SCP-2222-JP
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アイテム番号: SCP-2222-JP

オブジェクトクラス: Euclid

アーカイブ手順: SCP-2222-JPに指定された当データファイルの一部の情報はレベル∇ (アトレッド) 機密に分類されており、それらへのアクセスはサイト-01および秘匿研究サイト-∇からのみ可能です。補遺2222-JP.5の情報は該当サイトの職員のうち適切なクリアランスを有する人物のみに開示されます。レベル∇機密情報への不正なアクセスが検知された場合、当データファイルは財団メインデータベース上から一時的に消去され、適切な対処が完了するまでの間アクセスが不可能となります。

特別収容プロトコル: SCP-2222-JPは秘匿研究サイト-∇の高機密物品収容地下コンビナートの専用収容室に収容されています。収容室内には4台のスクラントン現実錨 (SRA) を設置し、不安定状態へと移行したときに自動的に稼働するように設定しておきます。収容室はSCP-2222-JPの明滅の可視性を高めるため暗室にしてください。

将来的なヴィシス・プロトコルの実行に繋げるため、SCP-2222-JPの監視は3名以上の十分な訓練を受けたDクラス職員により、収容室に併設された監視室から目視で行われます。SCP-2222-JPの不安定状態への移行が観測された場合、監視担当職員らは速やかに収容担当班へと1分間の明滅回数を報告しなければなりません。収容担当班は収集された明滅回数のデータと財団施設におけるインシデントの相関を調査し、月ごとにサイト管理官経由で監督評議会へと報告してください。

回収手段が未確立であることと民間に発見される可能性が極めて低いこと、および地理的条件から、SCP-2222-JP-Σが以前埋没していた地点の監視は財団運営の専用静止衛星 (“モニカ”) と常駐の機動部隊アトレッド-2 (“オブリビオ”) が行います。該当領域は財団資産が占有し、他者の侵入を禁止しています。掘削を行おうと試み侵入する個人あるいは団体は機動部隊がその活動に介入し、記憶処理などの処理を行い解放します。

精神影響下に置かれた職員はサイト-∇に研究目的で配属を継続されます。記憶処理の適用および記憶処理が効果を示した該当職員の他サイトへの再配属は、サイト管理官および収容担当班の判断に基づき行わなければなりません。

説明: SCP-2222-JPは非実体的特徴を有する黄-赤色の球形発光体です。SCP-2222-JPは厚さ35 cmのチタン合金製の板で構成される4.1 m×4.1 m×4.1 mのコンテナの中央に位置しており、内部から移動する試みには成功していません。不明な方法によりコンテナの中央に空間的に固定されているため、コンテナを移動させることによってSCP-2222-JPの移送が可能です。コンテナの側面には1箇所のみ10 cm×20 cmのネオセラム製のはめ殺し窓が取り付けられており、ここからSCP-2222-JPを観察することができます。

SCP-2222-JPは通常時であれば毎秒1回の明滅を繰り返しています。明滅間隔は不定期に狭まり、これに付随して財団の有する収容施設で異常存在の収容違反や要注意団体などによる攻撃が発生します1。明滅間隔が狭まるほど、それらのインシデントの危険性は高まる傾向にあります。この事実から、SCP-2222-JPは自身の所有者あるいは所有団体に対して敵対的な存在であり、何らかの方法で団体の所有施設に攻撃的な事象を発生させる能力を有すると推測されています。

安定状態のSCP-2222-JPはコンテナを含めヒューム値が1 Hmに高精度で固定されています。安定状態から崩れるとSCP-2222-JPの現実性は低下し、コンテナ周囲の現実性を吸引して周辺にクラスD現実性希薄領域2を生成します。SCP-2222-JPのヒューム値の低下は0.27 Hmに漸近するように進行します。低下速度は不安定状態での明滅間隔の狭さに比例して大きくなり、コンテナ周辺のヒューム値の低下速度の割合も大きくなります3。また、現実性の低下と吸引は進行中の財団施設でのインシデントがある程度解決されるまで継続するため、不安定状態のSCP-2222-JPは一時的な現実性ホール4として機能します。特筆すべき点として、SCP-2222-JPおよびコンテナはヒューム値が1 Hmを大幅に上回ることはありません。

SCP-2222-JPはあらゆるエネルギーを放出/吸収していないと考えられています5。フォトダイオードなどを利用した全ての実験において一切の光子も検出されなかったことは特記すべきです。ただし、SCP-2222-JP周囲のコンテナは物理的には非異常性の物体として振舞います。SCP-2222-JPがどのように存在を維持しているのかは未解明ですが、前述の現実性に関わる異常性から、現実性がSCP-2222-JPの維持に関与していると推測されています。

SCP-2222-JPを長期的に視認した人物は漠然とした恐怖感の増幅と自身の趣向の改変を経験します。従来の記憶処理法では除去不可能と考えられていましたが、Y-909クラスA記憶処理剤を利用することで除去可能と判明しました。ただし精神影響の発生例が極端に少ないことから、この異常性による具体的な症状および発生条件は現在のところ未確定です。関連記録は補遺2222-JP.2を参照してください。

SCP-2222-JP-ΣはSCP-2222-JPと同時に発見された人工物です。詳細は補遺2222-JP.4を参照してください。

補遺2222-JP.1: 発見

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図1.1: SCP-2222-JPの発見地点。

SCP-2222-JPは1974年のKant-WNETs6の全世界的な導入が行われた際に存在が確認された現実性ホールのうち、アフリカ大陸北部のサハラ砂漠で不定期に出現と消滅を繰り返していた実例の調査によって発見されました。現地での詳細な調査から、地表から約0.7 kmの深度に問題の現実性ホールが存在することが判明したため、該当領域の確保に続き財団地質学部門の主導で掘削を行い、SCP-2222-JPを回収しました。該当地点が地下資源の豊富な土地であったため、各地への政治的/利権的配慮などを考慮し、回収には大規模な予算の投資とカバーストーリーの流布が必要とされました。

該当地域はKant-WNETsの敷設以前から通常捜査の一環でフィールドワークが行われていましたが、SCP-2222-JPの現実性が基本安定しているために検知されていなかったと考えられています。

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図1.2: 収容当時のSCP-2222-JPのコンテナ。

サイト-∇に収容された後、SCP-2222-JPの一時的な現実性ホールとしての性質とヒューム値変動の性質が確認されたことに続き、収容担当班のムフタル・シャーディヤ研究員がSCP-2222-JPの不安定状態への移行と財団施設におけるインシデント発生のタイミングの相関関係を見出しました。この相関関係は統計部門による2次調査においても認められました。

安定状態のSCP-2222-JPは財団が保有する現実性の安定した物品で最もヒューム値の変動が小さいと判明しており、確度と精度の観点から、現在の財団内でのヒューム値測定における1 Hmの基準として利用できる可能性が指摘されました。しかしながら未解明/未確定の性質が多いことに加え、既存の記録データに加わり得ると想定される弊害が多数あることから、この案は却下されました。

補遺2222-JP.2: 未確定の異常性

以下は収容当時にSCP-2222-JPの観察を担当していたルシェリ・ウィザースプーン研究員が個人的に書いていた日記からの抜粋です。この文書が回収される以前、「少々怠惰である」と評価されていたウィザースプーン研究員の性格が変化したという証言が収容担当班の職員らから得られていました。

回収文書2222-JP.2.1


ここ最近、くだらない感情に支配されているような気がする。

どうにも、アノマリーが恐ろしく感じる。当たり前の感情だけれど、最近は一層怖い。今みたいに光を見てれば済む仕事じゃなかったら、もしかすると発狂してたかもしれない。どうして私はあんな意味不明な恐ろしい存在たちを相手にしてるんだろう。そう思うと、妙に嫌な気分になって、ますますアノマリーどもを徹底的に暗闇に閉じ込めてやるなんて、強く強く思ってしまう。

正直、長時間観察だけするのは酷くつまらないんだ。今日だって椅子に座りながら、いつまでも馬鹿みたいに「私は何のために財団にいるんだ?」と自問してばかりいた。ふと、「もしかして自問が仕事だったのでは!?」などと思って、今日もデカい箱の前で一人笑ってしまった。なんだか、変態のようで気味悪い。

精神影響かもしれないから心理鑑定を受けるべきか迷うけど、どう考えても「アノマリーが怖くて」「アノマリーを収容しなければならない」なんてのは、とても健全な財団職員の思考だ。私は何もおかしくないはず。もしかしたら、目の前の光が財団を攻撃しようと輝いてるから、変に神経質になってるだけかもしれないし。やっぱり、無害そうに見えても本当にアノマリーは油断ならない存在だ。

今日も新しいアノマリーが収容されて、脳が融けそうなほどホッとした。

それでも、不安は拭えない。

回収文書2222-JP.2.2


昨日の日記を見返して顔が燃えるように熱くなってしまった。ダメだダメだ。何が「私は何のために財団にいるんだ?」だ。馬鹿みたいに、じゃなくてお前は馬鹿だ。

確保収容保護。

ただ、当たり前だけど一番大事なことを改めて認識するいい機会になったし、やる気も溢れ出てきた。明日からも頑張ろう。

(無関係の文章は編集済)

後に行われたウィザースプーン研究員の心理評価は、当研究員の物品収集に対する意識および普遍的な恐怖心が大きく向上したことを示しました。その後試験的にサイト-∇の全Dクラス職員にSCP-2222-JPの観察を行わせましたが、ウィザースプーン研究員のように何らかの趣向や思考の変化を示した被験者はいませんでした。この結果から、理由は不明であるものの、SCP-2222-JPの監視はDクラス職員が最適であると判断されました。

1974年の収容から現在に至るまで、ウィザースプーン研究員を除くサイト-∇に勤務する職員のうち、1名のCクラス職員および1名のBクラス職員が類似性の見られる精神影響を受けていたことが判明しました。記憶処理剤の有効性を確認するためにウィザースプーン研究員には記憶処理が行われ、Y-909クラスA記憶処理剤が効果を発揮することが判明した後、当研究員は実績や能力の評価に基づいてサイト-19に再配属されました。これらの事実から特別収容プロトコルが改訂され、現行版のものとなりました。

補遺2222-JP.3: ヴィシス・プロトコル [レベル∇機密]

2001年にSCP-2222-JP収容担当班は、当時収集されていたSCP-2222-JPの不安定状態への移行と財団でのインシデント発生の相関データに基づく仮説より、以下のプロトコルの草案を作成しました。

凍結


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前記: ヴィシス・プロトコルはSCP-2222-JP収容担当班長のアポリナール・ヴィシス博士が主導し策定した、SCP-2222-JPを財団の防衛体制に組み込むことによる保安面の強化を目的としたプロトコルです。

概要: SCP-2222-JPが不安定状態に移行した際、それ以前に収集されていた各サイトの収容に関連する記録情報セキュリティ管理室 (RAISA) 上のデータから、特に収容違反の発生あるいは要注意団体等による襲撃の可能性が高いと判断された施設に対して警告を発し、発生しうるインシデントへの対処の準備を促します。警告は複数サイト自動緊急発進割当システム (MAYDAY) を介して行います。SCP-2222-JPの性質上、不安定状態への移行の確認はサイト-∇のDクラス職員2名以上により常時行う必要があります。Dクラス職員のみに絞るのは、SCP-2222-JPの未確定の精神影響効果の確認を行う意図も含まれています。

以下はSCP-2222-JPの1分間の明滅回数 (bpm7) に対応した警告の重要度です:

レベル1: 60 < bpm ≦ 90

アラートカラー:

意味: Safe/Euclidクラスかつ危険性の低い異常存在の収容違反、もしくは要注意団体などの極小規模の攻撃を警告します。多くの場合、職員らの人命に関わるインシデントには発展しません。


レベル2: 90 < bpm ≦120

アラートカラー:

意味: 危険性の高い異常存在の収容違反、もしくは要注意団体などの中規模の攻撃を警告します。


レベル3: 120 < bpm ≦140

アラートカラー:

意味: 危険性の高い複数の異常存在の収容違反、もしくは要注意団体などの大規模な攻撃を警告します。


レベル4: 140 < bpm ≦ 160

アラートカラー:

意味: 大規模な収容違反、もしくは要注意団体などの大規模な攻撃を警告します。


レベル5: 160 < bpm ≦ 190 (観測上の最高bpm)

アラートカラー:

意味: 何らかの致命的な要因によるK-クラスシナリオの発生を警告します。


提案者注記: 現在までに確認されているSCP-2222-JPの不安定状態への移行と財団施設でのインシデント発生のタイミング一致の割合は、セキュリティの観点から参照できない記録を除けばおよそ99%です。発生するインシデントはSCP-2222-JPによる敵対的行動と考えていますが、見方を変えれば、SCP-2222-JPは「財団施設でのインシデントの発生とその規模を予測している」とも捉えられます。私たちはこの仮説を基に、SCP-2222-JPを財団施設の防衛に組み込むことができないかと考えました。当プロトコルの発案契機はこのようなものです。

しかしながら、当プロトコルの実行に当たって未だ解決していない3つの懸念が存在します。

1つ目は、SCP-2222-JP収容後からの財団施設でのインシデントの平均発生数が増加していない点です。SCP-2222-JPが財団に敵対的なインシデントを発生させているのだとすれば、収容後からのインシデント発生数が増加してもおかしくないと思われます。しかし発生数は増えるどころか、月によっては全く発生しないこともあります。統計的に見ても、収容前後でそこまで頻度に差はありません。この事実は、SCP-2222-JPが財団へ攻撃しているという、当プロトコルの基礎の基礎となる考えを否定します。

2つ目は、SCP-2222-JPの予測するインシデントがどこで発生するのかが不確定である点です。事案発生はほぼ絶対であるものの、どこで起こるのかわからないのなら、該当施設以外に警告が行われたサイトでの業務に支障を来す可能性が十分に存在します。現在はRAISA上のデータに基づいた警告を行う予定としていますが、何か他の確定的な要素が必要と思われます。

3つ目は、SCP-2222-JPの予測対象に関する懸念です。SCP-2222-JPの予測反応は少なくとも、未発見かつ未収容の異常存在やGoIの未確認の行動などには一切効果を成していません。一方で、Archonクラスなどの「収容しないことで収容体制を確立している」異常存在の収容違反をSCP-2222-JPは予期します。当初は直接的な収容下にある異常存在のみにSCP-2222-JPが機能すると考えていましたが、そうではないようです。運用する以上、何故SCP-2222-JPは既に財団が関わったものしか予測対象としないのかという疑問は解明しなければなりません。

これらの懸念が解消されれば、ヴィシス・プロトコルの安定した運用が可能と考えます。当プロトコルが正式に実行される際には、SCP-2222-JPをThaumielに再分類する必要があるでしょう。

[編集済]

──アポリナール・ヴィシス博士

ヴィシス・プロトコルに対する監督評議会の投票結果は以下のようになりました。

ヴィシス・プロトコルの承認に係る投票:

賛成票:
O5-03, O5-09, O5-10, O5-12, O5-13

反対票:
O5-01, O5-02, O5-04, O5-05, O5-06, O5-07, O5-08, O5-11

結果:
否決


Thaumielクラス再分類に係る投票:

賛成票:
O5-03, O5-04, O5-09, O5-10, O5-12, O5-13

反対票:
O5-01, O5-02, O5-05, O5-06, O5-07, O5-08, O5-11

結果:
否決


代表コメント: 現状ではヴィシス・プロトコルを承認することはできない。プロトコルそのものの実行は可能だろう。しかし私は、SCP-2222-JPへの理解が足りているとは言えず、プロトコルの継続は困難であると考えていた。そして投票が示すように、ヴィシス・プロトコルは現状凍結となる。また、Thaumielへの再分類についてだが、やはり性質に未だ解明されていない箇所が多いことが気がかりであり、繰り返しとなるが、兎にも角にも現状では我々自身で得た理解が不足している。Thaumielクラスとしてはなおのこと不相応と言えるのだ。

最後に、ヴィシス博士に告ぐ。真実は我々の目で視るべきであり、いかなる証拠があれども我々は“知らない”ということを決して忘れるな。

調査を、研究を、収容を、継続せよ。

──O5-01

補遺2222-JP.4: SCP-2222-JP-Σ [レベル∇機密]

SCP-2222-JPの回収過程として行われた掘削作業は、SCP-2222-JPの不定期に出現と消失を繰り返す現実性ホールという稀有な特性のため、Kant-WNETs導入直後に最優先事項の1つとして着手された調査でした。しかしながら、費用等の面から携帯型SRAを十分な数導入できていなかったため、3名の負傷者と1名の死者が出る結果となりました。当調査の反省点は、後続で発見された性質の類似する現実性希薄存在の収容および維持の重要な参考となりました。

以下は掘削作業員の1人であるオーガスト・コクランの陳述を抜粋したものです。コクランは当日の掘削作業の途中に興奮し無断で地上へと帰還したため、監視職員に一時的に拘束されていました。コクランの拘束に続けて、地下にいた掘削作業班長は班が恐らく目標物に辿り着いた旨を監視職員に連絡したため、状況整理の目的も含めたコクランへのインタビューが行われました。

音声記録2222-JP.4.1


[記録開始]

俺たちはとんでもない物を掘り起こしちまったかもしれん。……何? ああ、了解。じゃあ最初から話そう。

知っての通り、現実性の薄い場所を探すプロジェクトの一環で今回の獲物を掘り始めた。地下2300フィートくらいに現実性のやけに薄い箇所があるってことだったから、正直最初はかなり厄介だと思った。しかもサハラ砂漠と来た。ただでさえ石油やらなんやらが出て殺し合いも起きるような場所だし、未発見の墓所とか下手に出てきて対処ミスしたら相当まずいからな。まあ流石財団というか、問題なく作業できたのは良かったし、そういうのも出てこなかったから結果オーライだ。

仕事中のことだ。俺もそうだが、掘削中にヒュームが一気に下がるのが何度もあったから、どうしても怪我人が出た。クラスD現実性希薄領域、で合ってたよな? 無駄に恐れなくたって、急いで梯子を登れば何ともなかったんだ。上にはSRAも数台置かれたし、ある程度携帯型SRAもあったからな。それでも異常は出てくるものだ。例えば、俺と一番仲良い奴は両腕が少し変な方向に歪んでしまった。俺は酷いもんで、ケロイドみたいなのに上半身をファックされちまった。すぐに医療班に治療してもらったからもう平気だ。……嘘だ。まだまだ傷んでる。

でも、若造の頭が削れて死んだ以外、そこまで大きな事故とかはなく掘削は進んでいった。死人が出たら現場の空気はキリッとしたが、それでも日がな毎日穴堀りばかりしてたからか、確かにペースが落ちていった。これは仕方ないことだと思う。普通の人間なら、同じ仕事を繰り返してれば怠くなるだろう。「もしこれで石油とかウランとか出てきたら、どうする?」なんて話しながら気を紛らわすくらいしかできなかった。いつ死ぬかわからない現場だからこそ、死ぬ話より生きる話をしたいからな。

そろそろ限界だと真剣に話し合うくらい全員が辛くなってた頃に、ようやっと獲物が顔を出した。最初に見えたのは灰色の分厚い板だった。恐らく鉄筋コンクリートか何かでできてるんだと思うが、詳しいことは分析班に訊いてほしい。許可が下りたから、一番デカいドリルで板に穴を開けた。穴はすぐには貫通しなかったが、1時間くらい粘って人が通れるようになった。光で中を照らしたが、穴開けのせいで出た砂埃が酷くよく見えなかった。少し時間を置いてもう1度覗いてみたら…… 俺たちだからこそ見覚えのあるマークが見えた。ほら、アンタの胸の名札にあるソレさ。

あそこに埋まっていたのは、財団のサイトだった。間違いない。他に説明のつけようがない。だから言ったんだ、俺たちはとんでもないもんを掘っちまったって! ただ…… どうしても疑問に思ってしまうんだ。なあ、俺たちは本当に、これを掘り出して良かったのか? 俺たちは正しいことをしたんだよな? いや、いい。アンタが知るわけないだろうし、問い詰めたって記憶処理でパーになるだけ。後は他の部署の仕事だ。

まあ、今になって不安になってるが…… 発見したときは大人げなく興奮しちまったんだ。これから先、これを超えるようなもんは見つけられないと誓えるくらいに、この仕事は俺にとってはあまりに有意義だったと思う。ひとまず、もう話すことは無い。さあさあ仕事は終わった! とりあえず休もうぜ、俺もアンタもさ。持ってかれた現実性の分、酒をぶち込んでやりてぇんだ。

[記録終了]

掘削の結果発見された人工的な構造物 (“SCP-2222-JP-Σ”に指定) の内部探査を機動部隊アトレッド-3 (“スペランカー”) が行いました。内部は繰り返し低い現実性に曝された結果として異常な構造や性質を示しており、また探査中にも数度現実性が低下したため、探査は困難なものとなりました。回収記録はSCP-2222-JP-Σが異世界に由来する「サイト-58」である可能性を示しました。

内部で機動部隊がアクセスした空間は「第4収容区画」の1か所のみでした。その他の空間への進入は試みられたものの、砂の影響などにより成功しませんでした。第4収容区画には異常存在を収容するためと思われる8つの部屋が設営されており、それぞれの扉には溶接痕があり解放できない状態にされていました。機動部隊の所持していた爆薬などでこれらの扉を開放することは可能でしたが、SCP-2222-JP-Σが未知の財団施設である可能性から何らかの異常存在の解放に繋がると思われたため、この試みは行われませんでした。

各扉にはネオセラム製の覗き窓がついており、内部の確認が可能でした。また、各収容室にはチタン合金製のプラカードが取り付けられており、収容されている物品の名称と思われる文が刻印されていました。以下は各収容室のプラカードの文および観察された内部状況のリストです。部屋番号は情報管理用に付与されたものであり、実際のプラカードには記載されていなかった点に留意してください。

部屋番号: 1

プラカードの文: トロイメライ (Träumerei)

内部の状況: 複数の種類の子供用玩具と思われる物品が、部屋を満たす程の量まで収容されています。時折内部から軽い物が崩れるような音が聴こえます。

部屋番号: 2

プラカードの文: 勿忘草 (Forget-me-not)

内部の状況: 部屋の中央に植木鉢が1つ配置されています。植木鉢には既知の植物が植えられているものの、視認を終えた時点でその植物の名称を思い出せなくなりました。

部屋番号: 3

プラカードの文: 巨大なるもの (A Big One)

内部の状況: 部屋の中央にニワトリ (Gallus gallus domesticus) のものと思われる小さな卵が浮遊しています。卵を視認した人物は軽度の頭痛を訴えました。

部屋番号: 4

プラカードの文: D

内部の状況: 目をつぶった状態で覗き窓を覗くと、内部に頭部のない3体の天使の彫像が配置されているのを知覚します。各彫像は胸の前で手を組んだ状態で直立しています。

部屋番号: 5

プラカードの文: 栄冠 (Aureole)

内部の状況: 内部は空です。扉には複数の凶器で傷をつけたような跡や大きな凹みが存在します。低現実性に曝されたためと思われますが、詳細は不明です。

部屋番号: 6

プラカードの文: 意外性 (Unpredictability)

内部の状況: 体長約2.0 mのウマ (Equus ferus caballus) のものと思われる白骨化した死体が安置されています。部屋の内部を視認した人物は驚愕する様子を見せましたが、何に驚いたのかを説明できませんでした。

部屋番号: 7

プラカードの文: [判読不能]

内部の状況: 天井から吊り下げられた紐にモノクルと思われる物品が取り付けられています。内部からは時折、泣き声のような音声が聴こえます。

部屋番号: 8

プラカードの文: 我らの心臓 (Our Heart)

内部の状況: 扉は唯一溶接されておらず、内部へのアクセスが可能でした。内部にはSCP-2222-JPのほか、[編集済: 補遺2222-JP.5を参照]、携帯型SRAと類似する大量の機器、および白骨化した死体がありました。死体は繰り返し低現実性に曝されたためか激しい損傷を負っていました。

目的であったSCP-2222-JPの回収に成功した後、その他の物品の回収を行うために再度機動部隊が派遣されましたが、SCP-2222-JP-Σを発見することはできませんでした。SCP-2222-JP-Σは現存していないと考えられており、消失した原因の調査が行われています。

補遺2222-JP.5: 我らの心臓 [レベル∇機密]

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