アイテム番号: SCP-2224
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2224はサイト-24の外部環境ラボに収容されます。当該オブジェクトへのアクセスには、レベル2以上のセキュリティクリアランスと、ダリッツ博士の承認が必要とされます。
説明: SCP-2224は木材および金属で構築されたシーソーであり、一度に4名まで人を乗せられるように、2枚の板と4つの持ち手が設けてあります。SCP-2224は大部分の国で安全基準上の問題のために製造されなくなった旧式のシーソーに類似しています。対象は、財団が地方政府からの連絡を受けた後、フィンランド南部のとある村から回収されました。
SCP-2224の4つの座席にはそれぞれ、乗員が座る位置の木材に大文字が一つずつ彫り込まれています。文字は“A”、“B”、“Ø”、“D”であり、AとBが片方の板、ØとDはもう片方の板に彫られています。
SCP-2224の効果は、“A”または“Ø”の座席に乗員がおり、板の反対側にも相手が乗っている場合のみ発生します。効果はどの座席を使っているかによって異なります。個々の影響は以下の通りとなります。
"A"シート: "A"シートの異常効果はまず、当該座席および"B"シートの両方に乗員がいる事によって発現します。"A"シートの乗員が地面を離れて"B"シートが地面と接触すると、"A"シート乗員はSCP-2224から約2.2~3m直上に発射されたかのような感覚を体験します。"B"乗員が地面を蹴って離れると、"A"乗員は自身が知覚している高さの空中から落下する際に予想される速度で落ちてゆく感覚を覚えます。この現象には視覚的・聴覚的幻覚が伴います。
"A"シート乗員の体験は、"B"乗員のシートがどれだけ長く地面に留まっていたかに関係なく、常に約2~3秒間の期間だけ持続します。実験において"B"乗員は最大52分間地上に留まり続けましたが、"A"乗員は実験担当スタッフから通知されるまでどれだけの時間が経過したかを認識していませんでした。この効果は"B"乗員が座席を離れると直ちに終了し、これは他の人物が"B"板の端を押さえて地面から浮かないようにしつつ座席を交代した場合も同様です。この効果はまた、"A"乗員が地面に接触する前に(通常はロープを使って)座席から降ろされた場合でも同じく途絶えます。効果を強制終了させられた"A"乗員は異常な感覚や幻覚のことを体験していない、または即座に忘却します。実験ではまだ、この他には"A"座席の注目に値する結果を得られていません。
"Ø"シート: "Ø"シートの異常な効果は、"A"シートと同様の形式で、"Ø"と"D"のシートの両方に乗員がいる時に発現します。"A"シートと違う点として、"Ø"乗員が頂点に達した後、"D"乗員は少なくとも1.2秒は地面に留まらなければいけません。"D"乗員のシートが地面に全く接触しなかった、或いは接触直後に地面を離れた場合は、異常な効果は発生しません。
"A"シートと異なり、"Ø"シートの乗員は、"D"乗員が地上位置に留まった長さに応じて、体験する時間と速度に大幅な差異を生じます。この体験中に実際より長い時間を知覚しているため、"Ø"シート乗員の表情は通常SCP-2224を使用している最中には急速に変化し、多くの場合、顔面筋の断裂を引き起こします。"Ø"乗員はしばしば地上位置に戻る際に意識を喪失しますが、これは"D"乗員が座席を浮かせる前に20秒以上地上に留まっていた場合のみです。
効果は"A"シートの項で概説した手法を用いれば強制終了が可能であり、"Ø"乗員も同じように体験を知覚しない/忘却します。"A"シートとの他の類似点ないし相違点を探るために、"Ø"シートには少なからぬ回数の実験が行われています。これらの結果については以下の表を参照してください。59秒を超過する実験は今後は認められません。
時間 = "D"シートの乗員が地上位置に留まっていた時間を指します。これまでSCP-2224の"Ø"シートに関する実験にはDクラス職員のみが利用されています。全ての実験は外部環境ラボの屋外で実施されました ― SCP-2224の効果は屋内では発現しません。
時間 |
被験者 |
結果 |
1.5秒 |
D-132033 |
対象は、推定6m上空に打ち上げられてからSCP-2224の座席に落下し、経過時間は約5秒だと主張した。対象は問題の高さから落下した場合に予想される苦痛を経験したが、すぐにその痛みは消えたと報告。微かな痣がD-132033の尾てい骨の周りに浮き上がっていたが、撮影前に消失した。 |
10秒 |
D-98901 |
対象は、時速70km以上と推定される速度で、少なくとも200m上空に打ち上げられたと主張した。対象はサイト-24の境界を越えた光景を良好に見ることが可能であり、周辺風景を詳細に描写することができた。D-98901は着地の際に耐え難いほどの痛みを経験したと主張したものの、彼女の尾てい骨周辺の痣は、以前の被験者同様に一時的なものに過ぎなかった。保安プロトコルに則り、対象にはクラスA記憶処理が施された。 |
22秒 |
D-102322 |
対象は地上位置に戻った後、意識を失い、3分後に目を覚ました。D-102322は、上空500mの地点で1羽のガンと激突したため、経験したことはほとんど覚えていないと主張した。対象は大地が球形に屈折している様子は見えず、「地平線はパンケーキみてぇにまっ平ら」だったと述べた。D-102322の尾てい骨と左の蟀谷に近い頭皮に、一時的な痣が確認された。 |
29秒 |
D-89734 |
対象は地上位置に降りると叫び始めた。実験スタッフが落ち着かせたところ、D-89734は座席が地面に降りた際に自分は死んだはずだと主張した。対象は知覚した高度や速度についての一貫性のある発言が不可能であり、「雲の中のデカい形」について断片的に語るのみであった。対象は実験が終了した27分後に心筋梗塞で死亡。 |
40秒 |
D-120048 |
対象は地上位置に降りると気を失い、約12分後に目を覚ました。意識を取り戻した対象はショック症状を起こし始め、沈静された。D-120048は15時間後に覚醒し、ダリッツ博士からの質問に答える事ができた。問題のインタビューの転写は、インタビュー2224-1を参照のこと。 |
52秒 |
D-119786 |
対象は地上位置に降りると気を失い、34時間後まで意識を取り戻さなかった。昏睡状態の間に、対象の四肢には凍傷が発生し始めた。目を覚ましたD-119786は話すことができなかったが、凍傷で指が動かなくなるまでは筆記による意思疎通が可能だった。対象の内臓器官は意識を取り戻した3時間後に機能を停止し始め、程なくして死亡した。D-119786の筆記内容の転写は、声明文2224-1を参照のこと。 |
61秒 |
D-87474 |
対象は地上位置に降りると気を失い、座席から転落した。対象の蘇生は失敗し、転落から6分以内に死亡。D-87474の死体は14分後、少量の炭素の粉を残して崩壊した。 |
序: D-120048へのインタビュー記録。
<記録開始>
ダリッツ博士: 君が何を経験したのか、詳細に教えてもらえるかね?
D-120048: 俺は…よく分かんねぇ。あれの事は少ししか覚えてねぇんだよ。なんだか…ぼんやりしてる。
ダリッツ博士: 君が思い出せる事柄を話してほしい。
D-120048: めっちゃ速く、その、速すぎるぐらいの勢いで飛んでたのは覚えてる。頭がマジで痛くなってきて、窒息しかけてるんだと思った。
ダリッツ博士: 君は何を見た?
D-120048: 地面がどんどんどんどん遠くなるのを見た、で次の瞬間には俺は雲の中にいた。多分俺はどっかの時点で気絶したんだろうな、でもまた目を覚ましたんだ。
ダリッツ博士: そして?
D-120048: 飛ぶのが遅くなってるように感じた。で、俺は声を聞いたんだよ。マジでデカい声なのに、遠くから聞こえる声。俺の真正面にある雲から聞こえてたんだと思う。そいつはマジでおかしな響き方だった、小学校の頃のジジイ校長がスピーカーで怒鳴って来た時のアレを、もっと甲高くしたような。その後ろからまた別の音も聞こえた、大型のジェットエンジンが唸るような音だ。
ダリッツ博士: その声は何と言っていた?
D-120048: それは…それはあまり覚えてねぇよ、断片だけだ。あいつは確か、俺のチケットを出せとか何とか言ってやがった。俺を馬鹿にするような響きだった、そいつは覚えてる。声はますますデカくなる一方だった。
ダリッツ博士: 君は、声の主を見たのかね?
D-120048: まぁ、最初のうちは見えなかったがね。さっき言ったように、その野郎は雲の中から出てきた。でもよ、そいつが雲から出たすぐ後に、エンジンの音が物凄くて俺は頭が爆発しそうな思いをした。そっから先はマジでぼんやりとしか思い出せない。
ダリッツ博士: どんな細かいことでも助けになるさ。ゆっくり話してくれ。
D-120048: あれは何かの飛行機だった、それははっきり分かる。でもあれは…ピンク…ってか、ピンクっぽい色はしてた。それで、あいつには顔が付いてたんだ。思い出せるのは、その面がデカかった事と、俺に真っ直ぐ向かってきた事と、チケットをどうのこうのと俺に向かって喚き散らしてやがった事だけさ。クソが、今になってどうあれを扱えばいいか分かんねぇぞ。
ダリッツ博士: 君が望むなら休憩を取ろう。
D-120048: いや、もう一つ思い出した。このベッドで目を覚ます前に最後に見た光景だ。俺は、あいつのジェットエンジンの片方に吸い込まれたと思う。
ダリッツ博士: 苦痛を感じたかね?
D-120048: あぁ勿論だとも。でも1秒かそこらのことで、すぐ辺りは暗くなっちまった。あのピンク野郎は俺を喰ったに違いない。
ダリッツ博士: 君を食べた? 何を以てそんなことを思うんだ?
D-120048: 痛みが来る前に俺が最後に考えたのは、こいつはどうも普通のジェットエンジンじゃねぇなって事だったからさ。あれは、えげつねぇ見た目の歯がびっしり生えてる、ぽっかり空いたピンクの穴だった。声と音はそこから来てたんだ。そいつは俺の耳元でクソ忌々しいチケットのことをがなり立ててたよ、俺を…真っ二つに噛み千切るまではな。
<記録終了>
以下の文書は、D-119786が臓器不全で死亡する前に書き残したものです。綴りや文法の誤りは、オリジナル版の文書を反映してそのままに残してあります。
わたしはそらにあがつたのをおぼえてる ぜんぶみえた とりもきもたてものも どんどんちいさくなった
すこしとりがついてきたけど なきごえはきこえなかた とりたちはそらたかくあがったとおもう だってはねはとれて おちていったから
わたしはこわくなた わたしのうでもとれて わたしもおちるのかとおもった
そしたら そらがぴんくになって そしておとがきこえた おとがどこからきたかわからなかた そしてそらはくろくなった
そらがくらくなると とてもさむくなった こわかったけどきどきした ほしがみえるかもとおもったから
でもほしはどこにもなかた ぜんぶくろくて ちきゅうをふりかえったら それはおおきなぴんくのたまだった
そして それはちいさくなって それ それはなくなった
わたしはすごくさむくていたくて しぬんだとおもった でもみおろしたら (みおろしたとおもう) なにかしたにみえた
それは CAVERAGE CO かいてある おおきな くろい かんばんだた
わたしは かんばんにむかて おちてった そこに Rのじ まるいとこ あった
かんばんは すごく おおきかったから わたしは あなをとおりぬけて ここで めをさました
ほかには おぼえてない もう やめていいかな
財団は、問題の“カバレッジ・カンパニー”に関する記録を発見できていない。D-119786の名前の綴りまたは記憶が誤っていた可能性も有り得るが、それを証明するには追加試験が必要となるだろう。 - ダリッツ博士