SCP-2226
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健全性検査中のSCP-2226反物質封じ込めユニット。

アイテム番号: SCP-2226

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2226は標準反物質封じ込めユニット1内で1,000テスラの常磁性磁場によって浮遊させ、少なくとも1名の反物質封じ込め技術者と2名の保安要員によって常に監視されなければなりません。SCP-2226を収めたユニットは適切な大きさのチャンバー内に留め、最低でも2基の予備原子炉が接続された電源によって無期限に電力が供給されなければなりません。チャンバーはSCP-2226が放出する2.15kHz帯の電波送信を遮断するのに適切な素材で裏打ちしなければなりません。

SCP-2226は月面サイト-13に保管されなければなりません。大気圏突入時に封じ込め違反が発生すれば破滅的な結果を招き、大規模で困難な検閲が必要となる可能性があることなど、地球上での保管は月での保管と比べ無用な問題が生じることが予想されます。

説明: SCP-2226は完全に反物質で構成された、地球外起源の脱出船です。オブジェクトは楕円体(長軸、中軸、短軸はそれぞれ4.10、1.72、1.50メートル)で、質量は847キログラムです。その組成は鉄、スズ、ニッケルの合金に対応する反物質です。その両端には4個ずつ、8個の姿勢制御スラスタが配置されています。SCP-2226の中央部には直径0.73メートルの透明のハッチが存在し、オブジェクトの内部を見ることができます。ハッチの透明性は単にその材質(分光分析によってエナメルガラスの一種であると判明)に起因するもので、SCP-2226内部から周囲を見ることを意図したものではないと考えられます(SCP-2226-1の形態を参照)。

SCP-2226は7秒ごとに、2.15kHz帯の電波を5秒間送信します。送信ごとにその内容は微妙に変化し、これは信号の到達範囲に存在する船に対してオブジェクトの位置情報を送信しているものと推定されています2

SCP-2226の内部には複数の取っ手やレバーが付属した小型の制御盤が存在し、これは姿勢制御スラスタや電波送信機を制御すると思われます。制御盤の中心には触覚ディスプレイが存在します。これは内外の状況に応じて個々に上下する、50×20の長方形に配置された微小な金属製ペグで構成されています。制御盤の下には金属製の小さな弦楽器を収めた収納箱が存在します。楽器はベトナムのクニー3に似ており、一端を糸巻きで固定されてその全長にわたって伸びる主弦、主弦と共鳴膜を接続する共鳴弦から構成されています。床には14個の空の金属缶が散らばっており、かつてはこの中に未知の紫色のペーストが入っていました(イベントログ2226-Bを参照)。

制御盤の横にはヒトと微かに類似する生物が存在し、人工冬眠ポッドと考えられている物体の中で休息しています。この実体はSCP-2226-1と指定され、身長は2.45メートルと測定されています。皮膚は深みのある藤色で、胴体には2対の上肢と1対の下肢が付属しています。上肢の先端には水かきのある7本の指を持つ手が、下肢の先端にも7本の指が存在します。SCP-2226-1は明確な頭部を欠き、主要な感覚器官(オオコウモリのものに似た大きな2枚の耳、3つの鼻孔、突き出した牙を持つ1つの口)は胴体中央部に位置しています。実体の身体には眼や光受容器が観察されておらず4、周囲の知覚は反響定位によって行っていると想定されます。観察された歯からは肉食性または雑食性であることが示唆されます。排泄行為は観察されておらず、全ての代謝産物は呼吸によって排出されると想定されます。

SCP-2226-1の口と鼻孔は半透明のマスクに覆われており、ポッドの横にある容積5.6リットルと見積もられているタンクから未知の呼吸用ガスが供給されています。タンクは空になる様子がなく、内壁とも接続されていることから、SCP-2226には廃棄物を除去した呼吸ガスを再循環するシステムが搭載されているようです。

SCP-2226-1が冬眠状態でどれだけ生命活動を継続できるか、SCP-2226の電波送信装置がどれだけ機能し続けるかは不明です。SCP-2226にはこれ以外の物資が残されていないと思われます。

イベントログ2226-A: 1999年5月16日、財団がSCP-2226を回収することとなったイベントの詳細。

05:13 月の裏側、高度およそ130,000メートルの地点に、白い閃光と共に地球外起源の宇宙船が出現する。船は鈍い灰色をした楕円体で、長軸、中軸、短軸はそれぞれ30、17、15メートル。船は致命的な損傷を受けているようで、右舷の船殻は部分的に溶融して破片を撒き散らしている。

05:16 船の高度は126,000メートル。船尾の8個のスラスタのうち5個が点火する。船の加速度は16 m/s2まで上昇。船、またはそれを操縦する実体は月周回軌道に乗ろうとしているように思われる。

05:19 船の高度は122,000メートル。船尾で爆発が発生。船の速度は軌道に乗るためには不十分である。

05:25 船の高度は113,000メートル。船からSCP-2226が離脱。SCP-2226は姿勢制御スラスタに点火し、無線信号の送信を開始する。SCP-2226を操縦する実体は月周回軌道に乗ろうとしているように思われる。

05:29 船の高度は109,000メートル。SCP-2226の高度は110,000メートル。

05:32 船の高度は97,000メートル。SCP-2226の高度は112,000メートル。

05:36 船の高度は82,000メートル。SCP-2226の高度は114,000メートル。SCP-2226は月周回軌道に乗る。

05:57 船は月の裏側表面に衝突し、430ギガトンと推定される爆発が発生する。爆発により高エネルギーガンマ線とニュートリノが放出される。

06:03 船の痕跡は残っていない。生じたクレーターは直径15キロメートル、深さ4キロメートルと推定される。

06:35 財団研究者は船が反物質で構成されていたと判断する。SCP-2226の組成も反物質であるという決定が下される。

09:54 月面サイト-13から磁気回収船7782 ("ファラデーの愛人") が打ち上げられる。

11:37 "ファラデーの愛人"がSCP-2226に接近すると、オブジェクトの姿勢制御スラスタが点火する。オブジェクトを操縦する実体は回避運動を取っていると思われる。"ファラデーの愛人"は200メートルの安全距離をおいてSCP-2226に追従する。

17:45 おそらく推進剤を使い果たしたために、SCP-2226のスラスタは停止する。"ファラデーの愛人"はオブジェクトと速度を合わせる。

17:56 収容ベイから空気が排出される。"ファラデーの愛人"の乗組員は船の磁気発生装置を起動し、SCP-2226の回収に成功する。

20:02 SCP-2226が月面サイト-13に到着。予備的封じ込め手順が開始される。

注: 反物質による爆発は科学的出版物から検閲されています。電波妨害により、生じたクレーターを月探査機から隠すことには成功しています。

イベントログ2226-B: オブジェクト回収後のSCP-2226-1の活動の詳細。

1999年5月16日 SCP-2226が"ファラデーの愛人"の収容ベイに引き込まれた後、オブジェクトの透明なハッチを介して1体の実体が確認される。この実体(以降SCP-2226-1と指定)は上の腕で制御盤の取っ手やレバーを調整し、下の腕の指を触覚ディスプレイに這わせている。無期限の保管のためにSCP-2226が反物質封じ込めユニットに移された後も、SCP-2226-1はおよそ6時間にわたって制御盤の操作を続ける。この行為による明確な影響は発生しなかった。

1999年5月17日 SCP-2226-1は搭載された収納箱から金属缶を取り出し、内容物を消費する。内容物は未知のペースト状物質である。食べ終えるとSCP-2226-1は制御盤の前に戻り、その操作を始める。この行為による明確な影響は発生しなかった。2時間後、SCP-2226-1は床に寝転がり、眠りに就いたと思われる。

1999年5月18日 SCP-2226-1は次のペーストを消費する。その後、SCP-2226-1はSCP-2226に搭載された収納箱から小さな弦楽器を取り出す。7時間にわたって断続的に、対象は膜を口に咥え、2本の弓で主弦を振動させることで演奏を行う5。対象の口はギターの響孔のように共鳴器として機能していたと見られる。その後、SCP-2226-1は楽器を箱に収め眠りに就いたと思われる。

同様の行動が数日間継続される。

1999年5月30日 SCP-2226-1は搭載された最後のペースト缶を消費する。

1999年6月2日 SCP-2226-1はオブジェクトの制御盤を操作する。当初は整然とした操作を行っていたものの、数分後にその動きは出鱈目なものとなる。SCP-2226-1は4つの拳を握りしめ、制御盤に叩きつける。対象は透明なハッチの内側に繰り返し体当たりし、数個のペースト缶をオブジェクトの内壁に投げつける。SCP-2226はこの行為による明確な損傷を受けていない。

2時間後、SCP-2226-1は床に寝転がり、眠りに就いたと思われる。

1999年6月3日 SCP-2226-1はSCP-2226の内壁に固定された透明なポッドを開ける。対象は鼻孔と口の上にマスクを装着し、ポッドの壁に体を横たえる。ポッドは閉鎖され、対象は眠りに就いたと思われる。

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