推測される赤色の円形器官を前方に倒す。インタビュアーの行動をまねていると思われる。]
インタビュアー: [指で上を指し、その先から握った手を下に振り下ろす。]
インタビュアー: [握った手とSCP-2169-JP-1を交互に指さす。]
SCP-2169-JP-1: [身体の四隅に存在する突起を、互いに平行になるように動かす。以降の行動から推察するに、同意や了承を表していると考えられる。]
インタビュアー: [再度指で上を指し、もう片方の腕をくねらせてSCP-2169-JPを表現する。]
SCP-2169-JP-1: [四隅の突起を平行にする。]
SCP-2169-JP-1: [1つの突起を伸長させ、大きな円を形作る。更に一つの突起を伸長させ、円の中に二つの台形を逆さに繋げたような形状を作る。]
SCP-2169-JP-1: [更に2つの突起を伸長させ、縦向きの棒2つを形作る。]
SCP-2169-JP-1: [2つの棒を用い、円の中や台形の下部で動き回る様子を表す。]
SCP-2169-JP-1: [全ての突起が上を指す。]
インタビュアー: [首を横に振る。]
SCP-2169-JP-1: [再度突起を伸長させ、大まかにSCP-2169-JPに類似した形を作る。]
SCP-2169-JP-1: [残りの突起でSCP-2169-JP上の塊をつつく。]
SCP-2169-JP-1: [SCP-2169-JPを形作っている突起群の中に身体上部の生殖器を入れ、暗緑色の固体を下方に放出する。]
SCP-2169-JP-1: [突起を元に戻し、SCP-2169-JPの形をした塊を持ち上げる仕草をする。]
SCP-2169-JP-1: [塊を前方に動かす。]
SCP-2169-JP-1: [四隅の突起を平行にする。]
インタビュアー: [両手両足を平行にする。]
<記録終了>
終了報告: 可読性のため、インタビュアーによるコミュニケーション内容の要約を以下に示します。
- SCP-2169-JP-1はSCP-2169-JPから落ちてきた。
- SCP-2169-JP-1はSCP-2169-JP内部で(恐らくは)仲間と暮らしていた。接続した台形は住居であると思われる。
- SCP-2169-JP-1はSCP-2169-JPに帰りたいと思っている。
- SCP-2169-JPは外部からの攻撃に晒されており、これを放置すると他の内部住民も落下することになる。
- SCP-2169-JPをもう一度飛ばしたい。
SCP-2169-JPの周辺環境は、時を追うにつれ複雑化しています。周辺生物の主な栄養源としての役割を果たすSCP-2169-JPを中心に、それを直接捕食するニジトビマンタ4、周辺の残留物を接触するスミレ由来の翡翠蛾、翡翠蛾に寄生して鱗粉を得るヨーゴナカクラなどが観察可能です。また稀に周辺空域を飛行する不明な飛行艇が観測されていますが、その正体は未だ判明していません。唯一得られた情報は、その飛行艇がSCP-2169-JP周辺に存在する"ヤエズロイ"と目される物質を採取、もしくは無害化しているということのみです。この"ヤエズロイ"は周辺環境に腐敗、停滞、死、病気、無秩序な生物学的変異、荒廃、無気力、緑色といった影響を与えていることが確認されており、これらを防ぐためにも飛行艇との接触は急務であるとされています。
恐らくは内部に存在すると思われる生命体群がSCP-2169-JPの下部の箱庭群内に(特にヤエズロイを伴って)侵入した場合、周辺の環境に多大な悪影響を与え、また箱庭内へのヤエズロイの拡散が発生するため、SCP-2169-JPの健康状態改善が常に試みられています。これまでに2度のSCP-500の投与と、SCP-006の摂取試行が行われましたが、いずれも一度は回復するものの再度ヤエズロイに侵食される、もしくはその巨体のため回復が侵食に追いつかないという結果に終わりました。SCP-2169-JPの周辺生物は今や劇的な変化を遂げています。ニジトビマンタは緑色の光のみを反射するようになり、また体が若干の粘性を獲得したようです。四次元空間での飛行を観測したところ、複数の粘性物質が体表からはがれて個体後方に飛んでいく様子が観察されました。翡翠蛾は早期からヤエズロイの影響を受けていた種の一つです。体色の翡翠色は時がたつにつれどんどんと暗褐色を孕むようになり、また食性もSCP-2169-JP周辺の細かな残留物からSCP-2169-JPの肉そのものに変化しているようです。今ではSCP-2169-JPの傷口は蠢く暗い緑色に覆われています。しかしながら、翡翠蛾に寄生するヨーゴナカクラはヤエズロイの影響をそこまで受けていないようです。
SCP-2169-JP周辺に生息する生物は稀に箱庭内に落下します。これはSCP-2169-JPのいわば"吐息"にあたる空間潮流の働きであると考えられています。このようにして箱庭内に侵入した生物はヤエズロイに感染している可能性が高いため、他の生物の接触は厳に慎むべきです。これまでのところは無人船舶による回収と海底サイトへの収容によって対処がされていますが、サイト内収容室のひっ迫も懸念されているため、早急な対処が要求されています。
補遺2: SCP-2169-JPとの相互作用
SCP-2169-JPは、その周辺に生息する生物との相互作用状態にあります。以下に確認されている機序を示します。
1: SCP-2169-JPはその呼吸により周辺の生物を引き寄せるもしくは吹き飛ばしています。この過程でSCP-2169-JPに接近した生物は、SCP-2169-JPの体表を覆う甲殻の隙間からSCP-2169-JPの肉組織の摂食を開始します。これにはSCP-2169-JP自身の持つヤエズロイの影響もあると考えられています。ヤエズロイに感染した生物は肉、特に腐敗した肉の摂食を好むようになる傾向にあることが知られています。
2: SCP-2169-JPの肉組織がある程度食べられると、オブジェクト内部に存在する空間へ繋がる穴ができることになります。しかしながら周辺生物はこの穴が出来るとその付近への接近を避けるようになります。これはSCP-2169-JP内部に存在するSCP-2169-JP-1の起源であると推定される生物群がこの穴の周辺に駐留し、侵入を試みる生物を襲撃しているためです。
3: SCP-2169-JPの表面甲殻はその硬度が非常に高いため、これを摂食可能な生物は非常に限られます。この事例においてはSCP-CN-████("黒ナメクジ")がその役割を担います。SCP-CN-████はSCP-2169ーJPの表面に付着すると、その表面にある突起を甲殻方向に四次元的に延展させることで甲殻そのものを空間的に削り取ります。このようにして切削された穴からもSCP-2169-JP-1と同種の生物が確認できますが、彼らはSCP-CN-████に対する有効な対抗手段を持たないようです。現在のところSCP-CN-████に明確に危害を加えられるのはSCP-CN-████-Dとして記録される仮説上の特効ウイルスのみであるとされています。
4: SCP-2169-JPは、内部組織がある程度摂食された時点で死亡すると推測されます。この際一時的に筋肉が弛緩し、SCP-2169-JP下部の箱庭由来の重力に引かれて腹部の延伸を招きます。その結果SCP-2169-JP表面の傷口が広がり、SCP-2169-JP内部のSCP-2169-JP-1種族及びその構築物が落下、箱庭内に侵入すると考えられます。これは外次元生命体による箱庭内の生態系の破壊や、それらへのヤエズロイの爆発的感染を招くため、前述の飛行艇への接触をはじめとする対抗策の実行が急がれていますが、既に箱庭外にヤエズロイが蔓延していること、及び飛行艇から発信されている未知の形式の信号が未だ解読できていないことなどの理由により進捗は芳しくありません。









