SCP-2207-JP
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アイテム番号: SCP-2207-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2207-JPは常時監視体制に置かれます。内部住民への攻撃、拘留は禁止されます。内部のSCP-2207-JP-Aとは年に一回担当職員による協定の更新が行われます。

説明: SCP-2207-JPは兵庫県██市に存在する3階建ての木造アパートです。各階に3部屋ずつが存在しており、総部屋数は9部屋です。築年数は約30年であり、現在の大家は新宮 美代氏です。

SCP-2207-JPにおけるアキヴァ放射の環境レベルは最高で98.9cAk、平均で81.cAkであり、これは多神教と一神教のズレを考慮した場合においても非常に高い数値です。また、観測されるEVEの色相はブラックであり、何らかの神格実体が存在していると推測されます。

この神格実体(以降、SCP-2207-JP-A)は自身の特定を隠匿する性質を有していると推測され、特定に臨んだ複数の機器において異常な数値の確認、機器自体の故障が確認されました。また、SCP-2207-JP及びSCP-2207-JP住民に対する攻撃、武力的介入が著しいものであった場合、不明な機序を用いて武装解除、身体の修復及び記憶処理が行われることにより、攻撃自体が発生しなかったものとして取り扱われます。これは住民に対し、強硬的な移送等を行った場合にも発生します。

これらの性質にもかかわらず、SCP-2207-JP周辺及び内部において異常事案は確認されず、現在まで基底現実に影響は与えられていません。

SCP-2207-JPは2███/██/██、激しいヒューム値の変動が観測されたことにより発見されました。このヒューム値の変動はSCP-2207-JPにSCP-2207-JP-Aが出現したことが原因であると推測され、即時に緊急事態宣言及び対神格特殊部隊の構成及びSCP-2207-JPの特定、調査が行われました。この過程において前述の異常性から、機器での観測、武力を伴った内部調査が困難であることが判明しました。これを受け、約3か月間周辺現実に異常が発生しないこと、内部の住人が異常を関知していないことから、2███/██/██、暫定措置として内部住民への聞き取り調査及びSCP-2207-JP-Aの特定が進められることが決議されました。

以下は内部住民のリストです。

  • 303号室:秋野 雄三(56)
  • 302号室:座間味 悠太(44)
  • 301号室:烏野 明日奈(25)
  • 203号室:空室
  • 202号室:新宮 美代(88)/新宮 菜々香(34)
  • 201号室:土 陽子(39)
  • 103号室:ホセ・駒口(45)/フアナ・駒口(37)/エレナ・駒口(7)
  • 102号室:玉川 友華(24)
  • 101号室:待鳥 翔(23)




インタビュアー: エージェント・足利

対象者: 新宮 美代氏

注意: 新宮氏には若干の認知症傾向が認められている。また、A.足利は自治体職員として、全戸訪問を装っている


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A.足利: それじゃあ、防犯に関しての確認はこれで終わります。ここ3か月ほど新宮さんはお変わりなくですか

新宮氏: はい、孫も一緒に住んでくれてますしね。私みたいな年寄りにはもったいないですよ

A.足利: 一緒に若い人が住んでもらえると安心しますもんね

新宮氏: そうですねえ、ここのところ物騒ですし、菜々香ちゃんには申し訳ない気持ちもあるけど本当にありがたいんですよ

A.足利: 店子さんたちも変わったことはありませんか?

新宮氏: はい、皆さんいい人で、挨拶もしてくれるし家賃もちゃんと入れてくれますし、年寄りにはもったいないですよ

A.足利: そうですか。そういえば██/██に、ちょっと近隣でトラブルがあったようなんですけど何か気付かれたことはありますか?

新宮氏: あら、何かあったんですか。気づかなかったわ。菜々香ちゃんに聞けばわかるかもしれないけど

A.足利: いえいえ、そこまでは

新宮氏: ……そういえば、その日かは分からないけど、3ヵ月前にすごい音がしたわね。確か烏野さんのお部屋だったかしら

A.足利: 凄い音?

新宮氏: そうそう、雷かと思ったわ。烏野さんは棚を倒しちゃったって言ってたわね。菜々香ちゃんが助けに行って、本当にありがたいわね

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新宮氏へのインタビューから、烏野氏が何らかの事情を知っていると判断され、素行調査が行われました。その結果、烏野氏は要注意団体GoI-9519"ライフラフト"の構成員であることが判明し、同団体の代表者を交えた形で、財団サイトにおいて聴取が行われました。

一連のインタビューを受け、2███/██/██のSCP-2207-JPにおいて以下のイベントが連続的に発生していたものと推測されます。

① 烏野氏の有する霊的実体をエネルギーに変換する機器へ複数の霊的実体が挿入され誤作動を起こす。
その結果、発生した霊的エネルギーが土氏、秋野氏に接触する。

② 秋野氏が接触した霊的エネルギーを無意識のうちに四角形へ加工する。
結果としてSCP-2207-JP外周部に霊的エネルギーが広がる。

③ 土氏が接触した霊的エネルギーに対し、巫覡の役割を果たす。
その結果、霊的エネルギーの出入力が行われ、SCP-2207-JP外周部における循環が発生する。

上記のイベントはSCP-2207-JP外周の霊的エネルギー循環発生への推測ですが、SCP-2207-JP内部のSCP-2207-JP-Aにおいては一種の結界として機能している可能性が示唆されています。SCP-2207-JP研究においてはこの仮説を支持すれば、現状SCP-2207-JP外にSCP-2207-JP-Aの影響が確認されない事象への有意な説明として機能することから、暫定的な前提として共有されています。

この仮説からSCP-2207-JP外周の霊的エネルギーの起因となった霊的実体の調査が進められました。その結果としてSCP-2207-JP住人である座間味氏の関与が疑われたため、聞き取り調査が行われました。以下はその聞き取り調査から派生したSCP-2207-JP住人へのインタビュー記録です。

インタビュアー: エージェント・新田

対象者: 座間味 悠太氏

注意: 座間味氏は複数人の失踪に関与した疑いがあることから、警察組織からの調査として聞き取りを行っている。


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A.新田: ……では、██氏の失踪に関与していると認めるのですね?

座間味氏: はい、関与しているというよりも彼女は私が殺したようなものですから

A.新田: 殺した、とは明言されないのですね?

座間味氏: はい、彼女は死にたがっていました。でも、自分が死ぬことで色々な人に迷惑をかけるのは嫌だということで、私が身辺整理を手伝い、周囲から察知されないよう失踪の準備をして、自殺の道具も揃えました。そして、私の前で亡くなったので、私が殺したようなものかと

A.新田: ……であれば自殺ほう助に当たるかとは思いますが、これまで、何人を?

座間味氏: ちょっと待ってください、手帳を確認しますから。……だいたい8人くらいでしょうか?

A.新田: 何故そのようなことを?

座間味氏: お金が貰えたので。最初は近所のご老人だったのですが、手伝ってくれるなら遺産をいくばくかいただけるという言葉に断り切れず。ですが、案外上手くいって、人のためにもなる、お金も稼げるなら、仕事としてするのも悪くないかと自殺志願者の集まるサイトで募集をかけたりしました

A.新田: ……3か月前、2███/██/██には何をされていましたか?

座間味氏: その日は██さんと一緒にいました。なるべく迷惑の掛からない場所でということでしたので、私がいれば片付けも容易ではないかということで

A.新田: ……その日に██氏は亡くなったと?

座間味氏: はい、私の前で眠るように亡くなりました。そのあと片付けようとしたのですが……

A.新田: どうされました?

座間味氏: ██さんは、██さんのご遺体は、消えたんです。私はてっきり誰かに気付かれたものだと思って、だから刑事さんが来たのだと思っていたんですが

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インタビューから、烏野氏の機器に入力された霊的実体は、座間味氏が自殺ほう助を行った人物らであると推測されます。また、2███/██/██に消失した██氏の死体について財団神学部門より、SCP-2207-JP-Aが降臨するための生贄の役目を果たした可能性が提議されました。この降臨において何らかの呪術的儀式が行われた可能性を考慮し、他住人へのさらなる聞き込みが行われました。その結果、駒口氏と待鳥氏が儀式に関与する物品を所持している可能性が浮上しました。また、待鳥氏は大規模な匿名・流動型犯罪グループの末端構成員であることが判明しており、有村組や市俄会との関係があるものと推測されています。

一連の調査を受け、2███/██/██のSCP-2207-JPにおいて発生していたイベントが全て確認されました。以下はその時系列です。

① 駒口氏が自室においてエメラルドを保管する。
このエメラルドが後述する玉川氏の儀式における場となったと推測される。

② 座間味氏の自室において██氏が死亡する。
この██氏が後述の玉川氏が行った儀式の生贄になったと推測される。

③ 待鳥氏が脇差を持ち101号室を訪れる。
この段階において待鳥氏は要素の一部分となったため、以降、SCP-2207-JP住民として指定される。

④ 玉川氏が配信内において現状と相似する儀式を執り行う。
この儀式に呼応する形で神格の召喚が実行される。また、座間味氏に関連した霊的実体はこの段階で烏野氏の機器へ移動したと推測される。

⑤ 烏野氏の有する霊的実体をエネルギーに変換する機器へ複数の霊的実体が挿入され誤作動を起こす。
その結果、発生した霊的エネルギーが土氏、秋野氏に接触する。

⑥ 秋野氏が接触した霊的エネルギーを無意識のうちに四角形へ加工する。
結果としてSCP-2207-JP外周部に霊的エネルギーが広がる。

⑦ 土氏が接触した霊的エネルギーに対し、巫覡の役割を果たす。
その結果、霊的エネルギーの出入力が行われ、SCP-2207-JP外周部における循環が発生する。

⑧ SCP-2207-JP-Aが出現し、SCP-2207-JPが現状の状態に置かれる。
SCP-2207-JP-AはSCP-2207-JP外周部における霊的エネルギー循環が結界となる形で、SCP-2207-JP内部に留め置かれる。

玉川氏の呪術的儀式の形式から、SCP-2207-JP-Aは302号室、103号室、101号室を頂点とする三角形の中心である202号室に出現したと推測されます。ここから再度調査を行ったところ、新宮 美代氏の親族は早い段階で死亡しており、結婚歴もないことが判明しました。これを受け新宮 菜々香氏に協力を依頼したところ、自身がSCP-2207-JP-Aであることを認め、交渉を求めました。以下はその際の音声記録です。

インタビュー記録 - SCP-2207-JP-A:新宮 菜々香

インタビュアー: エージェント・井伊

対象者: 新宮 菜々香氏(SCP-2207-JP-A)


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A.井伊: では改めてになりますが、菜々香さんは神格実体である、としてもよろしいでしょうか

新宮氏: そうだな。かといって特に名があるわけではない。名もなき路傍の一柱とでも考えればよいので、これまでと同じく呼べばよい

A.井伊: 分かりました。では改めて交渉の内容についてお伺いしたいのですが

新宮氏: このアパート及び住人への不干渉を要求する。代償として私は必要以上の権能を行使しない

A.井伊: その条件であれば現在と変わりありませんが

新宮氏: そうだな、私が求めるのは現状の維持だ。ただし、何らかの調査が必要であればこれまで誤魔化していた分の情報は提供しよう

A.井伊: ありがとうございます。しかし、どういった心境の変化がありましたか?

新宮氏: 変化というほどのものでもない。お前たちは不要な暴力を用いず、ちゃんと住人を相手取って会話することで私に辿り着いたからだ

A.井伊: そうですか

新宮氏: 秋野、座間味、烏野、土、駒口、玉川、待鳥、それぞれがそれぞれに勝手な思いで偶然に私を呼び、私を縛り付けた。最初のころこそ憤りこそすれ、どれか1人でも欠ければどうなるものか分からんと大人しくしていたが、力も縛られ、言葉などに頼らねばならぬと気づけばすっかり慣れた。ならば私はこのアパートの神として店子を護り許すが仕事。お前たちがアパートや店子を傷つけんのならば関わる必要もなし

A.井伊: なるほど、分かりました。結論はこの場では出せませんが、懸案材料に加えます。監視等は行われることになると思いますが

新宮氏: 監視か

[10秒ほどの沈黙]

新宮氏: 構わん。なんなら空室が1つあるがどうだ?

A.井伊: それは入居せよ、と?

新宮氏: その方が便利だろう。風呂とトイレは別、日当たりも良好、悪い物件ではあるまい

A.井伊: 考慮しますが、いったいどうして?

新宮氏: 何、美代が外壁を塗り替えたいと考えている。見積もりを出したがもう1人分の家賃収入が欲しいところでな。今度の週末は庭で全員揃ってBBQをするから早めに決めるといい

A.井伊: ……なるほど

新宮氏: 皆で楽しく生きたい、最期は1人でいたくない、などあまりにもくだらなく、難しい願いというものだ

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SCP-2207-JP-Aからの提案を受け、現在203号室には監視業務と兼任する形でA.井伊が入室しています。また、座間味氏、待鳥氏については執行猶予付きの判決が下り、監視の目的から土氏と共に各個別財団フロント企業への就職が決定しています。

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