SCP-2204-JP
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確保時に撮影されたSCP-2204-JP

アイテム番号: SCP-2204-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2204-JPの完全な収容は不可能です。SCP-2204-JPの出現が疑われる地点には機動部隊あ-6("秘密探偵")が展開され、出現したSCP-2204-JPを状況に応じたカバーストーリーの流布の上で仮設収容もしくは破壊を含む無力化を行い、一般人の接触を可能な限り制限して下さい。万が一、SCP-2204-JPと一般人が接触した場合、クラスC-局所指向媒介型ミーム性記憶処理の適用と、適宜カバーストーリーに基づいた隠蔽が実施されます。

SCP-2204-JPの性質から、実験は接触した一般人をEクラス職員として臨時雇用した上で行われます。実験の終了後、雇用した職員は解雇され、前述の記憶処理ののちに本来の環境へ解放されます。実験終了後、倫理委員会に前述の手続が正常に行われたかを報告することが義務づけられます。

説明: SCP-2204-JPは、日本国内全土に渡って特定条件下で出現する、製造者、内部構造および出現原理の不明な公衆電話ボックスです。SCP-2204-JPは見かけ上の経年劣化や汚損などは見られず、また稼働に係る電源や回線接続の経路についても不明です。

SCP-2204-JPは17時~3時までの夜間に、「強く罪悪感を抱いている」と感じる相手を有する人物(以下、"接触者"と定義)を中心とした半径50m範囲内の位置に出現します。出現位置は総じて道路沿いなどですが、まれに住宅横や敷地内、非公共施設内、山間部や沿岸部など、公衆電話ボックスを設置するには不自然な位置に出現する例も報告されています。

SCP-2204-JPが出現し、かつSCP-2204-JPから半径10m範囲内に接触者が侵入した時点で着信が掛かります。接触者がこれを無視することは可能であり、その場合は接触者を含む観測者が視界からSCP-2204-JPを外した時点でSCP-2204-JPはその場から消失します。接触者がSCP-2204-JPの着信を受け、通話を試みた場合、SCP-2204-JP-1が応答します。

SCP-2204-JP-1は接触者が最も罪悪感を抱いている対象であると認知される、SCP-2204-JPを介して接触者のみが会話可能な存在と見なされています。財団を含む他者がSCP-2204-JP-1からの音声を観測した場合、ホワイトノイズに近似した雑音として観測され、会話内容を確認することは出来ません。しかしながら、観測者はSCP-2204-JP-1との会話によって多くの場合罪悪感を抱いている対象への否定的・自罰的な感情は緩和ないし改善され、概ね「状況は解決された」ことを一様に報告していることから、SCP-2204-JP-1と接触者の間では、好意的ないし宥免的な会話が行われているものと推定されています。

なお、接触者以外がSCP-2204-JPを利用することは如何なる方法を用いても不可能であり、またSCP-2204-JP内部に設置された電話機に付属するプッシュ式ボタンなどは操作に対して一切の反応を示さないため、SCP-2204-JP側から外部に発信することは不可能であると考えられています。接触者がSCP-2204-JPを利用した後、観測者がいなくなった時点でSCP-2204-JPはその場から消失しますが、接触者が再度同様の条件下に置かれた場合、同一地点にSCP-2204-JPが再出現します。



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    補遺.02 - SCP-2204-JPの初期研究におけるインタビュー記録: SCP-2204-JPとの接触により、SCP-2204-JP-1と会話を試みた人物である結野 ██氏は、氏が財団フロント企業であるFFC-2301("S&C印刷工業")に勤務していたこと、財団フィールドエージェントの三宅 圭が氏の後輩として親交があったことなどの都合のため、結野氏はSCP-2204-JPの情報収集を目的としたEクラス職員として非公開雇用され、数度のSCP-2204-JP接触実験が行われました。

    以下のインタビュー記録は、SCP-2204-JP接触実験の終了後に行われたものであり、すべての実験使用予定とインタビューを終了した後に結野氏はクラスA記憶処理が施され、標準カバーストーリーの適用と共に解雇されています。

    ▶ インタビュー記録-01: 結野 ██(2001/4/13 2:14) を展開

    ▶ インタビュー記録-02: 結野 ██(2001/4/28 12:25) を展開

    ▶ インタビュー記録-03: 結野 ██(2001/5/19 1:30) を展開

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      インタビュー記録-04


      対象: 結野 ██

      インタビュアー: エージェント・三宅

      実施日: 2001/6/21 18:21


      <記録開始>


      [FFC-2301の休憩室内。内部に関係者以外はいないことは確認済]

      エージェント・三宅: それで、結野先輩。例の電話ボックスの件ですけど……何か続報などあります?

      結野氏: ううん、そう言われてもなぁ。今まで言ってきたとおり、女房と話をしてるだけだよ。まあ、女房だと思っている、と言うべきかは分からんが、そんなことはどうだっていい。

      エージェント・三宅: そうなんですか? 最初の頃は、電話ボックスを使う度に「奥さんではないが、奥さんだとしか思えない」といって混乱してる様子でしたけど。

      結野氏: そりゃそうだろ。いきなりよく分からん公衆電話が出たと思ったら、着信が掛かって。出てみれば女房、なんて、下手な怪談話よりも末恐ろしいし。

      エージェント・三宅: でも、今や相当受け入れていますよね。私も怪談話やらその類いには興味がありましたし、聞いてる分には面白いですが。

      結野氏: お前なあ、他人事だと思って……。まあ、とはいえ最初の頃はビビリ倒してたけどもさ。話をするウチに、本当に俺はあの電話は、あの声こそが女房の本心なんだろうって思ったもんだよ。そう思いたかったし、今でも思ってる。まあ、あの公衆電話を使う度に妙な違和感を感じることはあったけどな。気にするだけ無駄な気もした。そんだけだ。

      エージェント・三宅: [沈黙]……奥さんとは、その後は?

      結野氏: 変わらずだよ。俺が帰る頃には女房も寝てるし、娘は夜中なのにどこかふらりとうろついてて、何をしてるか知りもしない。親父の威厳も何もあったもんじゃないな。休みの日になれば「お前はいつも家でゴロゴロしていて気楽で良いよなぁ」なんて言われて、居づらくなってリビングを出れば「そうやっていつも家事で大変な奥さんを手伝おうともしないで逃げるんだ?」とかなんとか。[ため息]……娘にも似たように言われるばっかりだよ。

      エージェント・三宅: そうですか。結野先輩は、それで大丈夫なんですか。

      結野氏: 年下に心配されるほど俺の威厳は落ちていないぞ。それに元はといえば、俺が稼ぎも悪くて、口も悪くて、育ちも悪いのが原因なんだよ。コンビニ弁当一つ買えず、2人の食った残りのあり合わせを貪って仕事してんのも、全部は甲斐性無しな俺のせいさ。

      エージェント・三宅: しかし、

      結野氏: [エージェント・三宅の言葉を遮り]お前は気にすることじゃないだろ、三宅。……まあだから、あの電話口の女房の言葉は、キツいことを言ってくる女房の厳しさの裏返しなんだと思うようになったよ。[ため息]……俺の小遣いも削られてんのも、家庭の生活のためだから、無理させてごめんなさいって、電話口じゃ今まで聞いたことのない謝罪やら感謝やらすらされた。俺はそれが嬉しくて、いい大人が公衆電話で泣きじゃくったもんだ。

      エージェント・三宅: なるほど……でも、帰宅してからは、よく知る奥さん、だったんですよね。

      結野氏: ああ。けど、電話口のあれをわざわざ本人に聞くほど野暮なことはしないし、本心を伝えてくれる電話ってだけで、俺はあれを利用する価値があると思った。次も出てくれないかと期待してるところはあるな。俺も、本当は女房のことが大事だと思っているし、家庭は円満な方が良い。例え俺が邪険に扱われたとしても、本当は俺のことを大事に思ってくれてるって知ってるからな。

      結野氏: まあ、時々会話の流れで妙に食い違うこともないわけじゃないが……考えないようにしている。女房じゃないとは思いたくないからな、あの公衆電話での言葉は。俺が頑張れるのも、全部あの電話で女房が本心を話してくれているお陰だ。お互いぶつかり合っては謝り合って、そうやって対等な立場で向き合うのが夫婦ってもんだろ?

      エージェント・三宅: そうですね、結野先輩。


      <記録終了>


      記録終了報告: 結野氏のEクラス職員解雇後も度々SCP-2204-JPと接触しており、その度に結野 ███氏を名乗るSCP-2204-JP-1が応答しているほか、FFC-2301内での人間関係や友人との交友関係に係る存在も登場している。結野氏が高頻度でSCP-2204-JPと接触する原因および理由は不明であり、詳細な調査が進められる予定である。






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