アイテム番号: SCP-2229-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2229-JPは、書庫サイト-81-45のセクター3にある40番書庫室内のキャビネットに保管してください。また、デジタルデータ化されたものについては同セクター内のスタンドアローン化されたデータサーバーに保管してください。SCP-2229-JPが市場及びネット上へ 流出する事態を防ぐため、財団フロントは常時監視を行います。担当するフロントは分野ごとに複数割り当てられます。SCP-2229-JPの監視を行う財団フロントは次の通りです。斎川中央出版は出版物の市場への流通を監視します。スタート&チャレンジプリントは、チラシ・ビラ・書籍などが印刷されていないかを、日本国内の印刷業界に張り巡らされたネットワーク通じて監視します。シリーキャットピクチャーズは版権・非版権を問わない映像がTV放送や映画、またはインターネットの動画配信サービスへ混入されぬよう監視します。公益財団法人犯罪心理学協会は、各フロントからの情報を統括し、SCP-2229-JPが市場から発見された場合は財団への通報を行います。
説明: SCP-2229-JPは、異常性を持つ書籍・印刷物・映像・デジタル化された画像の総称です。SCP-2229-JPの異常性は、以下の手順によって発現します。SCP-2229-JPを読了、または視認したヒト科生物(以降、対象と呼称)は、日常的に使用する物品を銃に変化させる異常性を獲得します。異常性が発現すると同時に、対象が身につけている衣服のポケット又は鞄やリュックサックなどの収納内部に弾薬が出現します。なお、これらの異常性を獲得する対象には条件があり、その条件を満たさない場合、対象が異常性を獲得する事は一切ありません。
押収されたSCP-2229-JPを用いた実験結果の概要は以下のようになっています。
SCP-2229-JPを用いた射撃実験 | |
被験体 | 終了予定のDクラス職員100名年齢は20代から60代 銃を扱った経験のないものを選別した。 |
手順 | Dクラス職員をSCP-2229-JPに暴露させ、異常性を得たものに射撃訓練を行わせる。射撃訓練終了後、室内に気化したクラスA記憶処理剤を噴霧。健忘状態となったDクラスに銃器を内蔵した監視カメラで射撃を行い、即座に終了する。終了後、室内の清掃を行う。実験終了までこの手順を繰り返す。 |
結果 | 参加した全員が高度な射撃能力を示す、命中確率は94%を示した。被験体は記憶処理の上、全て終了した。 |
この実験により、SCP-2229-JPは異常性に暴露した対象に銃の取り扱いの知識と射撃能力を付与する事が判明しました。
異常性を獲得する条件は、以下のように推測されます。
条件1:高度のストレッサーに晒されている。
条件2:条件1に対し、理不尽だという認識を持っている。
条件3:条件1及び2を、社会的な立場が原因で解決する事ができないという認識を持っている。
財団によって回収・押収されたSCP-2229-JP群の一覧を以下に示します。
回収日時 | 回収場所 | 物品 | 概要説明 |
---|---|---|---|
2019/02/07 |
関東各所の職業安定所 |
「知っていますか?パワーハラスメント対策」 | A4サイズの印刷物。各種銃の使用方法と「追い詰められたら躊躇せずに撃つ」事の大事さが述べられている。 |
2019/05/13 |
SNS |
「抱え込まないで!身近な家庭内暴力」 | デジタル画像。銃、特に9mm口径の拳銃の使用方法が記載されている。これらの銃は腕力のない女性でも簡易に扱う事ができると述べられており、女性向けに書かれたものである事がわかる。 |
2019/08/26 |
関東各所の図書館児童コーナー |
「わんぱくキッドといじめっこ」 | 小学校低学年向けの児童書。いじめをなくすため、ビリー・ザ・キッドをモデルにしたと思しきキャラクターが、いじめを行う少年たちを次々に射殺していく。拳銃の使用方法を子供にもわかりやすい文体で記述しており、それが物語の中に組み込まれている。巻末には「あいつらを怖がるな、体のサイズなんて関係ない。もし危険が迫ったら僕を呼ぶんだ、全てを平らにしてあげるよ」と記載されている。 |
2019/10/21 |
大型動画投稿サイト |
「Muzzle-believer's Bible」 | 再生時間1分15秒のデジタル映像。[削除済み] |
2019/02/01〜2019/12/23 |
関東各所の大型書店の文庫コーナー |
「Young Gun アウトローの誕生」 | 300ページほどの文庫本。人類が住む世界が欠陥品であり、それによって多くの人間が抑圧されている事が述べられている。それに対する唯一の解決方法は銃であり、その引き金を躊躇なく引くことによってのみ、人間は解放されうるのだと説いている。 |
回収された物品「Young Gun」の一部を以下に掲載します。
かくて、近代都市というものは完成した。
だがそれは、いまもなお多くの犠牲により成り立っている。
犠牲とは何か?それは他でもない、これを読んでいる君自身のことだ。
都市は大量の労働力を基に成り立つ。
しかし、人は人を踏みつけて生きざるを得ない。
そして都市は移りゆく、時とともに。
都市は人々の心を公然と盗み取っている。
君の魂は売りに出される、悪習という鎖に繋がれて。
君はかつて、何かに助けを求めたと思う。
両親に、友人に、教師に、上司に、同僚に、年長者に。
法律に、役人に、政党に、宗教に、国家に、この街に。
だが思い出せ、助けを求める声は、聞き入れられたか。
君の頼った物全ては、君から背を向けたのではないか。
もう十分だ、君を傷つける者たちに君は耐えられない。
そして君を解放できるのは世界にただ一人、君自身だ。
だから、私は君に提案する。
そして、一丁の銃を贈ろう。
それは、一つの小さな神だ。
これは、一つのEqualizerだ。
これで君自身を解放しろ、撃鉄の落ちたる音とともに。
これこそが、この不完全な世界から君たちを解放する。
それが、それだけが唯一の方法なのだ。
君の行く手を遮るものがあれば、迷わず引き金を引け。
撃鉄は常に君の頭の中にあり、その引き金は指にある。
撃て、撃つのだ。
一切の躊躇なく。
君は聞いたか、かの撃鉄の落ちたる音を。
ならば、君を今からYoung Gunと呼ぼう。
Young Gunよ、街へゆけ。
銃火を歌い、硝煙と踊れ。
上述に示す通り、SCP-2229-JPは2019年を通して配布され続けました。特に「Young Gun アウトローの誕生」は、財団が回収を繰り返し続けたという経緯があります。これにより、関東地域を中心に、一般市民の発砲事件が相次ぎました。しかしSCP-2229-JPは社会的に大きく取り沙汰される事はなく、配布された部数も決して多くはありませんでした。そのため、被害規模は最小限の範囲内に収まり、社会に与える影響もまた、軽微なものに収まりました。そして、現在では関連物品のほぼ全てが財団に収容されるに至っています。
補遺:収容経緯と関連事案について
収容経緯
SCP-2229-JPは、東京都内で発生したいくつかの発砲事件によりその存在が明らかになりました。財団エージェントによる調査の結果、SCP-2229-JPは複数の小規模なボランティア団体によって配布されており、「Young Gun」の書店への納入も、同様の団体が行っている事が判明しました。これらのボランティアは要注意団体「鉄錆の果実教団」の関連組織であり、さらなる調査の結果ボランティアにSCP-2229-JPを送付していた施設が確認されました。
戦術対策チームが施設を急襲したところ、構成員はSCP-2229-JPを用いて抵抗。銃撃戦が発生、数時間で鎮圧されました。その結果、施設内部の人員の全員が死亡、施設内からは対象のSCP-2229-JPが押収されました。施設内に存在した「鉄錆の果実教団」構成員は30名ほどからなる集団であり、そのほぼ全員が「鉄錆の果実教団」のメンバーでした。しかし1名のみ、同要注意団体の部外者の遺体が発見されました。以下にその詳細を示します。
日本特異例報告
番号: 特異例K21号
取扱主体: 財団
経歴: 本名甲田洋一郎 生年1977年5月8日 裕福な家庭に生まれ育つ。義務教育を経て早稲田大学付属高校へ入学、早稲田大学政治経済学部入学後、良好な成績を残す。卒業後、大手商社勤務を経て個人貿易商へと独立、年商十数億円規模の個人商となる。2007年6月頃ロシア貿易商とのつながりからブラックマーケットとの関わりが疑われ、警視庁公安部外事第三課にマークされる。捜査の結果、ロシアの銃密売組織と複数回に渡る違法取引を行っている事が判明。K21号はインターネットを通じ、一丁数万円(弾薬込み)という大変安価な値段で、ロシア製の拳銃を密売している事が明らかとなった。外事三課は対象を確保、東京郊外の倉庫から数百丁ものロシア製拳銃を押収した。
調べに対しK21号は、時にただ同然の値段で購入者に銃を配布していた事もあると供述していた。しかし、動機については黙秘を続けた。裁判の結果、特異例K21号は銃刀法違反によって懲役10年の実刑判決を受ける。なお、捜査の過程で外事第三課はK21号の通話を秘聴していた。その結果、関心団体「ガン・チャーチ」の幹部と交流をもち、時に資金援助を行っていた事が判明する。外事第三課はその情報を特事課に連絡し、対象にK21号の識別番号が付与される事となる。2017年に刑期を終了したK21号は、出所後も特事課の査察対象となっていた。しかし出所後「ガン・チャーチ」の人員との交流は途絶えている。甲田の残した私信から推察するに、「ガン・チャーチ」との間に思想的なすれ違いが起きていたものと思われる。
なお、甲田はしばらくの間職を転々とするも、2018年に突如行方不明となる。おそらく、日本国内の「ガン・チャーチ」の小セクトの手引きである可能性が高い。これは、甲田が長年「ガン・チャーチ」に対し、経済的援助を行っていた事が原因と思われる。また、「ガン・チャーチ」側も、甲田による経済面での貢献を忘れていなかったのだと推察される。
異常分類: 甲種
警戒レベル: 警戒レベル0
概説: 不明な方法により、異常物品を作り出す。ガン・チャーチから何らかの技術供与の疑いあり。
付記: 財団からの連絡により、死亡を確認。
情報提供元: 警視庁公安部外事三課及び厚生労働省特殊案件取り扱い係
以上の情報から、K21号はSCP-2229-JPの製作者である可能性が非常に高いと思慮されます。これは「鉄錆の果実教団」の施設からSCP-2229-JPが押収されるに至った経緯から見ても、その確度は非常に高いと思われます。「鉄錆の果実教団」施設内にK21号が滞在していた経緯についてですが、施設に残された情報から「鉄錆の果実教団」はK21号を匿っていたと思わしき資料が発見されています。これは「鉄錆の果実教団」並びに「ガン・チャーチ」が非常に弱い勢力しか持たない小集団であり、潜伏場所の確保のため「鉄錆の果実教団」と相互に連絡があったこと。また、「鉄錆の果実教団」は度重なる財団の襲撃により壊滅同然の状態であったため、武器を必要としていたことが、K21号との協力関係を構築するに至ったと推察されます。
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