SCP-2249-JP
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アイテム番号: SCP-2249-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid Safe

特別収容プロトコル: 現在SCP-2249-JPは電源を外した状態で低脅威度物品収容ロッカー内に収容されています。検査の為に約1年に1回の頻度で通電他メンテナンスが行なわれます。

説明: SCP-2249-JPは秋葉原内のゲームセンターに設営されていたピンボール筐体です。製造メーカー等の記述は一切存在せず、外装は液晶画面の上方にスピーカーが内臓され、操作盤の両脇に前後左右への操作が可能なスイッチ付きレバーが二本存在しています。操作盤右側に一部設備の欠損が確認されていますが、何が備え付けられていたか不明です。
内装には1990年代中盤に製造されたと予想される回路図が存在し、CPUに該当する部分にはネオジム鋼と未知の有機的成分が接合された板状の部品が装着されています。スピーカーに異常性は存在していませんでしたが、発見当時経年劣化による音声の不備が確認されました。
SCP-2249-JPに100円玉日本円硬貨を投入した場合、以下の様なゲームが実行されます。

  • 全面青色の背景下方にフリッパーが存在する画面が表示される。
    • フリッパーは左右のスイッチ操作による操作、並びにレバー操作による上下への移動や左右間隔の調整が可能である。今操作によって画面の下半分全面を理論上は対応可能である。
  • 一定時間後画面の下部から2つのボールが射出、上方からドット絵によって表示された敵キャラクターが表示される。
    • この敵キャラクターはゲームを開始する度に表示数・種類にバラつきが存在し、これまでに23種類の敵キャラクターが確認されている。
  • ボールを接触させた敵キャラクターは消滅し、ボールは角度に応じて反射する。キャラクターによっては部分的な破壊や形態の変化が発生する。
  • フリッパーとの接触数に比例してボールの速度が加速、画面端や敵への接触に比例して減速する。一定以上の速度においては敵キャラクターへの貫通等が発生する。
  • 敵キャラクターの射出した弾やレーザーと思わしき棒状の物体、敵キャラクターに接触したフリッパーは一定時間操作不能になる。
  • 画面の上半分の上面及び側面から敵キャラクターはランダムに出現し続ける。
  • 2個のボールが両方共に画面下部に落下した場合、画面がブラックアウトしてゲームが終了する。

SCP-2249-JPは「出所の分からない謎のピンボールゲーム」として2000年代において一部のインターネット掲示板で話題になっており、2010年5月のゲームセンター閉店に基づき財団フロント企業によってSCP-2249-JPの買い取り・内部調査による異常な回路図が発見されました。ゲームセンター店長へのインタビューを行った結果、「2000年には既に置かれていた」との回答が得られています。

<実験記録-SCP-2249-JP-01>

被験者: D-2249-JP-1

SCP-2249-JPプレイ結果: プレイ開始から3分後、フリッパーの誤操作によりボールが脱落。

余談: D-2249-JP-1は「ボールの動きが不規則に感じる」と解答。動画記録による検証を行った結果、ボールの挙動が完全な球体として出力されていない事が発覚。

<実験記録-SCP-2249-JP-02>

被験者: D-2249-JP-1

SCP-2249-JPプレイ結果: プレイ開始から5分後、スピーカーより大量のノイズ音が発生。8分後、敵キャラクターへの攻撃によりフリッパーの操作不能に陥った事で脱落。出現する敵キャラクターの種類・数は実験記録01と異なる。

余談: プレイ中の操作において、フリッパーを上げた隙間にボールを固定出来ない事が発覚。

<実験記録-SCP-2249-JP-03>

被験者: D-2249-JP-1

SCP-2249-JPプレイ結果: コインを投入した直後にスピーカーよりノイズ音が発生。プレイから12分後、SCP-2249-JP製造予想年当時のグラフィック技術には描画不可能である筈の量の敵キャラクターが出現、減速したボールを対応出来ず脱落。脱落直後約2分間に及ぶノイズ音の発生は留意すべきと思われる。

余談: プレイ開始から10分後以降、D-2249-JP-1は自身の胸元をしきりに掴んでいた。

2010年8月1日、豆黒博士主導の元SCP-2249-JPのスピーカーの修繕作業及び音声転送処置が行われました。以下は実験記録-04時にSCP-2249-JPより発生した音声記録です。

付記: 当時の実験においてD-2249-JP-1は16分間のプレイを行ない、実験記録-03において確認された数と同様の敵キャラクターがプレイ開始2分後に出現した。

音声A: ああ、また来て下さった!(若い男の声)

音声B: 今度こそ本当だ、また戻って来てくれたのだ!(低い男の声)

音声C: お願いします、もう本当に駄目かと思っていました!(甲高い男の声)

音声A: どうかお願いします、我々の敵を叩きのめして下さい!

音声B: いつ来ても問題無いように反射板を磨き続けて来たのです!

音声A: 今度こそ私達に平穏を…どうか……!

(フリッパーの誤操作によりボールが1つ落下)

音声C: ああ、あとひとつ残っている!

音声A: 今度こそ、ああ、今度こそ……!

音声B: この時の為に二つ用意してくれたのだ!うろたえるのでは…!

(D-2249-JP-1がくしゃみをした際に2つ目のボールが画面外に落下)

音声A: ああ、なんてこった!

音声C: だけど今度こそ戻って来たんだ!どうかなるべく早く戻って来て下さい!

音声A: 出来ればお声もお聞かせください…話したい事が、山程ありますから…

<終了>

追記: 2010年12月、ゲームセンター近辺・関係者への調査を行った結果、2001年時のSCP-2249-JP操作盤上にマイクセットが存在していた事が当時の写真により発覚しました。豆黒博士の主導の元、SCP-2249-JPへの無線マイク取り付け作業が認可されました。以下は実験記録05においてSCP-2249-JPプレイ直後に確認された音声及びインタビュー記録です。

付記: 当時の実験においてD-2249-JP-1は23分間のプレイを行ない、敵キャラクターによって両フリッパーを操作不能にされた事でボールが画面外へ落下した。

<開始>

音声A: ああ、しかしながら…着実に我々は巻き返している!今度こそ完全な打倒を成し遂げられるのだ!

(小さな歓声)

豆黒博士: もしもし。

音声A: (約5秒間無言。背後からざわめきは聞こえ続ける)ああ、とうとう我々への声に言葉が返って来た!何でも御申しつけ下さい!

豆黒博士: 私はプレイヤーの代表と言うべき存在です。あなた方の事についてお話して頂きたいのですが……

(約30秒間のざわめき)

音声B: どうやら、情勢が変化したのはそちらも変わりないようですね。私が代表としてお話します。

豆黒博士: ありがとうございます。まずは…あなた達は何なのでしょうか。

音声B: 私達は…貴方達の住む「ちきゅう」という惑星から、おおよそ170光年先にて住んでいる生命体です。貴方達の前に応対して下さった方は我々の事を「エイリアンテキナノ」と呼んでいました。

豆黒博士: え?

音声B: ああ、ご心配なく。光通信による音声伝達の遅延は我々の技術によって0.182秒以内に抑えられています。

豆黒博士: なるほど……随分と歓迎されているのですが、我々……いや、私達の前にこの筐体を持っていた方は何をしたのでしょう。

音声B: あの時の事は忘れていません。突如として我々は侵略を受け、その対策法を教えてくれたのが貴方達なのですから。

豆黒博士: 侵略と対策ですか……つまり私の前の人が干渉するまではされるがままであったと。

音声B: ええ、それはもう…ただ救難信号をそこら中に送る事が私達の精一杯でした。貴方達人間と私達との間には、技術の発展に大きな差がありました。「製鉄技術はあるのに刃物は造れない様なもの」とあの方は私達を例えていました。

豆黒博士: そこで何を授かったのでしょうか?

音声B: 本当に凄まじい発明でした。幸いにも私達には反射板と、被害を抑える為の防壁の発生装置までは用立てる事に成功しました。そして相手方を討伐する為の、単純かつ強力な技術まで生み出してくれたのです。

豆黒博士: その技術と言いますか…ひょっとしたら、「ピンボール」という言葉をその方が語っていませんでしたか?

音声B: ああ、ピンボール!その通りです、巨大な質量を持った物体を反射板によって加速させて叩き付ける…本当に革新的でした。それに、私達は身体の都合上難しかった質量を…貴方達が用立ててくれて、本当に感謝しています。

豆黒博士: 質量を用立てているとは、何があったのでしょうか?

音声B: 私達はきっと忘れないでしょう。貴方達が「オトコノチクビ」と呼ばれる身体の部位まで、捧げてくれている事を。

豆黒博士: は?

<終了>

その後のインタビュー記録において、SCP-2249-JPにコインを投入してプレイした際以下の様な流れが発生する事が発覚しました。

  • SCP-2249-JPにコインを投入したと同時に、プレイヤーの乳頭部の複製品が著しく拡大された状態で170光年先に出現する。
    • この時認識されるプレイヤーは男性限定であり、女性がSCP-2249-JP内にコインを投入した場合発生しない。この件については「規格違い」と回答している。
  • 画面外に落下した乳頭部は拡大処置の弊害として炭化し、有機的物質は殆ど残存しない。
  • SCP-2249-JPに表示される画面は3次元的な画面を2次元の映像に簡略化した光景である。
  • 左右の壁は被害抑制の為の防壁であり、フリッパーはプレイヤーのレバー操作に合わせた操縦で連動させている。
  • 表示される敵は「侵略軍」であり、有機的物質他資源を求めて侵攻を行っていたとされる。
  • 複製された乳頭部への衝撃他SCP-2249-JPプレイ中の状態がプレイヤー本人の乳頭に伝達する可能性は「長時間繋がっていると可能性は大いにあり得る」と回答された。

応対した音声及び侵略軍は有機的生物で構成された核を無機物で構成された触腕を生やした同一の生命体(以下、SCP-2249-JP-Aと呼称)であり、周辺環境を考慮して約40年前から侵略軍の攻撃が始まったと予想されます。
侵攻を開始した理由に関してSCP-2249-JP-A群からは「種族全体で貴重品として扱われている有機的物質の掌握」「触腕の本数に比例する絶対主義」等が挙げられていますが詳細は不明です。

SCP-2249-JPのプレイを介さない即自的な接触が現代の財団の技術を用いても不可能な事から、積極的なSCP-2249-JPの利用推奨が決定されました。
同様に実験の長期化及びSCP-2249-JP-A群の希望を考慮し、D-2249-JP-1への限定的職員権限の付与1が2011年1月に実行されました。

以下は通常とは異なる点が確認されたSCP-2249-JPプレイ記録の抜き出しです。完全な記録は実験記録-2249-JPを参考下さい。

実験記録# 発生したイベント
07 画面の上半分を殆ど覆う程の大きさを備えた巨大な戦艦が出現。約40分の戦闘後破壊に成功。
09 プレイ開始後32分でD-2249-JP-1の乳頭部から出血が発生。
10 藁果研究員がプレイ開始後26秒で脱落。「真面目にやってください」とSCP-2249-JP-A群から叱責を受ける。過去のデータからSCP-2249-JPを模したピンボールシミュレータの製作を開始。
13 実験記録-07と同一の戦艦が3台出現。約131分のプレイ後全員撃破。プレイ開始後102分時点でD-2249-JP-1の両乳頭部が落下。乳頭部全体に大量の擦過傷と熱傷を確認。
14 画面上の乳頭を確保し、画面上部へと持ち去っていく敵を確認。
16 フリッパーに触れると一時使用不可になる弾が画面上面から不定期に撃ち出される。実験記録-14によって収集された乳頭を利用したと予測される。
19 画面上面に敵キャラクターの残骸と思わしき物体を下側へ弾いてくるフリッパーが出現。今実験記録以降自律的に動作する敵キャラクターが発生しなくなる。
21 上面のフリッパーが4つに増加。
23 D-2249-JP-1が復帰。上面のフリッパー3つの破壊に成功。
24 残存していた上面のフリッパー残り1つの破壊に成功後、SCP-2249-JP-A群と侵略軍との会話が発生。会話の内容は音声記録参照。

<音声記録-SCP-2249-JP-24>

付記: SCP-2249-JPプレイ中に発生した会話記録。音声が発生した時点で乳頭は画面の中央部で2つとも位置が固定されている。

<開始>

音声D: もはやこれまでか……あれだけの戦力が全て倒されてしまったとは……(老人の声)

音声B: 戦況は決した。そちらにだって力を持たない一般市民がいるだろう……これ以上の抵抗は無意味だ

音声D: 分かっている……分かっているのだ。しかしながら、我々には時間が無い。過去の過ちが来たと言うべきか……

音声D: 我々は大きくなり過ぎた。有機的物質の核が耐えられない程に…試算上では寿命も長くない。

音声A: まさか、お前達が求めていたのは……

音声D: 最も普遍的な有機的物質、お前達の核だったのだ……愚かと思うか?己が命の為に他者の命を奪い取る行為など……

音声B: 到底許されやしないだろうが……だが、それももう終わりに……

音声A: 待って下さい。

音声B: どうした?

音声D: 情けを掛けるか?それとも処刑をする気か?それも良い……指導者として責任を取る準備は出来ている……

音声A: 僕はもう……これ以上、貴方達に危害を加えたくないのです。

音声D: 何だと?

音声B: おい、お前まさか……

音声A: 僕達がここまでやれた理由も、別の助けがあったからこそです。もしも無かったならば、きっと僕達だって犠牲になっていたのでしょう。

音声A: しかし、助けがあったからこそこうして……貴方と話せる機会が出来た。だからこのまま貴方達を倒すだけには行かないんです。

音声D: お前はまだ若い、しかし……そうであれば、何をする気なのだ?

音声A: お願いします。

音声C: 了解しました!

(右側の乳頭が画面の上方へ移動する)

音声D: これは……前の様に炭化しない、完全な有機物……

音声C: 調節はしてたんですけど、これで固定化は可能出来たみたいですね!

音声A: 前から思っていたんです……それが2つあるのは、1つを落としても戦える為ではなく、きっと分け与える為にあるんだって……

音声B: (溜め息)まあ、お前の決めた事だ……

音声A: この有機物を譲渡します。その代わりに……

音声D: ああ……ありがとう。此処に宣言する。戦争は終わったのだと……

(画面全体がブラックアウト)

<終了>

追記: 実験終了後、D-2249-JP-1の両乳頭部の完全な消失を確認。

25 画面上に何も表示されず、財団及びSCP-2249-JPプレイに携わった協力者に対する感謝の言葉のみが発生。
26 「いつでも来てくれ」との言葉が発生後、画面全体がブラックアウト。今記録以降100円玉を投入しても返却口から戻るようになり、SCP-2249-JPの機能停止が確認された。

<SCP-2249-JP関連記録>:

付記: 2011年6月に行われた暮布 増人氏へのインタビュー記録抜粋。暮布氏はSCP-2249-JP敷設に携わったゲームセンター元店長である。

<中略>

豆黒博士: つまり、貴方があのデジタルピンボールマシンを造ったと?

暮布氏: まあ、そうなりますね。当時なんてもうオカルトブームでしたから、謎の声が聞こえるピンボールなんて流行るって思ったんですよねえ。

暮布氏: おまけに忙しいのもあって徹夜続きで気が付いたら出来ていた、なんて……そういうの良いでしょう?バグだったら笑いごとじゃないですけど。(苦笑)

豆黒博士: 具体的に何をどうしたのかまでは覚えていないと?

暮布氏: まあもうこの年ですからね。ですけど途中で「貴方の身体の一部を捧げて欲しい」とかどうとか聞かれたのは覚えてますね。

豆黒博士: はあ、それでどう答えたんです?

暮布氏: 「男の乳首」って答えたんですよ。ほら、一番要らない部位じゃないですか。

豆黒博士: その後どうなったんですか。

暮布氏: 「分かった」とだけ聞こえたのかな……にしても何に使うんでしょうね、男の乳首って。

<終了>

追加情報: 2512年、装置の解析成功に基づいた送信位置の特定からSCP-2249-JP-A群の生息地域、旧D-2249-JP-1の著しく巨大化した両乳頭部の存在が探査機によって確認されました。SCP-2249-JP-A群は財団へのアプローチに対して友好的な対応を示しており、財団の外宇宙探索においても十分な協力を約束しています。

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