特別収容プロトコル: SCP-2217-JPはイギリス・ロンドンの英国国会議事堂に偽装されたサイト-08-UKに収容され、カバーストーリー「ビッグ・ベン」の流布の下存在が隠蔽されます。サイト-08-UKにはセキュリティクリアランス-レベル5、若しくはO5評議会によって許可された人員のみが侵入可能です。セキュリティ資格を満たさない職員の侵入は記憶処理の対象になります。サイト-08-UKはイギリスの各政府機関との連携の下維持され、また緊急時の最優先保護対象となります。本報告書はスクラントン・ボックスによる現実性の保護が行われ、恒久的に情報は維持、秘匿されます。
説明: SCP-2217-JPは1843年から1859年にかけ財団によって製造された、全長96.3mの時計塔を模した大規模現実改変機構です。外見は一般的にエリザベス・タワー、通称「ビッグ・ベン」として知られる時計塔であり、下部61mは煉瓦造り、他の部位は鋳鉄の尖塔から構成されています。SCP-2217-JPの中枢部位である時計の文字盤は地上55mに位置しており、周囲はスクラントン現実錨によって現実性を保護されています。
SCP-2217-JPは基底現実世界全体を効果範囲内に捉えており、最大出力の際のSCP-2217-JPは現実性強度の不安定化に伴い、最大で28.79Hmを記録すると考えられています。SCP-2217-JPの現実改変の指向性は一点に固定されており、即ち「過去へと時間を逆行させる」指向性を有しています。
当該オブジェクトが複数の異常性アーティファクトとSCPオブジェクトによって構成されているため、その詳細なプロセスについては完全に判明していませんが、当該オブジェクトは基底現実に存在する時空間的な因果関係を完全に改変し、時間軸をループ状に湾曲させることによって強制的に時間軸を過去へと逆行させることが可能です。またそのプロセスの実行のためには大量のエキゾチック的カシミールエネルギーを必要とするため、プロセスの実行には多重のセキュリティプロトコルが設けられています。
当該オブジェクトの製造計画は1840年当時のO5評議会の提言によるものです。当時のO5評議会は未解明なオブジェクトの総数と実質的にK-クラスシナリオを発生させ兼ねない極めて危険なオブジェクトの将来的な収容違反の可能性に疑念を抱いており、それらが結果的に当該オブジェクトの製造の根本的な理由となりました。当該オブジェクトの製造目的は将来的に起こりうるK-クラスシナリオの回避であり、そのために当該オブジェクトの計画案は有効的だとして製造が進められました。
当該オブジェクトの内部空間は因果が隔絶された特殊な領域となっており、外部からのあらゆる干渉の影響を受けません。そのため、SCP-2217-JP内部には当該オブジェクトに関するあらゆる研究データ、及びサイト-08-UKに関する情報がプロトコルの下、安全確保のために保管されています。
Protocol-KEPLER - 1978.03.12
序文: 当プロトコルはSCP-2217-JPの異常性を理解し、その上で人類文明の存続のため利用することを目的としている。当計画に不要な職員の一切の介入は無く、プロトコルは我々の権限によって実行される。
評議会、そして委員会の諸君にも考えていただきたい。この世界は幾度滅びるのだ?危険な異常物品の収容は我々だけでなく、最悪の場合民間、いや世界に影響を及ぼしかねない。更に言うなればK-クラスシナリオを発生させるオブジェクトはその大体が収容不可能であり、原理的、能動的に人類は終焉を迎えることとなる。これらの事態に対し、我々は打開策を見出せていないのだ。我々には一刻の猶予も残されていない。だが、時間を戻すことは可能だ。SCP-2217-JPは正にその指標であり、我々の希望、答えなのだ。実験は既に終了し、その産物がこの機械構造体を稼働させられることを証明した。今こそ、我らの使命を果たすために、毒を以て毒を制すのだ。
計画: SCP-2217-JPは時空間的因果の改変により、時間を湾曲させることが可能です。しかしながら改変には莫大なエネルギーを必要とするため、SCP-2217-JPにエネルギーを供給するための機構の製造が行われます。
サイト-08-UK内部の真空収容セクター-η81にはSQUID(超伝導量子干渉素子)センサで構成された巨大な反射装置が配置されます。当機械には回路が構成されており、マイクロ波観測型信号伝達装置から伝達された指令により、反射装置は流動する磁場の方向をtP(5.39116(13)×10−44)秒間隔で変化させ、電気的回路の仮想的な振動を発生させます。真空空間上に存在する僅かな量子ゆらぎから振動によってカシミールエネルギーが発生し、回収されます。
SQUID反射力場発生電気的回路
機材抜粋:
- SQUID反射力場発生電気的回路
- マイクロ波観測型信号伝達装置
- メトカーフ反物質回収機構
カシミールエネルギーが必要量まで達した場合、O5評議会による許可の下SCP-2217-JPが活性状態へと移行されます。SCP-2217-JPが活性状態へと移行した場合、全てのサイト-08-UK職員は現実改変抵抗領域/安全確保セクター-η19へと移動し、SCP-2217-JPの制御を行います。この際、全てのサイト-08-UK職員には限定セキュリティクリアランス-レベル4/2217-JPが付与され、当ファイルへのアクセスが可能になります。
全ての手順が完了し、SCP-2217-JPが機能を発現した後、過去の時間軸の財団によってSCP-2217-JPの再度収容が行われます。収容に伴い、全てのSCP-2217-JPに関するデータはSCP-2217-JP内部へと保管され、過去時間軸へと送付されます。
当プロトコルの実施はCK-クラス再構築シナリオの発生に直結することに留意してください。
補遺: インシデント2217-JP - 1945.12.08
当該インシデントの特筆すべき事項はSCP-2217-JPの異常な活性化です。当該インシデントの直接的な原因は未だ不明であり、財団内部に存在した工作員による活動、及びSCP-2217-JPの未解明の異常性によるものなど様々な憶測が出ていますが、事実としてSCP-2217-JPの意図せぬ活性化により、時間軸規模での現実改変が発生しました。結果的に当タイムラインは西暦1945年へと移行し、現在1の財団イギリス支部及び国防省によって収容されました。
当該インシデントによる財団内部の被害は最小限に抑えられましたが、活性化に伴い消費されたエネルギー量及びその副産物廃棄量、SCP-2217-JPの不安定性などから財団はSCP-2217-JPの起動計画を恒久的に凍結しました。監督評議会による審議の上、当該オブジェクトはNeutralized、または評価待ちの暫定的なクラスとしてDrygioniへと再分類される予定です。
警告: ファイル更新 - 2021/03/12
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プロトコル・ケプラー実行中のSCP-2217-JP及び周辺の空間。旧タイムラインの19██年に撮影。
特別収容プロトコル: SCP-2217-JPはイギリス・ロンドンの英国国会議事堂に偽装されたサイト-08-UKに収容され、カバーストーリー「ビッグ・ベン」の流布の下存在が隠蔽されます。サイト-08-UKにはセキュリティクリアランス-レベル5、若しくはO5評議会によって許可された人員のみが侵入可能です。セキュリティ資格を満たさない職員の侵入は記憶処理の対象になります。サイト-08-UKはイギリスの各政府機関との連携の下維持され、また緊急時の最優先保護対象となります。本報告書はスクラントン・ボックスによる現実性の保護が行われ、恒久的に情報は維持、秘匿されます。
説明: SCP-2217-JPは現在、機能を停止しています。プロトコル・ケプラーに基づき、現在もSQUID反射力場発生電気的回路によるエネルギーの抽出作業は継続されています。O5評議会は現在、プロトコル・ケプラーの改訂を検討中であり、これに伴い将来的なSCP-2217-JPの再運用計画が実施される可能性があります。
補遺: インシデント2217-JP - 2020.09.15
当該インシデントが発生したのは旧タイムラインの西暦2212年です。また当該インシデントはプロトコル・ケプラーに基づく財団の指導によって急遽再起動されたSCP-2217-JPによるものであり、結果として時間軸は旧タイムラインの西暦2212年から現タイムラインの西暦2020年へと移行しました。
旧タイムラインの財団が残したデータによると、旧タイムラインの西暦2210年時点で既にXK-クラス世界終焉シナリオが発生していたことが判明しており、またその状況から脱出するために2年の再構築と再充電の末、SCP-2217-JPが再起動されたことが発覚しています。西暦2020年へと移行した主な原因としては供給されたエネルギーが不安定だったことなどが考えられますが、解明には至っていません。
SCP-2217-JP内部からは他にも当時未発見のオブジェクトの収容手順やSCP-2217-JPに関する更なる研究データなどが保管されていました。再構築前の複数のタイムラインの最終状態についての資料が保管されていたことは特筆すべき事項です。この資料から現在推測されている事実として、基底現実世界は過去にSCP-2217-JPによって██回再構築されており、またその度に何らかの終焉シナリオが発生していたことが挙げられます。
また、SCP-2217-JP内部に存在するカシミールエネルギーの残量が現時点で10%以下になっていることが判明しています。これは過去複数回SCP-2217-JPが活性化したことによるものであり、残存するエネルギーを用いたSCP-2217-JPの活性化は残り1回のみと試算されています。
以下は再構築前の複数のタイムラインに関する資料の抜粋です。
Entry Number 01
時間軸: バージョン-β-001、崩壊済。
SCP-2217-JP: 正常。
最終状態: 大質量ブラックホールの発生により太陽系が崩壊。21██年に発生。財団の存在が一般に露見。また人類文明は疑似的に再建することに成功した。研究的観点から当タイムラインの再構築が決定。
稼働エネルギー残量94%。
Entry Number 02
時間軸: バージョン-β-002、崩壊済。
SCP-2217-JP: 外部に著しく損傷が発生。機能面での問題無し。
最終状態: キク科ノコギリソウ属(Achillea)の特徴を有する植物により地球全体が覆われる。20██年に発生。回避不能と判断、当報告書に関する研究は無期限に凍結。当タイムラインは再構築された。
稼働エネルギー残量88%。
Entry Number 04
時間軸: バージョン-β-004、崩壊済。
SCP-2217-JP: 著しい損傷、内部機構の一部破損。
最終状態: 全長200kmの巨大実体の封じ込め手順に失敗。20██年に発生。当タイムラインは再構築された。
稼働エネルギー残量67%。
記録者所見: そもそも手順など無意味では無かったのか?何故上層部が本気でカラバサスを実行している?
Entry Number 06
時間軸: バージョン-β-006、崩壊済。
SCP-2217-JP: 不明。
最終状態: 巨大隕石の衝突により、人類文明が崩壊。20██年に発生。現実改変による保護の下SCP-2217-JPは異常性を発現、再構築済み。
稼働エネルギー残量59%。
記録者所見: 前例のない現象だ。確率的にもほぼありえない条件だった。
Entry Number 08
時間軸: バージョン-β-008、崩壊済。
SCP-2217-JP: 正常。
最終状態: RK-クラス標準地球種再構築シナリオの発生。████年に発生。当タイムラインのサイト-01は陥落したものと推定。再構築済み。
稼働エネルギー残量48%。
Entry Number 12
時間軸: バージョン-β-012、崩壊済。
SCP-2217-JP: 部分的な損壊。
最終状態: コンクリートと鉄筋の材質を有するオブジェクト群によるXK-クラスシナリオの発生。当タイムラインは再構築された。
稼働エネルギー残量40%。
記録者所見: 173が何故分裂するのだ?旧タイムラインではこんな事ありえなかった。一体 クソ。
Entry Number 14
時間軸: バージョン-β-014、崩壊済。
SCP-2217-JP: 外部の一部損壊。
最終状態: 日本に存在するオブジェクトによって地球が凍結状態へと移行。
当タイムラインは[データ編集済]稼働エネルギー残量26%。
Entry Number 15
時間軸: バージョン-β-015、崩壊済。
SCP-2217-JP: 不明。
最終状態: 収容不可能な規模でのアノマリーの予期せぬ大量発生、大規模収容違反によるXK-クラスシナリオ。████年に発生。事象についてのあらゆる情報はSCPデータベースに登録されていなかった。
稼働エネルギー17%。
記録者所見: 何かがおかしい。
Entry Number 16
時間軸: バージョン-β-016、現存。
SCP-2217-JP: 正常。
最終状態: N/A
稼働エネルギー10%未満。
警告: ファイル更新 - ████/██/██
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特別収容プロトコル: SCP-2217-JPはイギリス・ロンドンの英国国会議事堂に偽装されたサイト-08-UKに収容され、カバーストーリー「ビッグ・ベン」の流布の下存在が隠蔽されます。サイト-08-UKにはセキュリティクリアランス-レベル5、若しくはO5評議会によって許可された人員のみが侵入可能です。セキュリティ資格を満たさない職員の侵入は記憶処理の対象になります。サイト-08-UKはイギリスの各政府機関との連携の下維持され、また緊急時の最優先保護対象となります。本報告書はスクラントン・ボックスによる現実性の保護が行われ、恒久的に情報は維持、秘匿されます。
説明: 当該オブジェクトは現在収容可能な状態にありますが、財団は当タイムラインの崩壊の可能性と更なるプロトコル実施の観点から機能を開放しています。
補遺: ZK-クラス"終末の夢"シナリオ発生について
最近の研究により、SCP-2217-JPを用いた時空湾曲の試みは大規模な現実不全を発生させることが判明しました。旧タイムラインで発生していた全ての異常な現象はSCP-2217-JPによる現実不全の影響と考えられており、また現在のタイムラインもこれに該当すると考えられます。SCP-2217-JPによる直接的な影響として、古典力学の崩壊、バタフライエフェクト、異常な性質を有するアノマリーの発生などが考えられており、これらの現象が発生した場合、高確率でタイムラインは能動的に終焉を招くことが予想されます。
追記: ████年現在、現実不全による終焉シナリオの発生は回避不能なものと判断されました。当タイムラインは再構築されます。
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Waiting……
Waiting……
Waiting……
プロトコル・ケプラーによる再構築が完了しました。
ファイルを展開します。Entry Number 16
時間軸: バージョン-β-016、崩壊済み。
SCP-2217-JP: 不明。
最終状態: ZK-クラスシナリオの発生により時空が崩壊。当タイムラインは再構築される。
!uptime
loaded.
08:12:09 up ███████████████████ days, 2:52, ███ users.
プロトコル・ケプラー終了。ファイルを更新しています。Entry Number 17
時間軸: バージョン-β-017、現存。
SCP-2217-JP: 正常。
最終状態: N/A
警告: 稼働エネルギー残量0%、SCP-2217-JPは機能を完全に停止しました。
警告: ファイル更新 - ████/██/██
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特別収容プロトコル: 不要。
説明: SCP-2217-JPは動力を喪失したために機能を停止しました。現在プロトコル・ケプラーによってSCP-2217-JPを再稼働させる試みが進行中ですが、完全な機能の回復には███年間の動力供給が必要になると試算されています。