SCP-2239
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研究室へ移送された当時のSCP-2239

アイテム番号: SCP-2239

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2239はサイト-17にある、人工池を備えた飼鳥ケージに収容されています。実験目的でSCP-2239に接触する場合はレベル3の承認が必要とされます — 飼育域に入る職員は、観察を担当するエージェント1名を同伴します。SCP-2239による全ての形態変化は記録しなければならず、SCP-2239の食事はそれに合わせて調整されます。

継続的な健康状態と協力姿勢を維持するため、SCP-2239は指定された職員から1日2回の訪問を受けます。SCP-2239は時折、餌が手ずから与えられなければ食事を拒絶することがある為、接する際には気配りが必要とされます。

説明: SCP-2239は、その外見および身体組成の両方に影響する不随意的な変異特性を持つ実体です。現在、SCP-2239は背鰭の近くからSasakia charonda(オオムラサキ)に似た翅状構造が生えている若年期のChiloscyllium punctatum(イヌザメ)の姿を維持しています1。SCP-2239は知性体と考えられています(補遺2239-1参照)が、通常は異常でないイヌザメと一致する振舞いを見せます。実施された知能検査でSCP-2239は大幅に異なる測定値を出しており、認知能力が不安定であることを示唆しています。

SCP-2239の形状変化は、SCP-2239が自らの主たる世話役と見做している人間に依存していると考えられています。過去の変異において、SCP-2239は一貫して、頻繁に出会う人々から肯定的・保護的反応を引き出すような外見2を取ってきました。SCP-2239の変異能力の範囲は不明ですが、体長0.5m以上の姿になったことは一度もありません。

SCP-2239は、富裕層向けのペットショップを装って運営されていたマーシャル・カーター&ダーク社の施設に対する財団のガサ入れで発見されました。押収された文書は、SCP-2239が財団の介入以前に5回売却されていた3ことを示しています。発見当時のSCP-2239は片方の前足を怪我したジャパニーズ・ボブテイル種のネコの姿をしていました。3週間後、暫定施設で飼育されていたSCP-2239は、様々な品種のネコの外見を取る様子が報告されました。これらの形状のうち2つは、暫定動物保護施設を管理している財団職員が飼っていたイエネコに類似していました。

異常標本飼育施設に移送されたSCP-2239は3種類の異なる姿4に変化した後、桐生研究室に移された時点からイヌザメの姿に留まっています。桐生研究員が監督した実験において、対象は現在の姿になり、現時点での収容下に置かれました。識別目的でSCP-2239にタグを付ける過去の試みが成功しなかった事を踏まえ5、SCP-2239は現在の形状を維持するために桐生研究室の監督下に保たれます。

補遺2239-1: 収容エリアに(日光浴のための)砂が導入された際、SCP-2239は水槽の外部で過ごす時間を増やし、砂に尾を引きずって畝を作り始めました。この行動は最終的に、判読可能な中国繁体字および日本語漢字の書き出しへと移行しました。更なる発展を促進するため、観察期間を増やして1日2回の交流が行われることになりました。

SCP-2239の最初の意思疎通試行は、収容ユニットの周りに散在する、一まとまりの部分的に記された文字群から成っていました。交流期間の延長と栄養補助食品を用いた研究職員らの励ましを通して、SCP-2239は徐々に完全なフレーズや文章を形作るように諭されました6。インタビューは行われていますが、SCP-2239は各インタビューに続いて動物的な行動のみを示す退行期間7に入るため、実施間隔は不規則です。

インタビュー2239-██からの抜粋(北京官話および日本語から翻訳)。質問者はSCP-2239に日本語で話しかけ、SCP-2239は中国語と日本語の文字/漢字を交互に使って返答する。完全版のインタビューの記録時間は2時間43分。以下の対話にはインタビュー終盤の90分が含まれている。

桐生研究員: どれほど多くの違う姿を取ってきたのですか?

SCP-2239: 非常に多く。忘れた。しかしそれ以上に、俺を飼っていた全ての人物を覚えている。

桐生研究員: どんな事を覚えていますか?

SCP-2239: 人間が真似る鳥の鳴き声。俺の耳を撫でるタコのある手。皺の寄った歯の無い笑顔。病院の枕に付いた白檀とジャスミンの香り。いつも誰かがいた。しかし俺は他の者たちを忘れたことは無い。

桐生研究員: 貴方が最初はどんな姿だったか覚えていますか?

SCP-2239: ああ。旅商人だ。平凡な男だ。ある日、彼は露天商から果物を買った。その人間は一度も彼を見なかった。ただ、1匹の死にかけの犬の世話ばかりをしていた。

桐生研究員: その当時の他の記憶はありますか?

SCP-2239: 孤独。市場の無表情な顔。冷えた乾草の香り。道を踏む俺の足。一組の足が歩く音。

桐生研究員: 貴方は現状をどう感じているのですか?

SCP-2239: 満たされている。遠慮なく与えられる好意に満足している。例えそれがどれほど些細なものでも。

[SCP-2239は書きこみを止め、空腹および食事の催促と一致するパターンで泳ぎながら桐生研究員に近付く。桐生研究員はエビを一掴み与えてからインタビューを再開する。]

桐生研究員: 差し支えなければ伺いますが、貴方は人間だった時期を懐かしいと思ったことはありますか?

SCP-2239: 一度もない。 [間が空く。SCP-2239は翅の開閉を繰り返す] 俺はもっと幸せだ。与えることを学んだ。感じることを学んだ。正しく。

桐生研究員: その“正しい”感情というのは、愛のことですか?

SCP-2239: 愛ではない。 [間が空く] もっと深い。もっと確かなもの。甘え8。俺に要るのはそれだけ。

[SCP-2239の記す字はこの時点から崩れて判読不能になり、桐生研究員はインタビューを終了した。]

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